■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    ウィズ・スタイル マガジン 『北欧 NOW!』

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


ウィズ・スタイルマガジン 『北欧 NOW!』 
北欧ノルウェー着 ライフスタイルレポート
【02】


第20回 「旅行シーズン到来!」(2007年7月15日発行 vol.57)


最近、私の周りではノルウェー旅行から帰ってきた人が増えています。
日本からのトップシーズンは8月ですが、5月や6月の方が航空運賃も安いし、
現地の日照時間も長いので、人には「5月や6月の方がオススメですよ」と
言ってます。
7月は、ノルウェー人が夏休みで出かけてしまっているので、街を歩いている
のは観光客ばかり・・・という印象が強いですし、8月は年によってはすでに
秋の気配が漂っています。

さて旅行から戻ってきた人から話を聞くと、「う〜ん、Typisk norskですね!」
と言いたいようなエピソードがありました。
「典型的なノルウェー人的行動」とでも訳せばいいでしょうか。
例えば、ノルウェー語の生徒さんの一人は、夜遅くホテルに到着するので、
部屋をキャンセルしないように、出発前からホテルに念押ししていました。
で、到着。
習いたてのノルウェー語でチェックインしようとすると、部屋はなんとキャン
セルされていて、「別のホテルの部屋を取っておいたから安心して」と
あっさりレセプションの人に言い返されたそうです
(早口のノルウェー語で...)。
「ここより高いホテルだし、タクシー代も出すから、いいでしょ?」と言われ
ればその通りですけど。まさにTypisk norsk!

旅行に出かける人からも前もって、いろいろ質問されることがあります。
「ノルウェーのタクシーはぼったくられませんか?」とかその度に、記憶を
頼りに答えるのですが、他によく聞かれる質問が、「チップ」に関することです。
日本は本当に楽ですよね〜。チップで頭を悩ませる必要がないのですから。
旅行ガイドなどを見ると、ノルウェーでは南欧ほどチップ文化ではないが、
レストランやホテルの枕銭などチップを置きましょう、と書いてあります。
問題は、消費税のように一律何パーセントと決まっていないことから起因する
悩みですよね。

私はノルウェーのホテルでは一応、少しの枕銭を置くようにしていますが、
清掃の人がチップを持っていかなかったことが何度かありました。
チップに頼らなくても良い給料が保障されているから?部屋代に含まれている
から?謎は尽きません・・・。

ではレストランのチップは、どれくらいが妥当なのでしょうか?

最近、ノルウェーの雑誌にまさしく「チップ」の特集が組まれていました。
それによると、ノルウェー人自身も、何パーセント置けばいいのか不安なのだ
そうです!
「ちょっとしか置かないとケチだと思われ、はずみすぎるとお上りさんだと
思われる」って、あなたたち自身も悩んでたのね!と思わず握手し、共同で、
「チップ廃止運度」を展開したい衝動に駆られます。

まあ実際的なアドバイスとしては、請求書を見て、すでにサービス代が含まれて
いるかどうかチェックし、とても良いサービスを受けたならば、その気持ちを
置けばいいのではないでしょうか?
日本のお布施のように「気持ち」の問題ですから。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第19回 「思ひ出の田舎暮らし」(2007年6月15日発行 vol.55)


 記憶は時と共に風化されます。私が最初にノルウェーの片田舎へ留学したのは、
もう12年も昔のこと。
最近ではあまり思い出すこともなかったのですが、私と同時期、やはりノルウェーの
田舎に留学していた方とレッスンを通じて知り合い、二人で共通の「ノルウェー田舎
暮らし」のネタで盛り上がり、一気に記憶が蘇ってきました。

今更ながら痛感するのは、「便利さの対極」にあった生活環境でしょうか。
最初の留学地は、西ノルウェーの人口8千人あまりの小さな町。
電車も通っておらず、またバス網も発達していません。
怖かったのは、個々のバス停に名前が付いておらず、車内アナウンスも一切なかった
ことです。
初めて乗る時には、窓から景色を凝視し、「そろそろ目的地?」と激しい緊張のもと
ブザーを鳴らしたこともありましたっけ。

