フィンツアー掲載エッセイ

「ノルウェー語講師・青木順子さんのエッセイ」として
フィンツアーのサイトに2010.11~2014.8の間、
全46回掲載されたものをまとめました。
【03】


ノルウェーツアー!(前編)

「今日でノルウェーから帰国して、●日目・・・」と未だ、ノルウェーを引きずっています。

前回のエッセイで書きましたが、
ノルウェー案内人 青木順子さんと行く ベストシーズンのフィヨルドとオスロ暮らしを感じる旅8日間
が催行されました。

自分で言うのも何ですが、「ホント、楽しいツアーでした!」と大満足です。

・・・とは言うものの実はツアー直前に、ノルウェーの空港でストライキが始まり、
「ちゃんと飛行機に乗れるの?」と不安を募らせていました。
最初のベルゲン空港到着時に、「空港ストライキ強制終了」の知らせを
現地ガイドさんから伺ったときには、もう安堵の気持ちでいっぱいです!

これでツアーに集中できる心持ちになりました。

まずベルゲンから列車でミュールダールへ行き、鉄道ファン垂涎の「フロム鉄道」に乗り換え、
皆さん、絶景を見ようと右へ左へ移動し、さかんにシャッターを切ります。

フロム鉄道は撮影で夢中!
フロム鉄道は撮影で夢中!

ダイナミックな「ヒョース滝」の前でストップし、水しぶきを浴びながら、
そして伝説の妖精「フルドラ」の登場を見て、「何かよく分からないけどすごい」という気分に。

ヒョース滝に現れるフルドラ
ヒョース滝に現れるフルドラ

終点のフロム駅到着はお昼前でした。

このツアーの特徴は、フロムでたっぷりと時間を取っていること。
宿泊は憧れの「フレトハイムホテル」。そこに荷物を預けて、
参加したい方だけ片道約4キロのOtternes(オッタネス)農場まで歩いて行きました。

Otternes農場のやぎさんたち
Otternes農場のやぎさんたち

フィヨルド沿いにのんびり歩いて西ノルウェーの素朴な景色を楽しみます。
目的のOtternes農場は、昨年も訪れたのですが、古い農場跡地と、
パーティースペースが設けられたユニークな場所です。
運営者のライラさんという若い女性が私のことを覚えていてくれていて、
今年もサービスでガイドをしてくれました。たくさんの山羊が私たち一行を
迎えてくれて、美しい風景とあいまって、心温まる体験ができました。

翌日はツアーのハイライトの1つ、「フィヨルド観光」です。
何と、素晴らしいお天気に恵まれました!私は何度もフィヨルドクルーズを
体験していますが、雨だったり、曇りだったりと、なかなか晴天が難しいことが
分かっているので、テンションUP。

私たち一行はクルーズ船の屋上階のベストポジションを確保。
アウランフィヨルド、そして世界遺産のネーロイフィヨルドの壮観な景観を満喫しました。

ノルウェーと言えばフィヨルド!
ノルウェーと言えばフィヨルド!

これだけのものを見ると、言葉は要らないですね。夢のようなクルーズでした。

バスと列車を使って再びベルゲンに戻ります。

「やっぱりベルゲンならお魚でしょ?」ということで、
ブリッゲン地区のお気に入りのシーフードレストランでディナー。
バカラオという干しタラを使った料理やオヒョウ、アンコウなど、
幸い、皆さん、「おいしい」とおっしゃって下さって、案内人は「ふ~」と安堵します。

おいしかったシーフード@ベルゲン
おいしかったシーフード@ベルゲン

この季節まだ日が長いので、ケーブルカーでフロイエン山に登ります。

そうそう、「雨の街」で知られるベルゲンもお天気が良かったのですよ。
だからフロイエン山から眺める夕暮れ時のベルゲンの街並みは、
それはそれは美しかったですね。

フロイエン山からの眺め
フロイエン山からの眺め

帰りのケーブルカーは、山頂のレストランでパーティをしていたノルウェー人団体と
かちあってしまい、まるで満員電車。周りのノルウェー人たちが私たちをみて
「中国人かな?」とささやいていたので、思わず、視線を移したら「From Japan?」と
尋ねてきました。

ノルウェー語で日本人だ、と説明すると、「でもノルウェーに住んでいるの?」
と尋ねてくるので、「いいえ、東京よ」と答えると、大げさに驚かれて、
「何でノルウェー語が話せるの?」から始まる一連の「尋問」(!!)が始まりました。
でも楽しかったです。

今回、こういう反応が多かったですね。私がノルウェー語を使うと、
「こっちに住んでいるんだよね」と聞かれ、「違う、東京だ」と答えると、
ひぇ~と驚かれるパターン。

日本人がノルウェー語をちょっと話すだけで、手放しに感動してくれる
ノルウェー人が愛しいです。

翌日の午前中もベルゲン観光。魚市場やブリッゲン地区を周ったりしてから、
キュッパのはくぶつかん」の作者オーシルさんと会うことにしていました。
日本でも大評判の絵本作者です。

お客様の中にもオーシルさんに会いたいという方々がいらしたので、
ご一緒にオーシルさんお勧めのカフェへ移動します。

オーシルさんから直々にノルウェー語版の「キュッパのはくぶつかん」を買い求め、
その場でサインをしてもらう、というレアな体験ができました。
オーシルさんは、丁寧にキュッパのキャラクターを描き、一人一人に
コメント付きの可愛いサインをして下さり、皆さん、カンゲキMAX。

オーシルさんのサイン大会♪
オーシルさんのサイン大会♪

こうしたエクストラなプチイベントも、自由にアレンジ可能なツアーだからこそ
実現できた、と思います。

楽しかった西ノルウェーを離れて、今度はいよいよ首都オスロへ飛行機で移動します。
どんな出会い、体験が待っているでしょうか?

