人々の生活


●ティッシュは貴重品

東京の語学学校でノルウェー語を習い始めた1994年頃、ノルウェー人留学生と知り合うことができました。
一緒に新宿を歩いていた時、彼女はティッシュ配りから喜んでもらっていて、2個とかねだっている時もありました(ちょい恥ずかしかった・・・)。
「道でティッシュを配っているなんて信じられない!」といたく感動している様子に、「ふ〜ん」と思ったのですが・・・。

さて1995年にノルウェーのカレッジに留学が決まり、いろいろと情報収集をしようとしたのですが。
「ノルウェーの情報、少ない!」とキレそうになりました。
またインターネットは今ほど普及しておらず、「ノルウェー本」か限りなく少ない・・・。
そんな貴重な「ノルウェー本」に、中田慶子さんの「私の出会ったノルウェー」がありました。
80年代に家族でトロンハイムで暮らされた記録の本書は、内容も面白いし、示唆に富んだ観察が素晴らしいのですが、細かい記述に目が留まりました。
「ノルウェーではティッシュペーパーが非常に貴重品」。
日本のように、あんな安価なティッシュペーパーはどうやら売っていないそうです。
「そうなんだ〜」と、1995年夏、西ノルウェーの田舎町に移ったのですが・・・。

確かに、大きなドラックストアもなければ、スーパーに「ティッシュペーパーボックス」5箱まとめなんて。どこにもありません。
そもそも最初の留学時。ティッシュペーパーボックスなんてなかった気がします。
ティッシュペーパーは売っていることは売っているのですが、紙のサイズが日本の二倍くらい、厚みがあって、何だかプレゼントで贈れるような雰囲気。
ティッシュペーパーというより、紙ナプキンみたいなんです。
「使い捨て」とはほど遠い。
値段も高い!
日本で歓喜しながら、ティッシュをもらっていたノルウェー人の心理がようやく理解できました。

・・・すると人はどうなるか・・・
1枚のティッシュを後生大事に使うことになります。
まず1回鼻かんだくらいでは、捨てなくなります。サイズも大きいから、ちょっとずつ使う。
私はやらなかったのですが、中年のボスニア人留学生は、袖に使ったティッシュをしまってました。

あとは、もっと安いトイレットペーパーやキッチンペーパーで鼻をかんでいる学生もいましたね〜。(トイレットペーパーの質は悪い)
今でも、私の年配の友人はキッチンペーパーで鼻を噛んでいます。

2回目の長期留学(1999-2000)では、オスロに留学しました。
その時には、サイズが日本の半分くらいのティッシュペーパーボックスを見つけ「おお〜、ノルウェー、進化した!」と感動したものです。
もちろん値段は、日本とは比べようがないほど高いです。
なので、ノルウェーで身についた「1枚のティッシュペーパーを後生大事に使う」が実践されます。

・・・こういう経験をすると人はどうなるか・・・
日本に帰っても、1枚のティッシュを後生大事に使う体になってしまいました〜。はい、「地球にやさしいおばさん」と呼んでください。(エコ!)
なので、1枚のティッシュをすぐに使ってポイっと捨てる人(←これが普通)を見ると、新鮮な驚きを覚えます。
自分も昔はああだったんですよね。うん、信じられない!
あと、5箱セットのティッシュボックスとか買わなくなりましたね。
ちょい質のいいティッシュを買って、念入り(=貧乏くさく)に使います。
せっかっく「おしゃれ北欧」に留学したのに、身についた習慣がこれとは・・・くくく。

ノルウェーへ訪れるとき、一応、ティッシュペーパーを2,3個持参します。
でも大抵、使わないので、帰国する際に、家に居候させてもらっているアウドさんに「これ要る?」と聞くと、「嬉しい!」ともらってくれます。

最近、日本では贈答用に高品質&お高いティッシュペーパーが売っているようですが、ノルウェー人にあげた日には・・・。
3年は使ってくれると思いますよ!


