フィンツアー掲載エッセイ

「ノルウェー語講師・青木順子さんのエッセイ」として
フィンツアーのサイトに2010.11~2014.8の間、
全46回掲載されたものをまとめました。
【04】


外食回数とお家Love

同じネタの使いまわしはしたくない主義ですが、たまに「禁じ手」することがあります。

あまりも強烈な体験とかニュースは、「もう1回、伝えたい!」と思ってしまうのですね。

先日、弊サイト「ノルウェー夢ネット」の「最近の話題」というコーナーで、ノルウェー人が1年に平均何回、夕食をレストランで食べるかその回数を取り上げました。

1年に何回、外で食べますか?
1年に何回、外で食べますか?

その元ネタになった新聞記事を読んだ時に、驚いて、「この数字合ってる?」と何度も見直したほどです。

なんと10回。

「え?そんなに少ないの~?」と驚きましたが、「以前よりも回数が増えている」という記述にさらにびっくり。

わかってます、わかってます、ノルウェーの外食は全般的に高くつきます。

日本のように格安で食べられる店というのは、存在しません。

でも値段だけが、これほど少ない外食回数の原因なのか?何か文化の違いがあるのでは?と考えて、知人のノルウェー人に尋ねてみました。

40代の彼は、「10回」という数字に驚かず、「自分が小さかった頃、カフェやコンディトリー(ケーキを売っていてちょっとした喫茶コーナーもある)に昼間連れて行ってもらって、ケーキを食べるということはよくあったけど、夕食をレストランで食べるのは一度もなかったね」と答えました。

おそらくこれは、彼の家が特別ではなく、一般的なノルウェー人家庭の姿と推測できました。

「そういえばノルウェーにはファミレスないな~」と。強いて言えばIKEAのカフェテラスがそれに近い雰囲気でしょうか?

ではレストランで食事をする代わりに、ノルウェー人はどうやって友達やもっと親しい人と「親交をあたためている」のでしょうか?

前述の彼は教えてくれました。「お互いの家に呼び合って、夕食を食べるよ」。

そうだ、そうだ、私はなぜこの点に気付かなかったのでしょう?

私も数えきれないほど、親しい人でも初対面の人にも家に呼んでもらって、ご馳走してもらったではありませんか!

ノルウェー人は日本人よりも自宅に招くハードルが低いですね。

日本ではかなり親しくならないとお互いの家に行く、ということはないかと思います。ずっと付き合っている友達の家も行ったことない、も珍しくありません。

でもノルウェーでは、自分の家に人が来ることにほぼ抵抗がない感じです。

そのために、大きな家に住んで、部屋やお庭をきれいにしているのかな?と思うほど。

ノルウェー人が大好きなバカラオ
ノルウェー人が大好きなバカラオ

いつ人が来ても、「無問題」ですね。

そして家に招く人数も「4人から8人が一般的かな」と教えてくれて、またまたびっくり!

そんなに大人数呼べちゃうんですね~。これは家も広くないとダメですが、食器の数も揃ってないと無理です・・・。

夏はお外で♪
夏はお外で♪

それに比べて日本は、昔よりもホームパーティが一般的になっているとはいえ、それだけの大人数を呼べるのは、まだまだ限られたお宅でしょう。

こんなリビングならば大人数でもOK!
こんなリビングならば大人数でもOK!

となると、手軽に「外で食べましょう」となる流れです。

とはいえ、私もノルウェーに留学してから、以前よりも自宅に人を招くことが、気軽にできるようになりました。また人の家に招ばれることも大好きです。だって人の家って興味ありません?

「外は高い」と言って、スペーシーなお宅に素敵なインテリアと食器を揃えて、家に招くノルウェー人。

今晩のシェフ♪
今晩のシェフ♪

「家に呼ぶのは大変」と、たくさんあるお店から、TPOに合わせて外食をする日本人。

皆さんの好みはどちらですか?

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「出る杭は打たれる」ノルウェー版?~ヤンテ村の掟~

「出る杭は打たれる」ということわざは、いかにも日本的だなぁと思いませんか?

少しでも目立ってしまうと、持ち上げて一転してバッシングが起きるのは最近、顕著に感じます。と同時に、「ちょっとでも他人とは違うようになりたい」と個性や特質を磨こうとしている人がいる傾向もありますね。

僕は目立っちゃってる?
僕は目立っちゃってる?

