2月末からストップしていた「オスロ絵本を訪ねる旅」の連載再開です~。もう来月にはノルウェーには行くという現実を目の当たりにし、慌てています!
ほとんどの方は、連載自体を覚えていないと思うので、過去ブログは以下をご参照ください♪
1.そもそものきっかけ
2.ユニークな書店
3.出版社訪問
4.絵本作家アトリエ訪問
以前のブログで何度か触れている「本の買い取り制度」(innkjøpsordning for litteratur)の説明がまだでした。
管轄している文化評議会(Kulturrådet)のサイトと、『文化を育むノルウェーの図書館』(吉田右子、和気尚美、マグヌスセン矢部直美著、新評論)を参考に、紹介します。
ノルウェーのような小国で出版事業と文化を守るために「国が本を一定数買い取る」制度です。1965年から開始したので、41年もの歴史がありますね。
出版社は、買い取って欲しい本を文化評議会に申請します。「商業的すぎない」「クオリティーが高い」が審査基準のようですが、審査に合格すれば以下のジャンル別に買い取ってもらうことができます。
大人向け一般文学:773部(内訳:紙書籍703、電子書籍70)タイトル数は年によって異なる。2012年は200タイトルが買い取り
子ども・YA一般文学:1550部(内訳:紙書籍1480、電子書籍70)2012年は100タイトルが買い取り
翻訳文学:タイトル数130、542部 (内訳:紙書籍502、電子書籍40)
フィクション:773部(内訳:紙書籍703、電子書籍70)2012年は60タイトルが買い取り
子ども向けフィクション:タイトル数25、1480部
漫画:タイトル数15まで、1480部または703部
こうして買い取られた本は、公共・学校図書館に配布されていきます。
ノルウェーの人口520万人。
例えば、絵本で「買い取り制度」にパスしたら、1550部が保証されます。人口が30倍の日本の出版界でも、初版部数はどんどん落ち込み、2000部、3000部なども珍しくありません。そう考えれば、いかに「大きい数字」か想像できますか?
改めて、「買い取り制度」の恩恵について考えてみましょう。当事者の言葉から引用します。
「私の描く絵本のテーマは難しいので、買い取り制度のおかげで本が出版できています。」(絵本作家グロー・ダーレさん)
「買い取り制度がなければ、出版社を始めようとは思わなかった。」(Magikon社長のスヴァインさん)
「買い取り制度のおかげで、フリーランスでも安心して仕事ができる。」(絵本作家マーリ・カンスタ・ヨンセンさん)
確かにグロー・ダーレさんの絵本は、DV、離婚で傷つく子ども、ネグレクトなど「社会的」な問題を取り上げたものが多く、決して「クリスマスのプレゼント向き」ではありません。しかしその「クオリティーの高さ」から、買い取り制度での部数が約束されているので、出版社も本を出すことに前向きです。
Magikon社のスヴァインさんも、「ひとり出版社」であれだけ活躍できるのは「クオリティー」で妥協しないせいでしょう。
マーリさんの言葉も同じフリーランス業として「フリーランスにとってはありがたい制度ですね!」と羨ましい限りです~。
もちろん「クオリティーの高さ」が大前提ですが、「売れる本」だけではない多様な本の出版を後押ししてくれる制度と言えるのかな~と考えました。
実は昨年のオスロでは「買い取り制度」の恩恵を強調された人が他にもいました。
いつになるか分かりませんが、次回はそちらに触れるつもりでーす!
つづく(粘着!)