講演会『北欧留学案内』北欧留学案内イメージ


北欧留学情報センター(ビネバル出版内)主催の講演会が、2002年1月20日(日)、飯田橋の東京瓦会館で行われました。講師は当サイトの発行責任者であるAokiです。会場には、Aokiが昨年夏に出版した「私のノルウェー留学」を読んで下さった方、「夢ネット」をご覧になって下さっている方などが集まり、講演終了後は、懇親会も催し、楽しい時間を過ごしました。Tusen takk!
さらに、イプセンの「海の夫人」を上演される劇団民藝の方も、講演会と懇親会にお付き合い下さいました。Takk takk!



講演サマリー


1.はじめに

今日は、貴重なお休みの日を犠牲にして、講演会にお集まりいただき、ありがとうございます。
ノルウェー人だったら日曜に講演会なんてやらないでしょうし、やっても人は来てくれないでしょう。
また今日は、わざわざ兵庫から来てくださった方もいる、ということで恐縮しております。というのも、私の講演会は、「つまらない」のが定評でして..以前の北欧留学に関する講演会でも、講演を聞いたお客さんから、「Aokiさんは、話すより書いたものの方が面白いね」とけなされ、相当落ちこみました。
それでも図々しいんで、講演依頼があれば引き受けて、同じ過ちを繰り返してます。


2.本の紹介講演会の様子

さて、今日の講演会のタイトルは「北欧留学案内」となっています。主に、私が昨年夏、出版しました「私のノルウェー留学」の紹介を交えながら、向こうでの留学生活についてお話ししたいと思います。

ここにいらっしゃる皆さんの中で、すでにこの本をお読みになった方はいらっしゃるでしょうか?(注:おずおずと手を挙げる人が数人ほど)。読んでいない方のために、本の内容をざっと紹介します。
まずごちゃごちゃした表紙からですが、よーーく目を凝らしてご覧になると、たくさんの文字が書かれているのがわかりますか?そのかたわらには、赤字もありますね。
ノルウェー語がわかる方には、わかってしまうんですけど、これは、私がオスロで書いたレポートの下書きです。タイトルは「男女の言葉使いの違い」でして、いっぱい書いてあるのはいいんですけど、間違いもそれだけ多いので、赤も多いのが恥ずかしいですね。直してくれたのは、本書に出てくるノルウェー人の友達です。

このように、間違いだらけのレポートを本の顔である表紙にしてしまうのは、普通、恥ずかしくてできないと思うのですが、これにはちゃんとした意図がありまして...。本の中にくどいほど、ノルウェー語を習得する苦労話を書きましたが、この下書きを見ていただけたら、私がノルウェー語と格闘した様子が垣間見られるかな、と考えた次第です。

裏表紙のキャプションは、編集の方が考えてくれました。その中に、「青春の一時期をノルウェー語学習に費やした」云々とありますが、これは、本を出す場合に「愛」とか「青春」という言葉を入れれば、売上がUPするという出版界の法則があるそうで、それに従ったそうです。あまりこの本をお求めになる方が、このキャプションに注目しているとは思えないんですけどね....(苦笑)。

「私のノルウェー留学」は、あわせて4回の長期と短期留学の留学までの準備とプロセス、実際に行ってからの生活、授業や試験の体験、また戻ってきてからの日本での生活や仕事の様子を、クロニカルにつづりました。
巻末には、ノルウェーの大学や短大のリストやサマースクールの情報、奨学金制度やビザに関する情報、さらに文中にノルウェー人の作家やミュージシャンが出てきますが、なじみのない方が多いと思ったので簡単な解説をつけました。

こうした留学情報以外に、私が書きたいと思ったのは、「神秘のベールにつつまれたノルウェー人の実像」(!!)です。私が実際に体験したエピソードを通じて、その大きなテーマに近付きたいと思いました。
もちろん、私の行動範囲はごく狭いものですし、安易なレッテル張りは良くありません。あくまでも私の印象に過ぎませんので、「美しいノルウェー人のイメージがこわれた」と気を悪くしないで下さい。すぐに返事をくれて、料理も上手で、洗練されたノルウェー人だってたくさんいますから!


3.執筆秘話?

