本・映画・音楽紹介
ノルウェーで話題になっているもの、編集人のお気に入りを紹介するコーナーです。
2005年のリニューアルで益々充実した本の紹介ページ「Book Review」がメインコーナーに。
2014年より、ブログの記事から転載して少しずつご紹介しています。
最新記事をご覧になりたい方はこちらの公式ブログにお越しください♪
●本の購入方法についてよくあるご質問にお答えします


 Book Review (2014/4/21更新)

 本、映画、音楽紹介 (2015/10/13更新)

  「Vol.5〜
2014年よりブログから転載します
  「Vol.1〜Vol.4No.1〜No.39 (開設当時から2013年までのエッセイ)

  
「音楽の話題・特別編」
  
 日本グリーグ協会理事の田邉英利子さんのご登場です♪
   ・エドヴァルド・グリーグ(2) (2013/5/29更新)
   ・エドヴァルド・グリーグ(1) 
(2012/8/22更新)


Book Review
new! 
ノルウェー語 「ノルウェーの悲劇 En norsk tragedie
オーゲ・ストーム・ボルクグレヴィンクAage Storm Borchgrevink
Gyldendal社、2012)

en norsk tragedie


●「ノルウェーの悲劇」で描かれたブレイヴィーク

昨年、「この本、すごく面白い」とノルウェー人の友達や知人、複数から勧められたのが「En norsk tragedie」(「ノルウェーの悲劇」)でした。

ジャンルはノンフィクション。テーマは、2011年7月22日の大規模テロ実行犯ブレイヴィークについてつづられた本のようです。
私自身、あの事件にもそしてブレイヴィークにも興味がありました。
インターネットで買おうかと思ったら、370ページの大作で値段は約7000円!送料も含めれば1万円超えるかも・・・。
「ノルウェーに行ったら買えばいいかな?」と思い、昨年の6月に渡ノルした際、本屋を覗いたら・・・・ありました!

ずっしり重いハードカバー。値段の399クローネはやっぱり高い。「買っちゃう?どうする?」とずっと迷っていたら・・・。おお!もっと値段の安いペーパーブック版があった!
今度は迷わず買って、居候させてもらっているアウドさんの家に戻り、「この本買ったよ〜」と見せたら・・・。
アウドさんは私の誕生日プレゼントに、「En norsk tragedie」を買ってくれていたのです。が〜ん!
でもアウドさんは気軽に、「Junkoが買った方は、本屋で戻してくるから大丈夫」と、呆然としている私から本を受け取りました。

私は本サイトで書いていますが、飛行機で眠れない「特異体質」です。電車や地下鉄なら1駅でも眠れるのに〜。
しかも帰国便はなぜかエコノミープレミアムにアップグレードされていました〜。これなら眠れるかも?と思ったのですが、でも「En norsk tragedie」が気になって、読み始めます。

・・・食事やトイレに行くのも面倒になるくらい本にのめりこみました。
難しい単語やわからないオスロの地名など出てきますが、ページをめくる指は止められません。
本書では、冒頭、行政区の爆弾テロのシーンから始まります。それからブレイヴィークの生い立ちとウトヤ島の7/22が、交互に描かれる構成です。

ブレイヴィークの事件をきっかけに、「あの平和なノルウェーでどうして?」といった疑問を持たれた方は多いでしょう。
ノルウェー人の友達や知人は、「彼は例外中の例外だ」「彼は気が狂っていただけだ」と言っていました。
ノルウェーの現代社会に不満や憎しみを抱く人は存在するでしょうが、まさか77人もの罪がない人を殺そうと考え、実行するノルウェー人はブレイヴィークだけだったでしょう。

私は飛行機到着ギリギリで読み切ったのですが、ノンフィクション+上質のミステリ小説に出会えた高揚感に包まれました。
「En norsk tragedie」を読んで、まさにこのタイトル通りだと感じます。
ブレイヴィークの犯行の背後には様々な「悲劇」が折り重なっています。
「彼は気が狂っている」だけでは事件の真相は片づけられません。
ブレイヴィークは1979年生まれですが、80年代、90年代、そして2000年代を通じて現代ノルウェーが抱えた社会問題と移民政策と、7/22のテロは関連性があります。
さらに彼の家庭環境も特殊でした。
「悲劇」の連鎖が本書によって明らかになり、私は7/22の事件について、見る目が全く変わったと感じます。

