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2011年9月7日(水)
高校生が投票する地方選挙2011

前回の更新でも書きましたが、ノルウェーは地方選挙に向けカウントダウンが始まっています。
本選挙の前に、ノルウェーでは高校生が投票する「高校生選挙」が行われました。この結果は、本選挙には加味されませんが、影響を与える大事なものです。こういう制度って、若いうちから政治に対する責任感ができていいですよね。
早速、選挙速報をお伝えしましょう(Aftenposten紙、2011年9月7日)。

まず何と言っても、勝者は労働党(Ap)でした。得票率は29.7%で、2007年の高校性選挙より8.5ポイント上昇しました。
肉薄したのは、保守党(H)です。得票率は24.3%で、2007年の選挙に比べて6.8ポイント上昇しました。

逆に票を落としてしまったのは、左派と右派です。
左派社会党(SV)の得票率は4.9%で、2001年の数字では21.5パーセントだったことを考えると、深刻な後退ぶりです。
また7月22日のテロ事件で、容疑者との関連が取り沙汰される進歩党(FrP)も、得票率は16.5%で、前回より7.5%を低下しました。

識者のコメントによると、若者がかなりの左派や右派よりも、より穏健な党に投票したのは、やはり7月22日のテロ事件の影響があるのでは、と指摘しています。「連帯を求め、極端さを嫌ったのでしょう」と。

さて本選挙は、この高校生選挙の結果にどの程度影響を受けるでしょうか?ドキドキしながら結果を待ちたいと思います♪

国会前でくつろぐヤングたち

2011年9月2日(金)
ショート・ショート(労働党&ゴキブリ)

時すでに9月。
ノルウェーでは地方選挙がおこなわれる月です。ご存知でしたか~?
今日はいつもと趣向を変えて、ニュースを短くお伝えします。

●労働党(Ap)の党員数増加(Dagssvisen紙、2011年9月1日)

あの大規模テロでは、労働党の青年部が狙われました。
しかし、容疑者の思惑は外れ、労働党の人気は世論調査でも大幅にUPしており、また党員数も、7月22日以降、6200人も増えています。これは現在の党員数の10パーセントに相当します。
「この人たちは潜在的な労働党支持者だったのでしょう。ですが、テロ事件をきっかけにもっと積極的に党と関わりたいという心理が働いたのでは?」と、Hordaland地区の労働党リーダーはコメントしています。
選挙の結果は、さていかに?

●学生寮でゴキブリが増えています(Universitas紙、2011年8月31日)

以前も同じネタを書きましたね。
オスロにあるBjerke学生寮では、ゴキブリやら他の虫が大量に発生している模様。
ここに住むデンマーク人の留学生は、早速、それらの洗礼を受けました。
学生寮を管理する共同組合は、「こんなにひどいのは、歴史的に見ても初めて」とコメントしています。
私が留学していた10年前には、そんな惨状はなかったのですが・・・。
地球的な気候変動が影響しているのでしょうか?

これは保守党のキャンペーンガールです

2011年8月24日(水)
エリート教育が始まる?

今までも何度か書いたかもしれませんが、ノルウェーの学校政策は「平等主義」が根強いです。
誰もが平等な教育を平等な機会のもと、受けることができる。
これがノルウェーの学校の根幹です。
そうした政策に新たな動きがあったようなので、ご紹介いたしましょう(Aftenposten紙、2011年8月22日)。

オスロのMajorstuen学校に、音楽の才能が認められた子どもたちがこの秋学期から、集結します。25人の生徒のうち一番下は9歳。週に6時間の音楽の授業を受け、さらに普通のカリキュラムを受けることになっています。
25人は、オスロとオスロ郊外から入試を受けて選ばれた生徒たちです。

音楽以外の科目でも、「エリートたち」が集められる計画があります。
オスロの中学校で、上位1割の優秀学生たち(語学、理系)が近くにある高校で授業を受けられるようにしようという内容です。ノルウェーにはなかった「飛び級」ですね。

さらに、高校で上位1割の優秀学生たちが大学の講義を受けることができるようにする計画もあるようです。講義を受けるだけではなく、試験も受けられるするとか。はぁ~、何だか今までと全然違いますね!
そして出来の良い子たちは、他の生徒たちより1年早く学業を終えることができます。
オスロ以外の地方でも、同じような計画はあるようですが、ここまで先進的なのはオスロの学校だそうです。

