ノルディックスキー競技
観戦記
ノルウェーは当然のようですが、ウィンタースポーツの盛んな国です。家族で楽しむレジャースポーツもそうですが、競技としてのスポーツ強化の為にも国家的な力がそそがれているようです。
例えば今年のアルペンスキーのワールドカップを見てみると、圧倒的な強さを誇るオーストリー勢の中で、少数派ではありますがノルウェーの選手が上位に食い込むことがしばしば見られました。回転競技(スラローム)に限るならば総合優勝を手にしたのはノルウェーのオーモット選手です。個人的な興味で少々詳しく書かせていただきますと、その回転競技を意味するスラロームという言葉は実はノルウェー語が発端なのです。スキー用語はドイツ語ばかりかと思っていた私には思わぬ発見でした。
ノルディックスキーの世界でなら、長野オリンピックの時にも圧倒的な強さを見せつけたクロスカントリーの王者、ダーリ選手はノルウェー人です。(彼はこの冬は怪我を理由にお休みでした) また、ワールドカップの複合でこの冬、日本の荻原健司選手の個人最多優勝記録(19勝)をあっさり塗り替えてしまったビーク選手もノルウェー人。
彼らは当然ノルウェー王国の宝であり、国民的なヒーローでもあるのです。冬季のタブロイド紙では連日のように、彼らの言動を報じていました。(もしくはサッカー関連の記事がスポーツニュースの大半です) テレビでも、日本では馴染みの薄いバイアスロン競技を含めて、多くの試合を観戦する事が出来ます。
前置きがとっても長くなりましたね。つまりはこの国ではウィンタースポーツ観戦を楽しまなくては損だと、私は思うのです。という訳でテレビ観戦だけではなく、身近で生の観戦が出来るチャンスは逃しませんでした。2月にヴィーケシャン(Vikersund)というところで行われたスキージャンプのフライング世界選手権、それから3月にはノルディックスキーのワールドカップ、オスロ大会に出かけてきました。スポーツに興味のない方は「なんだつまらない」とお思いになるかもしれません。しかしながら、もしあなたがノルウェー人という人種の特徴を知りたいならば必見の項目です。
この写真、決して色彩をピンク色に加工したわけではありません。ジャンプのフライング世界選手権が行われたヴィーケシャン(Vikersund)の朝焼けです。(日本の報道ではビケスンド等と呼ばれていたようですが現地の人達の呼び方に習ってカタカナにしました。)
ヴィーケシャンは私の住むドラメンから北に40キロほどのところに位置しています。フライング世界選手権は2年に1度、しかもノルウェーでの開催は10年ぶりとあって、地元では開催前からなかなか盛りあがった雰囲気でした。更にはヴィーケシャンは小さな小さな町(村と呼ぶべきかもしれませんが)ですので、比較的大きな私の住む都市、ドラメンが拠点となっていたことが私のお祭り気分を盛りたてていました。開催直前の地元の新聞では「当日は4万人の人出があり交通機関に混乱が起きる」と報道され、詳しい道路や駐車場の地図、電車やバスの情報も載っていました。
さて、大会3日目、2月12日の土曜日、私と夫はマイカーで会場に向かいました。夫の同僚で、やはり観戦に行くと言っていたノルウェー人の話では、「混雑を避ける為にちょっと早めに出る。」と言うことでした。ですから、私たちは「早め」に出かけることにしたのです。開催が午前9時30分、頑張っても7時半前の出発でした。通常なら片道40分程度の道のりですが混雑したらどうなるかわかりません。新聞に載っている13か所の駐車場の位置をにらみ合わせながら、さてどこの駐車場なら空いているだろうかと心配していました。
ところが・・・・。駐車場に到着してみてびっくりです。思いきって一番会場に近い駐車場を選択したにもかかわらず、そこにはまだ係員すらきちんと配置されておらず、先に駐車されているマイカーも数える程度ではありませんか。それから私たちは、会場に向かう連絡バスが来るのを寒い中でさんざん待たされ、会場にたどりついたのは8時半近くになっていました。そこでまたびっくり。会場にもまた、ほぼ「一番乗り」だったのです。翌日の日曜日も同様でした。土曜日以上の人出が予想され、実際に試合が始まってからはトイレに行くにも通路がないほどの人があふれたにもかかわらず、到着した時は同じ時刻で私たちは「一番乗り」でした。おかげで観戦ポジションとしてはベストなところを選ぶことが出来ました。
結論を申し上げましょう。これを読んでくださった方がどう感じるかは存じませんが、私とノルウェー人の「ちょっと早め」の時間の感覚がまったく違っていたのは確かです。彼らの「早め」とは「試合の本選が始まるちょっと前」くらいのものでしょうか。私たちが現地に到着した試技が始まる1時間前には、きっと彼らはまだベットの中か、ゆったり朝食を食べてコーヒーでも飲んでいたに違いありません。
これらの写真は2月13日の日曜日に撮影したものです。今年のノルウェー南部は異常な雪不足であったのがよくおわかりになると思います。しかしながら、関係者の努力もあってジャンプ台のコースにはしっかりと雪がつけられていました。
ところで、このフライング世界選手権ですが、ジャンプ競技をご存知なら説明する事ありませんがとにかく半端でなく飛ぶものです。実はこのヴィーケシャンのバッケンレコード(この台で一番距離を飛んだ記録)は、日本の岡部孝信選手が1995年に作った194mでした。残念なことに、今回の大会の練習飛行で207mに塗り替えられてしまいました。今年は記念すべき2000年大会とあって、運営側としては何が何でも200メートル以上の記録を出したがり、距離が出るようにジャンプ台を改修していたので当然のことでした。
