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この度、日記風にリニューアルしました。
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2010年11月12日(金)
DVによって母親を殺された子どもたち

「ノルウェーみたいな男女平等の国でも、ドメスティック・バイオレンス(DV)なんてあるんですか?」という質問を受けたことがあります。
答えは残念ながら、ja(yes)です。
ただノルウェーのDV事情を見ていると、問題を「顕在化」するようにメディアが努力している印象があります。
ただ「妻が夫に殺された」と伝えるのではなく、「女性に対する暴力」というカテゴリーに含めて報道する姿勢が見られます。
Aftenposten紙で興味深い特集記事がありました。「DVによって母親を殺された子どもたちがその後、どんな生活を送っているのか?」というテーマです。
早速、ご紹介いたしましょう(Aftenposten紙、2010年11月6日)。

統計によると、2000年から2009年まで、DVによって79人の女性が殺されました(Kripos=科学警察調査局調べ)。
Aftenpostenの調査によると、少なくとも109人の子どもが、母親を父親または近い関係の男性によって殺される経験をしています。
そしてそれらの子どもの追跡調査はほとんどされていません。どこに住んで、どのような生活を送っていて、加害者である父親や男性とどのような関係にあるか、知られていることはごくわずかです。

Jan Akerholtさんは自分の28歳の娘を、9年前、彼女の以前のパートナーに殺されました。その際、息子は4歳で、Janさんがちょうどベビーシッターをしていた時に事件は起きました。
記事の中では現在、その息子さんは誰が育てているかは書いてありませんでしたが、祖父にあたるJanさんは隔週末、この孫を訪ねているそうです。
Janさんは早いうちから、この悲劇的な事件の真相を孫に話すことを決めていました。犯人への憎しみは強かったのですが、孫の将来のために、これから生きて行く彼のために、憎しみの炎をなるべく消していこうと決意したのです。

「ある日、朝食のテーブルで、孫は”パパは刑務所でご飯を食べているかな?”と尋ねました。そして、”パパに会いたいので刑務所に会いに行くことができるかな?”とも尋ねてきました。
私は、その時がくればできるよと答え、そしてまたパパがママに何をしたかについて説明する必要がありました。そのせいで、私がパパに対してすごく怒っていることも伝えたのです。と同時に、パパは親切だったと付け加えました。」

「娘を殺した男と、なるべく穏やかに接することができることが望ましいでしょう。その方が孫のために良いのです。小さい孫は、生きた犠牲者です。彼はこれから生きて行かないといけません。」というJanさんの言葉は、最悪なことを体験した人が語る重く、そして深いものです。

Janさんのように、加害者を赦そうと努力している人ばかりではありません。
24歳になるTomさんは母親を、やはり以前のパートナーに殺されました。
「私は母を殺した男を憎んでいます。母にしたことに対して、いかなる言い訳も存在しません。」

前述したように、DVによって両親を失った子どもの追跡調査は十分なされていません。これはノルウェーだけではなく、国際的な傾向です。
ただVibeke Ottesenという犯罪学者によると、こうした子どもたちにはある傾向がみられるそうです。
  • 子どもたちは不安や罪の意識、怒りや悪夢を抱えて生きている
  • 子どもたちは学校や、その他の人間との関係に問題を抱えている
  • 子どもたちは地元社会で、陰口を言われている
  • 子どもたちは自殺願望があり、また実際に自殺を試みたり、PTSDの症状がみられる
また、児童精神科医のGrete Dybのコメントを紹介しましょう。
「父親が母親を殺したことを体験した子どもたちは、自分もいつの日か暴力をふるってしまうのではないかと恐れています。子どもたちの世話をする人々が、根本的な安心感を与えてあげることが必要でしょう。」

ノルウェーからDVを扱った異色の短編アニメーション映画「アングリーマン~怒る男」が、11月13日から下北沢で上映されます。
見る人によって意見は様々だと思いますが、こうした重い題材をテーマにした勇気に敬意を払いたいと思います。

この特集記事は今まで読んだ記事の中でも、最も痛ましいと感じるものの一つでした。
DVは残念だけど存在する。
でもタブー視しないで、告発することの大事さは特集記事も映画も共通しています。
日本でも、ぜひこうした子どもたちの追跡調査を行って欲しい・・・・と願います。

