佐賀・ノルウェー友好協会での出逢い

九州には、たくさんのノルウェーとの友好協会があります。
福岡、長崎、鹿児島、熊本、そして佐賀。

佐賀・ノルウェー友好協会の事務局である松尾建設さんから、講演依頼のメールを頂いたときは「わ、わたしでいいんですか?」と驚きました~。
でも加齢による図々しさから「ぜひ!」と引き受けて、すごく久しぶりに九州の地に降りた次第です。

佐賀市内のホテル・ニューオータニに宿泊しました。会場は同じ場所です。
部屋で、「一体、どんな方々が来るのかしらん?」と思いを馳せつつ、緊張感が増してきました。
時間になって会場へ導かれると・・・。

看板

そこは、「重厚」という言葉がぴったりの空気でした。
ダークスーツの紳士たちがずらり。女性はわずかです。

「ノルウェーについて学ぶサロン」や「北欧ぷちとり」では圧倒的に、女性の参加者が多いです。
今まで何度か経験した大使館のイベントや自治体主催の講演やイベントでも、ここまで「男性ばかり」という環境はありませんでした。

。。。ということで、さらに緊張MAX!
おばさんだけど童顔のせいで「小娘」のような気分になるって図々しいでしょうか?
パワーポイントを使って(←Yoko管理人がレイアウト仕上げしてくれた)で講演をスタートです。

小心者の私は、何とか「重厚」オーラを軽やかにしようと、ごく控えめな冗談などを織り込んだつもりでしたが・・・会場内はし~んとした時間が過ぎていきます。
そうそう、書き忘れましたが、テーマは「ノルウェーの家族・子育て支援」などを中心にお話ししました。
労働時間や様々な育児支援の紹介しながら、「ではどうやってノルウェーに近づけるか?」という問題提起をすることにしました。

もちろん税負担や人口の違いもありますが、なんといっても
・「不便さをみんなで共有できるか?」
・「他人に寛容でいられるか?」
が私の思いつくノルウェー人と日本人の違いです。

例えば、ノルウェーでは、ほぼ全てのお店が日曜は営業していません。
キリスト教由来による法律ですが、今では「みんなが休める日があった方がいいから」という理由で支持されています。
こんな一例からも分かるように、日本のような「サービス200%!」のような国ではない、と断言できます。
誰かがみんなの犠牲になるのではなく、国民全員で「不便さを共有している」という精神、とでも言えましょうか。

また、長期の育児休暇を取っても「職場に迷惑がかかる」という発想にならないのがノルウェー流。
長い夏休み取得も、有給休暇消化も「当然の権利」です。
講演では触れませんでしたが、いくらノルウェーと同じ育児休暇制度などを導入しても、日本人のメンタリティーがついていけず、制度のみ形骸化するのでは?と悲観的に考えてしまうのが本音なのですが・・・。

講演の最後では、「ノルウェーの今」というテーマで、「増え続ける移民や難民をいかにノルウェー社会に融合させていくか」という古くて新しい問題に触れました。
その際に、ウトヤ島のテロにも言及したのですが・・・後に偶然に驚くことになります。

しーんとしたまま私の講演は終わりました。今度は、広いパーティ会場で懇親会が始まりました。
紳士の皆さまに対し、近寄りがたさを感じたのですが、みなさんは慈悲の心で優しく接してくれました~。
ご挨拶をすると、地元の名士の方ばかり。名刺を頂くたびに「ひょえ~」とのけぞる気分を必死で抑えます。

乾杯

そして個々にお話しをうかがっていると、ノルウェーについて造詣が深い方が多いこと!
ノルウェー産のサバは、脂が強くて、当初は日本人の好みに合わなかったことを教えて頂きました~。今では、大きなシェアを占めているとのこと。
また、グリーグが好きでベルゲンに行かれた方もいらっしゃいましたし、別の病院理事長からも、ノルウェーの高齢化対策について、鋭い質問を受けました。ふう~。