 さて、ノルウェー語にはsentrum(セントゥルム)という単語があります。
英語のcenterに相当し、「町の中心地」という意味でよく使います。
「じゃあ、sentrumへ行こうか」と出かけてみると、30分くらいで見終わりそうな
中心地に到着します。
教会、銀行、郵便局、雑貨、洋服、電気屋さんなど生活に最低限必要な施設・店舗が
1軒づつ並んでいます。
お店が1つしかないので買い物に迷いも生じません。
必然的に物欲からも解放され、周りを取り囲む美しい山や海、森や湖へ自然と足が
向かいます。

それでも私がいた町には、外食できる場所があったので、まだ田舎度が甘かったと
言えるでしょう。あ、もちろんレストランは1軒です。
やはり1軒だけあったホテル内にありました。
「カフェ」のような小洒落たものはなく、スーパーマーケットの中にお茶ができる
ゾーンがありました。
お年寄りが多く集い、一種の「社交場」のようになっていましたが、新参者には
ちょっと入りにくいディープな雰囲気です。

日本に比べて娯楽が少ないノルウェーでは、「映画」がもっと生活に溶け込んで
います。
チケットも日本より安いし、気軽に「映画観に行こうよ」となるのですが、肝心の
映画館がありませんでした。
直訳すると「社会の家」になるSamfunnshusと呼ばれる自治体の施設が映画館代わり
です。コンサートも集会も何でもここでやっていた記憶があります。

あと田舎暮らしで思い出すのは、「無音状態」でしょうか。
学生がお酒を飲んで騒ぐ週末を除き、町は静かでゆっくりとした時間が流れています。
「静謐」という言葉の意味が理解できました。

それにしても不思議だったのは、誰のお宅にお邪魔しても、そのままインテリア雑誌
に載れそうな、センスが良くて快適な空間であったことです。
一体どこで、センスを磨くの?お店もないのにどこでインテリアを揃えるの?
不思議ですよね。

おしゃれな住環境を作り上げる能力は、都会も田舎も関係なく、ノルウェー人のDNAに
組み込まれている・・・と思わざるを得ません!


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第18回 「ノルウェー人から見た“Tokyo”」(2007年5月15日発行 vol.53)


  日本のテレビや雑誌などで、ノルウェーが取上げられる時、いつも不思議な
感じがします。
何度も訪れた街や風景でも、テレビ画面や雑誌の写真を通して見ると、
「たしかにノルウェーなんだけど、何かが違う・・・。」こんな、違和感を
覚えるのは私だけでしょうか?
(とりわけ、サーメ人の特集。いつも民族衣装を身に着けていますが、
あれって演出?)

ノルウェーにいる時、日本について取上げたテレビ番組や新聞記事を何回も
目にしました。同じように不思議な感じがしました。
舞妓さんやゴスロリファッションの女の子たちのアップを見ては、「たしかに
日本なんだけど、何かが違う・・・」と、どこか居心地の悪さを覚えたものです。
といっても、自分が日本に住んでいるからといって、日本のことについて
何でも知っているわけでは、ありません。
旅行者や短期滞在の人が感じた印象や感想が、実は深い「真理」だったり、
「発見」だったりすることの方が多いですよね。まさに「灯台下暗し」です。

今日ノルウェーから届いた新聞を読んでいたら、旅行のページで「東京特集」
がありました。
記者ではなく、東京を訪れた読者が寄せる旅行情報です。
感心したのは、情報がほとんど全て「当たってる!」と思えたことでしょうか。
複数のノルウェー人が挙げていたお勧めエリアは、原宿・表参道でした。
理由は、最新のモードが楽しめると同時に、明治神宮といった伝統的な建物が
近くにあることです。
「運がよければ、日本式の結婚セレモニーが目撃できるよ」というコメントが
ありました。
他に、秋葉原は当然としても谷中エリア、個別の店では「まんだらけ」を
お勧めする投書もあって、「おぬし、やるな〜」って感心しきりです。

また東京の印象として、「衛生的で清潔。道にゴミが少ない。公共交通が
遅れない」が載っていました
(中央線沿線の方は最後、納得できないかもしれませんが・・・。)
ノルウェーもイイ線いってると思うのですが、誉めていただけると悪い気は
しませんね。

あと細かい注意事項が心憎いです。

例えば、歌舞伎鑑賞をする人に向けて「食事はあらかじめ済ませておくか、
何か食べ物を持参しましょう。全部が終わるまでには、すごくお腹が空きます」
がありました。
この投書の方は、空腹のあまり途中退席したそうです。
実体験から来る情報は説得力がありますね。

