ノルウェーの秋の食べ物

日本で8月といえば「夏、まっさかり」。
ノルウェーで”august”(アウグストゥ)=8月は新学期が始まるシーズン。”høstsemester“=「秋学期」と呼ばれることからも、「ああ、夏は終わって秋になるのね~」という気分です。

秋の食べ物・・・と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、fårikål(フォリコール)です。
får(羊)+ i(~に)+ kål(キャベツ)と分かりやすい料理の名前ですが、大きな鍋、大量の羊肉、キャベツ、塩、こしょう、水だけでできるシンプルな料理。
こちらのレシピによると2時間くらい煮込むと書いてありますが、それぞれのお宅のレシピがあるだろうな、と想像します。

2010年、秋にオスロへ遊びに行ったとき、いつもお世話になっているアウドさんが、「fårikålを作る!」と張り切ってました。
で、こんな感じに煮込み終わった鍋を水で冷やし・・・

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お皿に盛って、いただきまーす!

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日本ではあまり羊を食べないのですが、このフォリコールは大好物です!
北欧やノルウェーの料理は、よく言えばシンプル、ありたいていに言えば「地味」なものが多い気がしますが・・・でも素材の良さに助けられているのでしょうね。
このシンプル尽くしのお料理は、何度もおかわりしつつ「ああ、秋になったんだなぁ~」としみじみ。

煮込みやスープ料理の付け合せで、一緒に出てくるのは・・・まずはこちらの袋に見覚えはありますか?

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袋に書かれた文字の”flatbrød“(フラトブロー)が正解です~。flat「平らな」+brød「パン」=「平らなパン」ですが中身はどんな感じでしょう?
ごそごそときちんと整理されていない写真フォルダーを探したのですが、見つかりませーん!!
なので、こちらのレシピサイトから、実物を見てくださーい。

flatbrødはノルウェー語テキストにも載っているのですが、説明が難しいんです。
全然味のないパリパリとしたクラッカー。パンよりクラッカーの表現が合っているでしょう。

Norge -portrett av en nasjon」という本によれば、flatbrødがノルウェーで作られ始めたのは13、14世紀頃。
そうなんです、結構な歴史ある食べ物なんですね。brød(パン)といえば、こちらのflatbrødを指していた時代が長く続いていたようです。

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この写真は前述の本からパチリと撮りました。
1912年の写真だそうですが、flatbrødを作っている様子がうかがえます。

まだまだ秋の気配などみじんも感じない日本ですが、ノルウェーの秋を少し感じてくださいね~♪

サバの味~ノルウェーの夏~

さばの生姜煮を準備をしていた時、10年くらい前にオスロで食べた「サバ」を思い出しました!

sommersmak(ソンメルスマーク)=夏の味というと、ノルウェーではmakrell(マクレル)サバが旬です。
2005年の初夏、オスロのアウドさんのお宅に居候した際のこと。「サバを買ってきたわよ!」と嬉しそうに台所でサバをさばき始めたのですが、ノルウェーのサバは「大きい、脂がノリノリ!」でさばくのもツルツルしていて大変そう。

どう調理するのかな~と横で手伝いつつ眺めていると、さばいたサバに小麦粉や塩、こしょうをしてフライパンで焼いていきます。
いい香り・・・!
サバのムニエルって日本ではあまりメジャーじゃないかも?煮つけ料理の方が多いですよね。

サバのムニエル、ゆでたジャガイモ、そしてキュウリのサラダの「黄金の組み合わせ」。
キュウリのサラダ=agurksalatは、すごーく簡単なレシピです。
チーズスライサーかピーラーで薄切りにしたキュウリ、水、酢、塩、砂糖をまぜたものに浮かべるもの。
レシピやイメージ写真はこちらのサイトをご参照くださいね~。サイトの方ではサーモンの付け合せに使われています。
「料理に砂糖を使うのは日本食くらい」云々みたいな言説を聞いたことがあるのですが、このキュウリのサラダでは砂糖を使ってますね~。

サバのムニエルはおいしかったなぁ。
今でも覚えています。ゆでたじゃがいも、きゅうりのサラダとの組み合わせも最高!
シンプルでおいしいのは素材がいいから、を実感した瞬間でした。

・・・とここまで書いて、写真を探したら・・・がーん、キュウリのサラダではなくレタスが付け合せでした・・・ひ~、思い出まで歪んでいる・・・
ま、キュウリのサラダにしてもレタスにしても、ともかくサバがおいしかったということでご容赦を~。

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オスロのグラフィティ!