みんなが泣かないように・・・

2010年11月2日(火)
代理母出産~あるノルウェー人男性の決断~

ノルウェーでは「代理母」による出産は違法です。
しかし、当局によれば、外国で代理母による出産をしたノルウェー人のケースは15件。実際はもっと多いのでは・・・とみられています。
Aftenposten紙に、代理母による出産を選んだノルウェー人男性の特集が組まれていたので、ご紹介いたしましょう(Aftenposten、2010年10月23日)。

Joさんは48歳。職業は、児童精神科医で未婚です。
彼は、インドで代理母を見つけ、無事に双子の赤ちゃんを得ました。
「母親がいなくても、私が子どもと密接にコンタクトを取り、母親や女性の役割も果たしていこうと思います。多くのシングルペアレンツが、そうしているように。」

現在、Joさんはpappaperm(父親の育児休暇)を取得中で、スペインに両親と赤ちゃんたちと共に来ています。
ここに来るまでは長いプロセスがありました。
代理母の試みは2回やりましたが、失敗。昨年の10月、ついに成功に至ったのです。
Joさんの両親は、手放しに息子の代理母計画を喜べませんでした。
「息子が騙されるのでは、と懐疑的になっていました。」
しかし現在では、Joさんに育児についてアドバイスを行うなど積極的にバックアップしています。

記者はJoさんに尋ねます。

-あなたは魅力的な男性で、職業も申し分ない。なのに、なぜノルウェーで女性を見つけ、通常の方法で子どもを得られなかったのですか?

「私は関係を持った女性が何人かいました。そのうちの一人とは真剣な交際でしたが、彼女にはすでに大きな子どもがいて、さらに子どもを産むことは現実的ではありませんでした。月日は流れ、適当な女性が見つからなかったのです。
さらに、両親の離婚によって子どもがどんな過程をたどるのか、たくさん見てきました。私はおそらく、ナイーブすぎて二人の成人男女の恋愛を信じられなくなってしまったのです。
そして私も年を取り、急がないとと思ったのです。
私にとって、子どもを持つことはとても意味のあることです。家族の中に身をおくこと、自分の家族を築きたかったのです。」

-あなたの方法は、エゴだとは思いませんか?

「通常の方法に比べて、代理母を選ぶことがエゴだとは思いません。全ての望まれて産まれた子どもは、エゴな理由によって、この世にもたらされたのです。」

こうしたJoさんの「代理母出産」については、当然、ノルウェー国内では反発の声があります。
小児科医で医師会の倫理委員会のMarkestadは、「こうやって子どもを買うことを容認していいのですか?」と疑問を投げかけます。
また男女平等・社会省は、「代理母出産」はノルウェーの法律に背いており、ノルウェーでは認められないと確認しています。

今回、Joさんは実名と写真を出して取材に答えています。
おそらく、「グレーゾーン」になっている「代理母出産」について議論の一石を投じたいのでは・・・と想像いたしました。
今後の議論の行方に注目したいです。

やや放置気味の赤ちゃん

2010年10月29日(金)
大型書店が合併&スティーグ・ラーソンの遺産

本と本屋さんが好きです。
日本でも海外でも、旅先では必ず本屋さんに立ち寄るようにしています(といってもここ5年はノルウェー以外の海外に行っていないのですが。。。)。また、私が新聞を購読するのは、本と雑誌の広告を見るだけのためになりつつあります。

で、ノルウェーを代表する書店がニュースになっていたので、ご紹介いたしましょう(Aftenposten、2010年10月28日)。

夢ネットもリンクを貼っているNorliという大型書店グループが、やはり大手書店のLibrisと合併することになったそうです。
以前も、夢ネットのどこかで「ノルウェーでは書店の寡占化が進んでいる」と書いた記憶があるのですが、ますますそうした動きが加速しそうですね。
両方の書店をあわせるとノルウェー全体で、178店舗もあるそうですから、巨大書店グループが誕生、ということになります。
新会社の社長は、現在Norliの社長が就任するそうです。
町の小さな本屋さんがつぶれないといいのですが・・・。