さて戦前、ノルウェー・デンマークで活躍した作家の1人に、Aksel Sandemose(アクセル・サンデモーセ)がいます。デンマーク生まれですが、30歳になった時にノルウェーへ移住します。

昔の娘っ子のイメージ
昔の娘っ子のイメージ

たくさんの昔の作家が現代では忘れられている中、サンデモーセが今でも多くの人に覚えられているのは、彼が残したある「掟」が原因です。

1933年に発表した作品の中で、彼は主人公が住む「ヤンテ村」(Jante)の「掟」を記しています。引用してみましょう。

・お前は、自分が何者かであると思ってはいけない。
・お前は、私たちと同じくらいすごいと思ってはいけない。
・お前は、私たちより賢いと思ってはいけない。
・お前は、私たちより優れていると思ってはいけない。
・お前は、私たちより何かを知っていると思ってはいけない。
・お前は、私たちより上だと思ってはいけない。
・お前は、何かの役に立つと思ってはいけない。
・お前は、私たちを笑ってはいけない。
・お前は、お前のことを気にしている者がいると思ってはいけない。
・お前は、私たちから何か学べると思ってはいけない。

 ・・・引用していくうちに、段々と気が滅入ってきました・・・。恐るべし「掟」!

ちなみにこの「掟」は、「ヤンテ村の掟」(Janteloven)と呼ばれています。この作品はサンデモーセが育ったデンマークの小さな村をモデルにしていますが、同じような村は至る所にある、と作者の弁。

確かに、日本でもこの「ヤンテ村の掟」を実行している人、いるような感じもしますね。

この「ヤンテ村の掟」は世に出てから、すでに75年以上経ちますが、ノルウェーの新聞などを読むと、時々、「Janteloven」という単語を見かけることがあります。
政治家などの足を引っ張るような行為に対して、「あれは典型的なJantelovenが働いた」などといった例です。
では、ノルウェーでは未だに「Janteloven」が人々の行動に影響を与えているのでしょうか?

2月の「ノルウェーについて学ぶサロン」にゲスト講師になってくれたノルウェー人留学生は、「ヤンテ村の掟は、今ではそれほど社会に強く残っていません」と説明してくれました。
さらにノルウェー人の検証を得るべく、別の友人たちにもリサーチしたのですが、意見は一緒で、「昔ほどではない」という結果でした。
どうして?という問いに対して、昔に比べて現代では、他人が自分と違っていてもより「寛容」であり、また違っていることに「慣れてきた」と答えが返ってきました。そうよね、ノルウェー人は「寛容」だもんね、と納得。

いろんな人がいていい
いろんな人がいていい

さらに「都市化」の影響を挙げる友人もいました。たくさんの「移民」=外国人が住む都市の住民たちの影響が小さな村の住人たちにも影響を及ぼしている、と。今でも小さな村では、「みんながみんなを知っている」状態だそうですが、それでも以前に比べても「他人と違うこと」を認めている、との指摘がありました。

他人は他人
他人は他人

そうそう、答えてくれた友人の一人がもっと愉快な「掟」を教えてくれました。ノルウェーの有名な児童作家の「カルダモン・シティの掟」というものがあるそうです。

・他の人に迷惑をかけないで
・楽しく親切であること
・それ以外はしたいようにすればいいさ

 こちらの「掟」の方がノルウェー人的?と感じるのは私だけでしょうか。

この中でノルウェー人は2人だけ。分かる?
この中でノルウェー人は2人だけ。分かる?
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ベストシーズンのノルウェー!

日本だと6月=梅雨でじめじめ、という印象ですが、ノルウェー人によると「6月は一番いい月」という答えが返ってきます。
ということで、フリーランスの特権(ってあまりないのですが)を生かし、6月、「ベストシーズンのノルウェー」に旅行してきました。

数えきれないほどノルウェーには行っているのに、毎度悩むのが、「服装」です。
出発2週間くらい前から、1日に何度も天気予報のチェックをして、「え?こんな寒いの?」「え?雨ばっかり?」と知り、セーターやら雨用ヤッケなど荷物はどんどん増えていきます。
しか~し、オスロ空港に到着した時、空は晴れ、しかも思ったより暑い・・・。そう、汗ばんだほどです。「おかしいなぁ・・・」と思いつつ、到着日は極度の疲労と眠気でダウン。
翌日も晴れ!「でもいつ寒くなるか分からない」と少々、着ぶくれ気味に街へと繰り出します。
途中、歩いていて大きな公園があったのですが、ノルウェー人たちが、思い思いに「日焼け」に励んでいました。たとえ真っ白な肌が赤くなるだけだとしても、その健気さに泣けてくるほど・・・。

大体、芝生にシートを敷いて、女の子はビキニ、男の子は海パンスタイルで、「まぐろ」のように寝っころがっています。はい、あの大量の「まぐろ」軍団を見て、私は「築地」を連想しちゃったほどです。
一方、私は分厚い服装に汗ばみ、「せめて半そで1枚くらい持って来れば良かった・・・」と後悔するほどでした。嬉しい誤算ですが、とほほ気分です。