その他、お寿司を楽しみたい人に向けて、詳しいガイドがありました。
「上等な寿司屋のカウンターで注文すると、勘定は天井知らず。外れの小さな店
だと日本語のメニューしかなくて、注文が難しい。
回転寿司ならば、お皿の色ごとに値段はいくらするのかあらかじめチェック
しておこう。値段は安いよ。」

感心ばかりしていられません。こうして知恵をつけたノルウェー人を東京で
案内する事態に陥った場合、「回転寿司より、本格的な店のカウンターで
食べたいね」なんて言われた日には・・・。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第17回 「ノルウェーのおばあちゃん」(2007年4月15日発行 vol.51)


 ノルウェーの児童作家ヴェストリーの作品に「おばあちゃんと8人の孫」があります。
主人公のおばあちゃんは、スキーのジャンプをしたり、孫と真剣に遊んだりなど、
とにかくエイジレス。
このおばあちゃんに限らず、ノルウェーのお年寄り(特に女性)は、元気な印象が
あります。
「自分のことは自分でする」オーラが強いせいでしょうか。

先月、「ノルウェーについて学ぶサロン」にノルウェーから6人の女性がやって
来ました。
在オスロの日本人通訳Mさんが日本へ一時帰国を計画したところ、5人の友達が
「あなたのお母さんに会ってみたい」と一緒に日本ツアーになったそうです。
Mさんと友達は、地元の「高齢者センター」を通じて仲良くなったとか。
せっかく日本に来るので、「高齢者センターの活動について紹介をしたい」と
Mさんから嬉しい申し出があり、ゲストスピーカー6人というサロン初の試みが
実現しました。

当日、待ち合わせ場所で見失わないように、私は小さなノルウェー国旗を持参
しました。しかしそれは杞憂。
ヤッケの胸元にノルウェー国旗をあしらった手編みのワッペン(?)を付けた集団は、
100メートル先から分かりました。
前日、長時間フライトで到着したばかりなのに、予想通りお元気です。
(サロンの内容などは、サイトにレポートを掲載しているので、ご一読下さい。)

この「高齢者センター」は、「老人ホーム」などとは違い、介護が目的では
ありません。
地域高齢者たちの「出会い・社交・助け合いの場」といった趣でしょうか。
サークル活動(体操、PC講習)やカフェテリア、ヘアサロンといったものから、
煩雑な公的書類の申請手伝い、孤独を感じている人への自宅訪問、病院や薬局への
付き添いなど、どれも「あったらいいな」と思えるサービスが揃っています。

6人の女性たちは、このセンターの利用者でもあり、ボランティアでもある、
ということ。
そう、ここではサービスの受け手だけではなく、自分の空き時間や能力に応じて、
ボランティアとしてサービスの「提供者」になることも期待されているのです。
「花の水やり」も仕事の一例としてパンフレットに載っていました。
また、ボランティアの利点として、「自分で働く時間が決められる」、「休みたい
時に休む」が挙げられていましたが、長く続ける上では大事なことですね。

サロン終了後に感じたことは、ありきたりな表現ですが、「元気をもらった!」
でしょうか。
次はノルウェーで皆さんとお会いしたいものです。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第16回 「足にスキー板を履いて生まれてくる人々」(2007年3月15日発行 vol.49)


ノルウェーのことわざに、「ノルウェー人は生まれてくる時、足にスキー板を
履いている」があります。
札幌で、ノルディックスキー世界選手権が開催されました。
ノルウェー選手の活躍を振り返ると、納得できることわざですね。
連日のメダルラッシュで、ノルウェーの紙面には「Sapporo」発の記事が目立ち
ました。

それとは対照的に、日本のメディアはジャンプ団体戦の銅メダル以外、あまり
ニュースで取り上げてくれませんでしたね。
そんな開催国の盛り下がりぶりが、札幌に派遣されたノルウェー人記者に気づ
かれたらしく、こんな現地レポートが配信されました。
「2002年サッカーワールドカップのイングランド戦に集まった札幌ドームの観客は
3万5千人。
一方、ワールドカップスキー大会のクロスカントリー・スプリントに集まった
観客は、せいぜい数千人だろう(*主催者発表は1万5千人)。
日本人より、ノルウェー人観客の方が多く来ているように見えるほどだ」。

