ノルウェー人とのコミュニケーション心得

3月になってから、赴任やワーホリでとうとうノルウェーへ渡航される生徒さんたちが増えて、模擬会話(私や他の生徒さんたちが偽ノルウェー人役)の練習が増えています。
それ以前から、ずーーーーーっと気になっている問題がありまして。
ノルウェー語がそこそこ話せる人でも、通じない理由の筆頭はこれじゃないかと。

声が小さい!

そうなんです、これなんです。惜しいですよ~。
日本人の声自体が元々、大きくないのか、さらにノルウェー語で弱気になっているせいもあり、声が小さめになってしまう。
すると、ノルウェー人が”Hæ?”と聞き返してくる。
それに怖気づいて、もっと声が小さくなって、ノルウェー語を使うのが嫌になってしまう。ノルウェー語を使わないと、上達は望めない・・・悪循環ですよね。

マイクを使うのも一案です

強調したいのは「ノルウェー語に自信がなければ、逆に大きな声で話した方がいい」ということ。

タクシー運転手は外国人。ノルウェー、特にオスロでは見慣れた風景です。
「この人の発音、ひ、ひどい・・」と感じるドライバーが中にはいますが、ノルウェー人とちゃんとコミュニケーションできている!横で驚くワタシ。
発音が悪くても臆することなく、大きな声でしゃべっているのが秘訣かな~と推測します。

ノルウェー語の自信を高めるためには「テンプレ会話」を想定することも手段の一つです。
初対面のノルウェー人との会話で、聞かれる質問はほぼ決まっています。そう、笑ってしまうくらいほぼ同じ質問・・・!
なので、自己紹介+想定問答集を完成させ、ノルウェーへ出発して欲しいですね~。

自己紹介のコツは大きな問題なので、また別の機会に書きたいと思いますが、取りあえず覚悟して欲しいのは・・・

Hvorfor? どうして?

で始まる質問=尋問の嵐に耐える心です!

ノルウェーはたくさんの国籍の移民や難民が暮らしているので、外国人は珍しくありません。
でも日本人はまだまだ珍種。しかも「ノルウェーに興味があって」などと言おうものならば、”Hvorfor?”を連発されますね~。
「こんなちっぽけなノルウェーなんて国に、どうして興味があるのか?」

きっかけはオーロラツアー!

私は正直、うんざりした時期がありました。延々と続く「どうしてノルウェーに留学してるの?勉強したいの?」尋問に。
やさぐれた頃には「同じ質問を1000回くらいされて、もう答えるのはうんざり」みたいに返しちゃったことがあるんですよね、ずいぶん前ですが。
やさぐれ感が伝わってしまい、マナーにうるさくないノルウェー人でも、不快に感じたようで、会話が止まりました。今なら言える、反省しています!
答える自分は同じでも、聞いてくる人は別の人です。なので、常にフレッシュな気持ちで、今では答えるようになりました。
そもそも聞いてもらえるだけ、幸せですよ。
興味がなければ、質問さえしてもらえないですからね。

Demokrati=民主主義をこよなく愛するノルウェー人。
そのせいでしょうか、何人かでの会話中に「で、君はどう思う?」と質問を振ってくれるのは・・・!
1対1の会話と違い、ノルウェー人の喧々諤々の会話に入っていくのは、しんどい時があります。
集中力が切れてボーっとしている時に、質問が飛んでくることが何度かありました。
自分が黙ってばかりだと周囲が気を遣って、質問が振られるということもあります。

自分の意見を持つ、発言する

ことが求められる社会かな、と感じますね。
それが慣れていない人は、ちょっと苦労するかもしれません。

うるさいバーでの会話は修行になります

グレーテルのかまど「スプーンおばさんの”ワッフル”」余話

昨夜のNHK Eテレ「グレーテルのかまど」はご覧になられましたか?
OA中はドキドキでしたが、ちょっと振り返ってみます。

制作スタッフの皆さんが、拙宅に来られた時。
機材とスタッフの多さで、まずびっくりしました~。
皆さん、どんどん収録準備を進めていくので、私は正直「邪魔」。台所で、ワッフルのたねを作っています。