2014年3月4日
norway yumenet official blog 140304より転載しました−

←戻る


●スウェーデン人ジョーク

最初の留学時ですから、もう1995年のことです。
カレッジのイースター休暇で、スウェーデンのガラス工房に修行中の日本人の友達に会うために、スウェーデンへ旅行することにしました。
学生寮で、「イースターにはスウェーデンへ行くんだ〜」と話したところ、ノルウェー人学生たちは口々に「スウェーデン人はバカだよ」と嬉々として言うので、「へ?」と驚きました。
そのdisったグループには、敬虔なクリスチャンの中年学生も含まれていたので、驚きが余計に大きかったのです。

そして「スウェーデン人バカ説」は、ようやく理由が分かりました。
カレッジの授業で、「スウェーデン人ジョーク」(svenskevitser)について学ぶ機会があったのです。
渡されたプリントには、「スウェーデン人ジョーク」が並んでいたのですが・・・あまりの素朴なというか「小学生ジョーク」のような内容に思わず苦笑。
いくつか例をご紹介しましょう♪

「どうしてスウェーデン人は、空のペットボトルを冷蔵庫に入れているか知ってる?
 -喉が渇いていないお客が来た時に備えているから」

「スウェーデン人がホットドッグを食べたいから自分の犬をオーブンに入れたって話を聞いた?」
アルネ&カルロス
「どうしてスウェーデン人がトイレのドアを開けっ放しにして入るか知ってる?
 -鍵穴から覗かれたくないから」

・・・な〜んかもう脱力ものの内容ですが、スカンジナビア人同士の比較ジョークというものも存在します。

「ノルウェー人、デンマーク人、スウェーデン人が重大な罪を犯して、21年の刑期となった。でもみんな1つだけ欲しいものを望むことができた。
ノルウェー人は自分の妻を。
デンマーク人は十分なビールを。
そしてスウェーデン人は十分なタバコを要求。
ついに刑期を終えて出所する際、ノルウェー人は妻と喜んで出てきて、デンマーク人はべろんべろんで出てきて、最後にスウェーデン人は・・・戸惑ったように独房の隅に座って、叫んだ。
”おいタバコに火をかしてくれ!”」

・・・とノルウェー人はどこまでも、スウェーデン人をバカ扱いしてジョークを楽しんでいます。
でもスウェーデンには「ノルウェー人の素朴さをからかうジョークがある」と最近、教わる機会がありました。もちろんデンマーク人の作ったジョークもあるみたいですよ。

こうやってジョークでからかえるのも、仲がいいからですよね〜。
スカンジナビア愛を感じるのは私だけでしょうか?


2014年3月6日

norway yumenet official blog 140306より転載しました−

←戻る


●カレンダーのナゾ

またまた昔話で恐縮です。

1994年に都内の語学学校でノルウェー語を習い始めた時に、ノルウェー人の留学生たちと知り合いました。
彼らのスケジュール帳を見せてもらう機会があったのですが、「??」とナゾの表記がありました。

  uke1
  uke2
  uke3

ノルウェー語のukeは「週」を意味します。ですからuke1=「週1」になりますね〜。

「これってどういう意味なんですか?」
「ノルウェーでは1月の1週目から順番に、uke1、uke2・・・て順番をふっているんだよ。」
「ほお〜」

これだけではわかりにくいかもしれないので、実際に2014年のカレンダーをご覧ください♪ 
(画像をクリックすると拡大します)
カレンダー

ええっと今週はuke11になりますね〜。

で、このUke○○なんですが、例えば普通の会話では使いません。
「ねえねえ、uke13にデートしようよ〜」「無理無理。uke18なら空いてるよ」
これはナイです。

ではどんな時に使うのでしょうか?
私が最初に留学生から見せてもらった手帳の次に、見る機会があったのは、留学先のカレッジで年間スケジュール表を渡された時です。

  uke○○・・・試験
  uke○○・・・冬休み

といった塩梅です。
「普通に月日で書いてもらった方が分かりやすい・・・」と極東から来た留学生は思いました。

ノルウェー人に聞いて回ったわけではないので、あくまでも推論なのですが・・・。
あの人たちはきっと保育園・小学校からこのuke○○の表記になれ、きっと「体に染みついている」のだと思います。
なので反射的にuke27と言われると「7月の第1週」と見当がつくのではないか?・・・と。