もう一つAftenpostenの文化面で目を引くニュースがありました。
日本では「ミレニアム」シリーズとして早川書房から出版されているスウェーデンのミステリー作家、Stieg Larsson(スティーグ・ラーソン)にまつわるものです。
Larssonは早すぎる死の後に、「ミレニアム」シリーズが各国で出版、成功をおさめました。
映画化もされ、ご覧になった方も多いかと思います(私は気がちっちゃめなので、未見です。。。)。
先日、セレブの死後、どれくらいの収入を稼いだか、というフォーブスのニュースが発表され、マイケル・ジャクソンが納得のトップだったのですが、実はLarssonも6位にランクインしていたそうです。
「ミレニアム」シリーズはハリウッドでリメークされると聞いているので、ますますLarssonの死後も富をもたらしてくれますね。

いいなぁ~。
お金持ちの話を書いただけでは、お金は入ってこないことを噛みしめつつ・・・。

Norli本店です

2010年10月22日(金)
イクメンパラダイスを分析すると・・・

日本では、まだ1パーセント台の父親の育児休暇取得率。
ノルウェーでは、「父親の育児休暇」=pappapermの取得が、半ば「義務化」され、世界的にも珍しい「イクメンパラダイス」になっている状況です。
ですが一言に「ノルウェーではpappapermの取得が高い」といっても、さまざまな要因や条件によって取得率に変化があることを伝える記事がありました(Aftenposten紙、2010年10月16日)。
早速、ご紹介いたしましょう。

オスロ近郊Akershusの農家、Oleさんは6週間のpappapermの初日を迎えました。本当は6週間以上、子どもと一緒に過ごしたいのですが、職業上、難しい様子です。
「農家という職業は、8時~16時で終わるというものではありません。家畜がいれば、仕事をほっぽり放しは無理です。」

統計によると、最も長いpappapermを取るのは、公務員だそうです。
一方、自営業者や第一次産業(農業、漁業、森林業)の従事者は、決められた6週間以上のpappapermを取るのは稀です。
両親の年齢、収入、職業環境でも、差異がみられます。
30代の父親は、決められた6週間以上のpappapermを取ることがしばしばあります。

地理的な違いもあります。
首都オスロの父親は、例えば南ノルウェーのAust-Agder県の父親に比べて長い期間、pappapermを取る傾向があります。
例としてオスロで暮らすBirgerさんが載っています。35歳で3人の子どもを持つ彼は、シュタイナー学校で働いていますが、すでに半年間、pappapermを取っています。
「僕が家に長くいることができると、家の責任は僕が持ちます。赤ちゃんの世話と2人の娘を保育園や学校に送り迎えをしています。」

このBirgerさんは、統計が示す「長いpappapermを取る男性」の像にぴったり当てはまります。オスロで暮らし、30代、学校に勤務し、高等教育を受けています。妻は、男女平等を専門とする社会学者です。う~ん、当然の帰結?

最後に、この特集記事では、「長いpappaperm」を取る男性と取らない男性を統計的な見地から見て、箇条書きでまとめます。

長いpappapermを取る男性とは・・・
  • 収入が高い。でも高すぎではない。
  • 35歳~39歳の年齢層。
  • オスロで暮らしている。
  • 高等教育を受けている。
  • 公務員である。
  • 20人以上の規模の職場で働いている。
  • 妻とほぼ同年代。
  • 妻はフルタイム労働。
短いpappapermを取る男性とは・・・
  • 収入が低い。
  • 45歳~49歳。または29歳以下。
  • 南ノルウェーのAust-Agder県在住。
  • 高等教育を受けた期間が短い。
  • アジア、アフリカ、ラテンアメリカ出身者。
  • 自営業者、第一次産業従事者。
  • 小規模な職場で働いている。
  • 妻より収入がかなり多い。
  • 妻よりかなり年齢が高い。
  • 妻はパートタイム労働。
何だか、日本人の私でも納得できる統計結果です。
そもそもアジアの人には馴染まない制度なのでしょうか?
今一度、国の施策に関わっている人は、胸に手を当てて考えてほしいですね。

僕、イクメン?

