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ウィズ・スタイルマガジン 『北欧 NOW!』 
北欧ノルウェー着 ライフスタイルレポート
【01】

第10回 「ノルウェー人度チェック100」(2006年9月15日発行 vol.37)


 4月からスタートした「ノルウェーについて学ぶサロン」では、毎月異なるテーマを
取り上げています。
7月は「ノルウェー人探究」というテーマでした。その講座中、「ノルウェー人度
チェック100」というチェックシートを受講者の方々に答えて頂き、各人が
どれだけの「ノルウェー人度指数」か数値化してみました。
100の質問は、それぞれJa(はい)かNei(いいえ)で答えます。
質問のカテゴリーは、食生活から労働、精神など11項目。実際の設問を少し引用
してみましょう。

・毎日の朝食、昼食がまったく同じメニューでも平気
・回答待ちのメールを出してから返信まで3日以上は待てない

上の質問にJa、下の質問にNeiと答えた方は「ノルウェー人度」に2ポイント加算
されます。
確かにノルウェー人の朝食・昼食パターンは決まっていますし、メールの返事は
「来るだけありがたい」という気持ちで臨まないと、ノルウェーでは暮らせません。
今のは、比較的「簡単な」質問ですが、今度はどうでしょうか?


・オーロラは北欧の自然現象の自慢。オーロラを見ずしてノルウェー人とは言えない。
・会社の就業時間中に「誕生日会」をやるのは馬鹿げている。

上の質問はちょっと「ひっかけ」です。北欧といえばオーロラというイメージが
定着していますが、現地で暮らしている人は、それほど執着していません。
現に、「オーロラを見たことがない」というノルウェー人に会ったことがあるほ
ど・・・。
ですから、この問いはNeiと答えた方が「ノルウェー人度」のポイントが加算されます。

下の問いは、ノルウェーの職場では、自分の誕生日にケーキを持ってきて、みんなで
「ミニ誕生日会」をやるという「習慣」から作ったものです。
答えは、Neiと答えた方が「ノルウェー人度」のポイントが加算されます。


この設問は私ではなく、一緒に講座を運営しているYさんが作成したもの。
テスト段階で最初の「試験者」になった私は、一つ一つの設問に「そうそう、
ノルウェー人ならば、こう答えるよね。でもやっぱり私は逆を選ぶなあ」と
思いながら、結果は56点でした。
「時々ノルウェー人」レベルです。
ノルウェーに憧れつつも、根は日本的なのかもしれません。

この「ノルウェー人度チェック100」はサイト上でもUPしました
http://norwayyumenet.noor.jp/hp/typisknorsk/typisknorsktest100.htm

今までの「受験者」の方の平均点は56点くらいです。
逆に、あまり「ノルウェー人度」が高すぎる人だと日本の会社や社会で息苦しさを
覚えてしまうかもしれませんね。


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第9回 「ノルウェー人が日本で観光すると・・・」(2006年8月15日発行 vol.35)


 ここ2、3週間の間、日本に旅行中のノルウェー人家族2組と別々に食事をする
機会がありました。私の直接的な知り合いではありません。
私の日本人の知人を訪ねてきたノルウェー人ご一行です。
2組のノルウェー人家族には接点はありませんでしたが、日本での観光パターン、
その他興味深い共通点が幾つかあったので、挙げてみたいと思います。

まず第1に・・・。
ノルウェー人の夏休みは長い!もちろん、そんなことは分かっていましたが、
私が「夏休みは5日間」と言うと、「私は5週間」という返事が・・・。
「5」だけは一緒でしたけどね。「そんなに休みが短いなんて、本当に
かわいそう」と初対面の人に同情されてしまいました。
きっと内心「日本に生まれなくて良かった」と思っていたことでしょう。

2組とも、日本の滞在は1週間。まず東京で2日ほど過ごすと言うので、「この
あとの予定は?」と尋ねました。
すると、1組目の家族は、「関西、広島」との答え。2組目の家族は、「京都、
奈良、神戸」との答えでした。もちろん私も、京都や奈良に旅行したことは
ありますが、もう何年も訪れていません。新幹線に乗れば、大した時間も
かからず行かれることは分かっていますが、すっかりご無沙汰です。