憧れのヨーロッパ。
歴史ある街並みを歩くと、「ん???」と目がそこに集中する先は。。。タギングです。
ノルウェー語でもtaggingというのですが、スプレーで本人のサインやメッセージが描かれているものですね。
そんなに歴史ある街並みではないオスロにも、タギングはちょこちょこあります。

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せっかくの美しい建物が台無し~というタギングですが、昨年、オスロのグルーネルロッカ地区でたくさんの「グラフィティ」を見かけました。
タギングよりは、「アート」を感じる気がするのですけど。まずは、トラムの停車場近くにあったのは・・・

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このモチーフが何であるか分かった方は、ノルウェー通!!そうです、ノルウェーを代表するチョコレート会社FreiaMelkesjolaladeを表現したものですね。
こんな大作をよく描いたな~と感心したのですが、どうも違法だそうです・・・。ということは夜中にこっそり描いたのですか?すごいなぁ。

他にもグルーネルロッカを歩いていると、たくさんのグラフィティに遭遇できます。心霊スポットならぬグラフィティスポットですね~。

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軒並み「大作」のオンパレードです。
ほぼ違法行為だと思うので、描いた人は夜中にこっそり行為に及んだと思うのですが、グラフィティにしてもタギングにしても、自分のサインを残すなど、鹿島茂さんの言葉を借りれば「ドーダ!!」の境地なのかな・・・と想像します。アートスクールの近くにグラフィティが多いことから、美大生が描いたのか?想像はふくらみます。

室内にたくさんの市場が並んでいるMathallen(マートハーレン)近くにも、グラフィティを発見!

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グラフィティは、そもそもヒップホップカルチャーとともに人気となったもので「エッジが利いている」というイメージですが、このグラフィティはちょっと流派が違うような・・・?「抒情」を感じまーす。
他にも異なる作風として・・・

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「描き込み感」があまり感じられません・・・「素朴派」?

ちょっとネットでグラフィティのことを調べてみたら「みんなが合法的に描ける壁」が存在するようです。日本もそうしたところがありますよね~。
冒頭のタギングに話を戻すと、ノルウェーで最初のタギングは第2次世界大戦中、抵抗運動の一環として描かれたようです。
爆発的に人気が高まったのは、80年代のヒップホップカルチャーの波がノルウェーにも上陸してからだそうです。アーカイブオスロのサイトの記事に載っていました

この記事にはオスロ美術館がグラフィティとタギングについて、町歩きをしながら、専門家の解説をしてもらうツアーを主催した様子がレポートされていますが、私もそういうツアーがあればぜひ参加したい!と思っちゃいました~。

これらに触発されて、私も「夜露死苦!」とかタギングしてみるか・・・なんて絶対しません!
捕まって高い罰金払わさるのがオチです。鑑賞に専念しましょうね~。

オスロの団地

先日、日本の新聞で「今、団地に注目」という記事を読みました。
団地を舞台にした映画や文学、マンガが増えている、と。また昔の団地をリノベーションする例もあるようですね。
ノルウェーの「団地」は?と考えてみたところ、まず思い浮かんだのが、drabantby(ドラバントビー)という単語です。
日本語にすると「ベッドタウン」「郊外の町」といった意味でしょうか。

第二次世界大戦後、オスロへたくさんの人々が引っ越してきました。地方では仕事が見つからないからです。
結果、住宅不足が深刻となり、今までなかったタイプの町づくりが進められます。
1950年代からオスロ東南部に、集合住宅=団地が次々と建設され、それらはdrabantbyと呼ばれるようになりました。

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ノルウェー語の語学書やネットで調べるとLambertseter(ランベルトセーテル)がオスロで最初のdrabantbyと定義されているようです。
”Stein på stein”という語学書には、一人の老人が昔を振り返るという体裁で、Lambertseterについて語っています。
「戦後、オスロへ移住し、同じ工場で働く女性と結婚したがひどい住宅不足だった。中心地の一部屋しかないアパートに住んでいたが、Lambertseterに引っ越すことができ、感動した。広く明るい部屋、キッチンとバスルームは専用、セントラルヒーティングまであったんだ!」

テキストからの写真。洗濯機を嬉しそうに見る家族。

テキストからの写真。洗濯機を嬉しそうに見る家族。

当時のLambertseterの様子は、Youtubeになぜかありました。インタビュー中のノルウェー語だと「若い家族が住めるような3部屋、4部屋の住宅と手ごろな価格帯を設定。住宅銀行と協力。当初、お店は一つしかなくて、みんなボランティアで周囲を整備していった。交通の便もほぼなかった」とありますね。面白いのでリンクを貼ります。https://www.youtube.com/watch?v=FfFXGxMb1NM