次にこの「私のノルウェー留学」執筆秘話をお話ししましょう。
最初に、「ノルウェーの留学話」を書いてみないか?とビネバルの山中さんに依頼を受けたのは、2000年の10月頃でした。以前、山中さんは「女性40代からの北欧留学」という本を出版されていて、もっと新しい情報を載せた留学本を出したいと計画されていたそうです。

当初の計画では、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク3カ国の留学情報を1冊にまとめようということで、私への原稿依頼も「60枚くらい」でした。
当時、オスロ大学からの留学を終えて、日本に帰ってきたのはいいけれど、相変わらずの「職なし」状態だったので、はりきって原稿書きに取り組んだことを覚えています。しかし、大体の構成を考えて、書き出してから問題が起こりました...。実は留学中、私は日記とか記録とかつけていなかったので、記憶があいまいになってしまった部分があったのです。
少しづつ書き出したのはいいけれど、書くうちに「あ、そういえば、こんなこともあった」「あ、あのことも書かなくちゃ」と書き足すうちに、当初の60枚を軽く越えてしまい、書きながら「どうしよう〜」と悩み続けたのですが、「まあ、編集は山中さんにやってもらえばいいや」と開き直って、書き進めました。

先ほど、日記や記録はつけていなかったと言いましたが、授業中もらったプリント類やテスト用紙、ファイル、たくさんの写真などは、まだ保管していました。資料を探しながら、自分が書いたエッセイを読みなおして笑ってしまったりなど、すっかり思い出にひたってしまい、閉め切りを大幅に遅れて、2001年になってから、重くなった原稿を山中さんにお渡しした次第です。

「つまらなくてなが〜い」原稿ほど、読まされるほうは災難です。
山中さんに原稿を預けている間、どういう反応が返ってくるかどきどきしながら待ってました。面白くない、と言われてしまうこともこわかったのですが、「なんでこんなにたくさん書いちゃったの?」と怒られたら、という懸念もありました。
ですけど、山中さんから「面白いからこのまま1冊の本にしちゃおう」とあっさり言われ、ほっとしました。嬉しさ半分、自分の原稿だけで本にしちゃうと責任が重くなり、「本当に大丈夫なのかな?」と、新たな心配半分でした。

その後、原稿の直しや書き足しなど編集作業を続け、おおよそ、全体の見通しはついたのですが、肝心のタイトルがなかなか決まりません。
ホームページの掲示板に「タイトル募集!」と応募を呼びかけましたが、景品がヤギのチーズとせこかったせいもあり、残念ながらあまり応募はありませんでした。結局、山中さんが「シンプルにいこう」と今のタイトルに落ちつきました。

本の作りで特に希望はなかったのですが、ただお願いしたことが1つ。「顔写真と年齢だけは、著者経歴に載せないで!」でした。私自身、村上春樹の顔写真を見て、「うわ、サギ!」と憤慨したことがあります。
ノルウェーやノルウェー人についてえらそーに書いているくせに、顔写真を出してしまったら、読者から、「お前に言われたくないんだよ!」と、思わぬ反発を買うかもしれません。年齢に関しては、すでにノルウェー語の業績とかがちゃんとあれば、載せても良かったのですが、年食ってる割りに何もないのが恥ずかしくて、載せないで頂きました。


4.本を書く上で心がけたこと

何と言っても「留学に関する情報」を、しつこいくらい書き連ねることでした。
大学の願書、申請までのプロセス、ビザ申請のこと、奨学金試験申請と面接の様子。さらに、持っていって役立ったもの、参考になった本、到着後のいろいろな手続きを書きました。
また、留学中の授業の様子やレポートなどの課題、プレゼンテーションや試験の内容についても詳しく書きましたが、自分が苦しんだことを詳細に書きすぎたせいか、読者の方の感想で「ずいぶん、ご苦労されたんですね〜」とか「私にはムリです」という反応があったので、「留学をお手伝いするはずの本が、逆に留学したい気持ちを萎えさせてしまったかな〜と、焦りました。

本書の前書きにも書きましたが、今はインターネットが普及し、私が最初に留学を決意した1994年頃に比べたら、各段に留学情報は手に入りやすくなりました。しかし、実際にノルウェーに留学した人はまだまだ少ないですし、留学について語る場もありませんでしたから、留学したい人にとっては、情報収集の段階で気が滅入ることがあると思います。
ですから、執筆しながら「こんなに細かいことを書く必要あるかな?」と悩んだ箇所であっても、なるべく情報量を増やしたかったので、残すようにしました。
1周年を迎えたホームページの方にメールや掲示板を通じて、留学したい人、ノルウェー人と結婚する人、様々な人からいろいろな質問をもらいましたので、そういった情報不足の現状も考慮しました。