ベッカムが出場したサッカーの試合と比べても・・・と思いますが、ジャンプ以外の
ノルディック競技が、日本ではまだまだマイナーなのは事実でしょう。
人口が日本の30分の1に過ぎないノルウェー。
それでも多くのメダリストを輩出している理由は、人々の生活にスキー、特に
クロスカントリーが身近に溶け込んでいるからでしょう。
家の近所で気軽に楽しめるクロスカントリーは、わざわざ遠出する必要がありません。

平日でも仕事帰り、学校帰りにクロスカントリーは可能です。
首都オスロを走る地下鉄でも、スキー板を持っている乗客の姿がごく当たり前に
見られました。
留学時に住んでいた学生寮では、共同の廊下や玄関にスキー板がたくさん立て
かけられ、まるで「スキー宿」の様相だったことを懐かしく思い出します。
どうやらこのクロスカントリーは、「英才教育」がなされているようです。
といっても神童だけが対象ではなく、普通の子どもが普通にスキーを楽しめるよう、
「クロカンデビュー」を迎える保護者たちに向けたアドバイスを読んだことが
あります。
その中の至言として、「子どものスキー板に間違ったワックスを選んだり、ワックス
がけを怠ることは、児童虐待です」がありました。

それで思い出すのは、前述の世界選手権特集記事の「今日の日本語」コーナーです。
札幌開催を記念して、日本語を学びましょうという素晴らしい企画なのですが、
私が目にした日に選ばれた日本語は、「キックワックス」。
格調高いカタカナ筆記から、ワックスの大切さがしみじみ伝わってきました
(ちなみに私は、「キックワックス」の意味を知りませんでした・・・。
「生まれと育ちの違い」を痛感しています)。

こうやって気軽にスキーを楽しんだ子どもたちが大きくなって、選手になっていく
のですね。
ただ、将来心配なのは温暖化による雪不足。
「昔、スキーなんて競技があったね」とならないことを祈るばかりです。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第15回 「ノルウェー映画のグランプリ」(2007年2月15日発行 vol.47)


映画の宣伝文句で、よく目にする「観客動員ナンバー1」という見出し。
普通それは、「その週の」ナンバー1かな、と思いますよね。
今月から、「ノルウェー映画史上」観客動員ナンバー1の映画が、東京で
再上映されています。
タイトルは、「ピンチクリフ・グランプリ」(原題:Flåklypa Grand Prix)、
1975年の作品です。すでにノルウェーの総人口(460万人)を上回るチケット
枚数が売られ、動員数は2位以下に大差をつけてトップである、ということを、
監督イーヴォ・カプリーノの伝記本で知りました。

この「ノルウェー映画史上のナンバー1」という形容は、日本での再上映に
あたっても宣伝で使われています。
ただし、こうした「○○史上、ナンバー1」という謳い文句は、時とともに
風化するもの。
すでに30年以上前の作品だし・・・と思っていたら、夢ネットの管理人さんから
面白い情報をもらいました。
ノルウェー最大紙VGのウェブサイト上で「あなたが投票するノルウェー映画
ベストワン」アンケートを実施していて、「ピンチクリフ・グランプリ」が
トップを独走中・・・!
「懐かしの映画」投票ではなく、今でも、愛されている映画なんだ〜、と改めて
人気の底力を思い知らされ、感慨深くなりました。
確かに、ノルウェー人に「ピンチクリフ」の話題を振ると、相手がインテリア
デザイナーであっても、大使であっても、「あれは素晴らしい!」と皆一様に
大絶賛。今まで「嫌い」という人に会ったことがありません・・・。
「洗脳疑惑」が浮かぶほどの意見の一致です
(パンフレットによると、2005年に発売されたリマスター版DVDは売り上げ50万枚!
「一家に1枚」も誇張ではない・・・?)。

もう一つ驚いたのは、このアンケート結果のリストに並んでいるのは、ノルウェー
映画に精通していない私でも観たことがある・知っているタイトルばかり、
ということです。
日本とは比較にならないほど、映画の製作本数は少ないノルウェー。
1本1本が大事に作られ、それなりの注目を浴び、人々の記憶に長く留まる、
というサイクルですよね。
粗製濫造とは逆の世界です。
良い方に解釈すれば、地球に優しくエコでロハスなノルウェー映画界、となるで
しょうか・・・(悪い方に解釈すれば、競争が少なすぎ?)。