大量のノルウェー産「まぐろ」
大量のノルウェー産「まぐろ」

結論から言えば、私の1週間の滞在中、ずっとお天気には恵まれました。
そこで印象に残ったことはたくさんあるのですが、「短い夏、束の間の晴れをいかに楽しむか」というノルウェー人の情熱に圧倒された感があります。

夏の風物詩として、ノルウェー人のバーベキュー好きが挙げられます。
たとえ使えるのが1年のうち1,2か月だけだとしても、立派なバーベキューコンロを持っているお宅は多いです。コスパなんて関係ありません。
若い子たちは、「使い捨てバーベキューセット」を使用して、気軽にパーティをしています。
ある夜(といっても十分、明るいのですが)、大きな公園を通った時に、「火事??」と思えるくらい煙が各所でもうもうと立ちこめています。
「あ、使い捨てバーベキューセットでパーティしているのね」と理解しましたが、かなり異様な光景でした。

火事かと思いきや・・・
火事かと思いきや・・・

その他にも「夏」ならではのイベントに偶然、遭遇しました。
バイキング船博物館や民族博物館があるビィグドイ地区の「秘境」を友達と散歩中。
ちょっとした小高い道をあがると、いかにもノルウェーという感じの気持ちのいい山荘風カフェがありました。
そこでは、ジャズトリオが屋外ライブ演奏中で、観客たちは気持ちのいい天気と眺め、そして音楽を楽しんでいます。「ああ、この気軽な感じがいいなぁ」と私たちも、しばし足を止めて、演奏を聞いて雰囲気を楽しみました。

偶然見つけたジャズライブ
偶然見つけたジャズライブ

また後日、日本人の友達と大きな公園を突っ切ろうとしたら、大きな特設ステージが組まれ、オスロ・フィルハーモニーオーケストラが演奏をしているではないですか!
観客たちは、芝生に寝転んだり、食べたり飲んだりしながら、リラックス全開で上質なクラシック音楽を楽しんでいます。
もちろん無料イベントで、友達と「こういうところは、ノルウェーはいいよね」と粋な演出に喜びました。

公園のクラシックコンサート
公園のクラシックコンサート

たった1週間の短い滞在でしたが、まるで「水を得た魚」のように、時に汗ばみながら、オスロの東~西~南~北とたくさん歩き、満喫しました。
食べ物に旬があるように、旅にも「行くのにベストなシーズン」ってあるのだなぁと実感した次第です。

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夏休みから秋へ

イメージとして分かるかもしれませんが、ノルウェー人の夏休みは長いです。
3週間でも「短い」と感じるほどで、私の周りは4~6週間という人が多かったですね。
長い休暇の前に「休暇手当」というものが、支給されます。昨年度の給与の12パーセントが、なんと税の控除なく(←これ、ノルウェーではすごく大事!)もらえちゃうのです。

夏休み前、職場の「お茶会」
夏休み前、職場の「お茶会」

さてノルウェー人の夏休みは、職種にもよりますが、早い人で6月末、多いのが7月からスタートで、今年は8/5から仕事スタートという人が多かったようですね。
学校の新学期は8月15日頃でしょうか。ちょうど日本のお盆の時期が、向こうではスタートの時期と重なります。
日本では8月は「真夏」というイメージですが、ノルウェーでは「秋学期」が始まり、早くも初秋の雰囲気になっていきます。

長かった夏休み、ノルウェー人はどんな過ごし方が一般的でしょうか?
海外旅行に行く人は多いです。特に、Syden(シードゥン)と呼ばれる地中海沿岸諸国に行くのがポピュラーです。中でもスペインのグラン・カナリアはチャーター便がたくさん出て、ノルウェー人のみならず北欧人がたくさん訪れているようですね。
笑えるのは、ノルウェー人がスペインのリゾート地の地名に詳しいこと、詳しいこと。はい、感服いたします。

あとノルウェー人と言えば切っても切れないのが、Hytta(ヒュッタ)で過ごす夏休みです。Hyttaは以前の回でも触れたかもしれませんが、海辺や山にあるセカンドハウスですね。昔は電気も水も通っていない屋外トイレのHyttaが普通でしたが、スポイルされている現代ノルウェー人は、どんどん快適なHyttaを作るようになりました。

山のヒュッタ
山のヒュッタ

自分が持っていたり、家族のHyttaに行ったりもアリですが、レンタル・ヒュッタも多数、あります。ノルウェー国内はもちろん、デンマークのスケーエン地方(沿岸部)も人気です。