テロ後のノルウェーの政治家たちや各専門家たちが取った「事件の検証」も非常に興味深いですね。
「ああ、ノルウェー人だなぁ」と感心するとともに、最悪の事件後に希望が見えてきました。

ブレイヴィークのテロは、事件直後は日本でも大きく報道されましたが、詳しい人物像などは伝わっていない部分が多いです。
追悼の花「この本は、何らかの形で日本で紹介したい!」と強く思い、4/19の「ノルウェーについて学ぶサロン」で本の紹介をすることにしました。そして今、メモを作成中で七転八倒中です・・・。
ノルウェー人は当然のことながら、今でもこの事件について、ブレイヴィークについて強い関心を寄せています。


2014年4月4日

norway yumenet official blog 140404より転載しました−

この本を通じて、皆さんに、もっともっとノルウェーのことを深く知っていただきたいという思いでお話しました。
第67回ノルウェーについて学ぶサロンのレポートをご覧ください。

(2013年4月21日更新)
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日本語 文化を育むノルウェーの図書館 物語・ことば・知識が踊る空間
マグヌスセン矢部直美、吉田右子、和気尚美著、新評論、
2013)

ノルウェーの図書館


●世界でも有数の本の値段が高い国における図書館とは?

ノルウェーは物価が高いです。
中でも本の値段はため息がつくほど。新刊ハードカバーは、日本円で5000円くらいしてしまう。
いくらノルウェー人がお金持ちになったとはいえ、おいそれと買える値段ではないだろう?とずっと思っていました。

とは言え、ノルウェー人は本を読んでいます。
図書館の果たす役割が大きいのでは?と漠然と考えていました。
そんな折、日本語でノルウェーの図書館を解説してくれるというありがたい本が出版されました!
「文化を育むノルウェーの図書館」がそれです。
早速、内容をご紹介しましょう。

「はじめに」のページで、まず私たちは、北欧の図書館は紹介される機会が日本では度々あったのにも関わらず、ノルウェーに関してはほとんど紹介がされず、「知られざる」国であったことを知ります。
この分野でもノルウェーは、目立たない奴だったんだなぁと納得して、ページを進めます。

こうした「知られていない」国ノルウェーを扱うということで、本書は丁寧な作りになっています。
ノルウェーの図書館、という未知のテーマにまず入る前に、「序章」においてノルウェー社会や四季のうつろい、教育制度など紹介してくれます。
なんと、読者に親切な本づくりでしょう!
特に図書館に興味がない方でも、ノルウェーという国の在り方について、知ることができます。

そしていよいよノルウェーの図書館が紹介されていきます。
いかに人々に本に親しんでもらうか、ノルウェーの図書館は多様なプログラムを用意しているのです。
以下はその一例です。

   1) 保育園と図書館の連携・・・幼いころから本が身近なものに試み
   2) 学校での創作ワークショップ・・・物語を作りたい子どもたちへの手助け
   3) 高齢者のための創作講座・・・物語を創作するとともに読書への熱も高まる
   4) ブック・クルーズ・・・ノルウェー最大の湖、ミョーサ湖の蒸気船でジャズと作家の講演会を楽しむ催し

従来のおとなしい「図書館」のイメージを打ち破るアクティビティーに満ちた図書館の取り組みに、感心しきりです。

また、さらにオスロ市内やその他の街の図書館を訪問し、図書館ごとの特色や取り組みを紹介しています。
その章の中でとても印象的な個所がありました。
とある30代半ばの若き館長の言葉です。
「この図書館に立ち寄ったことによって、その人の1日がほんの少しでもよい日になる、というのが私の目標」
ささやかだけど、素敵な言葉ですよね。こうした館長さんに運営されている図書館も利用者も幸せです。

さて、著者のお1人であるマグヌスセン矢部直美さんは、私がオスロ大学に留学中に大変、お世話になりました。
矢部さんは、オスロ大学人文学社会学図書館で働いていらっしゃるのですが、留学中、図書館に行くと4階の矢部さんの職場に、たびたび立ち寄ったり、ランチを一緒に食べたりしました。
その矢部さんが、本書の中で、「図書館員の仕事」が具体的に語っていらっしゃいます。
「図書館司書」のおとなしいイメージが、裏切られます。
仕事内容の多様さ、フレキシビリティが求められる姿勢に感嘆しました。