そんなのどかで牧歌的なノルウェー映画界は、「ピンチクリフ・グランプリ」に
流れるゆったりとしたテンポとマッチします。
本作は人形アニメーションなのですが、各人形の仕草や特徴を丁寧に表現し、
クライマックスのカーレースシーンに至るまで、かなりの時間を、主人公一家
(人間ひとり+アヒルとかささぎのハーフ+はりねずみ)の生活描写に費やして
います。
このディテールのすごさは言語化できません。観た人同士のみが、共有できるもの
なので、未見の方には、「どうぞ、見てください!」とただただお願いするだけです。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第14回 「太りすぎ注意!」(2007年1月15日発行 vol.45)


 「ノルウェー人って背が高い!」。
ノルウェー人に遭遇した日本人はそう感じます。
(たまにちっちゃい人もいますが・・・)。
確かに、ノルウェー人は私たちよりも背が高いことが多いのですが、「背が高い」
という表現より「大きい!」とびっくりすることがしばしば。
そう、横幅と体の厚みも「スカンジナビア・サイズ」(?)なんですよね。
1992年から大体、年に1回はノルウェーに行っているのですが、お腹もぽっこり、
お尻もでっぷり、ってノルウェー人が老いも若きも増えているような・・・。

という印象を、ノルウェー人の友達に話した時、「そうそう、最近は太りすぎの
人が増えているのよ。私ももっと痩せないと」と答えが返ってきました。
そこでノルウェー統計局のデータで調べてみると、「BMI指数27以上、
太りすぎの割合(対象16歳〜79歳)」なる統計を発見!
*BMI指数=体重(kg)÷身長(m)2

データを見ると、やはり印象は当たっていました。
特に男性の太りすぎ増加が顕著です。
1973年:14%→2005年:30%と大いなる「飛躍」!
一方、女性は男性より緩やかな増加傾向です(1973年:15%→2005年:20%)。

こうした傾向は、富める先進国共通でしょう。
そして、人々の「食べたい、でも痩せたい」の贅沢なジレンマも。
日本では「正月太り」と形容しますが、ノルウェーでは「クリスマス太り」なる
現象が存在するようです。
といっても、家族と一緒に食べるクリスマスディナーだけで太るのではなく、
職場の同僚や友人たちと一緒にレストランで食べるクリスマスディナー
(日本の「忘年会」に相当)が大いなる原因、という特集記事を目にしました。

ノルウェーの富裕層が増えるにつれ、この「ノルウェー式忘年会」も盛んに
なっているようです。
調査によると、世帯年収1千万円以上の場合、忘年会出席回数が3回以上になる
ケースが増えるとか。面白い調査ですよね。
専門家のコメントに「収入と学歴が、忘年会に参加できる人的ネットワークと
大いに関連しています」がありました。
日本では居酒屋でお手軽に忘年会もできますが、ノルウェーにはそもそも居酒屋は
ありませんし、レストランは最初から「高い」のが前提です。
オスロの高級ホテル内にあるレストラン「Grand Café」で、男3人の「忘年会」を
楽しむ姿があるそうですが、日本ではあまり見ない光景かもしれませんね。
栄養学の先生から、忘年会で太ってしまったノルウェー人に、本当のクリスマスを
迎えるにあたって数々の「忠告」が寄せられていました。

・豚のリブは危険。七面鳥やタラで代用すること
・クリスマスのミルク粥でお腹を満たすこと
・クリスマスディナーを消費するためには、クリスマスツリーの周りを
 9時間ウォーキング

いずこの国も、同じような悩み・・・でしょうか。
今後のBMI指数の変化に注目です。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第13回 「暗い冬を快適に過ごすために」(2006年12月15日発行 vol.43)


 ノルウェーで留学していた経験をお話すると、「暗い冬はどうやって乗り切った
のですか?」と質問されることがあります。
夏の白夜がある代わりに、ノルウェーの冬は日照時間が短いからですね。