これは要するに、日本人がノルウェーに旅行する場合、オスロだけではなく、
西ノルウェーの観光都市ベルゲンに、殆どの人が足を伸ばすことと同じ現象
なのかもしれません。
一方、オスロに住んでいるノルウェー人は、そんなにしょっちゅうベルゲンに
行く人は商用を除いて少ないでしょう。
「ベルゲンに行ったことがない」というノルウェー人にも会ったことがあります。

そして、会食をしたレストランでのことです。
料理はコースで、飲み物は各自注文をしたのですが、若い女の子(16歳と17歳)
は必ず「コーラ」しか注文しない、ということも2組の家族で共通でした
(大人はビール)。
確かに、ノルウェー人はよくコーラを飲んでいるという印象を持っていました。
でも、お店にはもっとたくさんのメニューがあるのに、手堅く「コーラ」
一筋・・・。
個人差がありますが、あまり食に関して冒険しない・・・という傾向がある
かもしれません。

ノルウェーでも「日本人観光客はカメラを持って、せわしなく動き回っている」
というイメージが定着しています。
日本を訪れるノルウェー人は圧倒的に少ないですが、意外と共通項が多いかも
しれません。
そうそう、カメラといえば。出会ったノルウェー人たちは、最新式のデジカメを
嬉しそうに見せてくれました。もちろん、秋葉原での買い物は外せませんね。


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第8回 「ノルウェー・夏の風物詩〜憧れの夏至祭、そしてサマースクール〜」
                                          
(2006年7月15日発行 vol.33)



 ノルウェーという国と関わりを持つようになってから、10年以上が経って
しまいましたが、いまだに果たせない「夢」があります。
それは、「ノルウェーの夏至祭」を体験するということ。
もともと、夏至祭には2つの意味があり、1つは単純に「1年で1番日の長い日を
祝うこと」という昔からの風習です。
そしてもう1つは、キリスト教の聖ヨハネの誕生日が6月24日にちなんで、
宗教的な祝祭という側面があるのです。

ノルウェー語では、夏至祭のことをSankthans Aften(サンクトハンス 
アフテン)と言いますが、Sankthans=聖ヨハネ、Aften=夜を意味します。
ただし、イースターがそうであるように、夏至祭は宗教的というよりも、
人々のお祭り、といった面が強いです。
6月23日の夜、かがり火を炊き、湖や海辺にボートやヨットを浮かべて、
いつまでも明るい夜を楽しんでいる・・・はずです
(実際に参加したことがないので、伝聞です)。

どうしてこんなに「北欧らしい」「夏の美しいイベント」に参加できなかったのか・・・。
ノルウェーにその時期滞在していたのに、他国へ短期旅行中だったことが2回、
その前日に帰国してしまったこと1回、その2日後に入国したこと2回です。
「どうして、夏至祭があるのに、ロンドンなんかに旅行するの??」と言われた
こともありましたっけ。
毎年、夏至祭の時期になると、ネットなどで、これみよがしに美しい夏至祭の
写真が掲載されます。
こうなったらば、「ノルウェーの夏至祭を体験すること」は老後の楽しみに
取っておこうと思います。

夏至祭が終わった数日後にスタートするのが、オスロ大学のサマースクールです。
6月末〜8月初旬まで、世界各国からたくさんの学生が参加し、ノルウェー語や
政治、経済、芸術、環境、平和学といったコースで学びます。
夏休みを利用して、ノルウェーで勉強してみたい、滞在してみたい、という人
にはオススメのコースですね。
私は2回参加しましたが、上級ノルウェー語のコースに付いていくのが予想以上に
大変で、毎日大量の宿題の前で青息吐息でした。

このサマースクールは、年齢制限がないのでかなり高齢の方々も参加していました。
そして、サマースクール中に行われる遠足や、様々なパーティなどに嬉々として
参加していた姿が印象的でした。
宿題漬けの私からすれば、羨ましく、眩しい存在に見えたのです。
そして、「老後の楽しみに、サマースクールで初心者向けのコースを選んで、
楽しく行事に参加しよう」と誓いました。
いつになるかは分かりませんが、とりあえず、夏至祭を体験し、サマースクールで
苦しむのではなく楽しむ、という夢を実現したいと思っています。