本書では、障害を持つ人、少数民族サーメ人、増え続ける移民への図書館側のアプローチにも章が割かれ、より深みを増した内容になっています。

なぜかノルウェーではイースターの時期にミステリ小説がたくさん出版され、読まれる現象がフシギだったのですが、その起源が本書に書かれていて、長年のナゾが解けてすっきりしました!
答えが知りたい方は、ぜひお買い求めくださいね♪

ちょっと本書の紹介からずれますが、3月にノルウェー大使館で講演された絵本作家のグロー・ダーレさんは、ノルウェーの「本の買い上げ制度」について言及されました。
これは、基準を満たした書籍を、ジャンル別に一定部数を諸団体が買い取る制度なのです。
商業的ではない本、でもクオリティーが高い本の出版を後押しするこの「本の買い上げ制度」は、グローさんもとても恩恵を受けているとのこと。
というのも、彼女の作品は商業的とは言い難いので、それでも出版にこぎつけてくれる制度である、とのことでした。

ノルウェーは人口がわずか500万人の小国です。
ですが、この小国がいかに自国の文化を守ろうとしているか、その姿勢は、「地味だけど、良心的」というノルウェーという国を表していると思います。

「文化を育むノルウェーの図書館」は、ノルウェーの図書館とその周辺情報やノルウェーという国そのものの根幹について、触れることができる貴重な1冊でしょう。

(2013年5月16日更新)
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ノルウェー語 「ヨハンネス・イェンセン なにか人とちがう Johannes Jensen foler seg annerledes
テキスト:ヘンリック・ホーヴランHenrik Hovland イラスト:トリル・コーヴェTorill Kove
Cappelen、2003)

Johannes Jensen foler seg annerledes


●「人と違っていいんだよ」暖かなメッセージが伝わるキモ可愛絵本

・内容について
主人公はクロコダイルの「ヨハンネス・イェンセン」。
ありきたりな名前をもち、税務署で働き、普通に社会生活を送っています(「なぜ、人間の中に彼だけクロコダイル?」という部分は言及されていません)。

本書では、「ありのままの自分を受け入れること」といった大きなテーマを、日常のスケッチを通じて、ユーモラスな語り口で取上げています。

「ヨハンネス・イェンセン なにか人とちがう」では、主人公が常に「なにか人と違う」と違和感に駆られる姿を描いています。
悩んだ彼は、自分にはあるのに他人にはないもの、「しっぽ」の存在に思い当たります。
そして、しっぽを体に包帯で巻きつけ、他人からは見えないようにしますが・・・。
周囲に合わせて「個性」を消そうと試みるものも、無理が生じ、結局は病院へ。
担当は象のドクター。ヨハンネスは、「他人と違うのがいやだ」と悩みを打ち明けます。ドクターは、自分の大きな耳を見せて、「大きな耳は、こわい映画を見ている時の目隠しに役立つよ」と、人とは違った個性を肯定してみせます。
長いしっぽも、泳ぐ時やサッカーのゴールキーパーをやる時には、活躍してくれたことを思い出すヨハンネス。
ようやく、しっぽ=自分の個性を受け入れ、それを誇りに感じ、自分は今の自分でいい、と悟ります。
ラストシーンでは、しっぽにノルウェー国旗のリボンをあしらって、独立記念日のお祝いに繰り出していく姿を描いています。


・イラストについて
「ヨハンネス・イェンセン」シリーズは絵本。
当然、絵の占める影響力は大きいです。
「デンマークの詩人」という短編アニメーションでオスカーを受賞したアニメーターのコーヴェ。
彼女のイラストは、シンプルなライン使いの中で、一度見たら忘れられないキャラクターの個性と、ディテールの面白さを紡いでいます。
ここ数年、日本では「北欧のインテリア・雑貨」がブームになっているが、コーヴェのイラストと共通点が見られます。
シンプル&モダン。そして透明感とコントラストのある色彩。
こうしたおしゃれなイラストが、本作の読者層を子どもだけに限らず、センスに敏感な若い女性にもまで広げることが可能でしょう。

主人公のヨハンネス・イェンセンは、日本人が感じる「かわいい」とはやや異なるかもしれないが、何度も眺めていると不思議と引き込まれてきます。「キモ可愛い」!