2010年10月12日(火)
ヨーロッパでノルウェー映画好評です

まだまだ日本では、ノルウェー映画をお目にかかる機会はかなり限定されていますが、ヨーロッパでは事情がちょっと異なるようです。(Aftenposten紙、2010年10月10日)

仕事が遅いことが一部で知られている(苦笑)Norsk Filminstitutt(ノルウェー映画協会)のIvarさんは語ります。
「ノルウェー映画への関心が、母国以上にヨーロッパで高まっていることがトレンドとして読み取れます。」
例として、「En ganske snill mann」(とても親切な男)が挙げられています。
同映画は、オスロでの観客動員はそこそこでしたが、ドイツでは昨年、最も観客を動員した北欧映画になりました。
「本編はとてもヨーロッパ的でオリジナルなスタイルを持っています。そしてユーモアも理解されたのでしょう。」

2008年からノルウェー映画の海外輸出は、2倍にも増えました。
一方、オスロでノルウェー映画の観客動員数は、対昨年比で半分にしか過ぎません。当然ながら、Norsk Filminstituttの目標を下回っています。
かつての日本のように、アメリカ映画が時代の趨勢なのでしょうか。嗚呼。

しかし希望はあります。
一部のノルウェー人監督は海外で、名前が知られるようになりました。
日本でも、「キッチン・ストーリー」や「ホルテンさんのはじめての冒険」の監督で知られるBent Hamer(ベント・ハーメル)さんはその好例です。
ハーメル監督の新作「Hjem til jul」(クリスマスにはお家で)は、最近、サン・セバスチャン国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞しました。
彼の映画を見るためのチケットは、ヨーロッパで100万枚売れました。一方、「ホルテンさん」のオスロでの観客動員は、6979人と低調です。
前述のIvarさんによると、ハーメルさんは「ノルウェーではあまり売れないけれども、ヨーロッパでは熱心な観客がいる典型的な監督」だそうです。
日本でも、彼の新作が上映されますように・・・、とひとまず願をかけましょうか。

先日、「世界のアニメーションシアター WAT2010」のディレクターである伊藤裕美さんにお会いした際、意外な事実を聞きました。
「ノルウェーのアニメーション映画の躍進ぶりがめざましい」。え?本当に?
この記事には触れられていませんでしたが、確かにユニークなアニメーションクリエーターがノルウェーから生まれつつあるようです。

限られた条件から、素晴らしいものが生まれてくる例は、たくさん見てきました。
マイナーという烙印から逃れられない「ノルウェー映画」ですが、今後に期待ですね。

3年前に見たノルウェーのコメディー映画です

2010年10月5日(火)
誰も知らない・・・

ノルウェー人って面白いです。
自分たちで「ノルウェーは世界一の国だ!」と堂々と言ってのけちゃう一方、外国での評判に一喜一憂。
「ノルウェーのことなんて、外国人は誰も知らないかも・・・」と自虐的な記事が、定期的に掲載されています。代表的なものをご紹介いたしましょう(Aftenposten紙、2010年9月25日)。

イギリスに行って、ノルウェーについて街頭インタビューを試みます。
「ノルウェーの首都?ううん、ええっと・・・」
「どこにあるかは知っているるけど。確か北の方だったよね」
「首都は、ヘルシンキだよね?」
「確か北海油田があるんだよね。でもスウェーデンやフィンランドのことならもっと知っているよ。アイスホッケーが好きなんでね。」
「近代的な国だと思うけど、相変わらず、木でできた家に住んでいるだよね?」
などなど、平均的なイギリス人のノルウェーに対する知識は決して、豊富とは言えません。他に、「寒い、暗い、物価が高い、海運、フィヨルド」などがキーワードで登場しました。

こうした「ノルウェーという国のマイナーさ」について、旅行業に就いている人々にとっては死活問題です。
「ノルウェー以外の国で、ノルウェーについていかに知られていないかは、恐ろしいほどです。私たちもこの種の調査は行いました。ほとんどの人は、”ノルウェー”という国について名前は聞いたことがありますが、他については何も知りません。」
そしてInnovation Norwayの旅行ディレクターの方は、危惧をもらします。
「私たちについて聞いたことがなければ、ノルウェーを売り込むことも難しいのです。」
また、フィヨルド・ノルゲというマーケティング会社も、ため息交じりに現状を語ります。
「平均的なヨーロッパ人やアメリカ人は、ノルウェーについてカザフスタンやウズベキスタンについてと同程度の知識しか持っていません。
だから私たちは、自分たちがいかに知られていないか認める必要があるのです。」

