ノルウェーのユール(クリスマス)



ノルウェーではクリスマスのことをユール(jul)と言います。ユールとは古代から行われていた「冬至祭」のことだそうです。北欧の冬はとても暗いものです。冬至祭は暗い冬から明るくなっていく光を祝うお祭りなのです。
でも、みなさん勘違いなさらないで下さい。暗い冬といってもずっと真っ暗なわけではありません。特に私の住むドラメンはノルウェーでも南部に位置していますから、冬至で日の出が朝の9時過ぎ、日の入が3時過ぎくらいです。(正確な時間を調べ損ねました。)そして、日の出・日の入の前後30分程は薄明るいですから慣れてしまえばなんてことはありません。もちろんノルウェー北部は、もっと暗いはずです。何しろ「極夜」と言って1日中太陽が出ない日が続くのです。夏の白夜の反対です。ただ、聞いた話ではそれでも日中は薄明るくなるらしく闇夜が続くイメージとはちょっと違うようです。
さて、話をクリスマスに戻しましょう。古代ノルウェーの冬至祭は10世紀にキリスト教が入ってきたときに、キリスト降誕祭と結び付けられて合体しました。そして今日ではノルウェーの人たちにとって1年で最も大きな祝祭となっているのです。
ユールの気配は10月終わりくらいから漂いはじめ、11月になると広告やカタログの数々が家のポストに投函されるようになります。12月になると街中も家も会社もどこもかしこもユールだらけ。パーティーも多くなりレストランは予約でいっぱいになるようです。お店のショーウィンドゥにはユール一色のさまざまな飾り付けが溢れ、女性用のブティックにはちょっとセクシーなパーティードレスが並びます。
日本と大きく違うのは、それほど派手に盛り上がっていても最終的にユールは「家族と過ごすもの」であることです。12月24日のユールアフテン(クリスマスイヴ)はお昼過ぎに全てのお店が閉まり、全ての人々が家路に着きます。もちろん最初から会社がお休みで家にいる人も多数派です。そして24日から25日にかけては家族で食卓を囲み、特別なご馳走を食べ、プレゼントを開けて、歌って踊って家族の時間を楽しく過ごすのです。また、24日に教会に出かけるのが正式のようですが、どうやらそれほど多くの人は行かないようです。
それでも中には日本のようにレストランでの食事を楽しむ人たちもいるだろうとお思いになりましたか?答えはNOです!
実は、昨年のクリスマスイヴに私と夫は首都オスロで食事をしようと楽しみに出かけました。ところが、本当にこれが首都かと思うほどまさに「人っ子一人もいない」状況で、開いているお店は皆無だったのです。事前にノルウェー人の友人に確認はしていたものの「24日に外に食事に行ったことがないのでわからない。」との答え。日本との文化の違いに唖然とさせられました。そう言えば、お店だけではなく一流のホテルであっても中には「クリスマス休暇」で閉まってしまうところがあります。もし今後、この季節にノルウェーを旅してみたいとお思いの方がいたなら、宿と食事の確保だけはお忘れずに・・・・・。







ドローバックの町並み



ここはノルウェーのクリスマスの町、ドローバック(Drøbak)です。オスロフィヨルドの東側の海辺に位置するこの町は、古い木造家屋が保存されて並んでいるとてもきれいなところです。人口はおよそ3000人、夏も冬も関係なく一年中がクリスマスの町として知られています。
写真左上はユーレフース(クリスマスハウス)で手作りの人形やクリスマスグッズが人気のお店です。日本にも各地に協力店があるのにはちょっと驚きました。写真中央の交通標識は、この町の入り口の道路脇に実際に立てられているもので、「ニッセに注意」の意味だとか。ニッセというのはノルウェーのサンタクロースのことです。詳しくは後ほどご説明しましょう。
ところで、サンタクロースの故郷はどこだとお思いですか?フィンランド?スウェーデン?デンマーク?それともノルウェー?
寒い国であることは確かですよね。それからトナカイ。どうもイメージは北極圏なのですが・・・・・・・・。