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ノルウェーツアー!(後編)

さて、120%満喫の西ノルウェーから一路、首都オスロへ飛行機で向かいます。
オスロのホテル到着後、ご希望のお客様と一緒に中心地を見て回ることにしました。

私たちのツアーは「できるだけ地元の人と同じ」も、売り物なので、移動は公共交通機関です。

オスロで新名所となったオペラ座へ。途中、5月に来日したギスケ産業大臣を見かけたので、
思い切って「ギスケ!」と声をかけたら、「Hei!」(こんにちは)と返事してくれました。好感度UPです。

テレビ撮影をしていたオペラ座
テレビ撮影をしていたオペラ座

それからゆっくりオスロ一の目抜き通り、カール・ヨハン通りを歩きます。目印となる国会議事堂や
グランドホテルなど説明しながら、地元の友達が勧めてくれたレストランで、夕食を取ります。
おいしいし、値段もリーズナブル、お客様にもご満足頂けて、「ほっ」とします。

旅の楽しみ、おいしい料理♪
旅の楽しみ、おいしい料理♪

それから更に、国立劇場などを通ってホテルへゆっくり帰りました。そう、オスロの中心地は、
とてもシンプルでわかりやすいのです。

国会議事堂とは思えぬフリーダムな雰囲気!
国会議事堂とは思えぬフリーダムな雰囲気!

翌日は、高齢者センターへの訪問プログラムがありました。

日本人の現地ガイド・コーディネーターさんが、私たちを案内してくれます。
時間に余裕があったので、渋谷にオープンしたノルウェーカフェのFuglen本店にも
覘いてみました。それからバスに乗って、高齢者センターへ。

オスロのFuglen
オスロのFuglen

ガイドさんのご友人インゲルさんが、私たちを大歓迎して、案内をしてくれました。
定年後にボランティアとして働き続ける「元気!」を絵に描いたような女性。
生き生きと高齢者センターのことを説明してくれます。

13時半には、近隣の高齢者たちが続々と「夕食」を食べにやってきます。
え?時間が早すぎ?はい、そうですね。まぁ、「温かい食事」と解釈してください。
私たち一行も、ずいぶん早い夕食を頂くことになりました。

集まった方々は心なしか、少しきれいな洋服を着ている印象。
ここが一人暮らしの方の社交の場となっているようです。

インゲルさんは好奇心旺盛で、逆に私たちにいろいろと質問をしてきました。
元気を保つのは、健康と好奇心が大事なんだなぁと、しみじみ。

終始、温かいおもてなしを受けて、感激しながら、この場を後にしました。

高齢者センターの夕食タイム
高齢者センターの夕食タイム

18時からは、オプショナルプロブラムで、「ノルウェー人の家庭訪問」がありました。
私が東京で知り合った友人のヒルデさんのお宅です。

その日はヒルデさんの誕生日と重なったので、日本からプレゼントを持参していましたが、
「花束も用意しよう」との声があがり、皆さんで買うことにしました。高級ホテルの1階に
素敵な花屋さんがあると聞いて、そこに17時1分頃到着したら、なんと閉まっていました!
そう、17時閉店だったのです。私は必死の形相でドアをどんどん叩き、中の女性は
「もう閉まっているの」みたいなジェスチャーをします。負けずに留まっていたら、
開けてもらえました。「東京からわざわざ、オスロの友達の誕生日を祝いに来たの。
お花が買いたい!」と猛アピール。「ダメ、あきらめて」と断られましたが、何とか説得して、
私だけお店に入れてもらえました。

親切なお花屋さん
親切なお花屋さん

とてもスタイリッシュなお花屋さんで、ブーケもノルウェーとは思えない洗練されたもの。
何でも日本の「フローリスト」という雑誌で取り上げられたこともある、と自慢げに見せてくれました。
世界は狭い!

さて、紆余曲折ありながらブーケをゲットし、ヒルデさん一家を訪ねます。

私も初めての来訪でしたが、彼女は東京にいた時、都心の高級マンションに住んでいた
人なので、オスロでも立派な家に住んでいるんだろうなぁと想像していました。
住所からしても、「高級住宅地」です。地下鉄の駅から、豪邸、豪邸、豪邸。
私たちは写真を撮りまくって歩く、ちょっと怪しい集団になっていました。

で、目指す住所の家は・・・・。

想像を上回るシンプルモダンな豪邸。

ヒルデさんが私たちを見つけて門を開けてくれます。相変わらず、おしゃれできれいで、
快く迎えてくれました。

家の中は・・・。はい、雑誌にすぐに載れるレベルでした。古い家を著名な建築家に
改装デザインを依頼したとか。家具もおしゃれでしたね~。

ヒルデさん宅ダイニング
ヒルデさん宅ダイニング

家の中と庭を見せてもらい、ダイニングで、バースデーケーキとお茶を頂きます。
ヒルデさんは、バリキャリ女性ですが、小さなお子さんもいるお母さん。
ノルウェー人の「仕事と家庭の両立法」や「日々の暮らし」について、話してくれました。

これだけの豪邸に住んでいるのに、感覚が「普通の人」なのがノルウェー人らしいなぁと感心。

ノルウェーのバースデーケーキ
ノルウェーのバースデーケーキ

最終日は「終日フリータイム」でした。皆さん、思い思いの場所へ行かれます。

夕食は希望する方たちと一緒にレストランで食べました。ノルウェーで感じたこと、
旅の思い出、皆さん、話題が尽きません。私もいろいろと情報を補足しながら、
案内人というより「ノルウェー伝道師」になっていましたね。

そして最終日。私は数日、オスロに残るので、皆さんを空港まで送ります。

エアポートバス乗り場まで
エアポートバス乗り場まで

とても「濃い」8日間でした。素晴らしいお客様たち、そしてノルウェーでのたくさんの
素敵な出会い・・・。「案内人」冥利に尽きる旅でした。

ご参加くださった皆さん、本当にありがとうございました!

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小心者と講演

のっけから告知で失礼します。
9/28(金)18時より、ノルウェー大使館にて開催される「みゆき野映画祭」で、
講演をすることになりました。主にノルウェーの児童文学についてお話する予定です。
ぜひこちらのページをご参照ください。熱烈大歓迎です!