海辺のヒュッタ
海辺のヒュッタ

 

海辺のヒュッタ室内
海辺のヒュッタ室内

こんな感じで国を挙げて夏休み体制に入っているので、バスや地下鉄など公共交通機関の本数は減り、新聞は薄くなり、テレビも「手抜き」番組を流しています。もう全国民の総意で「だって、夏休みなんだもん!」って立派な言い訳です。

そんなノルウェーでも、夏に働いている人はいます。
まず学生のアルバイトが多いですね。私の日本に留学中のノルウェー人は、わざわざ帰省して、IKEAでバイトしていました。「日本にもIKEAあるのに・・・」と苦笑しちゃいました。
なので夏休み時期にお店に行くと、不慣れな学生バイトが対応するので、お目当ての本が見つからない、とかいろいろ不便がありました。でも「夏休みだから」と言い訳が通用しちゃうのが、ノルウェーです。

家や庭の手入れも大事!
家や庭の手入れも大事!

毎回不思議なんですが、あれだけの人が長期で休んでも、国ってまわっていけるんだなぁ、と。日本も、少しは「北欧型」を目指せばいいのに・・・と思ってしまいます。

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いい年だから祝いたい~ノルウェー人のお誕生日会~

日本人とノルウェー人と比較すると、いろいろな違いはあります。
その中でも、ノルウェー人の方が「自分の年齢をオープンにすることに抵抗がない」があるかと思います。
国民番号制で管理されて、バッチリ、生年月日が分かってしまうせいもありますが、女性でも堂々と「50歳よ」とかはっきり言うケースが多いですね。
そして年齢が如実に明らかになるのは、「お誕生日会」。
これも、ノルウェー人は日本人の感覚からすると、「いい年して、よくやるね~」というのが実情です。

日本では誕生日はレストランで、家族や友達で祝う、というケースが多いかと思いますが、ノルウェーでは「お家でお誕生日会」が普通です。家族や友人などを呼んで、「Gratulerer med dagen!」
(ハッピーバースデー)と歌っちゃったりします。
そしてノルウェーのお誕生日会に欠かせないバースデーケーキは、bløtkakeと呼ばれるものです。直訳すると「ソフトケーキ」ですね。
スポンジに生クリームをべっちょり塗って、上にイチゴやフルーツでデコレーションします。素朴だけどおいしいですよ。

バースデーケーキ
バースデーケーキ

お誕生日会はもちろん毎年、行いますが、キリのいい年齢は特に盛大に祝います。
まず25歳は、仕事を始めて、親元を離れる年頃。友達をたくさん呼んでカジュアルにお祝いする傾向があります。
次は30歳。25歳の時に比べて成長している年頃です。すでに家族を持つ人もいますし、仕事もさらに充実しています。25歳の時よりは、フォーマルなお祝いになることが多いようです。
40歳は、人によってはパーティ会場を借りて、ケータリングを頼んでお祝いする人もいます。スピーチもあるし、「なんかいい年だよね~」と実感できる頃でしょうか。
50歳、60歳とそれぞれの区切りで、盛大なお祝いは続きますが、75歳はおそらく盛大に祝う最後のお誕生日会でしょう。ほとんどの人はリタイアし、これまでの人生やこれからの余生に思いを馳せるのでは・・・と想像します。

子どもたちは無邪気にお祝い
子どもたちは無邪気にお祝い

私自身、ノルウェーで何回かお誕生日会に参加しました。
忘れられないのは、友達を訪ねた際に、彼女のお友達が60歳の大きなお誕生日会をする、というので、私まで招待してもらっちゃいました。
パーティスペースというほど華やかではない、でも素朴な造りの会場に、たっくさんの人が集います。食べ物・飲み物・デザートは、持ち寄りでした。私は日本人だから、「sushiはどう?」と提案され、巻きずしを持っていきました。もちろん、サーモン。あと奮発して、マグロも買いましたよ(ちなみに赤身です。トロはノルウェーでは入手不能です。)

持ち寄られた食べ物
持ち寄られた食べ物

会場の席は、事前に席順が決まっていて、何となく緊張しました・・・。
会が始まり、たくさんのスピーチ、あと歌う人もいて、段々、席から離れて、みんな思い思いに飲み物を飲んだり、食べ物をつまんで、いろいろな人とお話しします。
幸いに巻きずしは、食べて下さる人が多くて嬉しかったです。

・・・と「いい年してお誕生日会」が大好きなノルウェー人。
「お酒を飲む口実じゃない?」なんて、ツッコミは止めましょうね♪

集まったたくさんの人たち
集まったたくさんの人たち

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やっぱりノルウェー人!