ノルウェー・マイナー脱出計画を、みんなは手をこまねいている訳ではありません。
特に旅行業界では、国際的なマーケティングを展開中。
例えば、「ナショナル・ジオグラフィック」誌において、ノルウェーのフィヨルドは世界一の観光地に選ばれました。
「私たちは、ちょっと売り込みに奥手だったかもしれません。でも、これからはマーケティングに頑張ります。」

・・・今更・・・・。なんて冷たく突き放さないでくださいね。
これからも、暖かくノルウェーを見守っていきましょう♪

フィヨルド観光は人気ですが・・・

2010年9月29日(水)
読むことの楽しみ~ノルウェー児童文学の紹介@「ピッピのくつした」

私は、子どもがいなければ、下に弟妹もおりません。
なので、「絵本を読んで聞かせる」という経験がほぼ皆無に近いです。
ですが本日、貴重なその体験ができ、それがなかなか気持ちの良いことが分かりましたので、ご報告をさせてください。

町田市の自主男女共生学級グループの「ピッピのくつした」さんに呼ばれて、ノルウェーの話をしたのは、8年前、2002年のことでした。その際の講演録は、こちらからご覧いただけます。
それから8年経ち、めでたく「ノルウェー夢ネット」も継続しているので、嬉しい限りですね。
今年になって再び、同会より講演の依頼がありました。「ノルウェー男女平等の本を出版する会」の荒川ユリ子さんからのお言葉添えによるものです。
内容は、夢ネットでも何度か取り上げている「Sinna mann」(「怒る男」、映画版「アングリー・マン」)の紹介を、とのご依頼でしたので、喜んでお引き受けいたしました。

本日、久しぶりに小田急線に乗り、一路、町田まで。
場所は「まちだ中央公民館」です。
「ピッピのくつした」のみなさんは、さまざまな読書会や勉強会を続けている真面目なお母様たちの集まりです。
フリーな仕事で、フリーすぎる生活を送っている「フーテンの寅さん」のような私を皆さんは受け入れてくれるだろうか・・・若干の不安はありました。
ですが、お母さんって優しいんですね。みなさん、とても真剣に私の拙い講演を聞いてくれました(感涙)。

講演のタイトルは、「DV、見えなくなった女の子~グロー・ダーレの描く繊細な子どもの世界~」です。
児童文学作家グロー・ダーレ(Gro Dahle)と、夫のイラストレーター、スヴァイン・ニーフース(Svein Nyhus)との共作は素晴らしい作品にあふれています(二人の楽しい講演会の様子は、こちらからご覧になれます)。
ところで「怒る男」の訳は、DV防止の活動を行っている中田慶子さんが手を加えてくださり、「怒りんぼ」というタイトルに変更しました。そして、みなさんを前に絵本を広げて、日本語訳を読みあげていったのですが・・・。

これが気持ちいいんです!

内容は、急に怒りだして暴力をふるうパパにおびえ、無力なママ、そして主人公の男の子は自分の気持ちを声に出すこともできない・・・というシリアスなDVを扱った絵本なのに・・・。どうしてでしょう?
黙読人生をつき進んできた自分が、声を出して絵本を読むことが、こんなにも気持ちがいいなんて、ということが発見できた時間でした。

絵本の朗読や、内容について作者や本書のアドバイザーから確認した補足説明をしながら、2冊目の本、「いい子」(Snill)を紹介します(本書は、サロンでも取り上げました)。
優等生できちんとして非の打ちどころのない女の子、ルッシはあまりにもいい子すぎて、逆に親からも先生からも、周りの子どもたちから注目されることもなく、そしてみんなの前から見えなくなり、壁の中に入っていく、というユニークな内容の本です。
本書も、下手を顧みず、朗読させてもらったのですが、やっぱり気持ちいいんですよね。

講演終了後、参加されたみなさんから感想のお言葉をいただきました。
こういった熱心なグループに参加されている方たちですから、私以上に紹介した本を理解して下さって、「あ、そういう読み方もあるんだ」と目からウロコの思いがしました。
私は「怒りんぼという本や映画をお子さんに見せたいと思いますか?」という問いを講演中に発したのですが、みなさん、真摯に答えて下さったのが印象的でした。