ウトヤ島のテロと関連しての偶然ですが、友好協会の有志の方々は2011年7月に渡ノルされていて、あのテロは帰国後の数日後に起きたそうです。
帰国して、楽しくノルウェーの旅の思い出を語っていたら、まるで冷や水を浴びせられたようなあの事件・・・本当に驚いたとおっしゃってました。
ですので、副会長の上村先生(病院理事長)は、「ノルウェーの移民問題が気になっていたので、講演でお話ししてくださって良かった」とおっしゃってくれて、嬉しかったです。

数少ない女性参加者の方たちとも、お話しさせて頂きました。
ノルウェーに行かれて、平日の昼間からベビーカーを引いている男性たちを目撃して、驚かれたそうです。
確かに!私はもう見慣れた光景になっていますが、初めての方は驚きますよね~。やはり「百聞は一見にしかず」です。
みなさん口を揃えて、「日本でも、自分の子どもの世代は変わってきている」とおっしゃっていました。
「息子はとてもお嫁さんに親切で、家事もやるんですよ。うちの夫の世代はダメだけど」と笑い合います。
そうなんです、日本の男性だって育児や家族との時間を大切にしたいですよね。
それをどう可能にするか、日本とノルウェーのいいところを組み合わせて、できるところから地道に実現へ向けていきたいものです。

子育て

東京にいると、たくさんの北欧イベントがあり、情報は向こうからやってくる感があります。
しかし、佐賀の友好協会の皆さんは、講演の時こそ静かでしたが、ノルウェーという国を知ろうとする前向きな姿勢に、改めて初心を思い出させてくれました。

お土産

頂いたお土産!

こんな貴重な機会を与えてくださった佐賀・ノルウェー友好協会さんに感謝です!
特に、事務局の松尾建設の皆さまには大変、お世話になりました。
佐賀・ノルウェー友好協会のますますのご発展をお祈り申し上げます♪

増加するノルウェー人留学生たち

一時に比べて、日本で勉強するノルウェー人留学生は増えている、と感じます。
これは別に日本だけに限った傾向ではなく、「世界のいろいろなところへ」飛び出すノルウェー人学生が増えているそうです。
なんとその数、10人に1人のノルウェー人学生が留学しているとか。
そうして留学したノルウェー人の「その後」の傾向について、取り上げた記事がありました。
すごく納得できる内容なので、ご紹介したいと思います(Aftenposten、2014年4月13日)。

ANSAとは、「Association of Norwegian Students abroad」の略です。そこの代表、Vibeke(ヴィーベーケ)さんは、今はオスロにいますが、オーストラリアに留学経験があります。
「ノルウェーに一時帰国もしないで、オーストラリアで1年勉強した後、母に”私はここに残る”って断言したんです。」
温暖な気候やたくさんの魅力的な自然のあるシドニーは、Vibekeのように交換留学で1年過ごした後でも、十分に滞在したいと思える場所でした。

Vibekeは小さな時から、「ノルウェー以外の国で暮らしてみたい」と夢を持っていました。旅行だけでは物足りなかったのです。
「最初の年は、いろいろなものがバラ色に写るのでしょうね。海外に住むということは、一種の”恋愛”みたいなものなんです。」

その「恋愛期」を過ぎて、人は現実と向き合います。たとえオーストラリアは素晴らしい場所でも、仕事は?ビザは?
「私はオーストラリアで仕事を見つけようと真剣に考えました。しかし、オーストラリアではノルウェーより倍以上働かなくてはならず、しかも賃金は半分です。ビザの問題も容易ではありません。」

結局、Vibekeはノルウェーに戻る方へ気持ちが動きました。こうした決断は、他のノルウェー人留学生でも多くみられる傾向です。
留学先で試験が終了する3年後を過ぎても、その国に残るノルウェー人は20%以下という調査結果が証明しています。
同じ北欧のフィランド人留学生は、43%も留学先に残るのと対照的ですね。

しかし同時に面白い事実も分かっています。
ノルウェー人留学生は、留学中はその国に残り、仕事も見つけるつもりと答える方が多数派です。
ではなぜ、ノルウェー人留学生の多くは母国へ戻る選択をするのでしょうか?
NIFUという北欧のイノベーション、研究、教育に関する調査機関のWiers-Jensen(ヴィーエシュ・イェンセン)は、こう解説します。