このukeに慣れているからかなぁ〜と納得したのは、ノルウェーの育休制度の表記法です。
よく育休取得47週=100%賃金保証
育休57週=80%賃金保証
という記述を目にしますが、日本だったらば「○○か月」とか「1年と○○月」という表現になりますよね〜。

他にも、「日本と表現法が違う」と感じたのは、「パートタイム労働」にまつわる言い方です。
「私は80%働いている」
「私は50%働いている」
のように○○%働いているとパーセンテージで表現します。これはフルタイムを100%として、それに対しての労働時間の割合を表しています。
日本だと「週3日」という言い方ですよね〜。

みなさんは、ノルウェーの表現と日本の表現、どちらが分かりやすいですか?


2014年3月12日

norway yumenet official blog 140312より転載しました−

←戻る


●ノルウェーの人気ブログ〜その1 若い女の子編〜

ブログを始めて、「これでいいかなぁ」と悩みつつ書き連ねていますが、私の「第2のふるさと」=ノルウェー(←ホント?)のブログ事情をご紹介しましょう。

まず、ノルウェーのブロガーは圧倒的に「素人の女の子・女性」が主流です。そして読者も「女の子と女性」です。
その中でも人気のあるジャンルが・・・・
1)rosablogg=ピンクのブログ
「比較的若い女の子が、どんな服を今日は着たか、どんなメイクやコスメを好んでいるか、どんなに学校が退屈かを語るブログ」と定義されています。
2) mammablogg=ママブログ
「こぎれいなママが愛する子どもや夫のことなどを他人に見せつけるブログ」とぱっと見て定義しました。

ではまず1)のブログのサンプルを紹介しましょう♪
・・・正直、人気rosabloggを見ていたら、段々、頭がクラクラしてきました・・
人気ブロガーのプロフ写真をちょっとご覧くださ〜い。
まずはSophieちゃんのブログhttp://sophieelise.blogg.no/からどうぞ!
ブログ

お次はEricaちゃんのブログhttp://l0ve.blogg.no/から!
ブログ

最後はAnnaちゃんのブログhttp://annais.blogg.no/で〜す。
ブログ

ネガティブな意味で使われる「バービー人形みたい」が「ピンクのブログ」では理想のようですね〜。
では実際にブログの中身を覗いてみましょう。こちらhttp://l0ve.blogg.no/は、典型的な「ピンクのブログ」の一例です!

同じように、ブロンドロングヘアーの女友達との写真、テキストは「今日は数学の試験があって大変だった〜」とたわいもない内容。後は、海外旅行のブログエントリーも「マストアイテム」です。

たかが「若い子のブログ」と侮れませんよ〜。
4年ほど前にトップブロガーだったVOEちゃんhttp://www.voeblogg.no/、は「VOEちゃんお気に入りの服」「VOEちゃんお気に入りのコスメ」と紹介してくれると、売り上げUP。
計算高い大人たちとやっぱり計算高いVOEちゃんは、ブログに服、靴、コスメ、バッグを無償提供し、ま、「ステマブログ」の様相になりました。
新聞やメディアでも「人気ブロガーVOE」と取り上げ、はてはテレビ出演や雑誌のモデルなど時の人となりました。
なんでも2009年10月には、350万PVを記録したとか・・・ノルウェーの国民は500万です!