お弁当をいただきつつ、みなさんと会話をし、そしてノルウェーのことなどもいろいろご質問を受けたので、ノルウェーヲタの本領を発揮し、その後2時間(!)も対話をさせていただきました。
最近の学校の話や学童保育のお話など、ノルウェーのそれと比較しつつ、とても興味深く拝聴しました。

末筆ではありますが、これからも、「ピッピのくつした」の活動が続きますように、お祈り申し上げます。貴重な機会を本当にありがとうございました。

本を片手にしゃべってます

2010年9月23日(木)
境界を超えること~ノルウェー・バンド・ライブ鑑賞記~

「私たちは何だってできるんだから」
好きなドラマのセリフの一節を、ふと、ノルウェー人バンドによるライブパフォーマンスを見ながら、思い出しました。
そう、「何でもできる」し、「何でもアリ」なのです。
ところで、音楽体験を言語化するのは難しいです。
でも、無理は承知で、音楽無知による、ライブ鑑賞記を記したいと思います。

9月22日(水)、南青山マンダラにて、「Norway Folkelarm in Tokyo 2010」というイベントがあり、ご招待をいただきました。
チラシによると、「注目のノルウェーアーティスト3組が巻き起こす熱狂」とあります。
ふ~ん、これはすごい!でも、私はノルウェーの音楽について大変無知なので、この参加するミュージシャンの誰も知りませんでした。それに「ライブハウス」なる空間に足を運ぶのは、一体、何年ぶり?

まずトップバッターは北方の原住民サーメ人Johan Sara Jr.(ヨハン・サラ・ジュニア)によるヨイクのパフォーマンスです。
サーメの伝統衣装に身を包んだ彼は、ヨイク独特の音階、ボイスのうねりを効かせながら、私たちを青山から異次元へ誘ってくれました。
私はヨイクを聞くのは2度目です。最初は、ずいぶん昔に参加したオーロラツアーで「サーメ人のテント訪問」がありました。そこで、サーメの人がうたう不思議な音楽、ヨイクを聴くことができたのです。焚火を囲んでのヨイクは今でも記憶に残っています。
Johan Sara Jr.のヨイクは、他の音楽ジャンルとも融合しながら、彼独自のヨイクを歌うことに成功していました。

2組目は、「ノルディック・バグパイプ」という聞き慣れない楽器を演奏するアーティスト、Elisabeth Vatn(エリザベス・ヴァトン)です。一体、どんなライブになるのか想像もつかないな~と期待に胸をふくらませて舞台を眺めていると、思いっきりカジュアルな服装で現れた彼女。そっか~、バグパイプだからって、コスチュームはないのね、と納得。
バンド編成でプレイしましたが、やはり圧倒的だったのは、彼女の「ノルディック・バグパイプ」です。クラシック、ロックやポップの要素も取り入れつつ、「境界」というものを軽々と超えてしまう力量に感嘆しました。

そしてラストは昨年も来日したValkyrien Allstars(ヴァルキリエン・オールスターズ)
このバンドのライブがきっかけで、今、ノルウェー語教室に来ている生徒さんがいるくらいなので、もう期待しないわけにはいきません。
3人のハルダンゲル・フィドル奏者、ベース、ドラムの編成で、バイオリニストの女性がヴォーカルもやります。
彼女たちの登場で、ライブハウスの体温が上昇した感じがしました。音楽が熱い!のです。それまで牧歌的でお上品なイメージだったハルダンゲル・フィドルがこんなにロックにも、そしてパンクにもなれるなんて、またもや「境界」なんてつまらないものを易々と超えてしまう演奏でした。
歌詞は珍しくノルウェー語で、迫力満点のハスキーボイスで歌われました。

先日のノルウェーのジャズバンドの演奏を聴いた時も思ったのですが、みんな「個性」を武器に、ジャズとかロックとか、カントリーとかポップといった既存のジャンルを、軽やかに超えていくのが印象的でした。

ライブ終了後は、メンバーと少しお話したり、同行のピアノの先生がCDを買ったので、それにサインを書いてもらったり、また知り合いにたくさん会えたので、脳が一気に活性化されました。
怖いと思っていた「ライブハウス」。椅子があって良かったです。
次はオールスタンディングに年甲斐もなく挑戦しちゃおうかな・・・。「私たちは何だってできる」んですものね。

ライブ会場にて

2010年9月17日(金)
王室と政治家の関係は・・・?