・・・とかって書いているじゃないですか。
確かに、「たくさんの方に来てほしい!」と心の底から思っているんです。
しか~し!実際に、「講演、申し込みました」とか生徒さんに言われると、お礼よりも
「申し訳ございません!」という気持ちが先に立ってしまうんです。
ちょっとこの心理を説明いたしましょう。

ノルウェー映画のプレゼン
ノルウェー映画のプレゼン

講演の依頼をいただく時が、おそらくテンションMAXです。
「うわ~、やった~、やります、やります!」みたいなノリで。
さてそれから、「そろそろ講演の準備をするか」という段階になりますね。
なんせ気がちっちゃいので、時間には十分ゆとりを持って臨みます。
そこでサマリーや、最近、使い始めたパワーポイントでツールを作り始めるんですが・・・。

徐々に、講演の依頼をいただいた時のテンションが、下がっていきます。
「あれも話したい、これも入れたい」みたいに「う~ん」と悩みますね。
ま、でも基本、ノルウェーに関するテーマなので、悩みも楽しいといえば楽しい範疇です。

読書サークルにて絵本紹介
読書サークルにて絵本紹介

今はさすがにやっていないのですが、講演なるものを始めた10年以上前は、
一字一句、原稿を書いていました。
鮮烈に覚えているのは、2000年、オスロ大学の留学を終えて、ノルウェー大使館で
開催された「ノルウェー文化サロン」で講演する際のこと。サマリーは事前に作っていたのですが、
それだけでは不安だったので、行きの電車の中で原稿を詳細に書きましたね。
ちょっとしたジョークまで書くというゆとりのなさ(苦笑)。はい、もういっぱいいっぱいでした。

緊張MAX、ノルウェー語イベント
緊張MAX、ノルウェー語イベント

その後、とある知人から講演を依頼され、やはり留学体験などを話す機会がありました。
同じく、「一字一句スタイル」で臨んだ講演後、「君は、書くものの方が面白いね。
話はつまんないよ」とメッタ斬りにあいました(涙)。
その言葉が以来、トラウマになったのは言うまでもありません。

ただ、確実に言えることは「場数を踏む」ことの大切さです。その後も、へっぴり腰スタイルながら
講演の依頼は受け続けました。段々と客席を見るゆとりが生まれ、一字一句書かなくても、
話せるようになったのです。

初期の頃の「ノルウェーについて学ぶサロン」
初期の頃の「ノルウェーについて学ぶサロン」

特に大事だなぁと感謝しているのは、フィンツアーで開催させていただいている
「ノルウェーについて学ぶサロン」の存在です。
2006年にスタートし、すでに56回を終えました。最初の頃は、お話するのも
気恥ずかしかったのですが、さすがに慣れますね。
あとゲスト講師の皆さんが素晴らしかったことも、勉強になりました。とりわけノルウェー人の
ゲスト講師は、最初は「この人で大丈夫かな?」というような学生ですら、プレゼンになると
堂々としていて、いかしたことを口にしている。刺激になりました!

一番最近の「ノルウェーについて学ぶサロン」
一番最近の「ノルウェーについて学ぶサロン」

今でも、もちろん講演前と講演中は緊張しています。「なんでこの依頼、引
き受けちゃったんだろ・・・」
って引き返したくなる感覚すらあります。
ただ昔と決定的に違うのは、客席を見て、反応を感じ、本筋とは関係ない冗談とかも言えるように
なりましたし、質問に対しても余裕をもって答えるようになったかなぁ・・・と思います。(って自己評価甘いですか?)
あと印象的だったのは、私が岡山で講演をした際に、参加者の方がとても誉めてくれました。
そして去年のノルウェーツアーに申し込んで下さったのです。講演、侮りがたし!ですね。

これからも、講演の機会は「ありがたいことよのぅ」という感謝の気持ちを忘れないようにします。
小心者の限界に挑みま~す。

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シュリンプパーティ

例えば港町のベルゲンに行くと、ボイルした甘エビのオープンサンドがたくさん売っています。
また、ノルウェーの夏、誰かの家に行くと、しばしば、エビがたくさん用意され、みんなで殻をむき、
パンに乗っけて食べるという経験は何度かしました。
「エビの頭においしいエキスがあるのよ!」とノルウェー人の友達が言うので、ちゅーちゅー
エビの頭を吸った経験があります。

ベルゲンの魚市場
ベルゲンの魚市場

そんなシュリンプパーティを、7月にノルウェー大使館で体験することができました。ノルウェーを
おしゃれに紹介する「Style Norway」主催のパーティに、北欧ヴィンテージショップStickaの
森さんに誘ってもらい、もぐりこむことができたのです。
大使館のプールを眺めながら、立食で、大量のエビを満喫。いつもは立食パーティが苦手ですが、
100%楽しむことができ、「このパーティを家でもやってみたい!」と野望を抱いたのです
(もちろん家にはプールなどありませんが)。

シュリンプパーティ@ノルウェー大使館
シュリンプパーティ@ノルウェー大使館

まずはノルウェー産のエビの調達です。北欧雑貨や食材を扱っている「アクアビットジャパン」で
販売しているので、注文しました。そして、何度かホームパーティを行っている「北欧部」の面々
(北欧ヴィンテージFukuyaの三田さん、Stickaの森さん、スウェーデン料理研究家のハナトモさん、
ノルウェーサッカー通のねんねんさん)にお声をかけ、9月に拙宅で総勢8人による「シュリンプ
パーティ」を行いました。

みなさん、私が料理に難ありなのを知っているので、十分すぎるほど差し入れを持ってきてくれました。
お蔭で注文したエビは余ってしまうほど・・・。

北欧に精通しているメンバーなので、話題は尽きません。「こんな新ビジネスどう?」って言いながら、
下らなさに爆笑する楽しい会でした。

差し入れのフィンランドのパイ from 北欧部
差し入れのフィンランドのパイ from 北欧部

さて東京は、10月になってもまだ暑い日が続いています。

知り合いのノルウェー人留学生J君と家で仕事をする必要があり、時間が遅いので夕食を用意する
ことにしました。「ノルウェーのシュリンプを用意して喜ばせよう!」と思いついた私は、もう一人の知人の
ノルウェー人留学生F君も誘い、3人で小規模なシュリンプパーティを催すことにしました。

実はちょっとした下心があったんです。
ノルウェー人とシュリンプパーティをやったら、おしゃれな雰囲気になって、このエッセイの
いいネタになるかなぁ~って。
「素敵な北欧人とのほっこりホームパーティ」みたいなイメージだったんですけど。
だから、食材や白ワインの調達など張り切りました。
当日。さすがに2人は、ノルウェー産のエビの山盛りをみて、「お~」と感動してくれました。
3人そろってエビの頭をちゅーちゅー吸いながら、バケッドに殻を剥いたエビを並べて、
ディルを乗っけて食べていきます。