ユーレフースの店内とニッセ




ユーレフースのお店の中はクリスマスのための買物をする人たちでごった返していました。物を売っているというよりも店内中が飾り付けられているといった雰囲気で見ているだけでも飽きません。写真右に座っているのがノルウェーのサンタクロース、ユーレニッセです。狭い店内をくまなく探してもまったく同じニッセは二人といませんでした。気に入ってしまったので慌てて買ってしまいました。人形を買うのに500クローネもかけたのは初めてのことです・・・・・。1クローネ13円とすると6500円ですね。余談ですがこのところずっと円が高くなっていて5月頃は1クローネ15円以上していたのが13円を切っています。1998年の夏ごろは20円近くだったことを考えると信じられないことです。ノルウェーの物価は高いと思いこんでいる人、今ならかなりお得です!
さてさて、ニッセの説明でした。実はニッセはこの国に古くから伝えられている小人のことなのです。農場の屋根裏や納屋に住んでいて土地や建物を守ってくれます。ときにいたずらをしたりもするそうですが。写真をみておわかりの通り赤い帽子に白いあごひげ、膝丈の半ズボンに手編みの靴下、そしてノルウェーセーターを着ている陽気ものです。
ノルウェーのこどもたちは24日にユーレニッセがプレゼントを背負ってやってくるのを心待ちにしているそうです。





サンタクロース郵便局



ユーレフースの隣にはユーレニッセの郵便局があります。これがノルウェーのサンタクロース郵便局で、ここのニッセあてに手紙を出すと返事がもらえるそうです。写真右はユーレフースの壁に貼ってあった手紙の数々。日本からのものがとてもたくさんありました。
ところでサンタクロース郵便局があるのは実はノルウェーだけではありません。北欧各国にはそれぞれ設置されているそうです。特に有名なのはフィンランドのロバニエミです。サンタの故郷としてもフィンランドの方が知られているのではないでしょうか。それでもノルウェーは独自のサンタクロース、ユーレニッセを断固と守り続けているのです。ノルウェー以外の北欧の各国は自国のサンタを世界的に知られているサンタのイメージに置き換えてしまったわけです。(もちろんノルウェーでも外国から輸入されている普通のサンタもよく見かけますが。)
いったい真のサンタクロースの故郷はどこなのでしょう?これはおそらく世界の謎です。参考までに付け加えておくとノルウェーのニッセは決してトナカイのそりには乗りません。(馬とか豚とか・・・・のはずなのですが前の項目、リレハンメルのご紹介の中でお土産屋さんの前にいたニッセは確かにトナカイにまたがっていました。ということは最近はかなりノルウェーのニッセも「世界のサンタ化」してきているのでしょうか。)
いずれにしてもノルウェーのサンタクロースは世界の中でも個性的な存在であることに間違いはありません。このような話から私が常々感じていること・・・ノルウェー人というのはなんて頑固な国民なのでしょう!それで思い出しましたが、ノルウェーはEUに加盟していない国であることをご存知ですか?加盟の賛否を問う国民投票で頑固な国民が拒絶したそうです。当然ヨーロッパ共通通貨ユーロも対象外。ちょっと変わったノルウェー人の気質は今後も研究の余地がありそうですね。

ユーレニッセに手紙を出したい方は下記の宛先まで。ローマ字でご自分の住所と名前を忘れずに記入して下さいとのことです。

   ユーレニッセのアドレス





ドラメンのライトアップ




あんまりきれいに撮れていませんが、ドラメンのイルミネーションです。ノルウェーでは各所でこのように道路をまたいでたくさんのライトが吊るされます。橋の側道や立ち木にもたくさんの電球が取りつけられます。個人の家でも庭木が輝いていたりします。
でも規模的には日本の表参道とか川崎のライトアップの方が華々しいですね。そもそもこの人通りの少なさが神聖な雰囲気をかもし出しているというか、寂し気だというか・・・・・。これでもドラメンはノルウェーで7番目の都市なのです。人口は5万4千人ほどですけれど。











ドラメンのストール通り



昼間のストール通り(中心通り)は買物をする人々で賑わいます。クリスマス前は1年で最もオサイフのヒモが緩む時らしく、各店舗ではさまざまなクリスマス商戦が繰り広げられています。
法的に決まっていて基本的には4時で閉まってしまう店舗ですが、大きいデパートやスーパーでは通常より遅くまで営業したり、日曜日にも開けたりしているところがありました。(規制緩和でしょうか?)