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第7回 「ノルウェー人宅でのホームパーティ」(2006年6月15日発行 vol.31)


 日本でノルウェーと何らかの関わりを持っている人は少ないですが、日本に
住んでいるノルウェー人も少ないです。
300〜400人といったところでしょうか?「希少価値」大ですよね。

そんな数少ない在日ノルウェー人のお宅で、ホームパーティが催され、初めての
お宅訪問を果たしました。
インテリア雑誌に紹介された素敵なお部屋に、まずうっとり。
参加者はノルウェー人6人、日本人3人でしたが、空間的には「ぜーんぜん余裕!」
なのが、羨ましすぎます....。


 ・・・・とうっとりする間もなく、いきなり「尋問タイム」が始まりました。
お互いに初めて会う人ばかりだったので、ちょっと戸惑っていたところです。
ノルウェー人ゲストから、「で、あなたは、何をしているの?どうしてノルウェー
に興味があるの?」と、矢継ぎ早に質問されました。

「あなた何をしているの?」=「あなたのお仕事は?」という意味です。
この質問、ノルウェー人はすぐにしますね。昨年夏、ノルウェーに1ヶ月ほど旅行
していたのですが、会う人会う人に聞かれました。
ちょうど勤めていた会社を辞めたばかりで、答えに窮することもしばしば。
「日本に戻ってどうするの?大丈夫?」と初めて会う人に同情される始末...。

そんな時に、日本人流の「謙遜」、例えば「つまらない仕事をしています」とかは
NGですね。
自分がどのような教育を受け、どのような企業で、人とは違う特別な仕事をして
きたかを、短い時間で自己PRするのが○です。

ノルウェー人ゲストの中には、配偶者の日本赴任に伴い、滞在している人がいました。
そういう人たちの自己紹介では、日本で仕事を得る難しさ、言葉の壁についてを
織り交ぜながら、「でもやっと、○○で仕事ができることになった」と嬉しそうに
語っていた姿が印象的でした。
当然、「どんな仕事を担当するのか」の説明を加えながらです。

もちろん、パーティではもっとリラックスした話題もありました。
例えば、「ノルウェーの何が恋しい?」という質問に、「パン!」という答えが
圧倒的。
いわゆる「ハイジの黒パン」が、ノルウェー人の好み、「ハイジの白パン」は
日本人の好みです。
私が「ノルウェーのサワークリームが恋しい」と言うと、みな同意してくれました。
ノルウェーのサワークリームはもっとクリーミーでいろいろなお料理で活躍します。
ぜひ、「北欧サイズ」さんで、取り扱って欲しい一品ですね。

自己紹介が済んでからは、とても和やかな雰囲気で時間は過ぎました。
日本でのノルウェー・ネットワークがもっと広がって、もっと続きますように、と
願っています。


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第6回 「ノルウェー人も大好きなIKEA」(2006年5月15日発行 vol.29)


 船橋にIKEA1号店がオープンし、大きな話題になっています。
行った人のブログを読むと、道路は渋滞し、店内は混雑しているようですね。
一種の「ブーム」でしょうか?

本メールマガジンの読者の方は、すでにご存知でしょうが、IKEAはスウェーデンが
発祥の家具・インテリアのデザイン製造販売会社です。
ノルウェーでも、IKEAは大人気。
国内の販売店は5つですが、多くの家庭には「IKEAカタログ」があります。
「聖書よりも熱心に読まれるIKEAカタログ」という揶揄的な表現があるほど、
人気なのですね。
かくゆう私も、ノルウェーに行くたびにIKEAに寄っています。
首都のオスロ近くには2店舗あり、中心地から無料の「IKEAバス」が走っています。
IKEAがどうして、ノルウェーでそれほど人気なのか?を考えてみましょう。
まず「競合店がない」というもっともな答えが浮かびますが、IKEAの店舗を覗くと、
理由が分かりそうです。

 ノルウェー人の「家」に傾ける情熱は、北欧人共通の特徴でしょう。
「寒くて暗い冬が長いから、せめて家は居心地良くする」という説を、よく耳に
します。
ここで問題なのが、「どうやって居心地良くするか?」ですね。
答えは、「自分および家族で、家を居心地良くする」です。
日本の常識で言えば、業者に依頼するようなリフォームを自分たちで行うのが、
あちら流。
古い家を買って、自分たちの好きなようにリフォームするのも、お手のものです。
そんなリフォーム時に活躍するのが、IKEA。
「そろそろ、IKEAに行かないと」というセリフを何度も耳にしましたっけ。