お澄まし気味のF君とJ君
お澄まし気味のF君とJ君

で、肝心のパーティトークなんですが・・・。
まず、最近、日本で導入された違法ダウンロード法について、妙に詳しいトークが続きます。
はい、F君は法の成り立ちから罰則について細々と解説をしてくれました。なんでそんなに
こだわるのかなぁ~と不思議がっていると「日本で捕まったら、シャレにならない」という
恐怖感からのようです。

・・・これってパーティに適した話題なのかなぁと疑問を持つ間もなく、話は大学のカルト宗教
サークルになりました。
「オウム真理教」って懐かしい単語が、ノルウェー人の口から出てきます。現役大学生の彼らに
すれば、いまだにカルト宗教っぽいサークルが大学にあるのでは?という危惧があるようで。
ま、日本人の記憶から薄れたことも、ノルウェー人には怖いのだなぁと、何となく理解しました。

段々、話題がブラックに・・・
段々、話題がブラックに・・・

・・・でもこれもパーティに適した話題なのかなぁと疑問を持つ間もなく、二人はいろいろな
ノルウェーの方言をバカにしながら真似しています。あれ~?確かノルウェーでは、
「方言を話すことは立派な権利だったんじゃないの?」とナイーブな日本人は軽くショック
(ウソ、結構、こういうの慣れています)。お互いに、方言を誇張しながら爆笑し合っている図は、
はい、「素敵なホームパーティ」にぴったりでした・・・。

用意したスパークリングワインと白ワインは、あれよあれよと空になり、「場の雰囲気を変えよう」
と私はとっておきの美味しい紅茶をいれます。
ソファーに場所を移して、話題が少しはいい方向に変わるかなぁと期待したのですが・・・。

なぜか「selvmord」(自殺)という単語が耳に入ってきました。「ノルウェー出身」と日本でいうと、
「あ、自殺率が高い国でしょ?」と言われたことがあったとか。
そして、世界で自殺率の高い国はどこか、という統計を得々と披露するF君。

・・・この時点でもう心中、涙目になっていました。せっかくのパーティがどうしてこんなにブラックネタ
ばかりなの!って。あ、でも笑いは絶えませんでした。はい、「黒い笑い」です。
宴も終わりになり、「本当は今日のことエッセイで書くつもりだったけど、話題がネガティブ過ぎて、
どうすればいいの?」と正直に告白すると、さすがにF君とJ君は焦り始めました。しかしタイムアウトです。

当初はこのパーティを「素敵色」に脚色しようかと思いましたが、諦めました。
まだシュリンプは冷凍庫に眠っているので、次回こそ「おしゃれ北欧シュリンプパーティ」
を目指します!
・・・もしかして、ホステスの私に問題アリなのでしょうか?
だとすれば、何回やっても同じですね~。人格、変えます!

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ノルウェー首相がやって来る!ヤア!ヤア!ヤア!

それは1枚の封書がポストに入っていたことから始まりました。
中を開けると、「ノルウェーのストルテンバルグ首相来日レセプション」の招待状でした。実は、同首相は昨年春に来日予定だったのですが、震災で延期になっていたのです。
「こ、これは行かないといけないのかも!」とテンションUPします。

会場はホテルニューオータニで、完全、アウェイに乗り込む心境でした。周りの人に聞いても誰も行く、と言っていた人がいないので、「もしや知り合いが一人もいないかも?」と最悪のシチュエーションが頭をよぎりました。
でも嬉しいことに、受付で、ノルディックカルチャージャパンの井上さんにお会いしたのです。いや~ほっとしました。
会場に入ると、日本人と外国人と同じくらいいたでしょうか・・・。そこに長身の中村孝則さんがさっそうと歩いてきました。中村さんは公式の「ノルウェー親善大使」なのです。以前、シュリンプパーティでお話して、同じ高校出身ということで、かなりなれなれしくさせて頂きました。
井上さんが今度、ノルウェーの人気ニットデュオのArne&Carlosを12月に招聘するのですが、そのイベントで中村さんが一緒に対談すると聞きました。チョイ悪オーラの中村さんと、男性2人で編み物している彼らがマッチするのかなぁ~と不思議になり、「中村さん、本当にArne&Carlosのこと好きなんですか?」と意地悪く聞いてみたら、大のファンだということ。これは掛け値なしでホントみたいです!ますますイベントへの期待が高まりました。
Arne&Carlosの公式サイト:http://www.arne-carlos.co.jp

いつもかっこいい、中村孝則さん
いつもかっこいい、中村孝則さん

私自身、Arne&Carlosには思い入れがあり、ことあるごとに「ノルウェーの”おぎやはぎ“みたいルックスなんですよ」と触れ回っていました。(来月のエッセイで写真UPしますね)
実行力のある井上さんと会社のスタッフは、なんと本当に「おぎやはぎ」と対面させるべき所属事務所にコンタクトを取ったそうです。残念ながら、スケジュールの都合で実現できなかったそうで、残念!

・・・どんどん首相のレセプションから話がずれてきました。
さて金屏風の前に、とうとうストルテンバルグ首相がスピーチに立ちます。震災復興の話など真面目な話から、「sushiを箸で食べるのが苦手。しかもカメラの前で食べるのはもっと苦手」と場内を笑わせます。
それから平野復興相の音頭で「スコール!」(乾杯)となりました。

スピーチ上手な首相
スピーチ上手な首相

当日はシーフードビュッフェだったので、おいしいお魚を食べるべく、まずは食べ物に走ります。中村さんから「久兵衛のお寿司があるらしいよ」と教えて頂き、「おお~」と盛り上がってサーモン寿司をいただきます。

九兵衛のサーモン寿司
九兵衛のサーモン寿司

一通り食べたら、パーティの主目的である「社交」をせねば、と焦ります。
肝心の首相は、平民には近づけないシステムになっていました。首相の後ろに大使やらいろいろなVIPがつながっており、話すべき人と挨拶を交わすようになっているようです。
「これは無理!」
誰よりも小者であることを自覚している筆者は早々に、「大名行列」に見切りをつけました。

大名行列中の首相
大名行列中の首相

 

こんなにいる、ノルウェー関係者!
こんなにいる、ノルウェー関係者!