しかしこうした動きには当然、批判もあります。
オスロの教育委員会は、「こうしたクラス別の対応は、教育法に反する」と批判的です。
一方、「エリート教育」の旗振り役、保守党(H)の提案はすでに現実のものになってきています。
Majorstuenの音楽クラスに入れた女の子たちは、「このチャンスはとても嬉しい」と素直に喜んでいます。

教育省のトップである教育大臣のKristin Halvolsen(SV=左派社会党)は、オスロの学校の動きに苦々しさを隠しません。
「オスロ市は、子どもたちが一番近くにある学校に行く権利を守って欲しい。そして計画は大事な子どもたちの権利の境界を越えるものだと思います。」
教育省は、子どもたちのレベルに合わせてクラスを分けることにも反対しています。
大臣はこう強調します。
「子どもたちは1つのクラスに属し、そのクラスは社会的、経済的、資質に関わらずいろいろな子どもが出会う場所です。教育法によれば、子どもたちを成績や、性別、人種によってクラスを分けることは認められません。」

確かに大臣のコメントは正論のように思えます。
ただこの記事に対するコメントをFacebookで読んだのですが、100近いコメントのほとんどは「ようやく優秀な子どもに対して、相応の教育が受けられる時期がやってきた」「スポーツができる子どもにはエリート教育がなされているのだから、他の科目でも同じこと」など肯定的なものがほとんどでした。

理想と現実の間で揺れるノルウェーの学校です。

みんな平等

2011年8月19日(金)
スウェーデン人から学べることはまたありました

ノルウェー人は、スウェーデン人について語る時、無理やり「上から目線」になるか、自虐的になるか、いずれにしてもニュートラルな状態ではないような気がします。
こうした好例になる記事を見つけたので、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2011年8月17日)。

そろそろノルウェーは新学期の季節。
いくら大学の学費は無料といえども、生活費や飲み会などお金はかかります。
ということで、若い学生たちは学業のかたわらでできるアルバイトを求めています。
若い人のためのジョブセンターUnginfoでは、18歳~25歳の若者たちが主にやって来ます。
どんな仕事が人気なのでしょうか?
「洋服屋またはカフェの仕事はとても人気があって、競争は厳しいです。本当は介護施設や保育園の方が仕事が多いんですけどね・・・。」

こちらのUnginfoにはスウェーデン人も、アドバイスを求めてやって来ます。
そして同センターの人によると、ノルウェーの若者はスウェーデン人を見習うべし!とのこと。さてどんな点が、違うのでしょうか?

「ノルウェーの若者は、履歴書や送付状を完璧に書きあげようと、すごく時間をかけます。そしてやっと1つの職に応募し、その結果をじっと待っているんです。
一方、スウェーデンの若者は50枚くらいの履歴書を持って、洋服屋やカフェをはしごして、自分を売り込みます。どちらの方法がより効果的かは明らかでしょう。」

どうりでオスロのカフェで働いている人はスウェーデン人ばかりのはずです・・・。
そしてよくノルウェー人は自嘲気味に語ります。
「スウェーデン人の方がサービスとは何たるか、分かっているのさ。」

「適材適所」ということですね。

憧れの職場、カフェ

2011年8月12日(金)
「パパと怒り鬼-話してごらん、だれかに-」出版プロセス(ニュース番外編)

書籍コーナーでもご紹介していますが、ノルウェーの「Sinna Mann」の日本語版が出版されました。私がノルウェーでこの本と出会ってから、2年以上が経ちました。
出版までの道のりは決して、平坦ではありませんでした。その過程について記してみたいと思います。

2009年、私は「翻訳者セミナー」に招待されて、ノルウェーへ行きました。主催はNorla(ノルウェー海外文学普及協会)と外務省です。
幾つかの講演を聞いたのですが、その中に、「Sinna Mann」の作者グロー・ダーレ(Gro Dahle)とイラストレーターのスヴァイン・ニーフース(Svein Nyhus)の夫妻の講演もありました。
私はすでにグロー・ダーレの作品を幾つか読んでいて、彼女のユニークな児童文学と大人向けの風刺作品に魅せられていました。なので迷わず彼女たちの講演を聞きに行ったのです。その時の様子は、旅のコーナーで触れているので、ぜひご参照ください。
「永遠の少女」という面持ちのグロー・ダーレと茶目っけたっぷりのスヴァイン・ニーフースは、絶妙なコンビネーションで、「Sinna Mann」のプレゼンテーションをしてくれました。
「児童文学で、DVなんてシリアスな社会問題を扱ってもいいんだ・・・。」
私は驚き、かつ感嘆し、グロー・ダーレ自身からもらった本を、日本に持って帰りました。