最初にお話ししたように、本書では情報以外に「神秘のベールにつつまれたノルウェー人の実像」についても書いたつもりです。
いわば本書は、留学+アルファーで構成されているのですが、こちらの部分は、よく本にある囲い込みのコラム、ちょっと一息休憩のように、軽く読んでいただくことを心がけました。
私自身、そうした息抜き部分のコラムが好きで、例えば「地球の歩き方」を買っても、基本情報より下に載っている小さなコラムの方ばかり読みふけってしまう傾向があります。また滞在中、マクロなことよりミクロなことに、目がいってしまったことが多々ありました。オスロ大学の歴史よりも、トイレの落書きの方や、試験に来るお年寄りの試験監督の方に目を奪われてました。


5.本書で強調したかったこと

次に、本書で強調したかった点をお話ししたいと思います。

まず、「こんな私でも留学できた」という事実です。
私の経歴を見てすでに「あやしい」においをかぎつけた方もいるかと思いますが、まず大学の専攻がフランス文学。おまけにその後は、普通の
OL。で、ノルウェーに興味を持ったきっかけが、「オーロラツアー」と。これだけ聞いただけで、「行き当たりばったり」の印象は否めません。
一生懸命本の中で隠そうとしていますが、最初に留学した時にはすでに
20代後半。よくありがちな、「仕事にも良縁にも恵まれなかったOLが、留学でやりなおしを図る」というありがちな像に、当てはまります。
ただちょっと違ったのは、普通だったら英語圏に留学するはずなのに、なぜかマイナーなノルウェー。ちょっとだけ差別化をはかってみました、というところでしょうか。
さらに
2回目の長期留学の時には、経緯は触れていないけど、夫がいるらしい。結婚してから、旦那を置いて留学ってそりゃないでしょ!というツッコミごもっともです。

とよくまあ、こんないい加減な私でも、何とかなったって、実は何とかなってなかったのかもしれませんが、本当だったら隠したい恥を強調したかったのです。
これは、ノルウェーに留学したいと考えている人に「こんな人でも留学できたんだ」と、夢と希望を与えたかったからです(よっ!泣かせるね!)。

次に強調したかった点は、「留学は一人では実現できない」ということです。
情報収集からはじまって、実際の手続き、向こうでの生活など、私の場合、本当に多くの人に助けてもらうことができました。もっとも私の場合は、「人に頼りすぎ」でしたね。日本にいるノルウェー人留学生の人たちに、問い合わせの国際電話まで、かけてもらっちゃいましたから。英語の問い合わせファックスでは、全く返事が来ず、ノルウェー語でファックスしたもらったこともありました。

さらに、推薦状を手に入れるためにも、いろいろな方の手をわずらわせました。
日本で大学とか研究所に所属している人はそれほど苦労しなくても、推薦状を入手できると思いますが、私のように、フリー状態の人間は、推薦状を書いてくださる方を見つけるだけで一苦労です。
ですから、受け身ではなく、自ら書いてくれる方を探す必要がありました。奨学金申請のときは、必要書類がたくさんあって大変でしたが、講演会の通訳の仕事を通じて知り合った方に運良く、推薦状を書いていただくことができ、その時は「あ〜本当に、人との出会いを大切にしなくちゃいけない」と、キモに命じました。

ノルウェー滞在中は、やはり翻訳の仕事を通じて知り合ったノルウェー人の方に、本当にお世話になりましたし、また、ちゃっかりノルウェー語を教えた生徒さんで、オスロに赴任されている方に、ご馳走になったりと、私の「お世話になりっぱなし」話は、きりがありません。

ただ、大事なことは、ただ受け身ではなく、自分から行動を起こす必要があることです。自分は何を知りたいのか、どんな情報を求めているのか、また何をして欲しいのかを明確にしないと、相談を持ちかけられた相手も困るでしょうし、求めている助けを得られないでしょう。あまりに「待ち」の態勢だと、時として相手をいらだたせてしまうことになりかねません。

