ポースケの旅・前編
〜トロンハイムから〜




ノルウェーの春の最大のイベントといえばポースケです。ポースケと言っても何のことかわからない人も多いでしょうが、イースター(キリスト復活祭)のことだと言えばご存知の方も多いはず。仏教徒の多い日本ではあまり馴染みがありませんが、キリスト教の多いヨーロッパでは各国でそれぞれの祝い方があるようです。移民が増えている今日でも、ノルウェーの国教はキリスト教(福音ルーテル派)です。しかしながら、今日のポースケは宗教的意味合いよりも、クリスマスと並んで人々が季節を祝う伝統行事に変わりつつあるように見えます。ポースケには学校も仕事もお店もみんなお休みになります。その日程は、「春分の日の後に訪れる最初の満月の日の直後の日曜日」と決まっているため、毎年違っています。今年、西暦2000年は4月23日の日曜日がポースケの日となりました。例年に比べてかなり遅い日程です。ノルウェーではポースケ前の木曜日からポースケ後の月曜日までの5日間が休日となります。そこで人々は何をするのかと言えば、多くのノルウェー人たちは山へシーズン最後のスキー旅行に出かけるのです。なんでもポースケ時期の山のホテルやヒュッタは予約でいっぱいになるそうです。
そこで私もスキーへ、と書きたいところですが、今回は混み合っているスキー旅行を避けて、トロンハイム(Trondheim)からローロス(Røros)への列車の旅を選択しました。トロンハイムは人口約15万人。オスロ、ベルゲンに続いてノルウェーで3番目に大きく、ノルウェー中部に位置する都市です。反してローロスは人口約5500人の内陸の小さな町です。ローロスはその昔、銅の採掘をして栄えました。1644年に銅が発見されてから1977年に銅工場が倒産するまでの、300年以上の採掘の歴史を持っています。そして、現在も昔のままの町の姿が残っています。町全体の景観そのものがユネスコの世界遺産に指定されて保存されてきました。
余談ですが、今回ローロスを訪れたことによって、私はノルウェーの世界遺産を全て制覇したことになります。全部で4か所あるのですがご存知ですか?答えはこのHP上で私が今までご紹介してきた中にありますので、お暇な方は探してみて下さい。
注)その後、ノルウェーの世界遺産は増えました。
  ヴェーガ群島とガイランゲルフィヨルド、ナールオイフィヨルドが加わって全部で7か所になります。(2005年7月現在)









夜行列車の様子



トロンハイムまでの交通手段をいろいろ検討した結果、夜行列車を利用することにしました。写真をご覧になっておわかりの通り私が乗ったのは新車両だったこともあり、とても快適な旅となりました。オスロから約550km、ゆっくり走るので所要時間は8時間ちょっとです。写真中央は、それぞれの個室にセットしてある洗面グッズと耳栓、それに紙パック入りの飲料水。個室には洗面台もあって水も使えます。また、写真左上は食堂車で朝食をとる親子です。寝台券を買うと朝食券がセットになっていて、バイキング方式で普通の朝食を取ることが出来るのにはちょっと驚きました。かなり得した気分で、トロンハイムの駅(写真左下)に降り立ちました。





トロンハイムの全景


トロンハイム中心部の全景です。中央付近に塔のように見えるのがノルウェー最大の石造の寺院で、ニーダロス大聖堂(Nidaros domen)です。トロンハイムはかつてはノルウェーの首都でもあった歴史ある街です。河口で湾曲しているニード川(Nidelva)に囲まれていて、中心部はまるで島のようになっています。7つもある橋によって郊外と結ばれているのです。
ノルウェーでは、こうした大きい街を眺めたときも「美しい」と感じることができます。よくよくその理由を考えてみたのですが、まず必ず海や山、川、森などの自然の風景が街の中に溶け込んでいること、そして高層ビルのような景観を損ねる建物が目に入らないこと、更には大聖堂のような歴史的建造物がしっかり保存されていて、尚且つ一般の民家も周辺環境に配慮した上で個性を出す外観であることが挙げられるのではないでしょうか。







ニーダロス大聖堂の正面





これがニーダロス大聖堂の正面です。
ゴシックスタイルのこの教会は高さ30m、長さ101mの大きさです。ノルウェーでは最大ですが、世界的にみるとそれほど大きいものではないでしょう。
寺院の建設は1070年から始まりましたが、何度も火事で燃えて、その都度再開したようです。現在残っている最も古い部分は1100年のものといいます。
この教会のすばらしいところは、窓という窓にはめられたステンドグラスです。内部から見ないとその美しさはわかりません。内部の撮影は禁止されていたので絵葉書にあったステンドグラスの写真を載せてみました。