ちなみに最新のLambertseterの集合住宅広告を見たら、すごーくモダンになっていてびっくりです!
https://www.obos.no/symraterrasse#project

もうちょっとdrabantbyの歴史をネットで探すと1つの興味深い記事がありました(Dagsavisen、2015年11月25日)。
多くのdrabantbyの設計を手がけたのは、Frode Rinnan(フローデ・リナン)という建築家だったそうですが、彼はdrabantbyだけではなく、1952年オスロ五輪の設計にも数多く関わっています。ホルメンコーレンのジャンプ台やビスレットの競技場など・・・。
そしてRinnanは、drabantbyの集合住宅を「3階建までにする」という信念があったそうです。
理由は「妊婦にとって階段をたくさん上るのは大変だから」というもので、その時代にすでにそうした配慮があったのだな~と感心。
ただ朝鮮戦争の勃発後、資材が高騰してしまい、OBOS(オスロ住宅供給センター)が「4階建ての方が安く済む」とRinnanの反対を押し切って4階建住宅を建設したそうです。
他にもRinnanは、drabantbyは「緑豊かで、遊べる場所があること」を重視したとのこと。何よりも住民たちが快適に暮らせることを目指したようです。

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今でもLambertseterはありますし、他にもいろいろなdrabantbyが残っています。
あまり観光客は行かないエリアですよね。
私自身、中に入ったことは一度しかありません。元生徒さんが住んでいる団地は、築50年近くかと思いますが、予想以上に中がきれいで間取りも広かったです!(リフォームはされたようです)
場所にもよりますが、バスや地下鉄は通り、スーパーや医療センター、銀行や子どもたちの公園が揃っていて、そのdrabantby内だけで生活できるエリアも存在します。

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私が「ノルウェーらしい」と感じたのは、ちゃんとテーブルや椅子が置けるバルコニーがあることでしょうか。これは「マストアイテム」なのかもしれませんね。

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観光だけだと行かないエリアかと思いますが、オスロの町の発展を語る上で欠かせないのがdrabantbyだと思います!
日本の団地との比較も面白そうですね~。

補足:ヘルシンキとエストニアのタリンに旅行した際、いかにも「無機質な感じの団地群」を見て驚きました。ロシアに近い方がそういう建物になるのでしょうか??

シャイもしくは薄い人

ノルウェー人はシャイですが・・・」という前置きをよく耳にしますし、私も使っています。
シャイ・・・ノルウェー人以外の外国人との交友は限られているので、よくわからないのですが、ずばり“Sjenanse”「シャイ、内気」というタイトルの絵本があります(Anna Fiske著)。

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この絵本の表紙を見せると、生徒さんたちは「ちょっとコワいです」と反応しちゃいますね~。
確かに、シャイや内気よりも「怨念」とか「怨恨」とかよりディープなタイトルを連想してしまいます。

ノルウェー人の「シャイ」のイメージがこういう感じなのかは、ちょっと置いておいて、改めて「ノルウェー人シャイ説」を考えてみたいと思います。

シャイと言えばシャイ。
だけど、「感情の表現が薄い」(注:髪の毛の量に非ず)という表現の方が近いかもしれないな~と思っています。
特に若い女の子同士はハグをしょっちゅうしていますが、ヨーロッパの他の国のように頬にキスまではしないですね~。

J-waveの滝川クリステルがナビゲーターをしている日曜の番組では、ブラジルや南米の音楽を紹介しています。
その歌詞をよくクリステルさんが朗読してくれるのですが、「愛がないと生きている意味がない~」のオンパレード。
ラテン民族の「濃さ」を感じます。

さらに、ペルシャ語をお仕事にされている生徒さんから「イラン人は性格が濃くて、なのでノルウェーの薄さに癒されます」と聞くと、「なるほど~!」と納得しちゃいます。

感情がないわけではないんです、もちろん。
だけど、そんなに強い言葉や表現方法をしないと思うんですよね~。
寒い国で生きているせいか、感情表現用のエネルギー放出を抑えている・・・という学説は存在しませんが。

ただ、「薄い人」って得だな~と感じます。
例えば、そんなシャイな人からちょっと優しい言葉や、愛情を示してもらうと、より効果や信頼性があると思いませんか?
あと「薄い人」たちなので、うざったいと感じることはほぼ皆無。楽チンです~。

「薄い人」が好きな人には、ノルウェーは快適だと思います♪
塩系の次は「薄味系」が流行る!!(←影響力ゼロ。。。)