「これは日本でも紹介したい!」
そう思った私は、早速、ノルウェー語から日本語へ翻訳作業に入りました。ダーレ独特の繰り返しのフレーズや韻の部分をどう日本語にするか苦労しながら、何とか日本語版を完成させます。

さて、どうやって出版にこぎつけるか・・・。
私は知人で、DV防止活動を行っている中田慶子さん(DVながさき)に、「こんな本があるのですが興味ありますか?」と日本語訳と絵本を送りました。
中田さんは幸いにも気に入って下さり、それからここぞと思う出版社へ、訳と絵本を送って下さいました。
しかし、この本は「かわいい絵本」ではありません。逆にパパが怒りで真っ赤に燃えて、ママに飛びかかろうとする恐ろしいシーンが含まれています。
なかなか出版にゴーサインを出してくれるところはなく、行き詰まり感がありました。
中田さんは「DVながさき」の活動でとても多忙な方。その人を煩わせている、申し訳ない気分で何度か「もう出版をあきらめませんか?」と言い出すところでした。

そんな中、98年に「ノルウェー男女平等の本」を出版された荒川ユリ子さんに、中田さんは本書を見てもらいます。
やはり本書に魅かれた荒川さんは、八面六臂の活躍をされ、いろいろな人に本を紹介し、ついに本書に興味を持ってくれた編集者と出会うことができました。
それが本書の出版社である「ひさかたチャイルド」の佐藤さんです。昨年の冬でした。

中田さんや荒川さん以外にも、映画「アングリーマン」(Sinna Mann)から本書に興味を示して下さる方がいらっしゃって、企画書を書いて下さったり、映画の試写会に編集者を招くよう協力して下さった様々な方がいました。
また荒川さんが、本書の出版に賛同する方々を探してリストを作って下さり、そうした地道な努力が、出版へ大きな力となって働きました。

さて佐藤さんは、本書の出版に賛成してくれましたが、社内の編集会議があるということで、私たちは祈るような気持ちで結果を待ちました。しかも2回も!
編集会議の結果を待つのは、まるで受験の合格発表のようでした。
なかなか結果が来なかったのですが・・・。
佐藤さんのお陰で無事、2回の編集会議にパスし、出版へゴーサインが出ました!あの時は本当に嬉しかったです。
それが今年の初めでした。

そして私の拙い訳は児童書向けとは言えなかったので、児童書のプロの翻訳家に訳して頂くことになりました。「モモ」の名訳で知られる大島かおりさんが、なんと翻訳をして下さることになったのです。
大島さんのお仕事は本当に緻密で、短い一語、ルビのふりかたにも強いこだわりのある素晴らしいものでした。
大島さんの訳を見て、二人でディスカッションをする時間を持てたのですが、そこでたくさんの示唆に富んだ翻訳の教えを受けることができました。
「もしまた翻訳をやりたくなったら、相談しなさいね」と、厳しい仕事ぶりの中に優しさのあるお言葉を頂きました。憧れの人です。

ノルウェー大使館も本書の出版には早い段階から応援して下さり、心強かったです。また出版後も、出版記念のイベントをご提案いただきました。秋の予定ですが、ありがたい気持ちでいっぱいです。
本書を知るきっかけとなったNorlaも、本書に翻訳助成金を認めてくれました。hurra!

さらに本書には、監修者のオイヴィン・アスクイェム(Øivind Aschjem)さんがノルウェーのDV対策の現状という解説を書かれています。
オイヴィンさんとは何度もメールのやり取りをしているのですが、「こんなに仕事の早いノルウェー人がいるのね!」と驚くことばかりでした。
優しいお人柄で、東日本大震災の時には、何度も心のこもったメールを頂きました。今もメールのやり取りが続いています。

さらにさらに、日本のDV加害者対策の現状解説は、信田さよ子さんが執筆されています。
もともと中田さんが信田さんとつながりがあり、このように著名な方の執筆が実現しました。

帯は女優の東ちづるさんが推薦の言葉を寄せて下さいました。やはり本書出版の協力者、オフィスHの伊藤裕美さんが、橋渡しをして下さったのです。

こんなにも多くの協力者に恵まれ、8月に「パパと怒り鬼-話してごらん、だれかに-」は出版されました。
早くも本書を読んで下さった方々から反響、共感の輪が広がりつつあります。
それだけの力がこの本にはあるのだと思います。

