石油をめぐる冒険

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「ノルウェーってどうしてお金持ちなんですか?」という質問はたびたび受けます。

ノルウェーに興味がある生徒さんでもご存知ない方がいらっしゃるので、いわんや普通にノルウェーと関わりがない人など意識もされたことはないでしょう。
2012年の「国民一人あたりの名目GDPランキング」を見ると、ノルウェーは第3位にランクイン!
ノルウェーをそれほど豊かな国に押し上げたのは、ずばり石油と天然ガスのおかげです。
特に、石油については「Oljeeventyr」という単語が存在するほど。直訳すれば「石油物語」でしょうか。
私は村上春樹氏の「羊をめぐる冒険」をもじって「石油をめぐる冒険」という風に訳しちゃってます。

私自身、漠然とノルウェーで油田が発見されたのは、1960年代だということは知っていました。
油田発見までの詳しい経緯は、レッスンで使っている「Stein på stein」というテキストに載っています。「語学書のテキスト」でも学べることは多いですね。

テキストによると、ノルウェーが北海で油田を探し始めたのは1960年代半ばから。
しかしノルウェー単独では、油田探しの経験も技術もなかったので、海外の石油会社が油田探しに加わるように依頼されます。

温泉掘りと比較しては「規模が違う!」と怒られそうですが、油田探しは容易にはいきません。

4年かけて、30もの深いボーリングを行いますが。油田は見つかりませんでした。「もうこれは無理だ・・・」と諦めかけたところ・・・。
でも、アメリカのPhillips Petroleum社だけは、「あともう1回、ボーリングをしてみよう」と、ラストチャンスにかけます。
ついに1969年秋に、北海の中央付近に油田を見つけることができたのです!
その時の歓喜の様子は・・・・想像するだけでワクワクしますね~。

それからノルウェーはStatoilという国営の石油会社を作り、次々と油田開発と輸出を行っていきます。
順調に石油産業は成長し、そのおかげでノルウェーの経済も好調になっていきます。
ノルウェーは他の北欧諸国よりもリッチなので、しばしば「北欧のカタール」と揶揄されるほどです。

もっと言うと、スウェーデン人から「ノルウェー人は技術の開発はできない。あるのは天然資源だけ」とdisられるほど・・・。

のどか

ゆとり満載

2012年、石油輸出量は世界で5位、天然ガスは世界2位となっていて、莫大な収入を堅実に「政府年金基金」という形で貯蓄し、将来、資源が枯渇したり、価格が暴落した時に備えています。

今年読んだ記事だと、この基金は国民ひとり当たり1000万円ほどの貯金になっているらしいです。日本人は国民ひとり当たりの「借金」が膨大なので比較すると空しいです・・・。

ちなみにノルウェー国内の電力は、豊富な水資源を生かし、水力発電でまかなっています。
ですので、石油やガスは輸出だけという、何ともうらやましい状況なんですよ。

もし、あの時、Phillips Petroleum社がボーリングをあきらめ、帰国していたら・・・?と想像すると、ノルウェーってなんてラッキーだったのだろうって思いますね。
まさに「Oljeeventyr」という名がふさわしい「冒険譚」です。

“石油をめぐる冒険” への2件のフィードバック

  1. 佐々木 和由 より:

    ノルウェーの国民生活が豊かに見えるのは、“社会福祉で生活費に困る人がいない”から、と何となく思っていました。
    しかし、1人当たりGDP(購買力平価)の比較で、ノルウェーが世界トップクラスを知った時は驚きました。「それは、北海油田の石油と天然ガスが有るから」と聞いて、ノルウェーの石油・ガス生産額を調べてみると、ノルウェーのGDPの25%位。更に驚く事に、ノルウェーの1人当たりGDP(購買力平価) の75%の方が日本の100%よりも高いでは有りませんか。日本は政府も、GDP世界3位の「先進工業国」と、自負しているのではないか?更に、ノルウェーでは石油・ガスの利益は、将来に渡って恩恵に与かるべく政府石油基金に積んでいるという。ナント、お国柄が違うことか。
    社会福祉だけではない、ノルウェーの生産力の高さが何故なのか、考える必要に迫られました。
    勝手な思いを繋ぐと、①社会福祉の充実により働ける条件が広がり、労働に参加する人が多い。②社会福祉の施策で、現物支給も相当あると聞いています。物によっては、現物支給で市場競争にさらされず消費に見合った効率的な生産が出来るので、無駄(過剰生産・大量廃棄・無用な宣伝など)が少なくて済んでいる。③社会福祉の充実で、子供たちの日常生活に貧富の差が表れにくいので、子供たち同士が対等の下で育ち・教育が行われ、より自主的な積極的な人格形成が出来て生産力に反映している。④地域・人を大切にするので、利用者が見える規模の生産体制=中小企業の発達が有る。(これは裏付を取れていません)。日本では逆に、東京大田区や東大阪などの優れた技術を持つ中小企業が倒産に追い込まれている。日本でも100年前に岩手に村の堤(ため池)を使って発電していたとの事。このような小規模水力発電は全国的に相当数有ったが、「水力発電は単価が高い」と虚偽情報が広められ、水力⇒化石燃料化⇒原子力へと強引に進められ、中小事業所は淘汰された。⑤女性の社会進出により、国のお金が万遍なく効率良く循環する仕組みが出来てきている。⑥富の偏りが少ない。⑦等々々など。ではないかナ、と思うのです。<違っていたらご指摘を期待します。>
    結局、富は資源の有無よりも「労働(人に役立つ事)から生まれる」のだから、人を大切にし、老若男女を問わず持てる力を存分に発揮してもらえる社会にする事、ですよね。
    日本は先ずはノルウェーから学ぶべきです。取りあえず、大至急、ノルウェー夢ネットさんの誰でも学べる講座とサロンの事業を全国展開する為の助成をする事ではないでしょうか。
    (スミマセン、いつも長くなってしまって。貴重な貴ブログのスペースを削っているような気がしています。おまけに、最後は余りに飛躍し過ぎ。でも、キチンと評価して、充分な助成がされる日本になって欲しいですね。ノルウェーでは“なって欲しい”ではなく“しましょう”カナ)
    (日本もそうですが、第二次世界大戦後、平和が維持された事が豊かさに繋がった事は極めて大きい。)

    • Aoki より:

      佐々木さま

      いつもご丁寧なコメントをありがとうございます!
      意外とノルウェーが世界有数の裕福な国って知られていないんですよね。天然資源の輸出国でありながら、安易にその利益を使うのではなく、将来のために貯蓄したりする姿勢は、見習うべき点が多いと思います。
      はは・・・うちのような零細団体は、そんな全国展開できるような助成は到底、ムリですけど、一般の方にノルウェーの情報共有をいたしたく、このサイトは2000年からスタートし、「ノルウェーについて学ぶサロン」はもう70回近く、開催しています。
      地道かもしれませんが、「継続」こそが大事、と思って続けています。