人気のrosabloggを見ていると、ある程度の「法則」がありますね。
・ロングヘアー、ブロンドが最も好ましい
・肌は適度に日焼け
・定期的に海外旅行
・流行の服、コスメ、ブランドのバッグはマストアイテム
・恋人は当然いる
・仲良しのそっくりな女友達がいる
・家族もやっぱり仲良し
・ペットがいるとなお良し
・スタバのカップを見せるとおしゃれ度UP(注:スタバがノルウェーに上陸したのは昨年)
・内容は「今日は●●したの〜」とまるで友達に話しかけるような文体

そして一番大事なのは・・・
・超ポジティブで、読者が「こんな風になりたい!」と女の子の憧れの対象になれること!

いわゆる若い女の子の読む雑誌が、日本の「魑魅魍魎」のように発達していないノルウェーでは、こうした「ピンクのブログ」がいわばファッション雑誌代わりになっているのでしょうか?

では次回はいつになるか分かりませんが、彼女たちが成長するとどんなママになるか・・・
「mammablogg」の紹介です♪


2014年3月14日

norway yumenet official blog 140314より転載しました−

←戻る


●受信料、払ってね

ノルウェー国営放送(NRK)は、テレビチャンネルを3つも持ち、ラジオ放送もた〜くさんあるノルウェーの大きなメディアです。
「国営放送」というくらいですから、CMはありません。
「みなさまの受信料」で収入を賄っています。その割合は96%とかなりの高い数字ですね。

Aftenposten紙(2014年3月23日)に、この「受信料」に関する記事がありました。
2013年、1983000人が受信料を支払っています(ノルウェーの人口は約510万)。
「どの国にもいるんだなぁ」と感心したのは、「受信料を払わない人」。
10世帯のうち1世帯の割合で、「未払い」をしているとか。そのため、本来、得られる利益が減少してしまいます。

私がノルウェーで訪れた家も、そうした「受信料未払い」を貫いてましたね。
外の窓から見えない低い位置にテレビを置いて、「テレビ持ってません」と言い張ってました・・・。なんか既視感が・・・。

しかしノルウェー人は、こと「受信料支払い」に関しては優等生なのだそうです!
スウェーデンでは、未払いの割合は14-15%、
そして受信料制度を昨年、撤廃したフィンランドはなんと30%だったとか!(ムーミンが泣くよ・・・って関係ない?)

NRKはさらに海外の事例を調べました。
英国BBCでは、受信料の未払い=犯罪行為だそうです。未払い率は5%だそうですが、なんと罪に問われて収監された例もあるとか・・・。
NRKはそこまでの強い態度は考えていないそうです。刑務所にテレビありますしね〜。

と、NRKは未払い問題に悩んでいるのか。と思いきや実は、受信料の支払い額自体は増えているとか。
ノルウェーでは、テレビを買った店がNRKに「通報する」システムになっています。
そして薄型テレビの販売が好調→受信料増えるという図式みたいですね。

撮影クルーちなみにノルウェーでテレビを持ってない世帯はわずか3%。あんまり娯楽ないから、テレビ依存度は日本より高い気がします。
で、気になるNRKの受信料の額は・・・・年間2729.16クローネですから、1NOK=17円で計算すると約46000円!
ひえ〜、なんでも高いノルウェー・・・!

どうりで、私のノルウェー人の友達が、「○○オリンピックにNRKはすごい数のスタッフを連れて行くのよ。まったく受信料の無駄遣い!」と怒っていたわけです。

今、ノルウェー以外の国でも評判の「スローテレビ」。
この制作も、精神的なゆとりももちろん、金銭的なゆとりがあるからできるんですね〜。


2014年3月26日
norway yumenet official blog 140326より転載しました−

←戻る


●石油をめぐる冒険

「ノルウェーってどうしてお金持ちなんですか?」という質問はたびたび受けます。

ノルウェーに興味がある生徒さんでもご存知ない方がいらっしゃるので、いわんや普通にノルウェーと関わりがない人など意識もされたことはないでしょう。
2012年の「国民一人あたりの名目GDPランキング」を見ると、ノルウェーは第3位 にランクイン!
ノルウェーをそれほど豊かな国に押し上げたのは、ずばり石油と天然ガスのおかげです。
特に、石油については「Oljeeventyr」という単語が存在するほど。直訳すれば 「石油物語」でしょうか。
私は村上春樹氏の「羊をめぐる冒険」をもじって「石油をめぐる冒険」という風に訳しちゃってます。