私の貢献は、本書を「発見」したくらいですが、でも最初の直感は間違っていなかったのだ・・・。たまには自分を誉めてあげたいです。

いつの日か、これくらい「出版したい!」と思えるノルウェーの本と出逢いたい、と願っています。
まずはみなさま、「パパと怒り鬼-話してごらん、だれかに-」を読んでください♪もっともっと輪が広がりますように・・・。

Sinna Mann

2011年8月3日(水)
テロ事件とメディアの関係

私は、毎週土曜日発行のAftenpostenを購読しているのですが、ちょうど7月22日の翌日の新聞が先週、届きました。
東日本大震災の翌日の日本の新聞のように、大きな写真で埋め尽くされ、紙数は少なかったです。
衝撃の大きさが伝わってきました。

さて連日、事件にまつわる記事で紙面の大きなスペースが占められていて、例年の「夏枯れ」時期とは、えらい違いです。
「記者たちは夏休み、秋にまわすのかしら?」などと他人の夏休みの心配をするのは、以前、Aftenpostenの記者が「夏休みは7週間取るよ」と、驚きの発言をされていたことを覚えているからです。

人々はメディアの記事更新を熱心に待っている様子が分かりましたので、ご紹介しましょう(Aftenposten、2011年8月2日)。

まずタブロイド系新聞の躍進が目立ちます。
Dagbladet紙は50パーセントの売上増、VG紙は23パーセント増になっています。Dagbladet、VGのモバイルサイトは2倍上の利用がみられます。
両紙ともウェブ版の普及により、近年、大きく売り上げを落としていますが、やはりこれだけの大事件ともなると、紙を求める人が増えたことが分かります。

テレビも負けてはいません。
ノルウェー国営放送NRKは、民放のTV2よりも視聴率ではるかに上回りました。NRKのニュース番組の視聴率は通常の3倍だったそうです。
これだけ大きな影響を持っているメディアですから、報道内容にはしっかりとしたものを求めたいですね。

ノルウェーのマスメディア媒体

2011年7月27日(水)
容疑者の誤算

7月22日に起きたオスロの爆弾テロならびにウート島の銃乱射事件は、ここ日本でも大きく報道されました。
ノルウェーという国についてほとんど知らない人々は、今回の事件で、イスラム教徒とノルウェー人が根深い対立関係にあると印象を抱かれたかもしれません。
移民排斥や移民をより制限しようとする動きがノルウェー国内であったのは事実です。
しかし、これほどまでに暴力的な手段を望んだノルウェー人は、おそらく容疑者以外に存在しなかったのでは・・・と想像いたします。

ノルウェーでは各地で追悼集会が行われました。
そこでの様子をレポートした記事をご紹介しましょう(Aftenposten紙、2011年7月26日)。

人々は花やろうそくを持って、集まりました。その中には、ノルウェー人はもちろんのこと、イスラム系の住民が含まれていました。イスラム系の人々もまた、今回の大惨事を悼む心を当然ですが、持ち合わせていたのです。これは容疑者の誤算ではないでしょうか?

オスロのトイエンにあるIslamic Cultural Centreというモスクは23日、ドアを開け、1週間、開放をします。ショックや悲しみにうちひしがれた人々を救うためです。
モスクは、「この国に住み愛する人々は、テロ事件の後、非常に重く心痛める経験をしました」とメッセージを発表しています。

そしてイスラム系の人々は、キリスト教の建物であるオスロ大聖堂にもたくさん訪れました。犠牲者のためにろうそくを灯すためです。その中には、国内でも影響力のあるイスラム指導者も含まれました。

アーケルバルグ通りにあるモスクでは、このようなスピーチがなされました。
「私たちは一緒にテロと戦わなければなりません。これからも私たちはノルウェーが素晴らしい国家になるよう共に働いていきましょう。」

容疑者は、「イスラムからキリスト教を守る」といわば両者の分断を試みましたが、結果は却って、両者の歩み寄りを生んだ印象を受けます。
今度の事件を受け、次回の選挙では「移民問題」は大きな争点にはならないだろう、とも予想されています。今まで移民の制限に積極的だったFrP(進歩党)が、ブレイヴィーク容疑者との連想を避けたい、という思惑があるようです。

・・・事態は、容疑者の思惑とは逆の方向に進んで行くのは、ほぼ間違いないでしょう。
皮肉な結果です。

最後に、改めまして今回の事件により犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表します。
これからもノルウェーの現代を様々な角度から伝えることにより、一人でも多くの日本人にノルウェーという国の独自性を知ってもらいたい、と思っています。

肌の色の違う子供たちが共存しています

2011年7月20日(水)
おひとりさまは損ばかり?