インタビューシーンの収録では、キーワードを紙に書きテーブルに置いていました。つい視線が下にいってしまいます。それがダメなんですよね~。
スタッフの皆さんは優しく「大丈夫ですよ」とおっしゃいますが「ああ~~~、私のせいで撮り直しが続く・・・」と焦りはつのります。これだから素人は・・・!
なので「テレビ映りは?顔テカッてない?」といったことは「二の次、三の次」。考えている余裕、なかったです!
そこから、編集されたインタビュー映像がOAで流れたとおりです・・・。は~~~~。

それから、アネッテさん、イーダさん、ラーシュさんのノルウェー人チームが合流。
聞けばラーシュさんは「ノルウェー帰国前日」とのこと。思いがけず「送別ワッフルパーティ」になりました。

ディレクターからの質問で、みんなのワッフルの思い出を聞いていると「へ~、そうなんだ」と横で聞きながら楽しかったです♪
ワッフルのレシピは無限。みんなとワッフルの思い出もさまざま。
ラーシュさんが「クジラを使ったワッフルレシピを見たことがある」と発言し、え??と驚きました。残念ながらカットされちゃいましたね。

あと嬉しかったのは、ディレクターが「せっかくだからノルウェー語でお話ししてもらいたいです」とおっしゃって下さったこと。
旅番組などでも、ノルウェー人が英語を話す場合が多いですよね。もったいない!あのワッフルパーティの部分は、映像翻訳もお手伝いしました。

OAを観て「カルダモンは北欧のお菓子に欠かせない」といった趣旨のシーンがありました。
アルフ・プリョイセンとともに、ノルウェーのラジオで人気者となったトールビョルン・アイナル(Thorbjørn Egner)。
彼の代表作に”Folk og røvere i Kardemomme by“「カルダモン町の人々と泥棒」というお話があるくらい身近な存在なんですよね。

番組で「カルダモンはパウダーではなくミルで挽いた方が香りがいい」とありましたが、私もパウダーは使いません。
ワッフルの材料を混ぜながら、カルダモンの粒を挽いていると、何ともいえないいい香りがただよってきます。ぜひ、お試しあれ!

おまけ。
瀬戸康史さんやキムラ緑子さんが集まるスタジオ収録には、参加しませんでした。
しかーし。図々しく、”Teskjekjerringa”「スプーンおばさん」のノルウェー語版に、瀬戸さんのサインをお願いしちゃいました~。

ヘンゼルのサイン

さすが第一線で活躍されている方の「人徳」を感じるサイン。「ヘンゼル」と書いてあるのがお茶目です~。

ノルウェー夢ネットでは、ノルウェー語レッスンで、ノルウェーワッフルをbrunost=ブラウンチーズと一緒にお出ししたり、また「ノルウェーについて学ぶサロン」で「ワッフルパーティ」を開催しています(サロンは次回未定です)。

また昨年は、谷中ひるねこBOOKSにて「ノルウェーワッフルを食べながらノルウェー絵本トークショー」もやってみました~。
ノルウェーワッフルも、ブラウンチーズも初めて!という方が多いので、楽しかったですね。
サロンの方は「ワッフルの回には絶対に来る常連さん」が存在します。
しみじみと「ノルウェーワッフルの引きの力」を感じますね。

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2/16発売のノルウェー絵本『うちってやっぱりなんかへん?』(トーリル・コーヴェ著、青木順子訳、偕成社)の紹介をサイトにUPしました!
関連イベントも掲載しましたので、ぜひお申し込みをお待ちしています♪

http://norwayyumenet.noor.jp/hp/info/moulton.htm

ノルウェー語会話レッスン~聞き上手と質問上手とは?~

「もっとノルウェー語のコミュニケーションに力を入れたクラスが欲しい」というリクエストが、生徒さんから寄せられました。
テキストを読んで新しい単語やイディオムを覚え、文法をマスターすることも大事ですが、ほとんどの方は「話せるようになりたい」と思っています。

Språkkafé“をやってみようかな?と漠然と考えました。
Språk=言葉、kafé=カフェという意味です。英会話カフェが日本ではメジャーですよね。
それのノルウェー語版です。
現在、受講している生徒さんたちを対象にやってみよう! というわけで、レッスン中にいろいろとリクエストを聞き、構想を練ります。