さて、私が観戦に行った2日間のお天気のお話をしましょう。まずは2月12日の土曜日、朝方はまずまずのお天気。しかしながら、かなりの強風でした。フライングは特に風が危険であるため、何度も何度も打ちきられながらさんざん待たされ、終いには雨まで降ってきて寒い思いをした挙句、5時間ほど待って結局中止。選手にとっても観客にとっても最悪な状況に終わったのです。そして2月13日の日曜日、この日は写真の通りすばらしいお天気でした。と、それがまた風に悩まされてしまったのです。詳しくは書きませんが、大会運営側にも落ち度があったのではないかと思います。前半はそれほどなかった風が、運営上のトラブルなどでやりなおしになったりしているうちに、強風となり、結局最後の4人の選手を残して中止になってしまったのです。これにはせっかく楽しみにきた観客たちもがっかりです。もちろん選手達もかわいそうでした。ジャンプ初観戦だった私のショックも大きいものでした。写真右下は、連絡バス混み合っているため、畑の中をとぼとぼと帰っていく人々です。不思議だったのはノルウェー人たちは、どんなに待たされても怒鳴ったりとか、やじったりとか、感情的にはならないということです。
結局、2日間で競うはずだったジャンプ競技は、翌日の月曜日に急きょ延期になり、(観戦無料と言われても私は行けませんでした。)なんだかぱっとしない形で終了しました。書き損ねていましたが、もちろん私が一番応援していたのは日本の選手たちです!ノルウェーの国旗と日の丸と、両方持っての応援でしたが・・・・・。

舞台をオスロ・ホルメンコッレンに移しましょう。
伝統あるこの地で、毎年盛大に行われるのがノルディックスキーのオスロ大会です。距離、複合、ジャンプのワールドカップが4日間にわたって一斉に行われる為、人々はお祭り気分で出かけるようです。私は3月11日の土曜日、12日の日曜日に現地に通ってジャンプと複合の試合を観戦致しました。両日とも晴天で、気温もそれほど低くはなく絶好の観戦日和となりました。
写真は土曜日に撮影したものです。左上は道端で応援グッズを売っている様子。ノルウェー国旗やヴァイキングをイメージした帽子など見ているだけでも楽しくなります。
この日は比較的に人出が少ないので日本の選手たちに出会うチャンスもありました。ジャンプは練習と予選が行われました。複合はエース荻原健司選手を始めとして日本勢も健闘したのですが、勝ったのはノルウェーのビーク選手。金曜日の試合からの連続優勝でした。地元で余裕勝ちするあたりはさすが王者です。もちろん観客達は大歓声でした。
試合とは関係ありませんが、写真中の左はジャンプの観客席で見た親子連れです。お父さんが背中にこどもをしょっているのがおわかりになりますか?この国ではこのようなタイプのリュックサックをしばしば目にします。山歩きにも最適のようです。それから写真にはありませんが、愛犬を連れて観客席に入っている家族も何組かいました。観客が少なかったからかもしれませんが、日本だったらきっとチケットチェックの場所で断られてしまいますよね。改めてノルウェーはおおらかなお国柄だと感じました。

これは土曜日の試合後にオスロ市内で撮影したものです。
写真左は市庁舎前の広場で行われたその日の表彰式の様子。ここで表彰式があることを知らなかった私たちは、偶然に居合わせました。表彰式の合間にはミニコンサートが行われてなかなか凝った演出でした。
写真右は日本料理店で出会った複合の日本チームの皆さんと撮ったものです。海外遠征の長い彼らにとっては、お寿司やノルウェー名物の鯨のお刺身は活力の源になったと思います。一番奥に立っているのが荻原選手ですが、この後、ノルウェーから移動してスイスとイタリアで行われたワールドカップ最終戦では見事に表彰台の2番目の位置を獲得しました。来年も現役続行とのこと、これからもますます応援したいと思っています。
ところでお寿司ですが、ノルウェーはシーフードの美味しい国です。特に私はノルウェーサーモンのお寿司が大好きです。オスロには日本料理のお店が数軒ありますので、機会のある方は是非お試しください。
日曜日のホルメンコッレンで行われたジャンプの競技はこの大会最大のイベントです。この日65000人の人出があったのニュースで報道されていました。予想では10万人とも言われていたのですが・・・・・。それでもとにかくお祭り騒ぎでした。ノルウェー国王も観戦にやってきて、到着時には全員が立ち上がって脱帽し、国家と国王を迎える歌を斉唱しました。また、競技前には写真のようなパラグライダーが飛んで来たり、各国の国旗を持っている人が滑り降りて来たり、トラの着ぐるみでジャンプを飛んだり・・・それから女性ジャンパーによる大会も行われました。残念ながら日本の女性ジャンパーは来ていませんでした。
ジャンプ競技の結果ですが、日本勢は応援むなしく表彰台に乗ることが出来ませんでした。船木選手の8位が最高です。しかしながら私たちが日本を応援すると周りのノルウェー人たちも一緒に応援してくれたり、アットホームな中でのとても楽しい観戦でした。ノルウェーの選手たちの調子も決してよくはなかったのですが、ノルウェー人たちは楽しんでいました。観客が一体になってウェーブを起こしたり、大歓声の音量を過去の大会と競ってみたり。以前、サッカーを観戦した時にも感じたのですが、ノルウェー人のスポーツ観戦の原点は自分たちが楽しむことにあるようです。勝ち負けも大切ですが、観る側もプレーする側もスポーツを楽しめるというのは、すばらしいことだとお思いになりませんか?
とは言いましても、やっぱり日本の選手が勝つところを観たいのが私の本音です。また来シーズンも機会を見つけて応援に行きたいと思っています。ちなみに今回優勝したのはこの冬絶好調、ドイツのハンナバルト選手でした。
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