店舗の飾りつけ



左はショッピングセンターの吹きぬけ部分に飾られているユーレトレー(クリスマスツリー)。右は通路の片隅で踊っている機械仕掛けのニッセたちです。















ユーレビールとグロート(おかゆ)



スーパーの陳列棚にはノルウェーのクリスマスが満載です。
左はクリスマス限定ビールの山。
右はクリスマスに食べる習慣のあるグロートのインスタントパックです。
グロートというのは実は「おかゆ」でして、お米を牛乳で煮てバター、シナモン、お砂糖などをかけて食べます。日本人にとってはちょっと馴染まないのですが、ノルウェーの人たちはこれを24日の昼に家族と共に食すのが慣例のようです。もちろん会社や友人とのパーティーに出されることも。おかゆの中には1粒だけアーモンドが隠されていて、それに当たった人は幸運であり大きなマジパン(アーモンドの粉で作られたクリスマスのお菓子)の豚がもらえたりします。このおかゆ、家庭で食べる時は必ず最初の1杯をニッセに持っていくそうです。そうしないとニッセが悪さをして家を守ってくれないとか。昔むかしからの伝統は今なお残されているのです。








ビールのデザイン





一方、クリスマス限定ビール(ユールエール)も実は伝統的な意味合いがあります。古代ノルウェー家庭では自家製ビールを作ることが義務付けられていました。そのためかノルウェーには意外とたくさんのビール会社があります。大きいものは4つ。その一つはドラメンにあるオース(Aass)社です。数え切れないほどのたくさんの種類の限定ビールはクリスマスデザインのラベルが貼られていて、毎年微妙に味が違うそうです。通常のものに比べると味が濃く、黒ビール(またはハーフ&ハーフ)に近いものが多いようです。(あくまで私が飲んでみた見解です。)










広告に載っていたクリスマス料理



食べ物ついでに書いておきますが、ノルウェーのクリスマス料理は地域によって伝統があるようです。私の住むドラメン(東ノルウェー)ではポークリブやポークパテ、クリスマスソーセージなどを食べます。北ノルウェーや沿岸地方では干しダラを戻したルーテフィスクやタラ、オヒョウなどの魚類、西ノルウェーではラムのリブやソーセージを食べるようです。私ですか?もちろんクリスマスはレストランには行けませんから、腕を振るって東ノルウェーの伝統料理を・・・・・実際はお店で既に味付けをしてあるものをオーブンで焼いていただきました。とっても美味しいお料理でした。今度は是非他の地域のものを食べてみたいですね。(日本人のグルメ志向には困ったものです・・・)
写真はスーパーの広告にあった東ノルウェーのお料理です。











クリスマスケーキ
更についでにクリスマスのお菓子について書いておきましょう。私は作りませんでしたが(作れませんでしたが)、各家庭ではクリスマスのために7種類ものクッキーを焼かなければならないそうです。代表的なのは生姜入りのクッキーで、お母さんがこどもたちといっしょ焼くのが慣例だとか。中にはクッキーで「お菓子の家」を作ってしまう人もいるようです。
また、特別な機会に作るというクランセカーケ(kransekake)はたくさんの輪を重ねたものでノルウェー独特のケーキです。(私は食べたことがないので雑誌の写真を載せてみました。)
写真右は私の大好きなクルムカーケ(krumkake)です。これは甘いクレープを焼いたような風味です。
まだまだいろいろあるのですがこれくらいにしておきましょう。とにもかくにも、どれもとても美味しいお菓子です。各家庭ではクリスマスのおもてなしに、これらのお菓子をきれいに並べてお客様を迎えます。
ノルウェーでは老若男女とわず甘いものが大好きなのです。(ケーキを焼くパパもけっこういるようで・・・・・)













