ノルウェー人監督エーリック・ポッペが監督した『おやすみなさいを言いたくて』 (原題:”Tusen ganger god natt”)は、ノルウェーのメディアで大絶賛。
加えて、モントリオール世界映画祭審査員特別賞など数々を受賞。記事を読みながら、「う~ん、これ観たい!」と思ってたら・・・
観れちゃったんです! ノルウェー大使館にて開催されたスノーフリッド参事官のトークショー付きの試写会に馳せ参じました~。
冒頭から一気にその世界に引き込まれる緊迫したシーンが続きます。中東、何か儀式のようなものを受けた若い女性は、体中に爆弾を装着されます。
そのシーンをずっとカメラで映し続ける主人公レベッカ(フランス女優のジュリエット・ピノシュ)。
自爆テロの直前までレベッカはシャッターを押し続けますが、彼女自身、爆風に飛ばされ重傷を負います。
ずっと「家庭か?仕事か?」という葛藤や問題は存在してきました。そして今でもそれで悩んでいる人はたくさんいるでしょう。
主人公レベッカも、その一人。彼女には海洋学者の夫マーカスと娘が2人います。
ただレベッカの仕事は、「戦場カメラマン」。フツーの仕事と比べて、あまりにもリスクが高すぎます。
理解ある夫マーカスでしたが、ついにレベッカに「いつも待っている身にもなってくれ!」と悲鳴にも近い叫びをあげます。
レベッカは「妻」としての負い目を感じてしまう。
娘たち、とくに長女ステフは母親に対し、反発するような、でも同時に愛を求めるような表情を浮かべています。
レベッカは、「母親」としての負い目を感じてしまう。
レベッカは、家族が崩壊することを恐れ、ついに「紛争地にはいかない」と決断しますが・・・。
映画の中で、家族たちは何度もレベッカに「なぜ、あんな見捨てられた土地へ行くの?」「写真をどうして撮らないといけないの?」と問いかけます。
レベッカは、娘ステフとの会話で、 「怒り」と「本能」というキーワードで答えます。
見捨てられた人々を撮ることで、世界へ発信し、事実を多くの人に知ってほしいという使命。
そして本能のまま、恐怖すら感じずに死体にもシャッターを押し続けるレベッカ。
あらすじを書きすぎると、これからご覧になる方の楽しみが減ってしまうので、印象的なポイントを挙げていきましょう。
①ジュリエット・ピノシュの演技
正直、苦手な女優でしたが、本作ではほぼノーメークで、危険な戦場カメラマンの役と妻・母親の役を、何の違和感もなく演じています。
年齢を重ねたシワに美しさ、崇高さまで感じました!
②美しく抑制された音楽と映像
紛争地のシーンは終始、抑え気味の音楽と映像で表現され、人の命のはかなさ、暴力が「宿命」のように映し出されます。
またレベッカたちの住むアイルランドの風景。荒涼とした海、強い風、自然の中で家族のドラマが展開していきます。紛争地とは違う家族内の「紛争」が、美しい映像で描き出されます。
③悪い人は出てこない
「家族か、仕事か」を責める夫も娘も、みなレベッカを愛しているし、レベッカもまた家族を愛しています。
夫マーカスは、世間一般の水準からすれば「十分すぎるほど理解ある夫」であり「父親」です。娘たちもまた母レベッカの生き方や仕事を理解しようともがいています。
対するレベッカは、「普通の生活の方が難しい」と言ってしまう人間ですが、大いなる使命と家族への愛で葛藤します。
そう、みんな愛すべき人々。程度はあるでしょうか、それぞれの登場人物へ感情移入できるでしょうね。
・・・そしてラストシーン。いろいろな解釈が可能でしょう。
いや~、私自身まだ「ええ??」と悩んでいます。
長々と書き連ねましたが、心からオススメできる映画です。
映画の詳細情報は公式サイトから→ http://oyasumi-movie.jp/
12/13から公開ですので、映画館へGo!