人と違うってノルウェーでも難しい?

ノルウェーは個性重視の国だと思ったので、意外でしたね
ノルウェー絵本『うちってやっぱりなんかへん?』(トーリル・コーヴェ著、青木順子訳、偕成社)の寄せられた感想で、これが目立ちました。
主人公「わたし」は、60年代のノルウェーの小さな町で「おしゃれすぎた」両親やインテリア、服などに悩み「普通の暮らし」に憧れています。

2/19開催のイベント「北欧からの贈り物~絵本とわたし~」で作者トーリル・コーヴェさんのビデオメッセージでも「目立ちたくなかった、周囲と溶け込みたかった」と小さな頃の心境を語っていました。

「他者との違いに寛容」なイメージのノルウェー。
しかし、ノルウェーの文学作品には「人と違うこと」に悩む登場人物が存在します。
『スプーンおばさん』のアルフ・プリョイセンと同時代に活躍した「ノルウェーのおばあちゃん」ことアンネ・カット・ベストリー(Anne-Cath.Vestly)。
Aurola i Blokk Z“「Z棟のオーロラ」(1966年)シリーズでは、「家事育児をする学生パパ、外で働くママ」を持つヒロインのオーロラが、大人たちの偏見や心ない言葉に傷つく姿が描かれています。今でこそこうした夫婦もノルウェーではアリかな、と思いますが、60年代ではまだまだ専業主婦が当たり前でした。

『うちってやっぱりなんかへん?』の主人公「わたし」のお母さんは、建築家として働いていました。
お隣のお母さんは専業主婦。わたしは「いつも家にいてくれるなんていいな」と羨ましがっています。やはり60年代ですね。

現代ノルウェーを代表する国民的作家ラーシュ・ソービエ・クリステンセン(Lars Saabye Christensen)。
昨年、日本でも公開された映画「イエスタディ」の原作者です(オリジナルタイトルは”Beatles”)。
88年に出版した”Herman”「ハルマン」という小説では、小学生の主人公ハルマンの生活が描かれています。ここでもやっぱり「違っている」ことで傷つく子どもが登場するんですよね。

赤毛っていじめられちゃうんだ~とこの作品で驚きました。赤毛の女の子は、しょっちゅう髪の毛のことでいじめられます。
髪の毛つながりでいくと・・・主人公ハルマンは、段々、髪の毛が抜けていく原因不明の症状に陥ります。その過程で「いかに他の子どもと同じように見せるか」に腐心する両親と、そうした態度に傷つくハルマンの繊細な心情が描かれています。親は「良かれ」と思ってカツラを作ってあげますが、ハルマンの心は複雑です。

もっと現代の作品では「ノルウェーにもあるスクールカースト」が描かれています。
ブロンドできれいな女の子たちがクラスのトップ、メガネで地味な女の子はしょっちゅういじめられたり、からかわれている姿を学校生活を描いた”Kampen mot superbitchene“「スーパービッチたちとの闘い」(A. Sighild Solberg著、2014年)というヤングアダルト小説があります。

ブロンドでなければ、ロングヘアーでもない、しかもメガネのヒロインは「変わり者」の烙印を押されて、意地悪なブロンド女子軍団と立ち向かうストーリーですね。

・・・・とここまで紹介しましたが、いずれの作品も「自分や周囲に不満な主人公が、悩みながらも自分を受け入れ、そして次のステップに上がっていく」点が共通しています。

今までは本のお話しですが、ブログでもご紹介したノルウェーのテレビドラマ”SKAM”のシーズン3でも同じような展開が見られます。
同性愛の高校生Isak。男子高生に恋をしますが、同性愛である自分を否定し、かつ同性愛者であることが周囲にばれてしまうことに怯えます。
ですが”SKAM”では、予定調和を崩してくれました~。

https://tv.nrk.no/serie/skam

様々な悩みに押しつぶされそうなIsakは、友達に男性に恋している事実をとうとう打ち明けるシーン。
相手の反応が不安になるIsakと視聴者。でも友達はケバブを食べながら、まるで好きな女の子の話を聞いているように会話を続けます。
このシーンは白眉でした!