 IKEAの店舗には、いろいろな部屋の広さによって異なるテイストのインテリアが
展示されています。
おしゃれなインテリアを見て、「錯覚」しそうなのですが、これらのインテリアは、
「組み立て式」が基本。
つまり、完成品を買うのではなくて、自分で作る必要があるのですね。
レジ近くに行くと、商品が箱詰めされた「倉庫群」がどーんと広がります。
これを見て、「うわ、めんどー」と思うか、「よし、自分で作るぞ!」と思うかで、
あなたのノルウェー人魂度が試されます。
ちなみに、IKEAの基本は、この「組み立て式」に「自分でお持ち帰り」が含まれます。
事実、ノルウェーのIKEA店舗駐車場では、かなり強引な商品の積み方をしている車を
目撃しました・・・。
ある程度、空いている道路の走行でしか許されないスタイルです。
日本のIKEAウェブサイトを見ると、「宅配サービス遅れのお詫び」が早くも載って
いました。

 やはり日本では、配送や家具組み立てサービスを利用する人が多いのでしょうか?
本場の「北欧式」に憧れるのならば、「自分で持ち帰って、自分で作る」を
試してみませんか?


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第5回 「『ポースケ』って何? 〜春を告げる季節〜」(2006年4月17日発行 vol.28)


 ノルウェー語の「ポースケ」påskeは、「イースター」を意味します。
キリスト教の「復活祭」を祝う目的ですが、現在のノルウェーでは宗教色よりも
「春休み」の意味合いが強いでしょう。

クリスマスと違いその年によって、バラつきがあるポースケですが、今年は4月16日
(日)が「イースターデイ」に当たります。
といっても、13日の木曜日(聖木曜日)からカレンダーの祝日になっていて、
会社や学校では13日より早く休みにするところもあります。

日本の連休と違い、ノルウェーのポースケ期間中、お店はクローズし、街中は閑散
とした印象です。
スーパーが閉店してしまう前に、人々が買出しに出かけるのも風物誌でしょうか。
ノルウェーに移住したばかりの外国人が、その買出しを忘れてポースケの間中、
食べ物がなくて困った...。というエピソードはお馴染みです。


私自身、ノルウェーのポースケで困ったことがあります。

あれは4年前のポースケ時期。

仕事でオスロのホテルに宿泊した際、「もうすぐポースケが始まるからホテルは
営業しません。他に移って下さい」と言われた時は(ノルウェーに慣れていると
思っていた私ですが)本当にびっくりしました!
「なんで予約した時に教えてくれなかったの〜?」って言ったけど、やっぱり相手
にしてもらえなかったです。
系列のホテルで営業しているところを紹介してもらい、何とか「部屋なしでオスロを
さまよう」は免れたのが、不幸中の幸いでしょうか。


ポースケ休暇中のノルウェー人はどんな過ごし方をするのでしょう?

一般的なのはセカンドハウスの「ヒュッタ」でのんびりする、が挙げられます。
山のヒュッタならばスキーを楽しんで日焼けもできますね。
オレンジとチョコレートを持ってクロスカントリーをする、というスタイルが
昔から人気があるようです(どうしてその2つなのかは謎ですが...)。
ギリシャやスペインといった南欧に旅行する人も多いです。
物価が安くて、大好きなお酒がたくさん飲めて、日焼けもできるし、といいこと
づくめでしょうか。
この時期に南欧へ行くと、酔っ払いの北欧観光客を目撃できますね。
また旅行には行かず、むしろ閑散とした街に留まるのがいいという意見もあります。
映画館は数少ない営業組で、ポースケにあわせて新作の封切りが多く観られます。


最後にポースケといって連想するのは、まず「黄色」と「卵」でしょうか。
お店のディスプレイをはじめ、個人のお宅でも、黄色い「ポースケエッグ」が
あしらわれ楽しい気分になります。
長かった冬が終わりをつげ、日一日と日が長くなり、美しい季節の到来です。
夏のノルウェーはもちろん良い季節ですが、ポースケ時期も捨てがたいですね。
といっても、お店はやっていないし、ホテルは追い出されるのかもしれないので、
クリスマス同様、旅行では避けた方が無難です!


