騙されるノルウェー人男女~ネットデート詐欺~

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たまに生徒さんから「ノルウェーにも振り込め詐欺ってあるのですか?」と聞かれることがあります。
過去に1度くらい、その手の犯罪の記事を読んだような・・・ただ日本のように大きな社会問題にはなっていません。
それよりもより深刻なのは「ネットデート詐欺」なのかもしれない・・・とNRK(ノルウェー国営放送)のドキュメンタリー番組を観て感じました。
ドキュメンタリーシリーズ「Doku.sommer」でOAされた「LoveHurts.com」という番組です。

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ノルウェーの地方の男性に深刻な「結婚難」があるという事実は知っていました。その解決策として外国の女性とネットで知り合い、結婚に至る例はたくさんあります。
ただNRKの番組で取り上げられていたのは、「外国人に騙されるノルウェー人男女」の姿でした。

西ノルウェーの田舎に住む独身の50代男性。彼は熱心に「ウクライナ女性を紹介するサイト」を見ています。ネットに紹介されているウクライナ女性は正直「ケバい」です。派手なメイクにかなりセクシーな姿態をこれ見よがしにアピール。日本だったら「アダルトサイト?」と勘違いするレベルです。
ですがこの男性は「一緒にノルウェーで暮らしてくれるパートナー」を見つけるために、この手のサイトを活用しています。そして気に入った女性とメールのやり取りをするのですが、相手からのメールを開く度に1000円近く課金されるのです!でも当然、彼女からのメールを読みたいので、どんどんお金を費やしていく羽目に。

そして、ようやく彼がウクライナに旅立って彼女と会える手筈となりました。
彼女に会うために、男性は美容院で髪を整え、空港のメンズショップで「これからデートがあるからいい洋服を選んでほしい・・・」と方言丸出しで店員に頼み、そして彼女からリクエストされた「Chanelの香水」をTax Freeで購入。その時「シャネル」ではなく「チャネル」と発音するところに悲哀を感じました・・・。

さてウクライナに到着します。
待っているのは彼女ではなく、彼女の元へ案内するというドライバー。彼らもお金を要求します。そして彼女との会話をするための通訳も付くということで、その料金もあらかじめカードから引き落とされていました。通訳と電話でやり取りをしますが、テレビ局の取材が一緒だと知ると、たとえ彼女の姿は映さなくても「会いたくない」と断られました。結局、彼は通訳としか話ができずにそのままノルウェーへ帰ります。カードの引き落とし金額はどれくらいになるのだろう?と想像しました。

NRKの報道によると、ウクライナには分かっているだけでも30くらいの「ネットデートサイト」が存在しています。
さらにプロフィール写真の女性たちの8割は、既婚者やサクラなどの偽物とのこと。
ネットで男性からメールが来ると英語でやり取りをしますが、その代筆は英文学科の学生たちがバイトで行っていました。
1人で何人もの代筆をこなし、特に女性がきわどいセクシーショットを投稿するとどっとメールが増えるので、「本当に西欧の男性って単純よね」と呆れたようにコメントしている姿が印象的でした。

これはもう一大ビジネスなんだな~と感心していると、もっとニッチな業者が存在しました。
「ウクライナ女性に高額なプレゼントをあげて騙されたと知った被害者のために、そのプレゼントを取り返す業者」です。
番組ではD&Gの高価なダイヤの指輪をあげた男性が、その業者を通じて、取り返した様子が映っていました。う~ん、なんかもうこの業者もグルで、ビジネスモデルが完結しているのでは?と疑っちゃいます。

さて騙される男性だけではなく、女性もいることも、番組では紹介しています。
国際的な出会い系サイトで、あるノルウェー人女性は、自称「スコットランド人男性」に「君のためにノルウェーへ移住する」と熱烈なメールをたくさんもらいます。
会うこともないまま男性に恋するノルウェー人女性。しかしその男性は「こん睡状態になって莫大な医療費が必要になった」とか他にもいろいろな理由をつけて、送金を何度も要求。とうとう女性は預金ゼロとなり、借金するまで追い詰められてしまいます・・・。

こうした犯罪の被害者は、警察に届ける人が少ないそうです。またノルウェーではこの種の犯罪を担当する捜査官は1人しかいません。
昨年、173人の被害者から電話相談があったそうですが、これはほんの氷山の一角で、推定7万人のノルウェー人男女が被害にあっているのでは?とのことでした。海外へ送金されたお金も、莫大であろうと推定されています。行きつく先は・・・知るのがコワイですね。

前述のウクライナのネットデート業者によると、騙される側の国籍の多くはアメリカ、イギリス、ノルウェーだそうです。
大国と並んでランクインってちっとも嬉しくないですよね~。

この番組ではウクライナを紹介していましたが、ウクライナだけではなく東欧諸国には同じような業者があるそうです。
そういえば、ノルウェー連続大量テロ実行犯ブレイヴィークは、ベラルーシの女性と同じように出会い系サイトで知り合い、ベラルーシにまで行ったエピソードを思い出しました。幸いに(!)彼女はサクラではなく、ブレイヴィークの傲慢な態度などに嫌気がさして交際を断ったようですが・・・・。

フツーが難しい

フツーが難しい

需要のあるところに供給あり。この種の詐欺商法は、完全にはなくならないでしょうね。
「孤独」や「欲望」という心の隙間をついてくるビジネスですから・・・。