また、前述の「ディテールの面白さ」はほぼ全頁で発見できます。
まず表紙、主人公のベッドに置かれた本はカミュの「異邦人」。
「自己」に揺れている主人公の胸中を表す「遊び心」が感じ取れます。
背景も凝っています。
ノルウェーの首都オスロの美しい街並みが、実在する書店や公園、王宮、そして通りがカラフルに再現されているんです!
訪れたことがある読者は「あ、あそこ!」と楽しめるし、訪れたことがない読者でも、どこかノルタルジックな画風で描かれた街並みを体感することができるでしょう。

幸せな読後感を約束する絵本です。


(2012年9月12日更新)
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ノルウェー語 「希望をあきらめないで、ヴァルナル Ikke gi opp håpet, Werner
(グロー・ダーレ Gro Dahle作・イラスト、Cappelen、2005)


Ikke gi opp haapet, Werner


●死をめぐるブラック・ユーモア 異色の絵本

作者のグロー・ダーレは、昨年、「パパと怒り鬼〜話してごらんだれかに〜」が日本でも翻訳出版されました。私が出版に関わったことは、「最近の話題」でも記しています。

グロー・ダーレという人は、普通、「児童作家」と紹介されますが、彼女のデビュー作は「詩集」です。さらに本書は、大人向きのブラック・ユーモア絵本、といった趣でしょうか。

あらすじをご紹介しましょう。 

主人公Wernerは中年の男性で、父親と二人暮らし。
ですが冒頭、父親はあっさり死んでしまいます。
この「あっさり死」というのが、本作ではこれでもか、というくらい繰り返されるのですが・・・。

父を亡くしたWernerは最初こそ「ひとり暮らしはいいものだ」と考えますが、孤独を感じ始め、自分にも何か欲しいと考えます。
そこで猫を飼い始め、可愛がります。しかし無情にも、猫はあっさり、車にはねられて死んでしまいます。そして父の墓の隣に猫の墓をつくりました。

この物語の面白い(と敢えて書きますが)ところは、主人公Wernerの「逡巡のなさ」。

彼は猫を失ってすぐに、「今度は犬を飼おう」と思い、実行します。以下、彼の所有物とその顛末をまとめました。

猫→車にはねられて死ぬ

犬→ほえすぎて近所から抗議の手紙→保健所で泣く泣く殺処分

子豚→どんどん巨大化、太ってしまい持て余す→カツレツにして食べてしまう

うさぎ→餌のレタスばかり食べて、他に何もしない→食べ過ぎて死んでしまう

りす→可愛がっていたが、Wernerの内股に咬みつく→振り払おうとして殺してしまう

花→今度こそ死なせないようにと水をせっせとやる→水をやりすぎて枯れてしまう

 ・・・と、次々と墓が並んでいくのですが、Wernerはめげません。
「そうだ、妻がいるべきだ」と思いつき、早速、新聞の「恋人募集」欄で「婚活」に励み、ある女性と国立劇場の前で待ち合わせします。お互いに気に入った二人は、早々に夫婦に。

Wernerは今度こそ妻が死なないように、心配に心配を重ねます。妊娠した妻にも、「妊娠中毒が心配」と嘆くWerner。果たして妻は、赤ちゃんを出産しますが、息を引き取ります。 


かつての父とWernerとの二人暮らしのように、息子との二人暮らしが始まります。

今度こそ、息子を死なせてはいけない・・・Wernerは生活の中で四六時中、息子に注意を繰り返します。
「犬にほほえんではいけないよ。道は内側を歩くんだ。電磁波にも気を付けて。飛行機は危険でいっぱい。ブロッコリーは健康にいいけど食べ過ぎはダメ。水は、そもそも危険だらけ。誰かが玄関のベルを鳴らしたら、IDを見せてもらうんだ。財布をズボンの後ろポケットに入れてはダメ。腹巻に入れておくんだ。脂肪を取りすぎてはダメ。塩分もダメ。砂糖は命取りだ!靴のひもはいつもきちんと結んで。」

二人は同じ寝室でベッドを並べて眠っていますが、Wernerは「歯間ブラシを忘れないで」と言って、そのまま死んでしまいました。

今度は息子が葬式を出す番です。
「1人はいいなぁ。静かだ」と息子は考えます。そして、「何か動物でも飼おうかな?」とほほ笑むシーンで物語は終わります。

繰り返される死。

とても乾いた死で、ここまで徹底して繰り返されると、ブラックな笑いに昇華します。
そして死から浮かび上がる「生」。あまりに儚く、一瞬の光で消えていきます。
現実的には、逆にこんなにも簡単に死ねることの方が困難かと思います。
そこをグロー・ダーレは思いっきり、戯画化することで、「生とは?死とは?」という深淵なテーマを乾いた笑いに変えてくれることに成功しました。 

