ノルウェー語のこと(ブログ転載)
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きゅうりの時間


「今年はそれほど“agurktid”が目立たないな~」とノルウェーの新聞をネットで覗くと思います。
Agurktid=agurk(アグルク)「きゅうり」+tid(ティードゥ)「時間」は、直訳すると「きゅうりの時間」。
ノルウェー語の意味は「夏枯れ」。つまりニュースのネタがない夏の時期を指します。

"agurktid”を絵にしたもの("Perler for svin"より)(写真:“agurktid”を絵にしたもの(”Perler for svin”より))

そうなんです、今年はギリシャ危機のお蔭(!)で、紙面はそれなりににぎわっているように見える・・・。こんなのagurktidじゃない!と拗ねてしまいます。

日本のニュースや新聞でも「夏ならではの定番記事」があるかと思います。帰省ラッシュ、お盆、高校野球など。
ノルウェーの新聞やニュースでも、agurktidにふさわしい定番ネタがあります。

例えば、夏休みの天気。これがノルウェー人の複雑な心理を表していて面白いんですよね。暑くていい天気が続けばもちろん紙面は「夏が来た!」と喜ぶのですが、でも「こんな好天気は長く続くわけはない・・・」と言う諦念が、垣間見られる北欧心(←「乙女心」とひっかけてみました)。

今年はまだ読んでないのですが、人気の旅行先グラン・カナリア諸島などのバカンス地で、いかに「ノルウェー人の若者が酔っぱらってバカ騒ぎをやっているか」もありがちなネタです。これを真面目に受け取ると、夏のグラン・カナリアは北欧人たちのせいで風紀乱れまくり、という印象ですね。

「マナーのなっていない若者」シリーズは他にもあります。ノルウェーや北欧で人気の「使い捨てバーベキューセット」(Engangsgill)を使って公園や森、湖でBBQを楽しんだのはいいけど、後に大量のごみが残って全くけしからん、と、何だか日本と変わらないじゃないか~というネタも既視感がありますね。
使い捨てバーベキューセット
・・・以前、どこかで書いたか話した記憶があるのですが、今まで読んだ中で一番、「agurktidなネタ」と思った記事は、オスロ大学留学時に読んだ全国紙の記事。「お金を拾った人が警察に届けた」というニュースが大きく取り上げられていました。「それで??」とつっこむ気力も起きない脱力感。「良かったね~」としかいいようのない記事でした。

ところでなんで、agurktid「きゅうりの時間」が「夏枯れ」の意味になるかは、サイトでも以前、書いたので重複は避けたいのですが、でも書きますね~。
夏。何もニュースのない夏。ネタに困った記者たちが、「今年のきゅうりの長さは何センチか」と書いたことに由来します(”Perler for svin” Helene Uri著より)。
言葉って面白い!
正しいagurktid

というわけで、「今年の新聞やニュースはagurktidじゃない!」と不満を感じる理由は理解していただけましたでしょうか?
まったりして、どーでもよい平和なニュースこそagurktidの醍醐味。まったく、ギリシャのせいで・・・(ぶつぶつ)。


2015年7月14日
norway yumenet official blog 150714より転載しました-

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誰が「ノルウェー人」?


ここ何年か、ノルウェーの新聞や本、テレビでこの表現をよく見かけるようになりました。

etnisk nordmann

日本語にすると「エスニック・ノルウェー人」です。この時点で意味が分かる人はいますか?
etniskは、英語のetnicに相当します。ちなみにノルウェー語辞書で意味を引くと「特別の民族、人種」という意味ですね~。
で、この「エスニック・ノルウェー人」は、移民系ではない「純粋なノルウェー人」(!!)という意味で、使われています。

この語が出てくる度に、「それにしても訳しにくいフレーズだな~」と思ってしまいます。
というのも、日本では「エスニック」は「エスニック料理」を連想することが多く、また「エスニック料理」自体が限られた地域の料理を差すような傾向がありますね。
世界規模からすれば、日本食も「エスニック料理」にどんぴしゃ当てはまるかと思いますが。
このような日本における「エスニック」の使われ方がヘンだよ、というのは文筆家の山口文憲さんがずいぶん前に指摘されていました。