さて、次に強調したかった点は、「決してばら色の留学生活ではなかった」ということです。
ノルウェーに憧れて留学しましたが、全てがスムーズに事が運んだわけではありません。かなりくどいほど、「ノルウェー人はすぐに返事をくれない」と本の中で繰り返しましたが、これは留学したい人、向こうでこれから暮らす人、ノルウェー人と一緒に仕事をする人、みなさんに伝えたかったことなのです!!
つい
3日前ほど、ノルウェーに関するTV番組を作っている番組制作会社の人が、ノルウェーの新聞社に何度もコンタクトを取ろうとしているが、全然返事が来ないと嘆いていました。それを聞いて「あ〜また被害者が一人増えた」と、思いましたが、この手のエピソードは、いろいろな人から聞いています。
しかし、ノルウェーについて詳しくない人は、「どうして?自分が悪かったのかな?」と余計なストレスを抱えてしまいますので、本書の中で「あなたが悪いのではないんですよ、そういうものなのです」と、アドバイスしたいと思いました。

「田舎生活の不便さ」も、時としてつらいことがありました。
北欧への留学先として、フォルケホイスコーレを選ぶ人は多いと思いますが、普通、フォルケは田舎にあり、日本で便利な生活を送ってきた人には、コンビニはおろか、
1日に1回しか来ないバスとか、ほとんど公衆電話がない土地での暮らしは慣れるまで苦労するでしょう。

また、個人差があると思いますが、「すぐにノルウェー語が上手になる」ということも、残念ながら私の場合、あてはまりませんでした。行く前は、「3ヶ月くらいでまあ会話はできるようになって、英語もついでに上達するかな〜」と甘い見通しを立ててました...

思うようにノルウェー語が話せず、辛かった最初のころ、「あ〜、ただ“生きること”と“生活する”ことって別物なんだ」と悟りました。これはどういう意味かというと、別に言葉ができなくても外国で暮らせます。食べ物だってスーパーで買えば、言葉はいりませんし、生きていけます。
ただもっと、その国の社会と関わっていきたい、人と関わっていきたい、と「人間らしい生活」を望めば、言葉がどうしても必要となってくるのです。そのためには、ある程度の「努力」がどうしても不可欠でしょう。もちろん、ただそこで漫然と暮らしていても、ノルウェー語が上達するわけではありません

ちょっとツライ話しが続きまして、皆さんすっかり留学したい気持ちが萎えてしまったかもしれません(焦)。最後にもう1つだけ、ツライ話しをさせて下さい。

本書の第
3章は「インターミッション」と題し、最初の留学を終えて、日本に戻ってきてからの生活を取り上げました。
帰国後すぐに、ノルウェーと日本の生活ギャップにまず遭遇します。ノルウェーにいる間は、日本を美化してしまい、帰国してからは「こんなはずでは。。。」という思いに駆られました
夏に戻ってきたので、外は耐えがたいほど暑く、外出もままなりません。外を歩けば、すっかり人ごみを歩くのがヘタクソになってます。店に入れば、「どうしてこんなに物が溢れているの?」と、半ばあきれ、まるで「物に酔ってしまう感覚」を覚えました。

職探しも大変です。
せっかくだからノルウェー語を使いたい、ノルウェーに関係ある仕事をしたい、と考えても、需要が少ない分野ですから、供給も少なくて済みます。すんなり仕事を見つけるケースの方が少ないでしょう。
仕事がなければ、身分も不安定で、「学生」とか「会社員」といった肩書きのないことが、こんなにもツライものなのか、と私は感じました。もちろん、留学した人みんながみんな、私のように苦労するわけではありませんが、ただこうしたリスクがあることも、知って欲しかったのです。
また、現に留学から戻ってきて、私と同じように壁にぶつかっている人に、「ツライのはあなただけではありません」とエールを送りたい意図もありました。


6.うらやましいな〜、ノルウェー人

ツライ話が続きましたので、少し明るい話題を。
留学中、「いいな〜、ノルウェー、うらやましいな〜、ノルウェー人」と、うらやんだことはよくありました。それについてお話ししたいと思います。

本の中やホームページ、また講演会でも取り上げたことですが、ノルウェーの大学や学生寮には、明らかに学生に見えない学生が目につきました。中年、お年寄り、子持ちの学生たち。
当時は、「ノルウェーの大学は、多様な学生を受け入れるいいところだな」くらいにしか感じてなかったのですが、昨年末から仕事でノルウェーの生涯学習制度を調べる機会があり、充実した法律や制度を知って、どうして大学にあんなにたくさんの「若者以外の学生」がいたのか、ようやく合点がいったわけです。