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第4回 「マンモスの季節〜本をめぐるホットな闘い〜」(2006年3月15日発行 vol.26)


 最近、ノルウェーのウェブ上で「マンモス」のイラストをよく見かけます。
ノルウェーの書店恒例、2年に1度の大セールのイメージキャラクターなのです。
ノルウェー書店組合が主催で、750タイトルの本が最大85%引きになる大規模な
イベントです。
実際のセール期間は、3月の2週間ほどですが、参加する各書店は活発にPR活動を
行っています。

「マンモスセール」では専用のミニ新聞が作られ、セール対象になる本の紹介を
しています。
毎回これを眺めるのが楽しみなのですが、「え〜!」と地団駄を踏むことも
しばしば。
すでに買った本が、半額になっていることがしょっちゅうなのです。
扱っている本のジャンルは、純文学、ミステリー、社会科学、実用書、児童文学
と万遍なく網羅され、人気作家の話題書も思いっきりディスカウントされるのが
特徴です。

ノルウェーの書店事情は、ここ数年で大きな変化を遂げています。
ノルウェーでは伝統的に、大手出版社が運営する「ブッククラブ制度」が浸透
していました。
大都市は一握りで、文化的サービスが少ない地方の住人にとっては、ブック
クラブから届くカタログが文化に触れる貴重な機会だったのでしょう。
ブッククラブは会員特典を与えることで固定の顧客を確保し、作家サイドもブック
クラブの推奨図書になることで、「一人前」とみなされる傾向がありました。
しかし、この安定的な「ブッククラブ制度」の前に大きく立ちはだかったのが、
「ネット書店」と「本の価格自由化」です。

「ノルウェーのアマゾン」と称されるほど、急激な成長を遂げたネット書店は
西ノルウェーの田舎町Volda(ヴォルダ)にあります。
Haugen Bok「ハウゲンブック」はもともと、「町の本屋さん」でしたが、96年に
インターネット販売を開始します。
Eメールやインターネットを通じた迅速な取引、送料無料などの顧客サービス、
全国紙への積極的な広告活動など注目を集め、次第に「ネット書店ならば、
ハウゲン」と高い知名度と信頼を得るに至りました。
今では、顧客の9割近くがVoldaの住民以外だそうです。
サービス満点の日本に比べ、とかくサービス後進国と思われがちなノルウェー
ですが、本の値段については競争が進んでいます。
書店の定価販売制度が廃止され、自由な価格設定が可能になりました。
その効果で、2005年は書店の書籍取引が過去最大を記録したそうです。
実際にノルウェーの書店をのぞいてみると、割引になっている本はほぼ同じで、
どんな本でも安く手に入る、という訳ではありません。
それでも、「セール」表示の効果は実感しました。ちょっと気になる程度の本でも、
赤い値札がついているとすぐに買ってしまうのです。
そして、今回の「マンモスセール」で更なる値引きを知り、「早まったかな〜」
と後悔している次第です。


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第3回 「イプセン祭り」(2006年2月16日発行 vol.24)


 昨年は、「独立100周年」で盛り上がったノルウェーですが、今年もビックな
プロジェクトがあります。

プロジェクト名は、「イプセン2006」。

簡単に説明しますと、「人形の家」などの作品で知られるヘンリック・イプセン
という劇作家が今年で没後100年。
それを記念して(?)、ノルウェーを中心に世界各国でイプセンの記念行事が
目白押しなのです。

ノルウェーの新聞は今年初めから、イプセンイヤーの関連記事を毎回2、3個は
載せていたので、いやがうえにも「2006年はイプセンイヤー」と刷り込まれて
いました。
専用の「イプセンネット」(www.ibsen.net)開設、10年がかりで編纂中の
イプセン全集刊行、1月にはオスロ市庁舎にて、「イプセンイヤー・オープニング
セレモニー」を大がかりに開催されます。
リレハンメルオリンピックと同じ演出家が手がけ、派手でお金のかかったショー
でした。
10月末には、エジプトのスフィンクスをバックに「ペール・ギュント」のショー
を催すそうで、「怒涛の攻撃」といった様相さえ帯びています。