私自身、漠然とノルウェーで油田が発見されたのは、1960年代だということは知っていました。
油田発見までの詳しい経緯は、レッスンで使っている「Stein på stein」という テキストに載っています。「語学書のテキスト」でも学べることは多いですね。

テキストによると、ノルウェーが北海で油田を探し始めたのは1960年代半ばから。
しかしノルウェー単独では、油田探しの経験も技術もなかったので、海外の石油 会社が油田探しに加わるように依頼されます。

温泉掘りと比較しては「規模が違う!」と怒られそうですが、油田探しは容易にはいきません。

4年かけて、30もの深いボーリングを行いますが。油田は見つかりませんでした。「もうこれは無理だ・・・」と諦めかけたところ・・・。
でも、アメリカのPhillips Petroleum社だけは、「あともう1回、ボーリングを してみよう」と、ラストチャンスにかけます。
ついに1969年秋に、北海の中央付近に油田を見つけることができたのです!
その時の歓喜の様子は・・・・想像するだけでワクワクしますね〜。

それからノルウェーはStatoilという国営の石油会社を作り、次々と油田開発と輸出を行っていきます。
順調に石油産業は成長し、そのおかげでノルウェーの経済も好調になっていきます。
ノルウェーは他の北欧諸国よりもリッチなので、しばしば「北欧のカタール」と揶揄されるほどです。

もっと言うと、スウェーデン人から「ノルウェー人は技術の開発はできない。あ るのは天然資源だけ」とdisられるほど・・・。

2012年、石油輸出量は世界で5位、天然ガスは世界2位となっていて、莫大な収入を堅実に「政府年金基金」という形で貯蓄し、将来、資源が枯渇したり、価格が 暴落した時に備えています。

今年読んだ記事だと、この基金は国民ひとり当たり1000万円ほどの貯金になってるらしいです。日本人は国民ひとり当たりの「借金」が膨大なので比較すると空しいです・・・。
ゆとり満載
ちなみにノルウェー国内の電力は、豊富な水資源を生かし、水力発電でまかなっています。
ですので、石油やガスは輸出だけという、何ともうらやましい状況なんですよ。

もし、あの時、Phillips Petroleum社がボーリングをあきらめ、帰国していたら・・・?と想像すると、ノルウェーってなんてラッキーだったのだろうって思 いますね。
まさに「Oljeeventyr」という名がふさわしい「冒険譚」です。

2014年4月14日
norway yumenet official blog 140414より転載しました−


←戻る


●イースターにはミステリを

ノルウェー語では、「イースター」のことを「påske」(ポースケ)と言います。
この「ポースケ」の響きが可愛くて、生徒さんと「ぽー助みたいですね〜」なんて笑ってます。
今年のポースケは、今週からですね〜。
ノルウェーでは、ポースケで1週間〜2週間休む人が多いので、hytta(ヒュッ タ=セカンドハウス)にこもって、春スキーを楽しんだり、海外旅行したり、ま たはいつも以上に静かな町に残ったり、といろいろな方法で人々は「春の訪れ」 を感じます。

そんな「ほっこり」したポースケ。
しかし、なぜかノルウェーのポースケでは、やたらと人が死ぬのです!

・・・といってもそれは現実ではなく、「ミステリ小説」のお話。
なぜミステリ?というと、ノルウェーでは「ポースケミステリ」(påskekrim)と いう一大ジャンルが存在するのです。
書店に行けば、大きく「påskekrim」と書かれたコーナーが設けられ、各出版社、ポースケに向けてたくさんのミステリ小説をラインナップに並べます。

最初は「ミステリ小説」だけだったのですが、今ではラジオやテレビでも 「påskekrim」と銘打って、ミステリドラマシリーズを流します。
例えばNRK(ノルウェー国営放送)の番組表に、しっかりpåskekrimと書いてありますね。
http://tv.nrk.no/serie/hinterland/koif51002113/sesong-1/episode-1