幸い(?)、私が住んでいたところは、ノルウェーの中ではそれほど北では
なかったので、まったく日照時間がない、という程ではありませんでした。
9時頃にお日様が顔を出し、午後の2,3時に暗くなる、という恵まれた(!)
環境だったのです。
すぐに眠くなる、朝起きるのが億劫、といったことはありましたが、期限付きの
留学生だったので、それほど気にもならずに帰国しました。
むしろ、闇に浮かび上がる家の窓辺に飾られたほのかな灯り、それはろうそくで
あったり、ろうそく型のスタンドライトであったりでしたが、その美しい眺めの
方が印象的だったのです。
ですから冒頭の質問には、「特に対策はなかったですね」と曖昧に答えるのが
常です(凍結した道で何度も転んだ体験はまた別の話)。

・・・というのんきな態度で終始できたのは、やはり私が期限付きの住人だった
からでしょうか。
かの地に、ずーと暮らす人々の中には、長く、暗い冬は「憂鬱」とばかりに、
南欧に長期旅行や移住する人もいますし、年々早まるクリスマスのイルミネー
ションは、単に「商売っ気」だけではなく、人々が光を求める心に答えようと
する表れなのかもしれません。

 北極圏では、極夜といって日が全く昇らない期間があります。
北緯70度のハンメルフェストゥという街では、11月22日〜1月21日まで、
なんと2ヶ月間も極夜が続きます(代償として、5月17日〜7月28日まで白夜が
続きますが・・・)。
つい最近、ハンメルフェストゥの街では、面白いプロジェクトがスタートしました。
「光の街」という名のプロジェクトの目的は、街全体を「正しくライトアップ
する」ことです。
実際の内容は、不要なライティングを消し、人々の肉体的・精神的な健康に
作用するため、効果的なライティングを街ぐるみでデザインするという壮大な
ものです。
街の中心地の街灯はリニューアルされ、教会や学校といった施設、山の側面や
屋外にもライトアップが施される計画と共に、ライトアップされた街の写真が
新聞に載っていましたが、確かに美しい光景です。
住人が「今度の冬は、いつもより快適だったよ」と言ってくれるかどうか、
実際の効果をぜひ知りたいですね。
ちなみにハンメルフェストゥは、北ヨーロッパの街では一番早く街灯を導入した
街だそうです(1891年)。

 日本にいると時々考えることがあります。
ノルウェーのように、美しい白夜がある代わりに極夜もあるという極端な自然と、
日本のように程々の日照時間が年間を通じて保障されているのと、どちらが
いいだろうか・・・と。
その時々の気分に応じて両方を体験できる、が実現できるほど航空運賃その他
もろもろお手ごろではないのが残念ですね。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第12回 「東京でノルウェーを楽しむ11月」(2006年11月15日発行 vol.41)


 11月。ノルウェー語では、november「ノベンベル」と言いますが、不人気な月です。
長くて暗い冬の始まりを予感し、でもクリスマスにはまだ間がある中途半端な
月だからでしょうか。
そんなノルウェーの11月とは対照的に、東京の11月は「楽しい」ノルウェー関係の
イベントが目白押しです。私も幾つか参加しましたので、ご紹介いたしましょう。

11月某日。
来年公開のノルウェー人形アニメ映画「ピンチクリフ・グランプリ」(75年)の
試写会。
本国では「0歳から99歳までが楽しめる映画」と評され、75年から今に至るまで
不動の観客動員No.1。詳しい内容は、また上映後に記しますね。

11月某日。
「Design Tide 2006」の会期中にノルウェーのデザイナーたちを紹介する
「HEIDU Norway」というスペースが設けられ、見学。
会場がこじんまりしていたせいもあり、デザイナーたちとじかにお話することが
できました。
私は全くのデザイン素人ですが、ノルウェー語で話すとみんな喜んでくれるので、
珍種の動物扱いが嬉しいです。
「ウィズスタイル」でも扱っているMP3プレーヤー「asono mica」は、すっかり
人気商品として定着しているのが分かりました。

11月某日。
「HEIDU Norway」の開催に合わせて、Norwegian Party Vol.2が行われました。
デザイナーはもちろん、普段どこにこんなにノルウェー人がいるの?と思うほど
ノルウェー人が集結。
パーティ会場では、ノルウェー産の食材やビールが用意され、ノルウェー好き
日本人にアピールしていました。
それにしてもTシャツ1枚で平気なノルウェー人の多いこと!

