ノルウェー語テキストとジェンダーの視点

今まで、ノルウェーの子育て支援に代表される恵まれた福祉施策や男女平等に関する講演や、サイトやブログなどを通じて発信するとよく聞かれる質問は・・・。
「どうしてノルウェーは、そんなに男女平等が進んできたのでしょう?」ですかね。
答えはたくさんあると思います。ただ私自身、ここ数年実感しているのは「教育の力」です。

ノルウェーの「教育法」(Opplæringsloven)の「教育の目的」に、以下のような文章があります。
には、
教育は、民主主義、男女平等、学術的な考え方を伸ばすべきである。」(§ 1-1. Formålet med opplæringa)
わざわざ「男女平等」という言葉が入っているのが、おお、ノルウェーという感じですね。

法律に文言がただ入っているだけではなく、どのように実践をしているのでしょうか?
ノルウェーに「男女平等」や「ジェンダー学」といった科目は、小中高レベルではありません。
それなのにどうやって可能なの?と長年モヤモヤしてたんですよね~。

しかーし、灯台もと暗し。普段、ノルウェー語レッスンで使用しているテキストに答えがゴロゴロ転がってました!
レッスンで使用しているのは、ノルウェーで発行されたテキストです。利用対象者は、移民や難民さらに留学生など「ノルウェー本国で暮らす人」または「暮らそうとしている人」です。
なので、テキストの内容は、スーパーでの買い物や郵便の出し方、スマホの契約、さらには仕事探しなどとっても実用的。

テキストには、今のノルウェーの暮らしぶりがわかる写真やイラストが多く載っているのですが、ちょっとご覧ください。

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家事や育児をするのは男性だったり、タイヤの交換をしているのが女性だったりと従来の「性別役割分業」を踏襲しないような写真が使用されていますね。またサッカーをしている女の子の写真がありますが、国によっては女性がサッカー?と不思議に思う外国人もいるかもしれません。
さらには、「家にこもりがち」とイメージが強いムスリム女性がジムで運動しています。

これらの写真は、もはやノルウェーでは「当たり前」の風景です。別に「やらせ」ではありません。
ただ、ノルウェーには現在たくさんの文化圏の外国人が住んでいます。
家事育児=女性、サッカーやタイヤ交換=男性が当たり前と考える外国人は違和感を覚えるかもしれません。
なので、言葉だけではなく、ノルウェーの価値観も同時に学んでほしいという意図がテキストの写真に表れているのかな~と想像しています。

ノルウェーに行った日本人が「平日の昼間からベビーカーを押している男性」に反応し、写真を撮っているのも、それが日本ではまだまだ一般的ではないからですよね。
実はこうした日本人の行動は、ノルウェーの新聞だったか小説でネタにされてました・・・!

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・・・ということで、知らず知らずにノルウェーの「ジェンダーの視点が盛り込まれた」テキストやメディアに見慣れてしまうと、日本では「ええ?」と反応してしまうのは副作用でしょうか。
例えばこちらの新聞記事(朝日新聞、2016年2月21日)
教える側は男性識者一人、教えてもらうのは若い女の子だけ。「18歳選挙権」という大事なテーマなのに、女性識者や若い男の子はどこにいる??

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この違和感をTweetしたら、700以上RTされて、本人もびっくりです!

ノルウェー語テキストから、垣間見られるノルウェー的価値観。
言葉は、その国の歴史、文化、社会、風俗など様々な要素が映し出されます。
今回はジェンダーの視点で絞りましたが、様々な視点で「ノルウェー語テキストからノルウェーを学ぶ」ことが可能ではないでしょうか?

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若者たちと選挙 in ノルウェー

在日ノルウェー人が驚くことの一つに「選挙カー」があります。お約束のように「あのうるさい車は何なの?」と聞かれますが、日本人としても答えに窮しますね。
しかし、あれだけ違和感を覚える理由が分かりました!

9月の渡ノル時。オスロ随一のメインストリート、カールヨハンをぶらぶら歩いていると、若い子たちがたくさんいるのが目につきました。そして通りには、小屋?オープンスペース?みたいなものが置かれています。そこにはノルウェーの政党名が書かれて、若者たちは立っている人と会話をしていました。

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ちょうどノルウェーの地方選挙投票日を数日に控えた日だったので、「ああ、これか~」とピンときました。
ノルウェーでは18歳から選挙権があるのですが、若いうちから政治意識を持たせようと、学内・学外で活動を行っています(20の自治体では、16歳から選挙権あり)。
学校選挙」はその代表的なものですね。高校で、本番の選挙(国政、地方、国民投票)前に選挙を行うのですが、結果は大体的に報道され、実際の選挙に影響を与える力があります。政治家たちは学校を訪れ、生徒たちとディベートを行うのも「普通のこと」。

そして、私が実際に目にした光景は「Skoletur」=学校のツアーと呼ばれる活動です。
・・・って知ったかぶりで書いちゃいましたが、実は私も若い子たちに紛れて、各政党の小屋を周って「あの子たちは?」と質問して教えてもらったのです。
てっきり高校生かと思いきや中学生!!ほ~、エリート教育にあまり縁がないノルウェーですが、政治参加に関しては「早期エリート教育」を行っているのですね!

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中学生たちはノートを持ち、いろいろと質問をしていました。その姿を見ていると、質問する側も答える側もいろいろな肌の人が、改めてノルウェーとって移民系の存在は、ごく日常に溶け込んでいるのだな~と実感します。
置いてある政党のパンフレットは、ノルウェー語・英語以外の言語にも対応していました。お金はかかるけど、必要なことですよね。

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私も若い子たちに交じって、政党の人たちにHei!と近寄ります。すると「どこの地区で投票するの?」と聞かれるのですが、「実は観光客で、投票はできない」と説明しました。それでも「質問したいことがあるんだけど・・・」と続けると、快く応じてくれるノルウェー人たち!
例えば移民に厳しい進歩党(Frp)では「シリア難民について」、緑の党では「同じく環境政策を訴える自由党との違い」などもっともらしく質問をしましたが、投票権もない私に熱く政策を語る、語る!!

移民に厳しい進歩党のキャンディー。EU圏外国籍なので怖くて手が出せません

移民に厳しい進歩党のキャンディー。アジア人は遠慮しました・・・

説明する側は、大人も若い人もいます。特に印象的だったのが、労働党(Ap)のスペース。質問に答えてくれた女の子で、労働党青年部(AUF)のメンバーとのこと。
2011年の大量テロでAUFのメンバーは多数、犠牲となりましたが、どんどん新しい人が活躍しているのだな~と感慨深かったです。
説明する側も若い人だと、中学生や高校生の質問や問題意識を理解し、共感できるのではないでしょうか。

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投票日前の土曜日に、やはりカールヨハン通りを歩いていたら、テレビ局の仮設スタジオが出没し、ソールバルグ首相とストーレ労働党党首がいてびっくりしました!あまりに、距離が近くて写真をパチリ!

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政党のスペースも、首相もストーレ党首も、私が歩いている道と同じ高さ、同じ目線に存在していました。
このスタイルの政治活動だと、気軽に質問を投げかけたり、意見を求めることができますね。ノルウェー人の「民主主義」という言葉への強いこだわりが「バリアフリー」の政治活動スタイルとして実践されている、と感じました。

来夏から日本でも18歳から選挙権を持つようになりますが、主権者教育の在り方などどうなっていくのでしょうか?
カールヨハンを歩きながら、たくさんの刺激をもらいながら考えちゃいました。