なお本書のイラストは、いつものパートナーである夫のスヴァイン・ニーフースではなく、グロー・ダーレ自身が担当しています。
コラージュを大胆にあしらった印象的なイラストです。 

「絵本というジャンルは無限の可能性がある」
という事実をグロー・ダーレは本書でも証明してくれました。

(2012年8月23日更新)

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ノルウェー語 「礼儀知らずなのが典型的ノルウェー人? Typisk norsk å være uhøflig?
(ライドゥン・オンブー Reidun Aambø編、Kulturbro forlaget,2005)



typisk norsk aa vaere uhoeflig?


●外国人にノルウェー語を教えるということ。相互のカルチャーショックの記録

この本を読んで、15年前の記憶が鮮やかに戻ってきました。
西ノルウェーの小さな田舎町にあるVolda College(Høgskulen i Volda)に留学した時。ノルウェー語の授業は、アジア人の私にとってはついていくのが大変でしたが、いろんな国からいろんなバックグランドを持つクラスメートの所業にも、驚きの連続でした。
ノルウェー人の学生同様、先生のことをファーストネームで呼び捨てし(私もそれに染まりました)、授業のやり方が気に入らないと公然と批判しちゃうし、そもそもノルウェー語の文法がおかしい、などと言い出す学生までいる始末。
そんな手前勝手な外国人学生相手に、毅然と対峙していたのが、本書の編者であり作者でもあるライドゥン先生。
すでに20年間もの間、86カ国の学生相手に教鞭を執ってきた先生が、ノルウェー語を学ぶ外国人学生の「ノルウェー」という異文化に出会った時の驚きやとまどい、怒りや感嘆の体験を、豊富な例で紹介しています。

冒頭、モンゴルの学生が故郷で体験したエピソード。ノルウェー人の人道活動家が地元でパーティを開き、現地の人がたくさん来ました。ノルウェー人は最後に、みんなにプレゼントとして赤十字の救急セット(ばんそこう、包帯など)を配りましたが、地元の人々は「なんと無礼な!」と怒ったそうです。
ノルウェー人としては実用的なプレゼントと思ったに違いありませんが、地元の人からすれば、将来、自分が病気や怪我になるのを期待しているかのように感じたそうです。う〜ん、難しい!

またノルウェー人にプレゼントを渡すと、その場で開けるのがノルウェー人のマナーです。でも、国によっては、その場で開けるのは「失礼」という慣習もあります。
プレゼントをくれた人の目の前でプレゼントを開け、かなり大げさに喜ぶのがノルウェー流。
あまりにも「すばらしい!」を連発するので、自分はそんなに大したものをあげた訳ではないのに・・・とチュニジアの学生は戸惑ったそうな・・・。これは私も経験あります。あまりにプレゼントを喜んでもらって、こそばゆかったです。

その他、「ノルウェー人と自然」というテーマも興味深い例があります。
自然大好きノルウェー人。どんなに悪天候でも、自然に飛び出していく様子が、外国人学生の目には奇妙に映ることも。
外の気温が10度を下回ると、外出をいやがるトルコの学生はこう書きました。
「ノルウェー人の子どもは雨や嵐の中でも外で遊ぶ。ノルウェーの女性も男性も、道に雪がつもっていてもジョギングをし、どんな天気でも散歩に出かける。
妊婦でさえも、80歳以上の老人でも、4歳の子どもでもスキーで長距離を歩く。」

ライドゥン先生は、自分が文化の専門家ではないけれども、たくさんの外国人学生との出会いを通じて、ノルウェー人やその文化との比較をするようになった、と書かれています。
外国人学生の目を通して見えてくるノルウェー人とは?ノルウェー文化とは?という問いは、非常に興味深く、きっと先生のライフワークになるであろうと想像いたします。

本書は、簡易なノルウェー語で書かれており、ノルウェー語の学習者の方にも適したものとなっています。
少しでもノルウェー人を知っている人ならば、「ある、ある」とうなづきながら、楽しく読める一冊でしょう。

(2010年8月20日更新)
★「第46回ノルウェーについて学ぶサロン」にライドゥン先生が来日されました!