少人数がいい、テーマを各回決めて欲しい(旅の会話、ノルウェー人との挨拶、自己紹介など)、テーマ別に募集をかけて欲しい、月1、2回ペースで平日夜と週末の日も設けるetc.
まだ計画中の段階です。

普段のレッスンでは、”Hvordan har du hatt i de siste?”「最近、どうですか?」と質問し、生徒さんたちは答えます。
その内容について、私がいろいろと質問をして会話の練習をしていました。
でも「他の生徒さんにも質問してもらおう!」と気づき、実践しています(←遅いですよね~)。
さてやってみると・・・「質問するって難しい!」と皆さん、おっしゃります。

確かに。まず相手の話した内容が理解する必要があります。
もちろん分からなければ、“Hva sa du?”(なんて言ったの?)と尋ねるのも練習になりますね。
ようやく相手の言ったことがわかり、質問を考える・・・大変です!

憧れの会話~

話せるようになる=会話ができるようになる・・・本当に難しいです。
自分がただうなずいているだけだと、話す力はつきません。
こちらからも質問やコメントなどをしないと「この人、本当に私の話していることわかっている?」と疑われてしまうことに・・・。

・・・って脅かすようなことを書いちゃいましたが、聞くポイントと質問するコツはあります。私も質問に加わり、会話のバリエーションを増やすようにしています。

ノルウェー人と会話すると「なんでノルウェー語を話すの?」のような”Hvorfor?”「どうして?」を使った質問が続きます。
あまりに聞かれると「尋問されている」気分になるほどです・・・。気づけば自分の話ばかりさせられている。ノルウェー人にも質問したい!
そういう時には、”Hva med deg?”「あなたはどうなの?」と返すのも手ですね。

まだ構想=妄想中の”Språkkafé“は、どうなるか?うまく成立させたいです~。
質問や答えを絞り出すように考えて、奮闘している生徒さんたちを見ると、こちらも文字通り踏ん張っちゃいます・・・。
ちょっとのコツを効果的に伝授できますように~。

ちょっとのひと手間ノルウェー語

ノルウェー語レッスンでは、毎回、いろいろなことに気が付きます。
例えば「ちょっとしたノルウェー語を加えると、ぐっと自然に聞こえる」ということ。

“Vil du ha kaffe?” 「コーヒー飲みたい?」
“Ja”.「はい。」

ちょっとこの一言を加えてみましょうかね~。

“Ja, takk!”「はい、ありがとう」

ノルウェー語を勉強したことがない人でも何となく知っているTakk(ありがとう)。
ノルウェー人偏愛ワードです。Ja,takk. Nei,takk「いいえ、結構です」まで、使いこなせるといいですね!

次の例にいきます。

”Jeg vil ha kaffe.”「私はコーヒーが欲しいです」

はい、これで意味は通じますよ。でも、この一言を添えてみましょうか。

“Jeg vil gjerne ha kaffe.” 「私はぜひコーヒーが欲しいです」

gjerneは便宜的に「ぜひ」と書きましたが、この単語は「丁寧さ」を表現してくれます。
なのでお願いする時、自分の希望を言いたい時に、プラスしたい単語ですね~。

次、行きます!

“Har du tid?” 「時間ある?」
”Nei.”「いいえ」

これで会話は成立しますが、ちょっと単語を足してみましょう。

“Nei, dessverre“. 「いいえ、残念ですが」

「残念ですが」=dessverreは、よく使いますね。この一言を付け加えると、ぶっきらぼうな感じが消えます。
会話はもちろん、メールで使う回数が多いかもしれません。

今までの例をみて「こんなの簡単じゃない?」と思われるかもしれません。
でも実際の会話、メールなどで使うとなると結構、抜けちゃうんです。
ノルウェー語レッスンで、生徒さんたちは頑張ってノルウェー語を話そうとしますが、意志・動作を伝えることに必死で「ちょっとのひと手間」は忘れがち・・・。
これは、もう訓練ですね。
何度も繰り返せば「反射神経」となり、自然と使えるようになります。

なに話してるの?