この欄でも、以前、取り上げましたが、ノルウェーのストーレ外相(労働党Ap)は素敵です。男前です。有能です。
ということで、いつも彼が新聞に載っていると「きゃ~」と嬉々と読んでいるのですが、昨日我が家に届いたAftenpostenの記事には、嬉々とできませんでした。逆に「う~ん」と、うなってしまったのです。
でも事実は事実。内容をご紹介いたしましょう(Aftenposten紙、2010年9月11日)。

保守党(H)の政治家、Inge Lønningさんは苦言を呈しています。何に対して?皇太子夫妻とストーレ外相の仲が良すぎるのが問題なのだと。
「ストーレ外相と皇太子夫妻の友情は、いろいろな理由から問題があります。まず第一に、外相は自分の役割を、(皇太子夫妻からの)影響を受けずにこなすことができるでしょうか。」

ここ10年間、ストーレ外相は妻と共に、ホーコン皇太子とメッテ・マーリット皇太子妃と友情を育んできました。
労働党の閣僚では、ギスケ産業大臣も王室とのつながりが知られています。彼は、マッタ・ルイーゼ王女と夫のアーリ・ベーン氏と仲良しとのことです。*余談ですが、このマッタ・ルイーゼ王女夫妻は今、ノルウェーのーのメディアをお騒がせ中。「天使がみえる」と数年前に発言し、スピリチュアル系に傾倒したことが発覚したマッタ・ルイーゼさん。最近は「死者ともコンタクトが取れる」とスタヴァンゲルの新聞に語ったとかで、ますます渦中の人に・・・。

王室と労働党閣僚との仲良し関係を問題視しているのは、自由党(V)の党首も同じです。「王室は全ての人にとっての存在であるべきです。でも現在の状況は、皇太子夫妻が労働党を友人と選び、シンパシーを感じているように見受けられます。」

ダボス会議に出席したり、活動的で知られるホーコン皇太子。
ストーレ外相も、クラスター爆弾の国際的禁止に向けて大きなイニシアティブを取ってきました。お互いに惹かれあう気持ちは分かるような気がします。
ただ、「王室の象徴的な立場」ということを考えると、「難しい友情」なのかもしれない・・・と感じる記事でした。
ストーレ外相、民間人の私と友達になってください!ってなんておバカなオチでしょう。。。。

素敵なストーレ外相♪

2010年9月10日(金)
高等教育=お仕事ゲット!

ネットでいつも読んでいる新聞には特に、心惹かれるニュースがなかったので(最近は政治家が外遊先で高価な贈り物をもらっていて大問題。やれやれ。)、久しぶりに大学新聞(Universitas)のネット版を眺めていました。

私が留学していた10年前より紙面レイアウトが明らかにおしゃれになっていて、「進化したものよの~」と、麿のような気持ちで感心しちゃいました。
新学期が始まってまだ間もない時期、学生を鼓舞するような記事を発見!
「教育を受けたノルウェー人は就労率でトップ」という見出しです。
早速ご紹介いたしましょう(2010年9月7日)。

「Education at a Glance」というレポート(どこが発表元かは不明)によると、高等教育(大学、カレッジ)を受けたノルウェー人の就労率は、スイスとアイスランド(ちょい意外)と並んで、90パーセントという高記録です。これはOECD諸国の中では、トップクラスとか。

高校の教育を受けたノルウェー人のうち85%は就労していますが、中卒の就労率は70パーセント(高いと感じるのは私だけ?)
また特筆すべきは、高等教育を受けた女性の就労率の高さで、約90パーセントです。

なおOECD諸国のうち、高等教育を受けているのにも関わらず就労率が低い国はトルコと韓国だそうです。約75~80パーセントにとどまっています。

日本も景気が悪くて数字が低そうですよね。
若い人が希望が持てる国に!って政治家のスローガンみたいですけれど、外でクソ暑い中、リクルートスーツを着ている学生さんたちを見るたびに、応援しています。
(ノルウェー業界はほとんどお仕事なさそうですが・・・)

のんびりムードのオスロ大学の学生たち

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