代わりに首相の夫人(彼女は外務省の人)とご挨拶したいなぁと思いました。
大使館の参事官に、夫人がどこにいるか教えて頂き、井上さんと一緒に近づいていきます。
思い切ってご挨拶させていただきました。昨年、DVを扱ったノルウェーの絵本の出版に関わったこと、ノルウェー大使館で関連講演会をさせて頂いたことをお話できました。
夫人とお話はわずかしかできませんでしたが、昨年の講演会はノルウェー大使館のご尽力なしには実現できなかったので、感謝の気持ちを伝えられほっとしました。

それからは、食べたり、また知っている人・知らない人とお話できて「パーティ!」という感じでした。
東京でこんなにたくさんのノルウェー人に会えるなんて、冗談なような感動のような・・・。
デザートと紅茶を頂いてから、井上さんたちと会場を後にしました。気づけば首相たちお偉いさんたちはとっくに消えていました。
「セレブはちょっとの時間しかパーティに参加しない、って本当なのね」とパーティの引き際について思いを馳せました。

来日中のデザイナー
来日中のデザイナー

さて。自宅に戻って、PCでメールチェックを終え、Facebookを開きました。すると・・・
「ええ??」
私の知人がストルテンバルグ首相と思いっきりツーショット写真をUPしていました。どうやら首相や大使たち一行は、ニューオータニから代々木にあるノルウェーカフェのFuglenに移動したようです。
「ノルウェー人ってみんなFuglenに行くよね・・・」呆れを通り越して感動しました。
こうしたVIPが思いもかけない場所に出没してサプライズってよくあります。
昔のクリントン大統領は焼き鳥屋にふらっと立ち寄った記憶が・・・。
アンジェリーナ・ジョリーはキディランドに寄って、ファンを喜ばせた記憶が・・・。
そしてストルテンバルグ首相はFuglenに寄って・・・・って何のひねりもないやん!(突如、関西弁)

もし皆さまの中でノルウェーの「セレブ」に会いたい、という奇特な方がいれば公式行事よりFuglenで張り込みしていた方が、いいかもしれませんよ~。老婆心ながら申し添えます。

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きっと会える ~アルネ&カルロス来日!

「強く願えば、会いたい人にも会えるんだよ」
というセリフを誰か有名人が口にしていたことを聞いたことがあります。
どうなんでしょうね~、実際のところ。やっぱりどうしても会えない人もいるのが現実でしょう。
でも私は、1つ夢を叶えました。会いたい人に会えたのです。

贈られてきたクリスマスプレゼント
贈られてきたクリスマスプレゼント

 

部屋のドアノブに飾っています
部屋のドアノブに飾っています

時はさかのぼって、2年前のクリスマス時期。
ノルウェーの友人から、クリスマスカードとプレゼントが届きました。中には、ニットで編まれた可愛いクリスマスボールと、黒縁めがねをかけ、似たようなルックスの男性が編み物している写真と新聞記事でした。記事に目を通すと、「今、ノルウェーで大人気の男性ニットデュオArne& Carlos(アルネ&カルロス)。伝統的な柄をモチーフにしたクリスマスボールのニット本が大人気」とありました。
2人のルックスは、日本のお笑い芸人の「おぎやはぎ」に似ていて、それ以来、サイトやTwitterなどで彼らのことを「ノルウェーのおぎやはぎ」と紹介しては、自分でウケていました。

おぎやはぎの画像と記念ショット!
おぎやはぎの画像と記念ショット!

私は編み物が全くできないのですが、アルネ&カルロスの新刊が出ると、早速、取り寄せてみました。今度は、「編みぐるみ」の本で、さまざまな人形に、いろいろなニットの洋服を着せていて、またまた「可愛い~」とキュン死寸前。
ノルウェー語の生徒さんたちに「ね?可愛いでしょう?」と、本を見せまわっていましたが、でも悲しいかな、自分では編めないのでした・・・。

本とお人形
本とお人形

そして事態は急展開!
なんと12月にアルネ&カルロスが来日する、というニュースを知りました。招聘されたのは前回のエッセイでもお名前を出したノルディックカルチャージャパンの井上さん。
11月のプレイベントにも参加し、「おお~!」と気分は盛り上がっていきます。
そしていよいよ12月5日。ノルウェー大使館で行われる彼らのプレゼンテーションとトークセッションに足を運びました。

楽しいトークショー
楽しいトークショー

大使館のホールには、彼らのクリスマスボールがデコレーションされたクリスマスツリーが飾られていました。うっとりして、でも次の瞬間には慌てて「写真、写真!」と何枚もシャッターを切ります。

ツリー

気が付くと、アルネ&カルロスのプレゼンテーションが始まっていました。
2人はトレードマークの黒縁めがね、そしてカジュアルな服装で、自分たちの家や庭など写真を映しながら、慣れた感じで説明してくれました。
駅の廃舎をリノベーションした家、そして英国式ガーデニング(でも植わっているのはノルウェーの気候に適した植物)。ご近所さんもいない人里離れた家で、二人は「編み物に没頭するには最高の場所」と言います。

プレゼンの後には、ミスターノルウェーの中村孝則さんとのトークセッションが行われ、全体を通じて、彼らが強調していたことがあります。
アルネ&カルロスは、モードの世界から出発しましたが、「うつろいやすい」モードの世界よりも、自分たちの本が出版され、長く読み継がれ、実際に人々が彼らの作品を編んでくれてくれることに喜びを見出していること。
そして、いろいろな国を旅し、ワークショップなどを通じて、たくさんの人々や景色に出会える現在のスタイルにとても満足しているということ。
私は彼らの本にサインをして頂いたのですが、そこには、「もう君は自分で編めるよ!」という言葉が添えてありました。
みんなが彼らの作品を編んでくれること、そのお手伝いを喜んでしたい、という2人の強い意志が伝わりました。

カルロスはスウェーデンとスペインor ブラジルのハーフだそうですが、でも2人の仕事のやり方、ライフスタイルって「ノルウェー人だなぁ」と思いました。
とんでもない僻地に住みながら、世界とつながり、自分たちの意志と信念を持って、それらを崩さない姿勢。頑固でブレないけど、柔軟性も備えている。あと何といっても、前向きさと楽観性は、まさに、Typisk norsk(典型的なノルウェー人)!