ノルウェーを留学先に選んだ私は「変人」かもしれませんが、日本を留学先に選ぶノルウェー人も、決して「典型的な」ノルウェー人とは言えないかと思います。
・・・・ということで、私が仕事やプライベートで親しくしている、ノルウェー人留学生L君も、そんな「典型的」ではないノルウェー人。
L君は、お父さんがノルウェー人、お母さんがイギリス人というハーフで、お母さんからは、「ノルウェー人みたいに、ぶしつけになっちゃだめ」と言われて育ったようです・・・(英才教育?)。
そのせいでしょうか、挨拶抜きで用件しか書かない普通のノルウェー人より、L君からのメールは丁寧です。また日本に留学して以来、「適応力」が高いせいでしょうか、すぐに「Unnskyld」(すみません、ごめんなさい)を連発します。

ノルウェー人の群れ その1
ノルウェー人の群れ その1

L君は、夏休みにノルウェーへ帰り、大型量販店でアルバイトをしました。向こうからメールをもらったのですが、「ノルウェー人があまりに無礼だし、仕事もしないし、もう嫌だ!スウェーデン人の方がよっぽど気が合う」と不満たらたらの内容です。
東京へ戻ってきたL君から、いろいろと話を聞いてみると・・・。
まず、L君があまりに「Unnskyld」を言うので、周りのノルウェー人が「え?なんでそんなに謝るの?」ってびっくりされたそうです。確かに、ノルウェー人はそんなに簡単にUnnskyldって言いません。肩がぶつかっても、私だけがUnnskyldって言っていたことも何度かありました。
日本では「すみません」を深く考えずに言ってしまいますが、ノルウェー人からすると「別にLのせいじゃないのに、なんでそんなに謝るの?」と、L君がノルウェーでは「ヘン」という烙印を押されてしまいます。

ノルウェー人の群れ その2
ノルウェー人の群れ その2

他にも、ノルウェーおよびノルウェー人のことを憤慨するL君。
バイト先のお店で、レジに長蛇の列ができ、新しくレジを開けると、日本のように「お次のお客様からどうぞ~」と整然と人が流れるわけではありません。ノルウェー人は我先にと、新しいレジめがけて突進。そして阿鼻叫喚・・・。
分かるよ~と激しくうなずく私。だってバスが来ても、ちゃんと行列作っていないから、みんなバスの入り口を目がけて突進。そんな光景はもはや「日常茶飯事」で、もう呆れも驚きもしません。

ノルウェー人の群れ その3
ノルウェー人の群れ その3

「・・・もう、ノルウェーもノルウェー人もつくづく嫌になった」とL君。
よほど日本に適応しちゃうと、そう感じるのかなぁ~と思って、ま、それはそれで仕方ないよね・・・と思いました。
話題を変えて、最近、フリーになったL君に、「どういう女性が好きなの?」と気軽に尋ねたところ・・・。
「まずちゃんと自立していることが大事だね。経済的にも精神的にも。あと、自分の意見をちゃんと持っていて、僕が言ったことに安易に賛成するのではなくて、ちゃんと反論してほしい。相手にはちゃんと“自分”を持っていて欲しい」と、真面目に答えるL君。

女性が強い!
女性が強い!

おお~、君はあんなにノルウェー人に嫌気が差したのに、その考え方はまさに「The ノルウェー人」だ~。
続けて、「日本人の女の子って、すぐに“L君、すご~い”とか言うけど、こっちがびっくりしちゃうよ。別に大したことした訳でもないのに・・・。あと、なんで自分の意見を言わないのかなぁ。結婚を急いでいるのも、違和感があるね」とも。
「文化の違いなのかなぁ~」と不思議がるL君を見て、「三つ子の魂、百まで」ということわざを思い出します。
L君はノルウェーの表層的な部分=サービスが悪い、マナーが悪いと嘆いていましたが、根幹となる考え方は、ごくごく普通のノルウェー人なので、なんとなく安心しちゃいました。
これからも、「ノルウェー人あるある」ネタで、笑いあおうね、L君♪

ノルウェー人の群れ その4
ノルウェー人の群れ その4
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外国人が体験する「ノルウェーで働くこと」

ノルウェー留学中には、あまり気づかなかったのですが、ノルウェーの帰宅ラッシュ時間は、すでに14時台から始まっています。15時、16時となってどんどんピークになります。
「なんでこんなに早い時間に?」とフシギがる外国人。
ノルウェーの一般的な就業時間は、8時~16時です。残業は、あまり一般的ではありません。みんな、「我先に」と急いで家に帰る姿は、「執念」すら感じますね~。