ノルウェーのメディアを追いかけていると、「こんな団体があるんだ~」と感心することが多いです。
何年か前から存在は知っていたのですが、「一人暮らし全国団体」(Enslige landsforbund)もそうした団体の一つです。かの団体は、何かとノルウェーの政治は「家族政策」が中心で、予算の配分も偏っている。一人暮らし世帯の税や様々な負担の不平等の是正を訴えるといった趣旨のようです。ご紹介してみましょう(NRK、2011年7月18日)。

「一人暮らし全国団体」の副代表は、政治家たちは一人暮らし世帯の存在を忘れ、あまりにも小さな子どもを持つ家族へのサポートばかりに専心している、と考えています。
「私たちの団体やシングルの人たちは、子どもを持つ家族への手当てにもううんざりしています」とのこと。

例えば、子ども手当や育児手当など国の負担は、2010年、329億クローネ(私のちっこい計算機では日本円に計算できません。とりあえず15円を掛けてみてください。)
その他、子どもを持つ世帯の税控除は70億クローネ。

お金ばかりの話ではありません。
SV(左派社会党)が昨年こんな提案をしました。「全ての小さな子どもを持つ家族は、毎日、1時間、保育園の送り迎えに1時間の自由を認めよ」。
この提案に多くのシングルは「もう、いい加減にして!」と反応を示し、SVから離れる人たちもいました。「どうして子どものいる同僚のために、私がこれ以上、働かなくてはいけないの?」と。

正直、この記事を読んで、ノルウェー人でも日本人と同じように考えている人がいることに新鮮な驚きをおぼえました。
ノルウェーではともかく、子どもと子どもを持つ家族への手当や制度が手厚く、これに対しては国民的な総意があると信じていたのです。

とはいえ、「一人暮らし全国団体」は、全ての子どもを持つ家庭に反発を覚えているのではありません。
まず、裕福な家庭の子どもが保育園費で税控除を受けることに反対しています。
また総体的に、親の収入に関わらず、国の援助が受けられることにも、納得できない様子です。

唯一、シングルのための政治に少しは関心を示しているのは自由党(V)です。
「政治家にとって、子どもを持つ家族について触れることは価値がありますが、シングルの生活状況について触れることは、ある種、負の分野と言えるでしょう」と自由党党首のTrine Skei Grandeは語ります。
「どうしてこの分野がタブーになってしまったのか分かりません」。

もはや国民の4割が単身世帯のノルウェー。
にも関わらず、単身世帯への「差別」は存在します。
単身世帯に、電気代、市民税、テレビの受信料は単身世帯を直撃します。
なのに、平均世帯収入では、単身世帯(30歳~44歳)は子どもを持つ世帯の半額に及びません。あらゆる面で「負けている」シングルたち・・・。

いずれにしても、いろいろな立場の人たちが自分たちの主張を通すために、団体を作って活動する、というノルウェー人の大原則を見る思いでした。
当然、子どもを持つ家族の反論があると思います。
様々な意見があることが、健全な民主主義国家の姿ですよね?

私たち「勝ち組」!

2011年7月11日(月)
さらばアイスランド!

経済危機や火山の噴火など、ノルウェーよりさらに小国なのに話題が豊富なアイスランド。
私は留学時代に、旅行で訪れましたが、何とも形容しがたい自然に魅せられ、また機会があれば行きたいなぁと思っている次第です。
ですが当のアイスランド人たちは、国を離れたがっているようで・・・。レポートをご紹介しましょう(Aftenposten紙、2011年7月2日)。

経済危機は、2008年9月にアイスランドに襲いかかりました。
最近の欧州各国の調査によると、実に84パーセントのアイスランド人の若者が「外国で働きたい」、と答えています。そのうち約半数は長期間、外国での就労を考えているとのこと。
同じ調査で、外国で働きたいと答えるノルウェー人の若者は60パーセントで、長期間の就労を考えているのはわずか23パーセントにすぎません。ちなみに調査の対象年齢は、15歳~35歳です。