「まず第一に、ノルウェーは他の欧州諸国と比べ、労働環境がとてもいいです。また家族を築くにあたり、十分な福祉制度が整っているのも魅力でしょう。」
保育園の充実、短い労働時間、仕事とプライベートライフの程よいバランスが、若い人をノルウェーへ再び引き寄せるのでしょうね。

他にも、ノルウェー学生たちの留学のハードルの低さ、も指摘されています。
返済不要な奨学金、また学生ローンを借りても、「奨学金」に換算される部分が多く、他国の留学生に比べ、「大枚はたいて留学する」必要はありません。
なので、「ノルウェー人留学生はどこにでもいる」という現象が起きているそうですよ!

Fuglen

ノルウェー人のたまり場

ちなみに私の知っている在日ノルウェー人留学生たちと話していると、その将来に対する「柔軟な考え方」に驚くことしばしばです。
「今は日本にいるけど、そのあとはロンドンに行くかもしれないし、働くのはどこかまだ決められないね」
「日本で仕事見つけたから働くけど、起業もしたいし、子どもが生まれたら、やっぱりノルウェーの方が子育てしやすいから帰りたいな」

こんな風に「やり直しがいくらでもきいて、選択肢の多い」ノルウェー人がうらやましいですね~。

「世界一快適な刑務所」の図書館

日本のバラエティー番組でも、シリアスな報道番組でも「ノルウェーの刑務所がいかに受刑者に快適な空間であるか」を伝えたことが度々ありました。
私はノルウェー留学中も日本でも、ノルウェーの刑務所をテレビで観たことがありましたが、「刑務所に入るんだったら、ノルウェー!」と思ったほどです。正直、オスロの学生寮より快適そうに映りました。
最近届いた新聞に、「刑務所図書館」について取り上げた記事があったのですが、とても興味深かったので、ご紹介しましょう(Aftenposten,2014年3月29日)。

まず、ノルウェーの「刑務所図書館」の利用率は非常に高いそうです。
図書館には専門の司書もいますが、記事ではハンガリー人の受刑者も紹介されていて、彼はパートタイムで図書館で働いているそうです。
「ある受刑者が”Prison Break”のDVDを借りたいと言ってきたけど、もっと最新の面白いシリーズがあると言って、”Breaking Bad”を勧めたんだ。」

海外ドラマに疎い私は、「Breaking Bad」をGoogle先生に尋ねたところ、Wikiで紹介されていました。
あらすじ読むと、これは犯罪ものではないですか!こういうジャンルって受刑者たちが観ていいのかしらん?と思ったのですが・・・

記事を読み進めていくと、「人気貸出本リスト」が載っています。
人気ジャンルは圧倒的に「ミステリ小説」です。
日本でも翻訳され、世界でも売れっ子ミステリ作家になったJo Nesbø(日本語表記:ジョー・ネスボ)は、複数の刑務所でランクイン!
さらに、「ノルウェーミステリの女王」ことKarin Fossum(カーリン・フォッスム)やスウェーデンのHenning Mankell(ヘニング・マンケル)なども人気があります。
他には、最新のノルウェー純文学もランクインしていますが、トロンハイム刑務所では「ノルウェー語・ロシア語辞書」と「コーラン」がランクインしているので、外国人の受刑者が多いことが推測されます。

専門司書のダーレンさんは、コメントします。
「彼らがミステリに興味を持つのは自然なことですよ。たとえ私は、他の本を勧めてもね。」
また元ジャーナリストで、「いかに人が犯罪に手を染めるか」を描いた本の著者ウストリさん(彼自身の本も刑務所で人気)もこう分析します。
「受刑者たちがミステリや類似のジャンルに興味を持つのは、理にかなっています。私の本は特に犯罪者側の視点で描いているので、より真剣に読まれるのではないでしょうか。」