帰宅ラッシュ時のバス
帰宅ラッシュ時のバス

こうした風景はノルウェー人にとっては、「ごく当たり前」ですが、カルチャーショックを受ける外国人は少なくありません。
新しくコカ・コーラ・ノルウェーの社長に就任したベルギー人も、当惑した様子で語っています。
「ロスでは、18時半前にオフィスを出ると、冷たい目で見られた。ブリュッセルでは、17時半までオフィスに残らないといけなくて、ロンドンでは17時前に帰宅する人は誰もいなかった。でもノルウェーでは、16時に帰宅する人が大勢いる。15時すぎのミーティングに呼ばれることに、みんなは慎重だ。16時に帰れるか分からないから。」(Aftenposten紙、2013年10月27日)
アメリカは、ヨーロッパより長時間労働というのはイメージで分かりますが、同じヨーロッパでも、ノルウェーはさらに「早く帰れる国」のようですね。

ごく当たり前の風景
ごく当たり前の風景

同社長は「早く帰る」ために、ノルウェー人は「とても効率的」とも驚いています。「たとえ100%会議の準備ができずに臨んでも、きちんと結論を出す。ノルウェー人は本当にユニークだ」と。

そして「早く帰れること」が、生活全体にどんなことをもたらすのか、彼は熱く語ります。「まず生活の質が上がった。これだけ早く帰れると、いろいろなことをすることが可能になる。例えば、毎日、妻と一緒に夕食を作ったり、夜にはクロスカントリーを楽しんだり。ともかく幸せだよ。」

このベルギー人の社長に限らず、ノルウェーで働く外国人は増えています。
ポルトガルからノルウェーへ移住し、14か月目の男性は、ウェブ会社で働いていますが、驚いたこととして、「コーヒーを飲み、ワッフルを食べながら、職場でリラックスできること。」を挙げています(Aftenposten紙、2013年10月27日)。
さらに、「柔軟性」を挙げる外国人も多いです。
誰が上司で誰が部下なのかよく分からないし、部下でも自分の意見を述べることができる権利がある、職場が「民主主義的」、女性は長い産休があり、男性にも「パパの育児休暇」が保障されている、などなど。

職場のケーキとコーヒー
職場のケーキとコーヒー

これらの事実も、ノルウェー人には小さい時からやはり「当たり前」のことかもしれません。学校では先生をファーストネームだけで呼ぶのは普通のことです。また、授業の内容に不満があれば、躊躇せず、先生に意見します。そんな光景に驚いたのは・・・はい、私です!

日本でも、ここ数年、「ワークライフバランス」という言葉が流行っています。私の友達が勤める会社でも、「残業禁止」にしたそうですが、それでは仕事が終わらないので、代わりに朝すごく早く出勤している、と聞いて、「なんか違う」と感じました。
日本でも当然、長すぎる労働時間の改善や出生率を上げようと様々な施策を試みていますが、それほど効果は上がっている印象はありません。

作業中!
作業中!

制度だけ北欧をまねても、根底に流れる「精神や価値観」を変えないと無理かなぁ、という気がします。
そしてそれは一朝一夕で身につくものではなく、小さい時からの「積み重ね」が必要でしょうね。
両親がともに仕事から早く帰り、家事をする姿を見て、学校では先生と対等の立場で意見をする。
一種の「ノルウェー流英才教育」と言えるかもしれません。

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クリスマスの奇蹟

昨年11月、こんな新聞広告がノルウェーの全国紙に掲載されました。
「孤独な未亡人で家族はいません。クリスマスイブに一緒に祝ってくれる人を探しています。報酬はちゃんと支払います。」

窓辺を照らす光
窓辺を照らす光

ノルウェーで「クリスマス」と言えば、家族や親せきと一緒に祝うとても大事なお祝いです。
それなのに、こんな広告が掲載されたことに、多くのノルウェー人は驚き、ショックを受け、マスコミは大きく取り上げました。

広告の主はReidun(ライドゥン)という89歳の女性。2年前に息子と兄弟を亡くし、彼女は本当に1人ぼっちだったのです。
連日の報道を受け、ノルウェー人の反応は早かったです。Reidunのもとには100通以上の「ぜひ我が家に来て一緒にクリスマスを祝いましょう」という手紙が届きました。Reidunによると、「スウェーデンやフィンランドのマスコミも取材に来た」とのこと。
彼女はたくさんの手紙を丁寧に読み、同じオスロに住んでいる親切な家族のもとで無事にクリスマスイブを祝うことができました。
そして今月の報道によると、やはり手紙をくれた別の親切な家族と、今年のクリスマスイブは過ごすそうです。とても晴れやかな表情が印象的です。