「外国で働きたい」と答えるアイスランド人。その行き先の一つはノルウェーです。外国での就労を考えるアイスランド人の60パーセントは「ノルウェーに行きたい」と考えているそうです。まぁもともとノルウェー人が移民してできた国だから、先祖返りということになりますかね。
ノルウェーへの移住は、アイスランドにあるノルウェー語学校の人気につながっています。例年、夏は休暇となる同校ですが、今年は熱心な受講者に押される形で、夏休みも開講しています。受講者の多くは看護師さんだそうです。
「この国にいると、倹約とかお金の話ばかりでうんざりしちゃっているの。」と看護教育を受け、ノルウェー語を勉強している女性が語ります。彼女は9月にノルウェーへ移住します。

経済危機以降、1万人のアイスランド人が外国へ移住しました。人口が31万の国なので決して小さな数字ではありません。そのうち3000人がノルウェーへ、ほぼ同数がデンマークへ移住しました。

一方、経済危機以降、「おいしい思い」をしている人たちもいます。そう、観光業ですね。クローネの価値が下がり、同国の観光業は好調です。そっか~、私も早いうちに行った方がいいのかしらん。

いずれにしても、アイスランドから外国への移住が長期間に及ぶと、国のシステムに様々な影響を及ぼします。
アイスランドの首相はこう語ります。「アイスランドは男女平等で世界トップであり、世界の中でも最も平和な国であり、子どもを産み育てるのに適した国です。たとえ為替レートが厳しくてもアイスランドは、それだけでは判断できない素晴らしい面を持っています。」

国の未来のためにも、こうした移住が一時的なものであるよう願いたいですね。

アイスランドの写真がないのでコペハーゲンの空港です

2011年7月8日(金)
デンマーク映画「光のほうへ」

映画館から出てくると、映画の世界と、今、自分がいる場所が合致しなくて、ぼーとしてしまいます。
デンマーク映画「光のほうへ」(原題:Submarino)を見終わり、銀座の中心地を歩いていると、一体何が現実なのか分からない気分で、街の中で少し途方に暮れた気分になりました。
華やかな銀座、そして、映画の舞台となった「世界一幸せな国」と称されるデンマークの首都コペンハーゲンの底辺の街並みはあまりにも違いが大きく、その違和感は、こうしてパソコンの前に座っている今でも続いています。

映画にひたすら「ハッピー」なものを求める方には、決してお勧めできる映画ではありません。
アルコール依存症の母に育てられた兄弟は、さらに下の弟の赤ちゃんをネグレクトの結果、失ってしまいます。その後、成人した兄弟は別々に暮らしています。
兄はアルコールと暴力の問題を、弟は麻薬中毒という問題を抱えて生きています。
画面に映し出されるコペンハーゲンは、観光写真で目にするそれとは大きく異なり、全てがグレーに見えます。
弟には子どもがいて、その子どものために彼は犯罪に手を染め刑務所送りとなり、兄もまたある理由で刑務所にいました。
二人が最後、フェンス越しに対面する場面は、演出過多を抑えたあくまでも淡々とした調子で、しかし痛切な余韻を残します。

悲劇的なエピソードの後、ラストシーンは、微かな希望を残したショットで終わりました。

私はこの映画がデンマークやノルウェーの大きな映画賞を取ったことをパンフレットで知りました。
「世界一幸せな国」という称号に、真っ向から挑むような本作ですが、こうしたリアルな数々の社会問題や家族問題を取り上げ、さらに本作をきちんと評価するデンマーク(そしてノルウェーも)の映画環境は素晴らしいと思います。

「家族愛」という言葉の持つ麻薬的な力。
その「家族愛」に負の面からアプローチしながらも、「家族って何なんだろう?」と観客が自問するような強い力を「光のほうへ」は持っていると感じました。

観る人を選ぶ映画かもしれません。万人向けではありません。
でも、私はこの映画に出会えたことに感謝しています。

「光のほうへ」公式ホームページ:http://www.bitters.co.jp/hikari/

PS:
パンフレットで鈴木優美さんが映画評を書いていて、驚きました!
鈴木さんとは何年も前にあるプロジェクトを通じて、知り合いになりましたが、今は音信不通です。ご活躍のご様子、何よりです☆

鈴木優美さんのブログが掲載されていましたのでご紹介します。
デンマークのうちがわ

「光のほうへ」


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