ここまででお腹いっぱい、という方も最後の例にお付き合いください。

Vil du ha kaffe?” 「コーヒー欲しい?」

冒頭と同じ例文です。一語を足してみましょう。

”Vil du ha kaffe, kanskje?”
「コーヒーが多分、欲しい?」

Kanskjeは「多分」という意味ですが、断定的な表現を和らげたい時に使える単語です。
このkanskjeを、ノルウェー語の歌うようなイントネーションでしり上がりに発音すると、自然なノルウェー語になりますね~。

いかがでしょう?
ほんの一言添えるだけで、よりニュアンスのある文章に変わっていきます。
上はごく一例です。
場面に応じて、単語をちょっと添えてみる。ノルウェー語レッスンでは、なるべく自然な会話に近づくお手伝いをしています♪

オススメのノルウェー人論!

遅まきながら「限りなく完璧に近い人々」(マイケル・ブース著)を読みました!
実はノルウェー語版を買ってはいたのですが、読破できず・・・日本語版に飛びついた次第です。

20161218-1

マイケル・ブースさんは奥さんがデンマーク人ということもあって、なかなか「完璧ではない」スカンジナビアを描いていて笑っちゃいました~。フィンランドとアイスランド好きの人には「優しい」本です。

結構ノルウェーも皮肉モード全開で描かれているのですが、著者がノルウェーでインタビューした一人がThomas Hylland Eriksen(トーマス・ヒラン・エリクセン)だったのでテンションUP!
ノルウェーを代表する文化人類学者で、著書は多数。私がオスロ大学に留学していた時に、彼は教授だったのですが、大学新聞で「一番モテる教授」として取り上げられていた記憶があります。大学のサイトにリンクを貼りますね。

今、上級クラスではエリクセンの”Et langt kaldt land, nesten uten mennesker“というテキストを使っています。

ぼろくなっていてすみません

ぼろくなっていてすみません

直訳すると「とっても遠くて寒い、ほとんど人間がいない国」ですが、どこを指しているかはお分かりですよね~。
エリクセンはユーモアと皮肉、そして深い洞察力と愛情をこめて外国人にわかりやすい「ノルウェーとは?ノルウェー人とは?ノルウェー文化とは?」を解説しています。

たくさん取り上げたいトピックはあるのですが、「あ、これがノルウェー人の理想像なんだ」と思ったのが”Allsidighet“という表現です。
直訳すると「包括的な」という意味でしょうか。”allsidige menneske“だと「いろいろな分野をカバーしている人、多趣味な人」のようなニュアンスですね。

エリクセンの文章を引用してみましょう。
「教師や看護師といった職業でも、家のリフォームを自分でこなし、自動車を直し、芝を刈るなどの能力が求められる。著名人のインタビューでは、趣味があることを強調しないとダメ。もし無趣味であれば、ノルウェー語で”fagidiot“(専門バカ)と呼ばれるリスクがあるだろう。(略)それを避けるためにも、allsidighetがノルウェーでは求められ、実際的感覚と豊かな人生が必要となる。」

この箇所をレッスンで読んだ時に「なるほどね~」と納得しました。
日本では、女性著名人に「得意な料理は?」といった質問がいまだに定番で笑えますよね。
ノルウェーではたとえノーベル賞級の人でさえ「趣味がない=専門バカ」と否定されてしまうのだ、と。確かに向こうのインタビュー記事では、男女を問わず家庭の話や趣味の話がよく見かけられます。あと自分一人では電車も乗れないとか発言したら・・・炎上ですかね??

マイケル・ブースによって狂気の沙汰扱いにされたナショナルデー

マイケル・ブースによって狂気の沙汰扱いにされたナショナルデー

北欧Bookの森百合子さんが、マイケル・ブースにインタビューをしました。
その中で、「印象に残ったインタビューした相手」という質問にトマス・ヒラン・エリクセンを挙げていて「わ~い!」と嬉しくなっちゃいました。
インタビューのリンクはこちらからです!

以前、ノルウェー在住30年以上の日本人にお会いする機会がありました。
「ノルウェー人を理解できたのは、つい最近です」という言葉を聞き、驚きます。ノルウェー人を理解するのってそんなに大変なのでしょうか?
答えはわかりません。ただエリクセンの著書は、迷える外国人にとって、とてもよくできたガイド本だと言えるでしょう。
ノルウェー人あるある」がたーくさん含まれた本書は、ノルウェー語学習者にとってもオススメですよ♪