クリスマスマーケット
クリスマスマーケット

去年、私はこの記事を読んだとき、ノルウェー人がいかに「1人ぼっちのクリスマス」に心を打たれるか、そして何とか孤独な人を助けられないか、という強い思いに駆られるさまに、改めて「クリスマス」の持つ強い意味を感じました。

ノルウェー夢ネットが主催する「ノルウェーについて学ぶサロン」では、12月にノルウェーワッフルパーティを催し、ノルウェー人のゲストにクリスマスの過ごし方について話してもらいます。
時代ごとの流行はあると思うのですが、どのノルウェー人も、「クリスマスには家族や親せきが集い、おいしいディナーを食べて、プレゼントを交換し、リラックスします」とほぼ同じ内容を語ります。
「最近のクリスマスのトレンドは?」という質問に対しても、「特にない」とのこと。
それだけ、クリスマスは現代でも伝統が守られているお祝いなのです。

ですから、「家族で過ごす」という部分が欠落している人にとって、クリスマスは楽しみではなく、苦痛になるでしょう。
昨年、Reidunは「クリスマスイブは一人です」と声を上げました。これはとても勇気のいる行為だと思います。
昨年、マスコミが「孤独なクリスマス」に焦点を当てたお蔭で、今年も同じテーマが話題になっています。
「18歳以上のノルウェー人のうち10人に1人が1人クリスマス」という結果が、最新の調査で分かりました。
Reidunのような高齢者が孤独になってしまうのは、分かりますが、調査によると18歳~29歳の若者の1割がやはり1人クリスマスになるそうです。
ノルウェーは離婚率が高いですし、家族と祝えない事情がある人もいる、と想像できます。

クリスマスファッションのディスプレイ
クリスマスファッションのディスプレイ

ただ今年は、「1人クリスマス」を何とか防ごうと、ノルウェーの大手新聞が、「1人クリスマスの人」と、「1人の人を受け入れる家族」をマッチングさせるサイトを作りました。
「受け入れる家族」は、何人家族で、ノルウェーのクリスマス伝統料理でおもてなしします、など紹介文が書いてあります。少しでも「1人クリスマス」の人が減るように!と思わずにいられません。

人々がいつもよりもっと優しくなれる時期・・・・それが「クリスマス」なのかもしれませんね。

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統計で見るノルウェー

ノルウェー人と会話していると、「数字」に関する質問をよく受けます。
「東京の人口は?」、「失業率は?」という簡単な質問から、「出生率は?」「スカイツリーの高さは?」のような、ちょっと知識を要するものまでいろいろです。
え~と、う~んと答えに窮する日本人。一方、ノルウェー人は、自国の「数字」について詳しいことがほとんどです。
それは、SSB(中央統計局)のおかげなのでは?と推測しているのですが・・・。私もサイトの記事やTwitterでお世話になっているSSBと統計について取り上げてみましょう。

 まずSSBの簡単な紹介から。1876年設立。1000人以上のスタッフが働いています。毎日、複数の統計を発表し、それがその日のニュースになることが多いです。

 私が感心するのは、SSBのサイトトップページのデザイン。とてもすっきりして分かりやすいです。
人口、GDP、失業率といった基本のデータが一目瞭然。そして、調べたい統計の検索ができるのですが、キーワード「A-Å」というコーナーがあり、お目当ての統計にたどり着きやすいです。
この「A-Å」のコーナーをじっくり見ていると、「いろいろな統計があるのだな~」と感心しきり。
今回は、ノルウェーについてよく紹介される統計ではなく、「え?これ何?」といった統計を拾ってみましょう。

 Elgjakt(ヘラジカ狩り)が、律儀に統計になっています。2012年秋から2013年冬のシーズンでは、34600頭のヘラジカが哀れにも狩られちゃいました。前シーズンより1800頭減少しているそうです。しかし、どうやって統計取ってるのか・・・謎です。

狩りで一休み中
狩りで一休み中

 Frisør(美容院)という単語を見つけて、「これはどんな?」とクリックしました。2013年の美容にかけるお金は前年より3.3%増加したそうです。ふ~ん。
この統計で面白いなぁ~と感じたのは、項目のまとめ方です。
まず「PCの修理代」、「家財の修理代」と並び、「その他の出費」として、
1)クリーニング代、2)美容にかかった費用、3)葬式代
とまとめてあります。なんでこの項目が同じ表になるのか・・・・フシギですね~。

高齢者センターにも美容院
高齢者センターにも美容院

 Høyde(身長)は、徴兵時に計測された平均身長が紹介されています。ですから20代前後の男性の身長ですね。
ノルウェー人の身長というと、「高い!」というイメージですが、1880年の平均身長は170センチと現代の日本男性とあまり変わりない高さです。それからぐんぐん伸びて2010年には180センチです。食糧事情が良くなり、罹患率も下がり、すくすく成長していったようですね~。

背が伸びました!
背が伸びました!