働くママが珍しかった60年代から、友達が同性愛者であることに動揺しない2016年。
感慨深いです。
本人たちにとっては、切実な問題なことには変わりありませんが。

そうそう。トーリル・コーヴェさんがイラストを描いている”Johannes Jensen“「ヨハンネス・イェンセン」という絵本シリーズでは、税務職員のクロコダイルが「自分は人と違っている」と悩んでいます・・・。ツッコミどころ満載の絵本シリーズですが、ひるねこBOOKSさんでのトークショーでお話ししますね~。

同店では、3/10まで『うちってやっぱりなんかへん?』のパネル展を開催しています!
あと1週間、ぜひステキなビジュアルと、巨大パネルで楽しんでくださいね~♪

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ありがたいことに『うちってやっぱりなんかへん?』は、いろいろなブログで書いていただきました!
未読の方、ぜひご覧になってくださいね~。取り上げて下さったの皆さまには感謝を申し上げます♪ 

Fukuya(北欧ビンテージショップ)

北欧区(北欧総合情報サイト)

リオタデザイン(建築事務所)

ひるねこBOOKS

ねんねんさん(ノルウェーサッカー研究家)

Lillakatten リラ・カッテン (北欧スウェーデン洋菓子&北欧スウェーデン語絵本)

Z会総合情報サイト

2月イベント情報~北欧からの贈り物 絵本とわたし~(Updateしました!)

とりあえず、2017年2月19日(日) は空けておいてください!
(翌週の26日も空けて下さると嬉しいです~。北欧ぷちとりっぷ開催!)

何も言わず、チケットを買ってくださいね~。テロップはこちらです!
・・・なんて「殿様商法」は通じないので、来年の2月19日になぜ「万難を排し、渋谷に行かなくてはいけないのか」説明をいたしましょう。

ノルウェーをはじめ北欧を愛する皆さまは、「トーキョーノーザンライツフェスティバル」(TNLF)の名前を聞いただけで「あ~、また渋谷が北欧になる季節!」と感慨深いでしょう。来年はどんな北欧映画に出遭えるのか楽しみですよね。

映画祭とともに、TNLF主催のイベントがあるのですが、来年は不肖・青木がイベントの1つに関わることになりました~!!
で、それが2/19なんです。

イベント情報は、TNLFのFacebookできれいにまとめて下さっていmるので、大部分を借用いたしま~す(おい!)。

イベント名:北欧からの贈り物~絵本とわたし~
日時:2017年2月19日(日) OPEN12:00 / START 13:00 (CLOSE16:30)
場所:LOFT9 Shibuya (ユーロスペース1階です)
チケット:前売券1,500円(ドリンク代別途) 当日券2,000円(ドリンク代別途)
*2017年1月7日10:00より イープラスにて前売券販売開始!

*本イベントは大人向けの内容となります。中学生以上は有料となりますこと、ご了承ください。

ノルウェー出身のアニメーション作家トーリル・コーヴェ(Torill Kove)。
米アカデミー賞の短編アニメーション部門に全作品がノミネートされ、TNLF2011で上映した『デンマークの詩人』は見事オスカーに輝きました。そのコーヴェ監督の最新作『わたしとモールトン自転車』が絵本になり、日本でも 『うちって やっぱり なんかへん?』 偕成社、青木順子訳)のタイトルで出版が決定!
TNLF2017ではアニメーション上映と共に、北欧の絵本の魅力を堪能するイベントを開催します!ノルウェーの愛されキャラクター・キュッパも登場しますよ~。

★短編アニメーション『わたしとモールトン自転車』上映
★トーリル・コーヴェ監督ビデオメッセージ上映
★ノルウェーの人気者!キュッパのアニメーション上映
★「うちって やっぱり なんかへん?」翻訳の青木順子のトークショー⇒作品解説やトーリルさんの他作品を紹介します!
★ゲストによる絵本愛あふれるトークセッション
☆スペシャルゲスト☆
稲垣美晴さん(猫の言葉社代表)
森百合子さん(北欧Book主宰) Continue reading