日本でも「イプセンイヤー」の関連イベントが行われますが、率直に言って、
ノルウェーと日本との「温度差」は否めません。
ノルウェーに興味がある人でさえ、「え?イプセンイヤー?」って反応があるくら
いです。
肝心の「人形の家」やその主人公ノーラの名前を聞いても、もはや「知らない」
と答える若い人が増えているとか。
そうした話を聞いて「どうして?」という驚きと、「あ、やっぱり」という納得の
半々でしょうか。
おそらく学校の授業でもスルーされ、クドカンや野田秀樹といった演出家が取り上
げるわけでもないですからね。

では、なぜノルウェーでは今でも、「イプセン」という言葉で盛り上がれるので
しょうか?
思うに、トキを保護するように保護していた、大事に育ててきたからだと思います。

イプセンを好きか嫌いかは別として、若い人でも「イプセンは〜だと思う」と
語れるのは、国語の授業でイプセンの作品を読んできたからでしょう。
そしてイプセンの作品についてレポートを書く必要があるから、本屋に行けば、
懇切丁寧に解説された一種の「タネ本」が並んでいます。
いくら、「シェークスピアの次に世界で舞台化される劇作家」と言われても、作品が
読まれなくなったら形骸化してしまいます。
学校で得た「教養」があってはじめて、イプセンのパロディーを見て笑えますよね。
また、劇場でも繰り返し繰り返し、イプセン作品が上演され、2年に1回はイプセン
フェスティバルが開かれてきました。

派手な趣の「イプセンイヤー」イベントは、何かノルウェーっぽくないと思えても、
こつこつと地味に「親から子へ」イプセンを伝える過程があって初めて成り立つ
ものでしょう。
地道な日々の農作業があって、ようやく迎えた「秋祭り」、と思えば納得です。


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第2回 「ヒュッタですごすクリスマス」(2006年1月16日発行 vol.22)


12月になると、各地のデパートで「北欧のクリスマス展」などが催され、北欧から
「本物のサンタ」が来日するなど、北欧とクリスマスの結びつきは日本でも注目を
集めるようになりました。
ノルウェー人にとってのクリスマスは、やはり特別なもの。
家族や親戚が集まり、伝統的なクリスマス料理やお菓子を食べて過ごす家庭的な
クリスマスが一般的。
だがクリスマスを「どこで」過ごすかという点でここ数年、新しい傾向があるらしい。
ノルウェーの新聞記事によると、山のヒュッタでクリスマスを祝うノルウェー人が
増えてきているとのこと。

ヒュッタとは、もともと電気や水道も通っていないシンプルな山小屋風セカンドハウス
を意味しています。
が今では、水道や電気が完備され、インテリアも凝った贅沢な造りのヒュッタが流行
で、お手軽にクリスマスを過ごせると人気が出てきています。
「街よりも静かでゆったり過ごせる」、
「外に出れば、すぐにスキーを楽しめる」など
が人気の理由らしい。

ノルウェーの好景気を反映してか、2005年秋のヒュッタの販売数は過去最高を記録し、
また貸しヒュッタの予約もいっぱいだとか。
記事に載っているヒュッタの写真を見ると、室内は清潔かつカラフルで、従来の簡素で
無骨なヒュッタのイメージではありません。
これならば、ヒュッタのクリスマスもいいかなと思う人がほとんどでは。

だが、こうした楽しそうなヒュッタでのクリスマスを目にしても、以前に見た
ノルウェー映画の強烈な印象のせいで、素直に記事を肯定できないのも事実。

2000年に製作された映画「夜が長くなるとき」では、クリスマスにヒュッタを借りて
過ごそうとする家族が描かれているが、楽しく平和なはずのクリスマスが目茶苦茶な
結果に終わってしまう。
狭くて寒くて、設備がお粗末なヒュッタを舞台に、両親と成人した子供4人とその家族
プラス犬がひしめく。
ポーランド人と結婚した娘夫婦は、ポーランドから両親を招待するが、互いの生活習慣
の違いにとまどうばかり。
ポーランド人のお母さんが、ヒュッタの狭い台所を長時間占領し、クリスマスディナー
に「ポーランド式スープ」を作り(あまりおいしそうに見えない)、ノルウェー式
クリスマスディナーを作りたい他の家族が周りで右往左往する姿はおかしいし、
アル中のノルウェー人お父さん、酔っ払いの夫に愛想をつかしたお母さん、失恋した
ばかりですぐ泣いてしまう娘、犬アレルギーの孫など家族間のいざこざがクリスマス
イブに爆発し、1週間借りたヒュッタから1日で全員が耐え切れずに逃げてしまう
エンディングは、まさに「悲喜劇」の様相なのです。