最後にメジャーな統計もご紹介しましょう。「メディアバロメーター」です。これは、ノルウェー人は1日に平均してどのようなメディアを利用しているかの統計です。

グラフ

常にトップだった「テレビ」は、2012年に「インターネット」にその座を奪われました。これは納得できる内容です。それよりも私の興味を引いたのは、オレンジの線「ラジオ」の安定性です。2012年では「新聞」を抜くほどの利用率の高さ!
思えば、ずいぶん前にノルウェー人の友達の家にはラジオがかかっていました。そして私が毎年、夏に居候させてもらっている友達も、お気に入りのラジオ番組が幾つもありましたっけ。

勉強?それともネット?
勉強?それともネット?

 SSBのサイトは英語ページもありますので、「神秘のノルウェー」の統計に触れてみてください♪

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AとかBとか

ノルウェーでは、当然ですが、「血液型占い」なるものは存在しません。
おそらく、ほとんどのノルウェー人は自分の血液型も知らないでしょう。
・・・・という事実は知っていました。ですが、新聞のインタビューなどを読んでいると、「私はA-menneske/B-mennekseです」といった表現を見かけます。Menneske(メンネスケ)は「人間」という意味なので、「A人間」、「B人間」と訳せます。
これはどういう意味なのか?私は特に調べもせず、日本の血液型占いに倣って「A人間」=真面目、「B人間」=個性的、と勝手に推測していました。

みなさん、ですがこの解釈は間違いです。本当の意味はわかりますか?はい、そこの方!

昼間に働く人
昼間に働く人

簡単に言うと、「A人間」=朝型人間、「B人間」=夜型人間なんです。
何かのきっかけでノルウェー人から本当の意味を聞いた時、「え?そんな意味だったの?なんだ~」って少し肩すかしにあった気分になりました。

たまにはオペラ鑑賞
たまにはオペラ鑑賞

今回の原稿を書くのにあたり、改めて「A人間」、「B人間」について調べたところ、ノルウェー人の約40%は「自分はAまたはB人間」と感じ、残りの60%は「その中間」という調査結果があるそうです。

13時の夕食
13時の夕食

ただノルウェー人のライフスタイルを見ていると、「A人間」でないと日々のサイクルに合わないのでは?と思います。
通常の就業時間は、8時~16時と仕事のスタートは早いですよね。夏になると、勝手に7時くらいに出社して、14時には帰ってしまう強者も。
また、ノルウェーの子どもは伝統的に「早く寝かせる」のが良しとされています。
年配のノルウェー人の友人は、「移民の子どもたちは、あんなに遅くまで起きていて信じられない」と、夜遅い時間のバスで移民の家族連れを見るたびに驚いています。
確かに、昨年、もっと若いノルウェー人の友人宅を訪ねたところ、7歳くらいの子どもは20時には夜食を食べて、寝る準備をしていました(というより、お母さんがさせていました)。

寝心地の良いベッド
寝心地の良いベッド

月~木は頑張って「A人間」で生活した反動が、金と土曜に「B人間」へと変貌するのがノルウェー人なのでしょうね。
金土の夜、パブやバーは大賑わい。そこかしこでホームパーティも催され、とんでもないボリュームの音楽が聞こえてきます。
私が最初に留学していた田舎のカレッジでも、学生寮で19時くらいから軽く食べ物で腹ごしらえ&ビールを飲んで「下地」作り。22時過ぎくらいに、学生クラブに乗り込んで大騒ぎ。帰宅は3,4時といった感じでしたね~。よくサバイバルできたなぁ・・・・と遠い目になります。

大人のパーティでも酒量はすごい!
大人のパーティでも酒量はすごい!

当然、起床はお昼すぎ。日曜の日中はまるでゴーストタウンのようで、道にはビールの空き瓶がごろごろ転がっています。
こういう「平均的」ノルウェー人が「AでもBでもなくて中間」と答えるのでしょうか・・・?

学生寮のパ―ティ
学生寮のパ―ティ

「A人間」「B人間」の関連資料を読んでいると、「年齢による変化」も言及されています。
若い頃から年を重ねるにつれ、B→Aへ変化する、というもので、これは日本人でも同じでしょうね。
オスロの高齢者センターでは、13時に夕食が提供されていて、さすがに驚きました!
「A人間」の極みを見た思いです。

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