・・・ということで、何かモヤモヤする「エスニック」という単語。
ではなぜ単に「nordmann」(ノルウェー人)ではなく、「etnisk nordmann」という単語がノルウェーで使われる頻度が増えたかと言うと、移民の数が増加していることと関係があります。つまり「移民」または「移民2世、3世」のノルウェー人が多くなっているので、そうではないノルウェー人と区別する必要が出てきたのですね。

etniskも悩ましいのに「nordmann」の定義も大ざっぱです。
ノルウェー語の単語の起源について解説した『ORD ORD ORD』(Helene Uri&Ingebjørg Tonne著)という本から引用してみましょう。
「Nordmannという単語を辞書で引くと、”ノルウェー出身の人々”としか書かれていない。今、私たちがこの言葉を使う時の曖昧さを反映している」。
意味をぼやかすことで、使い方も広義に亘りますよね~。

おそらく昔は、せいぜいデンマーク、スウェーデン、アイスランド、フィンランドなど北欧圏、ドイツやオランダなどのノルウェーに近い祖先をもつノルウェー人くらいしかいなかったのかもしれません。
ですが、1960~70年代くらいから「非西欧諸国」の移民や難民が増加し、多種多様な「移民社会」に慣れていなかったノルウェー人は混乱してしまったのかもしれません。
確かにノルウェーの市民権は持っていて、ノルウェー語も話せるけれど、みんなひっくるめて「ノルウェー人」としちゃってOK?とは言いにくいという逡巡が「etnisk nordmann」なる単語ができたことにつながったのでは?と推測します(あくまでも推測です!)。

日本語の訳しにくさに話を戻すと、このetnisk~人は、「生粋の~人」とか「白人の~人」と訳されている例を見ました。
「白人」は意味が広すぎますね~。訳者の苦労がしのばれますが・・・
「生粋のノルウェー人」・・・江戸っ子か!とツッコミを入れたくなります・・・。

20150818

何度かノルウェー語レッスンで、生徒さんたちに「どう訳すのがいいと思います?」と聞いたことがありました。
「本物のノルウェー人」、「ネイティブノルウェー人」などが挙がりました。「ネイティブノルウェー人」・・・なんか、かっこいい!
「”エスニック・ノルウェー人”は分かりにくい」という意見が多かったですね。本当はこれが一番、原語に近いのに。

ということで、「etnisk nordmann」のしっくりくる訳語と、そもそも「純粋のノルウェー人」って誰なの?と根源的な疑問をいただきつつ、この稿を終わりにします。

街歩きが楽しくなる♪~目からウロコのノルウェー語~

2000年、オスロ大学に留学中。オスロ中央駅で地下鉄を待っていました。
暗いホームで前の看板を何となく眺めていると、こんな文字が書かれていました。

Uønsket graviditet

ほ~、こういう問題はノルウェーでも存在するんだ、なるほどね~と納得しました。
で、肝心の意味は”Uønsket”(ウーウンスケット)「望まない」 + ”graviditet(グラヴィディテートゥ)「妊娠」で「望まない妊娠」です。

というように、看板の文字が読めると街歩きの妙味が増すということが、お分かりいただけましたでしょうか?(例が良くない?でもすごく印象的だったんです!!!)

こう感じるのは私だけではないようで、旅行に行かれたノルウェー語レッスンの生徒さんたちが「看板の意味が分かるようになって嬉しかったです」と何度か教えてくれて、
「ですよね~」と共感するノルウェー語愛♪ 

10月、アネッテさんのお宅で開催した「ワッフルパーティ」で、ノルウェー旅行で撮った看板や標識、もろもろの文字の写真をパワポで見せながら解説しました。
今まで「ノルウェー語」にターゲットを絞ったプレゼンは何度かしてますが、このプレゼンの準備はとても楽しかったです!旅行中に撮った写真を見直してみると、意外にも多い文字、文字、文字。意味がわからなければ単なる記号ですが、意味がわかっちゃうとニンマリできちゃうというしくみです(知らない方が良かった・・・と言う場合もあります)。

・・・と文字で書いてもイメージがわかない!という方のために例を出してみますね。

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実はこの建物の存在は知ってました。でも9月にオスロで居候させてもらった友達の家の近所に発見してビックリ!
Øl =「ビール」 + akademiet「アカデミー」=「ビールアカデミー」という意味です。ビールのテイスティングや、ビールとチョコの試食会などやっているところですが、øl と akademiet を組み合わせるなんて面白いですよね。

次行きまーす!