ステンドグラス   ニーダロス大聖堂遠景  




ニーダロス大聖堂の手前に写っているのは、大司教殿です。この建物には博物館もあるのですが、今回は残念ながら開館時間のタイミングをはずしてしまって見ることがかないませんでした。ポースケの期間中、実は多くの博物館やお店が閉まってしまいます。驚いたのはホテルのレストランや街中のマクドナルド、コンビニ店まで閉めてしまうことでした。お土産を買うことも出来ず、それどころか、食事をするために開いているレストランを探すだけで一苦労だったのです。







川を挟んで大聖堂を望む



ニーダロス大聖堂は街のどこからでも望むことが出来ます。
写真は川の対岸から見たところです。






街の様子1



街の様子をご紹介していきましょう。
写真左上は跳ね橋と呼ばれる旧市街橋(Gamle Bybro)です。ツーリストたちは必ずといっていいほど一度はこの橋を渡ります。橋から上がって行った所にあるのがクリスチャンステン要塞(写真中央上と右上の白い建物)で、1676年から1682年にかけて造られました。跳ね橋はその要塞の一部として1681年に完成しましたが、現在の橋は1861年に再建されたものだそうです。クリスチャンステン要塞には昔の大砲が並んでいて、第2次世界大戦中には抵抗運動をした多くのノルウェー人がドイツ軍に処刑された場所でもあります。現在の要塞は多くの人々がピクニックや観光に訪れてのんびりした時間を過ごす場所になっています。要塞からの眺望は格別で、冒頭でご紹介したような街の全景が望めます。
写真左下は、トロンハイム工科大学で1910年に設立されました。学生数は2万人を越えるそうで、日本からも留学している人達がいるはずです。
写真中央下は街中を流れるニード川の様子。水辺に突き出した木造の家の窓から釣りを楽しんでいる人もいました。
写真右中央は一見平凡な建物に見ますが、これは王宮です。北欧で2番目に大きい木造建築だそうですが、それほど大きくは感じませんでした。もともとは個人の住宅として建設され、その後政府が買い取り、1818年以来は王室の人がトロンハイムにやって来た時に利用しているそうです。
トロンハイムは、ノルウェー他の街と同様に木造建築が多く、大火事の歴史も持っています。1681年の大火災以降、延焼しないように道路の幅が広くされたそうですが、1歩路地裏に入ると写真右下のような軒を連ねた家々も見られます。










街の様子2



さらに街中を散策してみました。
街の中心部はほとんど徒歩で周ることが出来ます。どこを歩いていても、古い木造建築や、かわいい住宅、趣のある教会などを発見できる楽しさがありました。写真中央上はホスピタル教会(Hospitalskirken)で、1705年に建てられました。8角形の教会としてはノルウェー、スウェーデンで最初の建物です。写真右上はトロンハイム駅を川の対岸から見たところです。写真中央下はバックランネ(Bakklandet)と呼ばれる地域で、昔、労働者階級が住んでいた木造建築がたくさん残っています。







自転車エレベーター


こんなものもありました。何だろうと思っていたら、しっかり街の観光ガイドに載っていました。これは坂道の多いこのトロンハイムで世界に先駆けて設置された、自転車のためのエレベーター(Sykkelheisen Trampe)です。貸し自転車を利用していた観光客が興味津々に機械を眺めていたので、使用勝手を知りたかった私も興味津々に待っていたのですが、残念ながらその人はこれを使わずに自転車を手で押して歩いて登って行きました。どうやら前もってカードを買っておかないとならないようです。説明の絵を見た限りでは、自転車をレールに乗せ、片足を自転車に置きながら登って行く機械だと思われます・・・・。







ブリッゲン



旧市街橋からの風景です。先にもちょっとご紹介しましたが、ニード川に半分飛び出すようにして木造の建物が両岸に並んでいます。どこかで見たことがある風景だと思ったら、ベルゲン(Bergen)のブリッゲンでした。ここもブリッゲン(Bryggen)と呼ばれています。最も古いものは1700年当時のもので、当時は倉庫群でしたが現在は商店やレストランなどになっています。中にはアパートやオフィスなどの建物もあるのですが、外観は同じようなデザインにしてあって、近くまでいかないとわかりません。
それにしても、このような建築が可能なのは、1年穏やかな海、フィヨルドにそそぐ河口だからと言えるでしょう。














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