ノルウェー語では、生涯学習という言葉より成人教育という言葉の方がよく使われ、関係する法律の名前は「成人教育法」です。
この「成人教育法」は、
19765月、世界に先駆けて導入されました。年齢に関わりなく、教育を受ける権利を保障するもので、大学や短大に通ったり、成人教育機関や自治体の施設で勉強したり、通信教育を受けたりと方法は様々で、毎年、約100万人が何らかの形で成人教育に参加しているそうです。人口450万人のノルウェーですから、すごい参加率ですよね。

ノルウェーの法律でうらやましい〜と思ったのは、何と言っても「教育休暇の権利」です。20011月より、今まで最低3年間働いた人で、ここ最近2年間働いた人には、3年間まで教育を受けるための休暇を得ることができるようになりました。
ですから、わざわざ会社を辞めなくても、学校で勉強し、自分のキャリアアップをはかることができます。それほど一大決心せずに、人生の方向転換ややりなおしができるって、すごく羨ましいですよね。
また、本来、大学の入学資格を持たない高校の教育を受けていない
25歳以上の成人に対しても、職歴やボランティア活動などを評価して、大学へ入学できるように法改正し、実際、2000年には大学や短大で、受け入れがありました。

大学や学生寮に保育園があって、子供の姿もよく見かけたのですが、女性が学生である間に出産した場合、国の教育ローン基金からおよそ1年間の助成金が出るそうで、だから子持ちの学生も「あり」なんだと納得です。

こうした法律や制度があるおかげで、キャンパスは若者一色ではなく、いろいろな人が学び、学生の平均年齢も日本の大学に比べれば高いことは、私のように20代後半や30過ぎてから留学した学生にとって、まさに「ありがた〜い」ことでした。
ノルウェーの成人教育法などを読むと、教育に対する、ある種ナイーブなまでの信頼や理想が伝わってきます。「学ぶことには、年齢は関係なし」と日本でもよく言われますが、しかしそれを実現するまでの制度や法律は、残念ながら整っていません。

また、「もう年だから」と言って、あきらめてしまう人があまりに多いのではないでしょうか?
私自身、「年」をエクスキューズにすることが多いのですが、ノルウェーに留学し、お年寄りの学生に刺激を受けました。ノルウェー政府奨学金の応募資格も、以前は
35歳まででしたが、2年前から40歳までに引き上げられましたよね。もっと気軽な留学、サマースクールは年齢制限ありません。お年寄り多いですが、違和感ありません。老後の楽しみにいいかもしれません。

次に、うらやましいというか見習うべき点ですが、ノルウェー人の学生はだらだら勉強しないこと。集中して勉強する時はするけど、休みの時や、遊びの時は、勉強しないです。
寮の友達がそうでした。彼女は、普段、夜の8時くらいまで図書館に残って勉強してましたが、寮に戻ってきてからや週末は、全く勉強していませんでした。逆に私は、机に向かっている時間は確かに長かったけど、途中、テレビを観てしまったり、集中力では劣ってました。
別のノルウェー人の友達は、「日本人は長時間働くの好きだけど、それって本当に能率的?」と、もっともな問いかけをしていました。
最近、新聞などで「オランダ型ワークシェアリング」がよく取り上げられていますが、本当に私たちの働き方が能率的なのか、考える必要があると思います。


7.最後に

ホームページの方に、留学体験寄稿コーナーや現地の日本人の方からのエッセイコーナーがあり、何人かの方からの投稿を載せました。
読むたびに思うのですが、たとえ同じ留学先やコースでも、受けた人の数だけ、その人の留学体験があり、物語があるということです。一読して思い当たる点もあれば、「あ、そうなんだ」と、新たに知った点さまざまであり、留学の奥深さをあらためて感じました。

最後に申し上げたいことは、1つ。
一人でも多くの人が、この本をきっかけに、ノルウェー留学を実現すること、また実際に留学の役に立ってくれることです。
そしてできれば、私のように何らかの形で、ご自身の留学体験を発表して欲しいですね。後に続く人にとっては、とても貴重な情報になります。



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