2008年ノルウェーへの旅  

翻訳者セミナーに参加して


基本的に自分はツイてない人間だと思っている。
だって、選んだ職業が「ノルウェー語稼業」なんて、陽の当たらない裏稼業すぎでしょう?ちょいワルおやじ雑誌「
Leon」の看板モデルのジェローラモさん(?)の対極です。ま、まぶしい・・・向こう側は。

Gina@2008年東京国際ブックフェアそんな日陰者のもとにある日、メールが届いた。
Norlaという団体からだ。Norlaは、「小国」ノルウェーの文学を海外に紹介すべく、翻訳助成やブックフェアへの参加など、プロモーション活動をしている団体。昨年夏、「東京国際ブックフェア」に出展し、代表のGinaの通訳をつとめた。
Norlaからのメールは思いもかけないものだった。5月末に、ノルウェーでノルウェー語の翻訳者を大勢招待し、セミナーを開催する、つきましてはご招待しますよ!という内容だった。
一読、狂喜乱舞♪

いやしいけど、まずノルウェーにタダで行ける。これ大事。
あとセミナーのスポンサーはノルウェー外務省。ってことで、私のアイドル、ストーレ外相がセミナーで開会の挨拶をしてくださるのだ。
やった~、ミーハー魂炸裂!

それにそれに、有名な作家、私の好きな作家も参加するらしい。
思いっきり「出席します」返事を送って、5月を待つことにした。

待っている間の心情は、「超ハッピー」一色ではなく、留学前のそれに似ていた。
期待と不安が入り混じっている。
まず不安の要因は、「私のように翻訳の実績がほとんどないものが出席していいの?」という情けないものだった。
Norlaから何度かセミナーに関する情報メールが来るようになったが、31ヶ国語、120人くらいの翻訳者が出席するらしい。きっと皆さん、すばらしい方ばかりだろう。
「私でいいんですか~?」と叫びたい衝動に駆られた。

でもそんな不安を打ち消すくらい素晴らしいセミナーのプログラムが届いた。
外相の挨拶はもちろん、いろいろな専門家が例えば、「ノルウェーのミステリー」について、「ノルウェーのマンガ」についてなど面白そうな講演を行うことになっていた。
自分が参加したい講演を選ぶ作業は、正直、大変。だって、聞きたい講演が同時間に重なっちゃって、「どうしよう?」の連続。
ぜいたくな悩み。


興味深い講演の中でも特に目を引いたのは、お気に入りの作家、Gro Dahle(グロー・ダーレ)がパートナー兼イラストレーターのSvein Nyhus(スヴェイン・ニーフース)と、自作の絵本をプレゼンするもの。
また、才色兼備とはこの人のためにある言葉?と思える言語学者兼作家の
Helene Uri(ヘレーネ・ウーリ)の講演会もあって、迷わず選ぶ。

セミナーは講演会だけではなく、ワークショップもあった。
あらかじめ翻訳者7~8人づつにグループを作られ、課題となるテキストが送られてきた。

そのテキストが・・・・そのテキストが一筋縄ではいかない代物だった。
ジャンルは児童文学でいいんだけど、問題は書かれている言葉。
ノルウェーにはブークモールとニーノシュクという似たような公用語が2つあるが、私はブークモールシンパであり、ニーノシュクは苦手。なのに運命はどこまでも意地悪で、テキストはニーノシュクと方言が満載。都会っ子のあたしには、こんな田舎くさいテキスト読めないんだよ!と事務局にクレームしたいくらいだったけれど、何てったって、参加させていただくだけでありがたい身。
はい、唯々諾々と従います。


ワークショップでは、途中の第7章をみんなで翻訳上の問題点についてあれやこれや議論するらしい。
でも人一倍小心者の私は、
130ページ全部に一応、目を通して、意味が分からない単語はノルウェー人に教えを乞うた(文句をつけながら読んだ小説だったが、意外や意外、面白い児童文学だった)。

そんなこんなで出発日が近づく。
セミナーは524日~26日まで、オスロから北1時間くらいのホテルKlækken(クラッケン)という場所で開催されることになっていた。
ノルウェーの玄関口ガルデモーエン空港からホテルまでバスが出ているらしい。
そう聞くと、便利そうでしょう?
でもね、飛行機が到着するその
5分前にバスが行っちゃって、その後2時間半も待たないといけないんだよね~。
ノルウェーだもん、人口少ないもん、にんげんだもん、仕方ないよね。

24日の19時頃、ガルデモーエン空港に到着。
気持ちのいい晴天。
すでに
23時近くまで陽が明るい季節なので、気分も明るくなる感じ。でもこれからバスを2時間以上も待つのか~、と思うとちょっとユーウツ。

空港で疲れ果てている同士空港内のカフェで、眠気を我慢してひたすら待つ。
事前にバス停の位置を確認したが、これだけ本数の少ないバスに乗り遅れたら、それこそ泣く。少し早目にバス停の前で待つことにした。
バス停には、何人かの人がすでにいた。みんな、Klækkenに行く人なのかな?段々、風が冷たくなる中、バスを待つ・・・。
・・・時間近くになっても、なかなかバスは現れない。他のバス停には、がんがんバスが来て、みんながしがし荷物を運びながら乗車している。
・・・すると、一台のちっちゃい白いマイクロバスとも呼べない代物の車が近づいてきた。
「もしかして、このちっこいマイクロバスもどきが・・・?」
はい、その通りです。これが私が
2時間以上も待った「バス」でした。
私の戸惑いなどよそに、乗客7,8人を乗せて、バスは軽快に出発♪

途中、景色を見ようとがんばったのですが、すでに24時間近く寝ていない私は、こっくりこっくり。
1時間近く経って、ホテルに到着しました。降りたのは私を含めて3人。

可愛らしいホテルのレセプションでチェックインをすると、隣にあるレストランからにぎやかな嬌声が聞えてくる。
今夜は
8時から、参加者の夕食会が行われているのだ。私がホテルに到着したのは、すでに9時半近く。飛行機で食事もいっぱい食べたし、おまけに眠い。とりあえず荷物を引きずって、自分の部屋へ上がっていく。

荷物を少し片付けながら、それでも下のみんなの様子が気になって、食堂へ行こうとした。
食堂の入り口に、
Norlaの代表、Ginaがいた。
Hei!」と挨拶し、ハグ。長旅の疲れや不安が一瞬で飛んだ。セミナーのプログラムなど一式が入ったバインダーをもらう。

私の長旅を気遣ってくれたGinaは、それでも遅れて到着した何人かのために、夕食のテーブルを用意してくれた。
ノルウェー人の出版エージェント、ラトビア人とドイツ人の翻訳者と同じテーブルを食事することになったが、おいしそうな子羊ちゃんも、あまりの眠気の前には触手が伸びない。みなに事情を説明し、早々に部屋に戻って、明日に備えることにした。
まだ外は明るくて、眠るのはもったいなかったけど・・・。

ホテルの部屋から庭をのぞむ

旅のあれこれトップへ戻る
「翻訳者セミナー」に参加して②へ

ホームへ戻る
Home