11月某日。
今年の「イプセンイヤー」にちなみ、ノルウェーの女優ユーニ・ダールが
「イプセンの女たち」という一人芝居の公演を行いました。
幸い、ノルウェー語版のパフォーマンスを間近で見る機会に恵まれ、迫真の演技に
圧倒。
ミニマムな舞台装置、フルート奏者のパートナーのみをバックに、イプセン劇に
登場する有名な女性キャラクターを何人も一人で演じきります。
瑣末なことですが、rの発音にも感動しました。
ノルウェー語のrは巻き舌で「ルル」と発音するのですが、さすが女優さん。
この難易度高いrを、普通のノルウェー人よりも格調高く、「ルルルル」と巻いて
ました。

そして明日は、ノルウェー児童書研究所長の来日講演。
「北欧の児童文学」というとムーミンやピッピが有名ですが、ノルウェーの
児童文学もユニークな作品がたくさんあるんですよ。
日本で知られているのは、「スプーンおばさん」ですね。
ノルウェー人作家の作品だってご存知でしたか?

・・・ここまでで11月第2週です。
11月のノルウェーにいるよりは、日本に行こうよ!を合言葉に来日ラッシュが
続いているのかも?と思いたくなるほど「ノルウェー三昧」の日々です。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る


第11回 「恋人探しツアー」(2006年10月15日発行 vol.39)


 日本の新聞でもノルウェーの新聞でも、一般記事を「装った」広告記事を
見かけます。
私はノルウェーの新聞を週1回のペースで購読しているのですが、ご多分にもれず、
一般記事に混ざって、「旅行」と「不動産」の特集ページ(&大量の広告)が
どっさり入ってきます。
そうした「旅行記事」の一つに、広告の枠を超えて面白いもの(少なくとも
私にとって)があったのでご紹介いたしましょう(2006.9.25日アフテンポステン紙)。

記事のタイトルは、「ロマンティックなシングルツアー」。
それだけでも、心の琴線にびんびん触れますね。
さらに扇情的なヘッドラインが続きます。「アネッテ・アーケル(31歳)が
ベネズエラ行きのシングルツアーから戻ってきた時、もはや彼女はシングルでは
なかった」。

ふ〜ん、どういうこと??

見事に釣られた読者は、小さな文字で書かれた記事を読み進めるしかありません。
そのアネッテさんは、昨年夏、休暇も取らずに働き詰めでした
(そんなノルウェー人もいるんですね〜)。
今年の夏こそはちゃんと休暇を取って旅行に行きたい。でも一緒に旅行してくれる
相手がいない・・・。
悩んだ彼女は人づてに聞いた「シングルツアー」に思い切って参加することに。
参加したツアーは16日間のベネズエラ旅行で条件は「40歳以下のシングル」。
彼女のコメントがまたツボを押さえています。

「最初はこんなツアーに参加する人は、変わった人ばかりかな〜と不安でした。
でも・・・・」。

そう、彼女は2週間ちょっとのツアー中、素敵な男性参加者と仲良くなり、今では
一緒に暮らす間柄に発展しました。
2人が幸せそうに食卓を囲む写真は(たとえその食べ物が冷凍ピザだったとしても)、
「やらせじゃない」と説得力があります。

さらに下段のもっと小さな文字を解読すると、シングルツアーの具体的な情報が
掲載されています。
幾つかの旅行会社が主催するツアー条件は様々で、40歳以下/50歳以下、
子どもなし/あり、など。
思えば、ノルウェーのテレビ番組では、知らない者同士が旅行やら冒険を体験し、
男女がくっついたり、離れたりする「リアルティーTV」が人気でした。
こうした番組の影響が、「シングルツアー」への抵抗感を和らげているかも
しれませんね。

さて広告は、プラスの面ばかり強調すると却って信憑性がなくなります。
アネッテさんは見事、初めての参加で良きパートナーを見つけましたが、
旅行会社側のコメントで気になるものがありました。
「4回、5回と参加される回数が多い方ほど、ツアーにご満足いただけるようです。
今まで、10回も参加された男性がいらっしゃいましたよ」。
その男性は、10回参加してようやく恋人を見つけられたのか、それともあきらめた
のか(それとも周囲からストップがかかったのか)非常に気になるところです。

ともあれ良い広告は、想像力を刺激してくれますね。


青木順子 (あおきじゅんこ)

←「北欧NOW!」トップへ戻る

←【03】 【01】→


ホームへ戻る
 Home