特にノルウェー人に尋ねるわけでもなく、「なぜポースケにミステリ?」とあま り深く考えてきませんでした。
おそらく、あまりやることのないhyttaで余った時間に、ミステリを読めば集中できて楽しめるから?と勝手に想像していたのです。
このブログを書くにあたり、「påskekrim」の起源を調べたところ、思ったよりも歴史がありました。
wikiによると、すでに1920年代に、出版社が仕掛けたキャンペーンがきっかけだったようです。
ポースケ(正式には”聖枝祭”)1週間前に、大手新聞のトップに「ベルゲン線が今夜、襲われた」(Bergensbanen plyndret i natt)と載りますが、実はこれ、 あるミステリ作家の新作タイトルでした。
広告であることを示す表記はごく小さく、多くの人は「え?そんな事件が?」と騙されてしまいます。
この「エープリルフール」のような広告は成功し、それから他の出版社も「ポースケにはミステリ」の戦略に乗っかり、今に至る・・・が「påskekrim」のヒス トリーでした。

ノルウェーで存在することは、他の北欧でも同じ、ということが多いのですが、こと「påskekrim」に限っては、「ノルウェー的現象」のようです。

初代ミステリ女王の本!

翻訳家のヘレンハルメ美穂さんに教えていただいたのですが、ノルウェ初代ミステリ女王の本ーの 「påskekrim」の成功から、スウェーデンでも同じような試みが始まったようで す。フツーはスウェーデンの後を追いかけるのが、ノルウェーなのに・・・。

こうなると、北欧中に「人がたくさん死ぬイースター」が広がっていくでしょうか?

元は「復活祭」というキリスト教の行事であるポースケ。
こんなに、フィクションの世界で人を殺したり、血を流していいのか分かりませんが、それだけノルウェーが平和な証なのかもしれませんね〜。


2014年4月18日
norway yumenet official blog 140418より転載しました−

←戻る


●恐怖のバス

オスロのバス。
電光掲示板で、次のバス停留所が表記され、自動アナウンスが流れる。な〜んて便利!!

・・・て「そんなの当たり前でしょ?」と思っている方、日本のサービスにスポイルされていま〜す。

私はムダにノルウェーと関わって長いのですが(もう20年!)、最初のころは特 に「え?これってアリ?」と驚いたことが多かったと思います。
「バス停に名前がない」・・・これは衝撃でした。オスロの話ではなく、郊外ですが。

例えば、友達や知り合いの家にバスに乗る必要があります。
「何てバス停で降りればいいの?」
「バス停の名前ないんだ〜」
「???」
こんなやり取りでした。仕方ないので、そのバス停周りの特徴となる建物などを聞き出します。

オスロから小さなフェリーに乗って約20分のところに、Nesoddenという風光明媚な島があります。
そこにお住まいの先生のお宅を訪問する時は、やはりバスを利用したのです が・・・。バス停周りの特徴は「ピンクの家がある」。
私はバスに乗り込み、他の地元の乗客がリラックスして座席に座っている間、鬼の形相で窓の外を凝視します。
「ピンクの家、ピンクの家・・・」頭の中でぐるぐる悩みながら、「ここ??」 と悩んで、ブザーを押して降りる・・・。よかった〜、あってた〜。
もう「恐怖のバス」以外の何物でもありません。

さすがに最近はだいぶ状況が良くなったのかなぁ、と思ってベルゲン大に4,5年 前に留学していた生徒さんに聞いたら、「バス停の名前なかったです」。
ベルゲンって確か、ノルウェー第2の都市ですよね。でもそうなんだ・・・。驚 きつつも、納得しちゃいました。