レセプションでは、話しやすいアルネと結構、お話できました。そうそう、彼に「実は、あなたたちにとても似ている日本の芸人がいるんだけど・・・」と言って、一緒にいた生徒さんが、スマホの画面で「おぎやはぎ」を見せたら、大うけ。カルロスにもそれを見せて盛り上がった時は、「ミッションコンプリート!」と頭の中で文字が浮かびました。会場ではニット好きの生徒さんを始め、Fukuyaの三田さん、Stickaの森さん、ノルウェーサッカー専門家のねんねんさんなど「北欧部」の面々がそろい踏み。

会いたい人に会える喜び。う~ん、最高ですね。
そうです、強く願えば会えると信じましょう!
あとやっぱりノルウェー人とはノルウェー語で話せると、リラックスしてくれることを実感しました♪

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今日はウキウキ~ノルウェー、スーパーマーケット巡り~

ノルウェーには世界に誇れる大自然がたくさんあります。
壮大なフィヨルド、息をのむような海外線、人里離れた孤島、そして冬の空を彩るオーロラ。
これを見ずして、ノルウェーは語れません。
でも、どうも俗物の私には、そこを訪れると鼻血ブーじゃないけど激しくテンションUPする場所が他にあるんです。それは・・・。
スーパーマーケット。
え?って思いますよね。ちょっとご説明しましょう。

ホテル近くのスーパー
ホテル近くのスーパー

こんなエピソードがありました。
昨年の「ノルウェーツアー」でお客様たちと別れた私と管理人のYokoさんは、ホテル近くのスーパーに入っていきました。大型店ではなく、むしろしょぼい品ぞろえでした。ツアーの案内人として何かと疲れていたのですが、スーパーに入った途端、なんか「ウキウキ気分」が底から湧いてくるではないですか!
気が付けば、二人で腰をかがめて隅から隅まで品物を吟味していました。
日本では売っていないような、ポテトチップスやチョコレート、Kaviarというパンに塗るペースト状のチーズみたいなもの、インスタントスープ・・・もう枚挙にいとまがありません!

歯磨き粉ではありません
歯磨き粉ではありません

こんな物はノルウェーにいれば、ごくフツーに買えるものです。でも、日本では手に入りません。
ノルウェーの通販サイトがあって以前、注文したことがあるのですが、3000円くらいの買い物で送料が7000円くらいプラスされて、己の愚かさに泣きました(涙)。
なので、私もYoko管理人にとっても、スーパーはまるで「アミューズメントパーク」のような聖地。
前述の美しい自然美のスポットと比すれば、ここは人工の楽園です。

Sushi Rice
Sushi Rice

ちょっとここでノルウェーのスーパーについて説明しましょう、
日本と同じようにチェーン化していて、Rimi、Rema1000、KIWI、ICA、COOPなど大手チェーンがあります。
店の規模でどれだけ、生鮮物を扱ってくるか違いがあります。
小さな店舗では、鮮魚コーナーや精肉コーナーがありません。なので、冷凍魚やパックのお肉ばかりになります。
中・大規模店舗では、鮮魚コーナーや精肉コーナーがあり、客は、「タラを3切れちょうだい」と店員に頼めば、ごろんと陳列されているタラを豪快に切って紙にくるんで渡すのです。

鮮魚コーナー
鮮魚コーナー

なので、ノルウェー人の友人が日本のスーパーに来た時に、「パック売りの魚ばかりで面白くない」と感想をもらしました。
私も最初の留学地ヴォルダのスーパー、Rimiには、冷凍のサーモンやタラしかなかったので、「え~、ノルウェーは水産国なのになんで?」とがっかりしたものです。

またここ近年の傾向でしょうか。
出来合いの総菜(デリカテッセン)が、特に大型店舗ではきれいに並んでいて、つい手に取りたくなります。
1人旅の人や夕食は安く上げたい人には、こうしたスーパーのお惣菜を利用するのも手ですね。

お惣菜コーナー
お惣菜コーナー

オスロでは、高級スーパーのJacob’sのデリカテッセンが見事です(場所はムンクの「叫び」のモデルになった場所の近く)。

Jacob'sのデリカテッセン
Jacob'sのデリカテッセン

あと私はお店の人に許可をもらって店内の写真を撮りましたが、いつも撮ってしまうのは「冷凍ピザ」のゴージャスすぎる品揃え!(苦笑)
いや~、最初は驚きましたよ、なんでこんなに冷凍ピザが売っているのって?でも学生寮に住んですぐに疑問が解けました。みんなよく食べているんです。他に目につくのは店内に「黄色いコーナー」がありますが、それは「タコス」ですね。ピザとタコスは2大学生大好き料理です。

冷凍ピザコーナー
冷凍ピザコーナー

そうそう、レジのシステムも違います。
日本が特別なのかもしれませんが、ノルウェーのスーパーではキャッシャーは座って、よく「Hei!」
と挨拶してくれます。そしてお客が買った品物をベルトコンベアに置き、キャッシャーはバーコードを読み込んで、品物を勢いよく「投げ」ます。そして「Pose?」と聞いてきます。要するにレジ袋がいるか?という意味で、有料です。
このシステムは高級スーパーのJacob’sも同じ。日本の紀伊国屋や明治屋のように、お店の人がきれいに袋に入れるなどというサービスはありません。

レジの人は座っています
レジの人は座っています

それにしても私が最初に留学した95年と今を比べると、本当に品物が増えました。野菜や果物の種類は言うに及ばず、怪しい(?)アジア系の食材までありますから。
スーパーを見れば、その国の生活が覗けますよね。お手軽に「社会科見学」されたければ、スーパーへGo!

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ノルウェーの鬼才、ポール・シュレットアウネ監督来日!