図書館

町の図書館です

図書館には、本だけではなくDVDやCDも借りることができます。
DVDは前述の「Breaking Bad」が複数の刑務所で人気です。他にも、「Killing me softly」というDVDが人気なのですが、やはり分からなかったのでwikiで調べたら・・・
おお、あの「覇王別姫」の監督の作品だったんですね~。でも詳しく読むと・・・激しい性描写??でもあの監督ですから芸術作品なんですよね、きっと。

音楽について。
オスロ刑務所の一番人気は、「レ・ミゼラブル」でした。なんかいろいろな意味で深読みしちゃうんですけど・・・。
トロンハイム刑務所はメタル好きの受刑者が多いのでしょうか、「メタリカ」のCDが複数ランクインしています。
あと、「Swedish House Mafia」というバンドも人気がありますね~。「マフィア?」と反応しちゃいましたが、やはりWikiで調べると世界的に人気とのことで、深読みしすぎました・・・。
ドコモのCMにまで出ている「One Direction」とかは、ランクに入っていないので納得です。

このブログを書くにあたり、日本の刑務所図書館についてネットで調べてみたのですが、イマイチ現状が分からず・・・。個別の差し入れが多いということは分かりました。
いずれにしても、刑務所のあり方から、その国の一端が覗けるかも、と思える記事でした。

受信料、払ってね

ノルウェー国営放送(NRK)は、テレビチャンネルを3つも持ち、ラジオ放送もた~くさんあるノルウェーの大きなメディアです。
「国営放送」というくらいですから、CMはありません。
「みなさまの受信料」で収入を賄っています。その割合は96%とかなりの高い数字ですね。

Aftenposten紙(2014年3月23日)に、この「受信料」に関する記事がありました。
2013年、1983000人が受信料を支払っています(ノルウェーの人口は約510万)。
「どの国にもいるんだなぁ」と感心したのは、「受信料を払わない人」。
10世帯のうち1世帯の割合で、「未払い」をしているとか。そのため、本来、得られる利益が減少してしまいます。

私がノルウェーで訪れた家も、そうした「受信料未払い」を貫いてましたね。
外の窓から見えない低い位置にテレビを置いて、「テレビ持ってません」と言い張ってました・・・。なんか既視感が・・・。

しかしノルウェー人は、こと「受信料支払い」に関しては優等生なのだそうです!
スウェーデンでは、未払いの割合は14-15%、
そして受信料制度を昨年、撤廃したフィンランドはなんと30%だったとか!(ムーミンが泣くよ・・・って関係ない?)

NRKはさらに海外の事例を調べました。
英国BBCでは、受信料の未払い=犯罪行為だそうです。未払い率は5%だそうですが、なんと罪に問われて収監された例もあるとか・・・。
NRKはそこまでの強い態度は考えていないそうです。刑務所にテレビありますしね~。

と、NRKは未払い問題に悩んでいるのか。と思いきや実は、受信料の支払い額自体は増えているとか。
ノルウェーでは、テレビを買った店がNRKに「通報する」システムになっています。
そして薄型テレビの販売が好調→受信料増えるという図式みたいですね。

ちなみにノルウェーでテレビを持ってない世帯はわずか3%。あんまり娯楽ないから、テレビ依存度は日本より高い気がします。
で、気になるNRKの受信料の額は・・・・年間2729.16クローネですから、1NOK=17円で計算すると約46000円!
ひえ~、なんでも高いノルウェー・・・!
 

撮影クルー

撮影現場!

どうりで、私のノルウェー人の友達が、「○○オリンピックにNRKはすごい数のスタッフを連れて行くのよ。まったく受信料の無駄遣い!」と怒っていたわけです。

今、ノルウェー以外の国でも評判の「スローテレビ」。
この制作も、精神的なゆとりももちろん、金銭的なゆとりがあるからできるんですね~。

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サイトの「インタビュー」コーナーを久々に更新しました!ピアニストの安保美希さんです!
ノルウェーの留学話などいろいろ伺いました。ぜひご一読下さいね♪

http://norwayyumenet.noor.jp/hp/frameintervju.htm