本当に仲の良い家族でないと、周りから隔離された環境のヒュッタでクリスマスを
過ごすのは難しく、逆に「家族の絆」を試したい人たちが、ヒュッタでのクリスマスに
挑戦するのがいいのかもしれない、と思ったほど。
流行の贅沢なヒュッタでクリスマスを過ごした家族は、みんな平穏無事に過ごせたので
しょうか?


青木順子 (あおきじゅんこ)

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第1回 「サーモンもいいけど、ロブスターもね」(2005年12月15日発行 vol.20)


 ノルウェー料理は、イギリス料理と同じように、「つまらない、味気ない」と
評されることが多く、実際にノルウェー人たち自身も自国料理については
自嘲気味だ。
幸い、ノルウェーに行くたびにお世話になっている友人は料理好きなので、
たくさんのおいしい家庭料理を味わうことができた。
ただ、レストランに関していえば、当たり外れが大きく、値段が高いばかりで
がっかりという経験は何度か味わっている。
そんな中、毎回食べて感涙ものだった食材が、ロブスター(ノルウェー語では、
フンメルhummer)である。

 最初は、5年前の夏、オスロ〜ベルゲン間を旅行した時のこと。
ノルウェーの夏、特に西ノルウェーの夏は、晴れることは少ない。
逆に、雨や曇り空で寒いくらいのことがしばしば。
途中、フィヨルドを渡る観光船に2時間ほど乗ったが、雨と寒さで船は「冷凍船」
と化し、私と友人の唇はチアノーゼになっていたと思う。
夜の9時すぎにベルゲンに到着したが、(夏なのに)寒さと空腹で倒れる寸前。
結局、ホテルから程近いブリッゲン地区のシーフードレストランに直行した。
サーモンでもトラウトでもなく、私たちはロブスターを注文。
運ばれてきたロブスターは大皿をはみだす勢いだったが、そのおいしかったこと!
ガーリックのきいたお肉にシンプルなマヨネーズのソースのみ。
私たちはほとんど言葉を交わさず、黙々と完食。
体は暖まり、唇にも血色が戻り、「生きてて良かった〜」としみじみしたほどで
ある。

とは言っても、ロブスターは高級食材。
普通のノルウェー人に「ロブスターを食べたよ」と言えば、驚きと羨望の
まなざしを受けるだろう。家庭の食卓に登場する料理ではない。

 2回目のロブスター体験は、今年の夏。学園都市として有名なトロンハイムを
訪れた時である。
地元の友人夫妻が、「街で一番おいしいレストラン」と連れていってくれた先は
シーフードレストランだった。
スタイリッシュな内装で、ワインのメニューも豊富。
お客さんもおしゃれな人ばかりで、ノルウェーのレストラン「らしく」ない。
メニューを熟読し、一瞬、「海の幸の盛り合わせ」に心惹かれたが、ベルゲンで
食べたロブスターを思い出し、再度注文することにする。

すると、ウェイトレスが大きなトレイに載せた、まだ生きているロブスターを
見せに来てくれた。
今までノルウェーのレストランで、こうした「演出」を受けたのは初めてだった
ので、さらに期待が高まる。
すっかり調理されたロブスターは、ベルゲンで食べた時のようにシンプルな味付け
で、やはり感動。
前回は、「飢えと寒さ」を経ての感動であったが、今回はよく冷えた白ワインと
店内の素敵な雰囲気が相まって、忘れられない体験となった。

ノルウェーのシーフードは、サーモンやサバ、トラウト、ししゃもだけではない。
ロブスターもご賞味あれ!


青木順子 (あおきじゅんこ)

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