日本だったら、どんなに田舎でもバス停に無理やり名前を付けると思います。
ノルウェーは田舎or郊外のバスは、ハナから地元客しか乗らないだろうという見込みで「バス停に名前を付ける」という行為を怠っているのかでしょうか?
バス
オスロのバスは、いつからかはっきり覚えていませんが、冒頭のようなサービスになりました。
以前は、バスの運転手がすご〜く気まぐれに次のバス停の名前をアナウンスしてましたね・・・・。運転手によっては、アナウンスを忘れちゃったり、とんでもなく聞き取りにくかったり・・・。

なので冒頭のサービス&テクノロジーの発展は、昔を知る者としては、涙ものです。

「バスで恐怖を味わいたい」という方には、ノルウェーの郊外&田舎バス、おススメですよ〜♪


2014年5月7日
norway yumenet official blog 140507より転載しました−

←戻る


●ノルウェーの「地獄の天使たち」

ノルウェーの新聞で「MC」という文字を見ると、条件反射的に「犯罪」と結びついてしまいます。
MC=Motersykker 「オートバイ」のことなのですが、日本でもバイクを乗り回す「暴走族」が存在するように、ノルウェーでもヘヴィー級のバイクを乗り回し、犯罪行為(麻薬売買、売春あっせん、暴行、恐喝など)に手を染める輩がいるからです。

ノルウェーの代表的な犯罪的MCグループは、「Hells Angels」です。そうです、アメリカ発祥のモーターバイク野郎たち。
今回のブログを書くにあたり、Hells Angels を検索したら、なんと自分たちのHPを持っていました。こちらです!
http://hells-angels.no/

さすがIT先進国、犯罪集団でもHPを持っているんですね〜。
「Contact us」というコーナーもあって、うっかり何か書いてしまいそうな自分がコワイ・・・。

5月のノルウェー旅行中、飛行機でタブロイド新聞を読んでいると、「これが Hells Angels の掟だ!」という特集記事があり、どれどれと読んだところ・・・
バイク
・自分たち主催のパーティ以外での飲酒は禁止
・スマホは警察に盗聴されやすいので使用禁止
・バスや電車などの公共交通機関の利用は禁止

・・・とあり、特に最後の「掟」が何だか笑えてしまったのは、私がMCギャングたちの真の怖さを知らないからでしょう。
ごっついタトゥー、ムキムキに鍛えた筋肉、無駄にでかい肉体・・・。
やはり「関わりたくない人たち」です。

そしてやはり旅行中、ベルゲンの中心地を歩いていたら、バイクがたくさん並んでいる光景がありました!え?これって「集会?」怖いけど写真を撮ります。

実際は、普通にバイク愛好家の人たちが集っていただけでした〜。

ライダー私も勘違いしてしまいましたが、普通のライダーたちは「バイク集団=犯罪者たち」との結び付けられしまうことに困っているようです。
たしか、トロムソのライダー集団がパーティを行った時に、女性メンバーはこんなことを言ってました。
「私たちがバイクに乗っているだけで、すぐに犯罪グループと誤解されてしまう。これは偏見です。」

もうずいぶん前ですが、留学中にオスロでたまたま話しかけてきたアメリカ人(珍しくノルウェー語が上手!)が「ノルウェーのHells Angels なんて・・・!!」とバカにしてましたが・・・。
どうしてどうして。北欧のMCギャングたちの怖さは、例えばスウェーデン発の世界的ミステリー小説「ミレニアム」でも描かれていましたね。やっぱり、コワっ!て印象です。

・・・ということで、平和なノルウェーでも存在するコワいお兄さん・おじさんたち。
普通に旅行や生活しているぶんには、接点はないと思いますが、万が一、メンバーが掟を破って「地下鉄」に乗っているのを見かけら・・・!
その時は、前述のHPのcontact us からチクリますかね〜。


2014年6月23日
norway yumenet official blog 140623より転載しました−

←戻る


●ノルウェーの「バイブル・ベルト」

ノルウェーの国教はキリスト教プロテスタントです。
「Den norske kirke」(ノルウェー教会)が、ノルウェーの最大宗教団体であり、人口の約75%が会員になっています。