今年で3年目を迎える「トーキョーノーザンライツフェスティバル」では、北欧映画の上映を行っています。私は、最初の年から観客として映画祭を楽しんできました。
今年は、映画祭ディレクターの笠原さんから「ノルウェーの映画監督来日が決まりました!」と興奮気味のメールを頂き、2日間通訳を務めることになったのです。
通訳の仕事はいつも、特別な緊張感があります。とんでもない方言を話す人だったら?心配して、監督のポール・シュレットアウネさんの経歴を調べるとオスロ出身とわかり一安心。ほ~。
また別の心配がありました。監督の作品、「隣人」や「チャイルドコール 呼声」は、観客を不安や恐怖に陥れる怖い映画。おまけに監督の顔をネットで観たら、神経質そうな怖い顔・・・。監督自身も「怖い人」だったらどうしよう?と怯えながら、通訳初日、ノルウェー大使館に向かいました。

撮影中、思わずあくび・・・
撮影中、思わずあくび・・・

 

でもそうした不安は監督と最初に挨拶した瞬間に吹っ飛びました。
ごく普通のノルウェー人のようにフレンドリーで名刺なんて持っていません。
その日は、DVD用のインタビューといろいろな媒体の取材が入っていました。
監督も私も驚いたのですが、インタビュアーの人たちの下調べがばっちりで、核心的な質問が次々と投げかけられます。
監督は時差ボケで最初は辛そうでしたが、「いい質問だね。でも答えるのが難しいなぁ」とつぶやき、2分くらい黙ってしまうこともありました。それだけ誠実に応対してくれた証です。
同じ質問が何度か出ましたが、監督はうんざりした様子を見せません。「やっぱりこれだけの人になると人格も素晴らしいのだなぁ」と、横で聞いていて感心しました。
ノルウェー人らしさも垣間見れました。インタビューが終わると、すぐに外に出ては「新鮮な空気」を吸う、を繰り返していて、微笑ましかったです。

インタビュー中、熟考しています
インタビュー中、熟考しています

 

朝から夕方18時近くまで大使館にこもって、いよいよ夕食タイム!
移動の途中、今日の感想を尋ねてみると、「ジャーナリストが素晴らしい。ノルウェーの取材よりもずっといいよ」と嬉しいことをおっしゃってくださいました。
さてお店は、西麻布の「権八」です!そう、タランティーノ監督の「キル・ビル」のセットに影響を与えたお店で有名ですよね。私自身、行きたかったお店なのでテンションUP!

お客さんであふれる「権八」
お客さんであふれる「権八」

ノルウェー人だから当然、アルコールを飲むんだろうなぁと思っていたら、「ガス入りの水でいい」とのリクエスト。あれ?と思っていたら、次はビールをオーダーし、それからはずっとワイン、ワイン、ワイン・・・。それにつれて監督の機嫌もどんどん良くなっていきます。
そうだ、ノルウェー人は体力があるから、じっくり時間をかけて着実に杯を重ねるスタイルだったと思い出します。これはまともに付き合えません!

お酒が入ってどんどん上機嫌に
お酒が入ってどんどん上機嫌に

映画祭のスタッフの方々は途中退席し、配給会社の村田さんと監督と楽しく会話が続きます。村田さんが北欧諸国の国民性の違いを監督に尋ねると、待ってました、とばかり愛情あるジョークを飛ばします。
スウェーデン人:真夜中、全く車が走っていない道路でも赤信号を守る国民。
デンマーク人:愉快な性格と思われているけど、案外、ケチ。
フィンランド人:全然、知らない。
意外なことに監督はアイスランド人を激賞します。一緒に仕事をしたことがあるそうですが、「ダメなものはダメ」とダイレクトに言ってくれるので、その率直さが大好きとのこと。
「それってノルウェー人と一緒では?」と内心、思いましたが、黙ってふむふむと拝聴しました。

映画祭のトークショーにて
映画祭のトークショーにて

さて肝心の映画、「チャイルドコール 呼声」(原題「Babycall」)について触れましょう。
日本でも公開された「ジャンクメール」(1997年)では、ブラックながらもユーモアある愛すべき映画でしたが、「隣人」(2005年)から、がらっと作風が変わってきます。より過激に、よりバイオレンスに、迷宮のような世界が展開していき、観客を幻惑します。
「チャイルドコール」の主演は、今ではハリウッドでも活躍するスウェーデンの女優ノオミ・ラパス。
彼女は自分の息子を必死に暴力的な元夫から守ろうと孤独な、そして時に偏執狂的に闘っていきます。
物語はしかし、数々のナゾが散りばめられています。そして、ラストシーンの衝撃。今まで私たちが目にした「現実」とは一体何だったの?と根底からくつがえされます。
監督は「観客は、何通りにも解釈できる」と言っていました。現実と夢の世界のゆらぎは、冒頭からラストまで緊迫感を保ったまま、スクリーンで繰り広げられます。

監督はジャンルを超えた映画を作る天才ですが、素顔はごく普通の優しいノルウェー人でした。
インタビューは一般公開前にいろいろ掲載されると思いますので、ぜひ注目してくださいね。もちろん、映画もご覧になってください!
「チャイルドコール 呼声」は、3/30より「ヒューマントラストシネマ渋谷」他、公開になります。

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高校生の生徒さんたち

私が講師をつとめるノルウェー語レッスンには、いろいろな生徒さんたちがいらっしゃいます。目的も様々。「ノルウェージャンフォレストキャットを飼っている」という生徒さんもいれば、「ともかくノルウェーが好き」と、幅広いです。留学目的の生徒さんたちも、今まで数多く、ご参加いただきました。最初は大学や大学院へ留学、という生徒さんがほとんどでしたが、ここ2年、高校に留学しホームステイをする、という生徒さんたちが目立ってきました。

笑顔も若い!
笑顔も若い!

