各回のまとめ
ノルウェーについて学ぶサロン・講座レポート


第40回 「ノルウェーのケア付き高齢者住宅」
     〜山田義文さんの留学研究に学ぶ


開講日時: 2009年10月24日(土) 13:00〜15:00
参加者数: 14名

●テーマ紹介文
”福祉国家ノルウェー”のイメージはあっても、その最新事情については日本ではほとんど知られていません。
そこで今回のサロンでは、トロンハイムの大学に留学後、ノルウェーの高齢者住宅を専門にご研究を続けていらっしゃる山田義文さんをお迎えします。

人口の高齢化が急速に進む中、世界各国で様々な取り組みが行われています。
日本でも多種多様な高齢者施設が整備され続けてきました。しかし、施設間を転々とする人、特殊な状況に馴染めない人などが見られるなど、依然として多くの問題が残されています。
一方、Omsorgsboligerと呼ばれるノルウェーの高齢者ホームでは、介護が必要になっても、趣味や生きがいを続けながら安心して楽しく暮らせるように様々な工夫が備わっています。さらに、ホーム内には地域に開かれた機能が多数あり、周囲の人々にとっても気軽に足を運べる開かれた身近な存在になっています。
常に適切な介護を受けられる安心に加え、高齢者への尊厳が保たれてホームが運営されている点は日本でも学ぶところが多いかと思います。今回は現地での調査結果などを踏まえながら、住まいとして捉えたノルウェーのOmsorgsboligerに関して、建物と運営上の特徴などをご紹介します。
あわせて、山田さんご自身のNTNU(ノルウェー自然科学技術大学)留学に至るまでのプロセスや現地での生活体験などについて、写真を交えながら楽しくお話しいただく予定です。
ノルウェーの福祉や建築の専門分野にご興味のある方、留学を検討している方には大いに参考になると思います。もちろん、ただノルウェーのことを知りたいという方も大歓迎。
ノルウェー人の豊かなライフスタイルの一端を一緒に覗いてみましょう。
ノルウェー語ワンポイントレッスンは、「生活用品を購入する」です。

●講演内容

講師紹介/ 講演 背景と講座の目的/ノルウェーのOmsorgsboligerに注目した理由と留学に至るまでのプロセス:ノルウェーのOmsorgsboliger(ケア付高齢者住宅)に着目する意義、留学に至るまでのプロセスと留学体験 留学期間、ノルウェー科学技術大学、トロンハイム、住まい、講義、研究、余暇/ノルウェーにおけるヘルスケアシステム/Omsorgsboligerとは/Omsorgsboligerにおける平面計画の分析/Omsorgsboligerにおける平面計画の特徴/Omsorgsboligerの運営に関する実態/Omsorgsboligerの運営に対する評価/おわりに:高齢者に求められる居住環境への働きかけ、高齢者ホームの運営者や人的支援を行う人々に求められる居住環境への働きかけ
●ノルウェー語レッスン
生活用品を購入する Å handle dagligdagsvarer
●付録
新規参加の方には・・・語学資料「ノルウェー語とは」
       その他 ノルウェー大使館、フィンツアー、スカンジナビア政府観光局
            提供の資料多数

●ゲスト講師プロフィール
山田義文さん
2007年3月東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士後期課程修了。博士号(工学)を取得。
専門は、建築計画。特に、障害者の住宅改修研究、医療施設や高齢者住宅及び公共建築物におけるユニバーサルデザイン研究、伝統的町家を活用したまちづくりと高齢者支援、地域通貨を利用したまちづくり研究など。
東大在学中、2004年10月から2年間、交換留学生としてノルウェー自然科学技術大学(NTNU) に留学。この間、SINTEF研究所にてノルウェーの高齢者ホームの平面計画と運用の特徴に関する研究に従事。
現在、東京大学にて高齢者の居住環境改善に関する研究を続けながら、聖学院大学人間福祉学部人間福祉学科、早稲田大学人間科学部人間環境科学科にて福祉住環境に関する講義を担当している。

いつにも増して熱心な質疑応答がありました●主催者後記

本日は、「ノルウェーのケア付き高齢者住宅」というテーマでしたが、導入部に、講師の山田義文先生が留学時代をふりかえるトピックをご用意して下さいました。改めて、トロンハイムのNTNU大学の恵まれた環境に、オスロ大学のそれと比較して、感嘆した次第です。
私は本日のテーマは全くの素人で、ノルウェーの事例をお聞きしても日本の実態との比較があまりできませんでしたが、ノルウェーケア付き高齢者住宅の「個人、個性を大切にする」という大前提は、かの国の社会全体に共通したものだと感じました。
「北欧」の中でもとかくマイナーなノルウェーに注目し、ご研究を続けていらっしゃる山田先生が、今後もノルウェーからの事例を発表し続けられることを期待申し上げます。
あと印象的だったのは、本日の受講者の皆さまの真剣なご様子でした。たくさんの質問を頂き、ありがとうございました。
(Aoki)

今回、ノルウェーについて学ぶサロン40回目という節目の機会に講演させていただきましてありがとうございました。
留学前から青木先生の参考書を通してノルウェー語を学びながら、ノルウェー夢ネットのホームページも度々拝見させていただいておりましたので、何より皆様とお会いできたことを嬉しく思います。
短時間で発表する学会発表の場とは異なり、サロンでは現地で撮影した写真や留学体験のエピソードを交えながら、楽しいひと時を過ごさせていただきました。参加された皆様とお話を重ねた中で、同じノルウェーの中でも私が滞在していたトロンハイムの自然科学技術大学(NTNU)とオスロ大学の雰囲気が少し異なるなど、新たな発見などもありました。
帰国して早3年になりますが、ノルウェーにおける高齢者ケアに関わる状況も少しずつ変化を遂げています。新しい高齢者ホームの整備がある程度整った後で、運用上生じつつある新たな課題についても今後考察して参りたいと思います。
今回は遠方からもたくさんの方々からご参加いただきまして、本当にありがとうございました。
(Yamada)

私がノルウェーに滞在していた10年前、地元の老人ホームに見学に押し入って感じた驚きは今も心に焼き付いています。ノルウェーの高齢者たちは、ケアが必要になっても変わらず毎日を楽しんで過ごされているように映りました。
この春、初めて日本でノルウェーの福祉施設を建築計画の分野からご研究なさっている山田先生にお会いしました。是非、お話を伺ってみたいとの個人的興味から、今回のサロンの講師をお願いしました。
そんな経緯もあり、今回ご参加くださった方の中には高齢者の住まいづくりに熱心な建築の専門家の方々も多くいらっしゃいました。日本の現場を知る方々にとっては、日本とノルウェーの根本的な社会構造や人々の価値観といった条件の違いを思い知ることとなったようです。
主催者としては、私が10年前に感じた驚きを、少しでも多くの日本の方々に知ってもらいたいとの思いが強かったので、今回の山田先生のご講演は大変意義のあるものでした。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
(Yoko)

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