「ノルウェー人って信心深いですか?」と聞かれると、「う〜ん」と一言で答えるのは難しいです。
というのも、地域によって「信心度」具合が違うから。

英語にも同様の表現がありますが、ノルウェー語では、Bibelbeltet = バイブル・ベルト=聖書地域と呼ばれる場所があります。意味は分かりますか?
はい、熱心なクリスチャンが多く住むエリアです。
どこが当てはまるか、というと南ノルウェーと西ノルウェーです(特に南)。
教会
私が最初に留学した西ノルウェーの田舎町 Volda は、まさに Bibelbeltet なところでした。
熱心なキリスト教の人たちは、飲酒はしません。
avholdsfolk = 禁酒主義者と呼ばれ、ノルウェー人が大好きなアルコールを口にしないのです!
・・・というか、私はノルウェーでお酒飲まない人に会ったのは、「宗教上の理由」からのケースだけですね〜(お酒に弱い人に会ってみたい!)
今はあるみたいですが、留学当時はビール以上のアルコール度数のお酒を売る「Vinmonopolet」(酒の専売公社)はありませんでした。
なのでパーティ大好きな「信心深くない」学生たちは、車を1時間も運転して Vinmonopolet へ買い出しに行っていたほどです。

学生寮で同じキッチンを利用していた南ノルウェー出身のおじさん学生は、どんぴしゃりの「信心深い」人でした。
お酒は飲まず、食事前にお祈りをし、日曜には教会に行っていました(←これは今のノルウェーでは稀なことなんです!)。

留学先のカレッジには、やはりキリスト教サークルがあり、のちの留学先オスロ大学と比べると「信心深い」学生が多かった印象です。
図書館の司書のバイトをしていたノルウェー人学生は、西ノルウェーの Volda よりもっと田舎出身でした。彼との会話を引用してみましょう。

-「兄弟はいるの?」
-「うん、10人いるよ」

10人ってさすがに「多い!」ですよね。おそらく「宗教上の理由」から産児制限はしなかったのかなぁ〜と想像。

-「ノルウェーは結婚しないで一緒に暮らす事実婚 = sambo が多いよね?」
-「でもやっぱり人は結婚しないと。 sambo だと無責任な感じがする。」

ということで、南・西ノルウェーは出生率・婚姻率ともに高いのです。
キリスト教
Voldaに留学中、近くの村を訪れた時、異様な一団に会いました。雨の降る中、男性がギターを弾いて、子どもたちが歌いながら行進しているのです。

みんなはイエスキリストを讃える歌を歌っていましたが、違和感というかモヤモヤした感情になったことを覚えています。

Aftenposten にこの「バイブル・ベルト」の本拠地である「南ノルウェー」を特集した記事があったので、ご紹介しましょう(2014年5月24日)。
ジェンダー研究者たちが、南ノルウェーの「性別役割分業」について調査したところ、こんな結論が出ました。
「就業している女性の割合が低い。」
ノルウェーといえば、男女差がなにごとも少ない国、というイメージですが、どうも伝統的な家族観を持つ南ノルウェーでは違うようです。
例えば、育児。
子どもは保育園に預けずに、お母さんが家で育てる割合が高く、それに比例して南ノルウェーの保育園数は他地域に比べ低いとか。
これも納得の結果かもしれませんが、他地域に比べ女性の収入が低いです。
パートタイム労働に従事している割合の高さが原因です。

特集記事では、子どもたちが手をあげて「イエスはスーパーヒーロー、イエスはオンリーワン!」と歌っている写真が載っています。
いろいろな意味で、他のノルウェーとは異なる「Bibelbelet」のエリア。
もちろん、南や西ノルウェーに住む人みんながみんな、「熱心なクリスチャン」というわけではありません。
ですが、どんどん信仰心が薄まっている現代ノルウェーにおいて、特殊なエリアと言えることは間違いないでしょうね。


2014年7月24日
norway yumenet official blog 140724より転載しました−

←戻る

 ←前へ 次へ→

ホームへ戻る
Home