 自分の高校生時代を振り返り、ただ漠然と日々を過ごしてきた己の姿と比較し、高校からノルウェーなどという国に留学するなんて、もう「尊敬」の一語に尽きます。私も留学はしましたが、社会人を経て、向こうの大学へ留学したので、ノルウェーの高校やホームステイは未知の分野です。レッスンは、皆さん、目的がしっかりしているので、モチベーションが高く、部活や試験とレッスンと良く両立されているなぁと、またまた感心。私はノルウェー語を教えるだけではなく、ノルウェー人の気質や生活習慣など、なるべく周辺情報も提供するように心がけました。

フリートークもはずむテーブル
フリートークもはずむテーブル

 あと、高校生の生徒さんたちの言葉づかいや学校での様子を伺うのも、興味深かったです。ジェネレーションギャップ、ってやつですね。そっか~、今どきの高校生はみんな手作りチョコレートをバレンタインに配るんだ~とか。そっか~、今どきの高校生はFacebookやTwitterとかSNSを駆使しているんだ~とか。普段使っていない部分の脳が活性化し、ツヤツヤしたお肌から若さのオーラを頂くのを実感しました。

 そして、どんどんとホストファミリーが決まり、生徒さんたちの期待と不安もMAX!私も派遣先の場所や高校を調べたりして、「こうみたいですよ~」と教えてあげたりします。夏に出発されるのですが、皆さんとのお別れする日が近付くと、寂しいなぁ、と思ってしまいます。

 出発後。今は便利ですね~。それこそSNSで、皆さんの近況が分かります。元気かしら?大丈夫かな?ホストファミリーは?学校は?と思いをめぐらします。10か月って長いようで短いものです。

 昨年、ノルウェーから帰国した生徒さんが2人、家にご挨拶に来てくれました。正直、ノルウェーでの生活がどうたったのかを伺うのは、聞きたいけど怖い気持ちもあります。1人の生徒さんはあまり良くない高校だったようで、ずいぶんと孤独感があったようです。でも健気なんですよね~。「それでも、私はノルウェーに留学して良かったです」と2人とも口を揃えておっしゃってくれて、感無量になりました。

 また高校で留学された生徒さんの特徴は、若いだけあってすごくノルウェー語が上手になって帰ってくることです。しかもバリバリの方言。私も理解できないような、リアルな方言を披露してくれて、それも感動ものです。それだけ、生活に溶け込んでいたことが分かりますよね。

ノルウェーワッフル初体験!
ノルウェーワッフル初体験!

 今日は見事、大学に合格した元生徒さんとFuglenで会ってきました。彼女は大学でもノルウェーに留学したい、と真剣に話してくれて、こちらまで嬉しくなりました。そうなんです。サロンやセレクトレッスン、ノルウェー語のイベントに「昔、ノルウェーの高校に留学していました」って方が、今まで何人も参加して下さいました。たとえノルウェーとは関係のない仕事をされていても、ノルウェーに何らかのこだわりや愛着を持っているご様子は、それだけ、かの国と人々に魅力があるからでしょう。

元生徒さんとFuglenにて
元生徒さんとFuglenにて

 さて。これからも、高校生の生徒さんたちと1人でも多く巡り合いたい、そして留学のお手伝いをしたい、と心から願っています!

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「あなた」との距離

たまには、本業の「ノルウェー語」に、ちなんだお話をしましょう。

 皆さんは、日々の会話で「あなた」という単語をよく使いますか?
おそらく、あまり使わない・ほとんど使われないのではないでしょうか?日本語では「あなた」というよりも、きちんと名前で「●●さん」と呼びかけるのが一般的です。なので、パーティなどで顔は知っているけど、名前が思い浮かばないという人とばったり会ってしまった場合、「あ、まずい!」と焦ってしまった経験はありませんか?

 こんな時、ノルウェー語ではシンプルにdu(ドゥ)「あなた」という単語を使って、何の問題もありません。
それで何度も救われました!おそらく向こうも日本人の名前は覚えられないと思うので、お互いに「du」を使って会話は円滑に進みます。

duで続く会話
duで続く会話

ノルウェー語を習い始めた時(もう19年も前です!)、実はこういうことを習いました。
「知らない人、年上の人にはduではなくて、De(ディ)という敬称を使います」。そうDeのDは大文字です
日本ではノルウェー語の語学書はそれほどありませんが、80年代、90年代前半に出版された語学書を見ると、確かに「De」が載っていました。「ふ~ん、Deね・・・」と頭の隅に軽く入れて、95年に初めてノルウェーに留学しましたが・・・。

Deなんか使わないわよ!
Deなんか使わないわよ!

誰も「De」を使っていません・・・。誰からも「De」で呼びかけられませんでした・・・。
完全に「du」だけで会話は成り立っています。
そんなこんなで「De」の存在を忘れかけていたところ・・・。

Deってなに?
Deってなに?

99年からオスロ大学に留学したのですが、そこで膨大な量のノルウェー文学を読むことになります。
「人形の家」で知られるイプセンを始め、文豪と呼ばれる作家たちの作品は「De」のオンパレードじゃないですか~。これは、昔のノルウェー人の方がよりフォーマルな、丁寧な言葉づかいをしていたということでしょうか?
答えは「はい」です。
昔の人は、きちんと「De」を使い、相手をファーストネームで呼び捨てにせず、きちんと「●●教授」と呼んでいました。今では、相手が大学教授ですら、ファーストネームで呼び捨てOKです。

教授だけど、誰もそう呼ばないね
教授だけど、誰もそう呼ばないね

・・・というのが、「De」をめぐる背景です。なので、私のノルウェー語レッスンでは、「“De”という形は存在しますが、現代ではほとんど使われません」と説明しています。

著名な言語学者ですが、何か?
著名な言語学者ですが、何か?

 さてなぜ今回、「De」について取り上げたかと言うと、とあるノルウェーの新聞に載った記事がきっかけでした。ノルウェーの研究者が、この「De」の変化について発表したそうです。研究者曰く、「Deを使うと相手に、“距離感”を持たれるように人々の意識は変わった」。同記事では、Deを好むと思われる高齢者にもインタビューをしています。82歳と87歳の女性たちは言葉遣いの変化を10年~15年前から感じ始めて、「Deを使われないことに抵抗はありません。むしろDeを使われると、よそよそしく感じます」と答えています。

 さらに記事には興味深い事例が載っていました。
現代のノルウェーでは、「De」を使うと、「皮肉」や「冗談」と受け止められるそうです。
「これ本当?」と身近のノルウェー人に確認したところ、「そうだね。Deとか言われると、自分がバカにされている感じがするね」と答えるではありませんか!
「敬称」だったDeがそんな風に変化するなんて、やっぱり言葉は「生きもの」です。
だからこそ、面白い。目が離せないぞ、ノルウェー語!
・・・と感じる日本人は私だけ?

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