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これは、ブログで取り上げたMatstreif「食の祭典」で見かけた文字です。イロイロ深読みできる文字に、思わずパチリ!と写真を撮りました。
Norsk「ノルウェーの」 + drikke「飲む」 + kultur「文化」=Norsk drikkekultur「ノルウェーの飲酒文化」!
ちなみに、たくさんのクラフトビールがここで買うことができました~。ノルウェーの飲酒文化ね、ふふ・・・(以下、自主規制)。

はいお次は・・・

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これはな~んとなく雰囲気から意味がわかりますか?
rydde「片づける」 + salg「セール」=「在庫一掃セール」という意味ですね~。Salg はノルウェー語が分からなくても意味が伝わると思います。

どんどん行きますよ、そろそろノルウェー語が分かってきましたね?(←そんなに簡単にわかっちゃったら、私の仕事なくなる・・・)
これはオスロ随一のメインストリート、カール・ヨハン通りで見つけました。

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冒頭の Uønsket graviditet「望まない妊娠」と同じように、やっぱりこういう問題はノルウェーでもあるんだな~、と思いました。
Født「生まれる」 + i「中に」 + feil「間違った」 + kropp「体」=「間違った体に生まれた?」という意味になります。性同一性障害の人に向けたメッセージでしょうか。紙一枚から、ノルウェー社会の一端が覗ける気分になれます(←あくまでも気分です、気分・・・)。

次は・・・「おお、やっぱりノルウェーでもこれのニーズがあるんだ!」と思った看板です。

20151215-8

英語で Remove とありますが、じっくり読むと・・・Fjern「取り除く」 + tatoveringen「タトゥー」=「タトゥー除去」という文字が読めますね。日本に比べて、国民一人あたりのタトゥー率は高いノルウェー。カジュアル感覚で入れている人が多い印象です。でも、やっぱり除去したい時があるの?ノリで入れちゃった元カノ&元カレの名前?いろいろ妄想が広がり、ノルウェーの風俗の一端が覗ける気分になれます(←これも気分です!)。

可愛い看板もありますよ~。

20151215-5

Varm「暖かい」 + sjokolade「チョコレート」=「ホットココア」です♪
とっても甘くて、体が温まるココアは、ノルウェー留学中によく飲みましたね。看板を目にした瞬間、思い出がよみがえりました。

・・・てな感じで、ノルウェー語が解読できると「怪しい東洋人、なぜここで写真を撮っているのか」モードが発動することがお分かりいただけたでしょうか?
日本に来る外国人観光客が増えているようですが、やっぱり看板が読めると面白いと思うんですよね~。例えば・・・

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「ドッケン!」ドイツ人もビックリ!!


2015年12月15日
norway yumenet official blog 151215より転載しました-

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オイサン(oisann)の呪縛


Wow!oops!Ouch!

・・・英語の間投詞は、しばしば海外帰国子女が口にしがちなフレーズとして知られています。
つい自然に出てしまうのでしょう。ただ日本では、英語ができるのは羨望とともに「妬み」の対象ともなるので、「海外かぶれ!」と言われてしまう一面もありません。
本当にお気の毒です。英語圏に滞在したがために、いわれなき迫害を受けるとは・・・(話、広げすぎました)。

私はノルウェーに留学し、ノルウェーに関わる仕事を20年近くしていながら、どんな影響を受けているでしょうか?
日常生活で、ノルウェー語の単語がポロっと出てしまうなどということはありません。英語と違い理解できる人が少ないので、やっても「変人」の烙印を押されるだけです。

ですが・・・この単語だけは・・・なぜか身についてしまい、ホトホト困っています。
それは、「Oisann」(オイサン)という間投詞。これと非常に似ているoj/oiについては、サイトの「ひとことノルウェー語講座」で取り上げましたので、よろしければご一読ください♪

オイサン・・・・「男オイサン」のような響き。
驚いた時に使いますね。意味は「びっくりした!」でしょうか。
oisann!

昨夜、牛乳を温めた後、カップごと落してしまいました。瞬時に「オイサン!!」という単語が響きます。
言った後に「ああ~~、また oisann 出ちゃったよ~」と後悔です。1人の時はまだしも、人がいる時に「オイサン!」と叫んだ時のバツの悪さ・・・。
しかもドジ連発なので、オイサンの使用頻度が高いですぅ。

ノルウェー語の単語はたくさんあるのに、なぜ「オイサン」oisann だけが、憑依していまったのかはナゾです・・・。
ノルウェー帰国チームの皆さんに、「Oisann がポロっと出ちゃいますか??」とアンケートしたいですね~。え?ワタシだけ?

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