ウクライナ情勢からノルウェーの試験を思い出す

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ソチオリンピック中から、ノルウェーの新聞では連日大きくウクライナの情勢を伝えるようになりました。
日本にいるとウクライナって遠い国だし、なじみもないですよね。
ただ、ついに大統領を追われたヤヌコビッチ氏の豪勢な私邸を見ていると、ソ連が崩壊し、次々と東欧諸国が民主化になる過程で、時の権力者たちが私腹を肥やしていた様子が明らかになったことを思い出しました。

私がオスロ大学に留学していたのは1999年-2000年ですから、もうずいぶんと前です。
東欧からの留学生が多かったのですが、明らかに母国より恵まれているノルウェーに来ても、よく留学先の不満を口にしていたことを覚えています。
そこには、豊かなノルウェーへの羨望が含まれていたようにも感じてしまいました。

ただそんな東欧からの留学生たちが、口をそろえて「いい!」と言っていたのは、ノルウェーの試験です。
ノルウェーの試験は、私の場合は筆記試験と口頭試験があり、筆記は1科目4時間でした。でも4時間なんて短い方で、6時間、8時間の試験もあって、「超長丁場!」です。
4時間も試験をやると、トイレに行きたくなるし、外で空気を吸いたくなります。
そのために、試験官がずらっと教室の後ろに並びます。
平日の昼間、試験官なんてできるのは・・・はい、年金生活の方ばかり。
なので、大学の試験中は、おじいさん・おばあさんがたくさん集まってきたのは、最初は本当に驚きましたね~。

トイレに行きたい時は、手を挙げて、そして試験官のおじいさんやおばあさんがトイレまでついてきます。不正防止のためです。
外に出たい時も、やっぱりついてきます。これも不正防止のためです。

こうやって、カンニングの防止に努めているのですが、ほかにも「不正」をなくす方法がいくつも取られていました。
まず試験用紙には、自分の名前ではなく試験番号しか書けません。その番号は一体どの学生なのか先生は知りません。なので採点の際の「えこひいき」を防止します。
また口頭試験には、自分の先生以外に他の大学から来た先生も立ち会います。やはり、「公正に試験が行われるか」の見張りですね。
試験の採点にも、他大学の先生が関わり、「身びいきがないか」をチェックします。

・・・というように、何重にも、試験の公正性を保とうとするノルウェーの試験制度。
東欧の留学生たちは、「共産時代は、試験はカンニングや不正が横行していて、全然、公平じゃなかった」と、憤慨していたことを今でも覚えています。
「今はずいぶんと良くなったけどね」とあの当時、言っていたので、もう今ではそうした不正はなくなっているでしょう。

ヤヌコビッチ政権時代の大学試験はどうだったか分かりませんが、わいろは横行していたようですね。
ノルウェーや北欧諸国は、小さい積み重ねで、「公正さ」や「透明性」を保とうとしていることが、大学の試験からも垣間見られました。

“ウクライナ情勢からノルウェーの試験を思い出す” への2件のフィードバック

  1. 佐々木 和由 より:

     ”平日の昼間、試験官なんてできるのは・・・はい、年金生活の方”の部分、”やっぱり”と思いました。世界的にトップクラスにあるノルウェーの豊かさは、①進んでいる社会福祉のおかげで、女性を始めとして働ける条件が出来て、就労率が高いのではないか。②困っている人に手を差し伸べる習慣から、困る人が居ない事、自分だけに都合が良い=狡いをさせない事、から、条件はみな平等を大切にする国へと進んだのではないか。③そこで、「他人の役に立つことで、幸せになる」即ち、労働に参加する。それは勿論高齢者も同じで、出来る事に参加しているのではないか。と、思っていました。探していたものが見つかった気持ちです。有難う御座います。明日以降、貴方のこのブログを大至急読ませてもらいます。又、コメントしたくなるに違いないだろうと、楽しみにしています。

    • Aoki より:

      佐々木さま

      ご指摘の通りですね。試験官をしている高齢者の皆さんは、例外なく嬉しそうに参加しています。
      これからも本ブログをご愛読よろしくお願いいたします!