ノルウェー映画『1001グラム ハカリしれない愛のこと』♡

邦題って難しいですよね。「え?」と違和感をおぼえた邦題は数知れません・・・。
そんな中、ノルウェーを代表するベント・ハーメル監督の最新作の邦題はなかなか意欲的。
原題は『1001gram』ですが、邦題は『1001グラム ハカリしれない愛のこと』です。
観終わった後に「なるほど~」と膝を打つような見事な邦題だと思いました~。

その作品のほとんどが日本で公開されてきた「愛され監督」のベント・ハーメル。
監督のデビュー作『卵の番人』、『キッチン・ストーリー』、『ホルテンさんのはじめての冒険』、『クリスマスのその夜に』など、抑制されたセリフや表情のおじさんキャラが、くすっと笑わせてくれる映画が特徴です。
彼らの多くは、決まりきった日常生活を送っていますが、思えば、フツーの人の生活だって同じようなもの。
「何かいいことは起きないかな?」と願いつつも、日々は過ぎていきます。
でも無理のない展開で、ちょこっと日常生活を「脱線」=「好転」させてくれる監督の最新作を試写会で観てきました。

今回の主人公は女性です!ベント・ハーメル監督=おじさんのイメージを破る配役にまずは驚きます。
ノルウェー国立計量研究所に勤務するマリエは、青い小さな電気自動車で走る周る姿が印象的。
他の作品と同じく、マリエのセリフは少なく表情豊かとは言えません。
青い電気自動車以外にも、研究所の青い柱、病院の青い配色、青の傘、青のタオルなどなどマリエの周りは「青」で占められています。
マリエの淡々とした日常と青が、マッチしています。

BulBul Film, Pandora Film Produktion, Slot Machine © 2014

BulBul Film, Pandora Film Produktion, Slot Machine © 2014

仕事でパリに行くことになったマリエは、ある男性との出逢いがきっかけで、青の世界から色彩が豊かな世界へとゆっくり移っていきます。
それに伴い、硬かった表情が人間味のある表情へと変化していきます。
自由、愛情そして解放感に溢れたマリエ。
ベント・ハーメル監督らしい派手ではないけど、心が温まるほんのりとしたラストシーンが印象的です。

ベント・ハーメル監督の作品を見る度に思うのですが、人を笑わせるためには、おふざけよりも真面目な姿を映した方が効果的なのではないか?という点です。
本作では、みなが真面目であるがゆえに「くす」と笑えるシーンがいくつもあるので、ぜひ皆さんなりの「ツボ」を見つけてくださ~い。

・・・ここで「ノルウェー伝道師」からの『1001グラム ハカリしれない愛のこと』トリビアです!!
まず「電気自動車」。
税金もろもろの優遇や人々の環境意識の高さなどから、ノルウェーでの普及率はハンパないです~。

そして主役マリエを演じたアーネ・ダール・トルプ(Ane Dahl Torp)のお父さんは、ノルウェーを代表する言語学者Arne Torpです。
オスロ大学留学中には、Arne Torpの著書がテキストとして使われていました。また昨年、ノルウェーで開催された「翻訳者セミナー」で、Torpさんが登壇されたのですが、ユーモアあふれるプレゼンテーションで、会場を沸かせてくれました。
そんな関係もあり、アーネ・ダール・トルプの活躍ぶりを見ると、「ああ、あのお父さんの娘なのね~」とシンパシーを覚えていました。

・・・とトリビアはこのくらいにして・・・

ベント・ハーメル監督は、大げさなシーンやセリフを使わずに、人生の妙味を表現できる稀有な人ではないでしょうか?
普通の人たち、普通よりも不器用な人たちへ注ぐ監督の深い愛情を感じました。

本作は、10/31(土)よりBunkamuraル・シネマ他全国順次公開が決定しています!
ぜひスクリーンで、ベント・ハーメル監督の世界を体感してください♪

公式サイト:http://1001grams-movie.com/

BulBul Film, Pandora Film Produktion, Slot Machine © 2014

BulBul Film, Pandora Film Produktion, Slot Machine © 2014