自然素材のリースと門扉の飾り付け







お花屋さんには自然素材のリースが並べられていました。
写真右は門扉に飾られた麦の束。小鳥たちのためのものだそうです。














家の飾りつけ





家の飾りつけはノルウェー人たちの得意技といったところでしょうか。窓という窓にはキャンドル風のスタンドを置き、天井から輝く星を吊るしてみたり、手作りのハートを掛けてみたり。街を歩くだけで楽しくて心が暖まります。
写真右上はアパートの階下に住むコバーさんの玄関。特大のコットンのリースです。




















我が家のツリー




各家庭では当然ユーレトレー(クリスマスツリー)を飾ります。それも玄関から入るのかどうか心配になるくらい大きなツリーを買ってくる家庭が大多数のようです。(中には山から切り出してくる人もいるようですが。)
写真は影響されて買ってしまった我が家の小さな小さなユーレトレー。これでお値段は100クローネ(1300円)です。写真右下のポインセチアもあちらこちらに飾られています。ノルウェーではユーレスティアーナ(クリスマスの星)と呼んでいます。
家庭ではツリーの周りにはたくさんのプレゼントが並べられます。それこそ家族みんなが家族みんなにプレゼントを用意しているので、いったい一人当たりいくつのプレゼントを買わなければいけないのでしょうか。毎年、毎年何を買うか頭を悩ませながら、それでもやめられない1年で最も楽しみなもののようです。こどもたちはもちろんのこと、大人たちも!24日まで開けてはいけないプレゼントを眺めながらきっと幸せにひたるのでしょうね。実は私も仲良くなった階下の年配のご婦人からとっても素敵なろうそく立てをいただいて、大感激いたしました。
また、ノルウェーでは会社からもクリスマスプレゼントをもらえます。今回私の夫がいただいてきたのは、ワイングラスとダンボールいっぱいの食料(サーモン、サラミ、チーズ、チョコレートなどの数々)でした。










我が家から見た朝焼け





クリスマスとは関係ありませんが、これは我が家から見た朝焼けです。ドラメンではまずオーロラを見ることはできませんが、四季折々変化する自然を満喫できるのです。写真の撮影時は雪景色ですが、クリスマスの時は大雨のせいでかなり雪が解けて地面がのぞいてしまいました。













ノルウェー語学校のパーティー



少々画質が悪いですが、これは私の通うノルウェー語学校のクリスマスパーティーの様子です。左はツリーを囲って手をつなぎみんなでクリスマスソングを歌って踊っている様子。家庭でも行われるごく一般的な楽しみかたのようです。
右は保育園に通うこどもたちが歌を披露してくれているところで、とってもかわいくきめていました。















こうして、ノルウェーのクリスマスは続きます。そうです。クリスマスの日から13日間はまだまだクリスマスなのです。日本のように25日を過ぎるとツリーを門松に変えなければならない慌ただしさはこの国にはありません。新年を祝いつつ、まだクリスマスの余韻にひたりつづけるのです・・・・・。クリスマス・・・ユールはノルウェー最大のお祭りなのですから!






工事中のマンション



これはクリスマスとはまったく関係の無い余談です。
写真はクリスマス直前にドラメンの街を歩いていた時に撮ったものです。どうやら建設中のマンションなのですが(ドラメンは都会なのでモダンな建物がたくさん建てられているのです。)、驚いたのは氷点下10度を下回る中で平然と作業をしている人達がいたことです。氷点下10度以下というとどんなものかというと、手袋や帽子無しで1分くらい立っていると手や耳が痛くなって耐えられなくなる気温です。
また、この国ではこういった建設中の建物の周りに安全のための高い塀(仮囲い)を立てることはしないようです。つまりは誰でも自由に立ち入ることが可能な状態なのです。これがいいのか悪いのか、文化の違いと言ったらそれまでですが、「自分の安全は自分で守れ」という個人主義の現れなのでしょうか?


















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