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ノルウェー語 「フォーカス 高校社会科教科書 FOKUS Samfunnsfag2009年版
(メッテ・ハラルドセンMette Haraldsen、ヨスタイン・リュッセヴィークJostein Ryssevik著、Aschehoug社、2008年)



FOKUS samfunnsfag


●「生き抜く力」満載の教科書

高校を卒業して十年。
まさかノルウェーでこんな夢中になれる社会科の教科書に出会えるとは思っていませんでした。

今年の5月。ノルウェーの本屋で何気なく手に取った高校の社会科教科書には、1ページ目に「あなたはユニークです。他の誰もあなたと似ていないことを意味します。」と書いてありました。え?これって社会科の教科書だよね?っと思わず引き込まれる導入部。速攻、購入しました。
それから夢中になって内容を読んだのですが、なんで教科書がこんなに面白いか、というのは幾つかの理由かあるかと思います。
理由をあげてみましょう。

  • 読者層を「若い大人へ」としていること・・・子ども相手に上から目線で書いているのではなく、著者と読者の立場は対等です。
  • 「地に足がついた知識」・・・親が離婚した場合の子どもの権利、アルバイトするときの規則・権利、消費者としての権利など記載。
  • 社会のダークな面にも言及・・・犯罪を犯した場合の罰則、人はなぜ犯罪者になるのか、といった大きな社会問題である「犯罪」にも言及。
  • 「無知から身を守る」・・・労働法の解説がきちんとされ、社会に出た場合、自分を守るための権利を知ることができます。

他にもたくさん特筆すべき点はあるのですが、本書で何と言っても目を引いたのは、シビアな「おカネの話」にまるまる何十ページも割いていることです。
まず「どんな理由からにしても、子どもが大人になって最も大事な挑戦-経済的自立を得ること-の準備をするのは、大人の責任である」と高らかに宣言しています。そのためには、本当に「ぶっちゃけた」くらい、お金のことを知ってもらう必要があるでしょう。
まだ高校生の生徒が、自分の「予算」を決めてバランスシートをつける練習は、まだ家計簿なるものを一度もつけたことがない私には、「目が痛い」ページでした(だから、ダメな大人なんです)。
また情報公開が大好きな国ならではのページとして、職種別の平均月収額が掲載されています。これを見て、将来、どんな仕事に就きたいか、ひいてはどんな教育を受ければいいのか、を決める指標となるでしょう。
男女の賃金格差もあわせて掲載されているのは(ちなみに女性のほうが5000クローネくらい少ない)、女性という存在が常に可視化される努力がされているノルウェーならではでしょう。

そして「失業」にも、言及しています。失業者になった場合の権利(失業者手当てなど)が記載されていると同時に、どんな職業が将来性があるか紹介されています。暗くなりがちなテーマですが、読むのは高校生。これからの将来が楽しみでもありますよね。

日本でも流行っている(?)「起業」についても章が割かれています。
ここでもシビア路線が引かれていて、バランスシートがたくさん載っています。もはや「数字に弱い」なんて言い訳は通用しません!
現実の数字を見ることによって、その起業が存続できるかどうか、生徒たちが学べる内容はさすが、だと思いました。夢+現実のセットですね。

これは私だけかもしれませんが、自分が社会で生きていく上で大事な問題や権利、義務に無知で、例えば会社を辞めるとか離婚とかそういう現実に直面して、あわてて関連法を読んだり、人に聞いたりの繰り返しです。大事な年金の問題や医療問題も無知です。はっきり言って、無知であることが恥ずかしいです。
学校でもっと実際的な問題を勉強できたら、どんなに良かっただろう・・・って人に責任転嫁する訳ではありませんが、「こんな教科書で勉強したかった」と強く思った次第です。

本書の目次(PDFファイル)をご覧いただけます。
→「ノルウェーについて学ぶサロン」でご紹介しました。レポートはこちらから。

(2009年8月25日更新)
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日本語 Soin(ソワン) Vol.1
  (パッチワーク通信社)



soin


●細分化される女性誌、「生き方探し」としてのノルウェー

本屋の女性誌コーナー、そして新聞の広告を見るたびに「百花繚乱」という言葉が浮かびます。
ターゲットとされる女性読者はその年齢層、また仕事をしているかしていないか等など様々に分類され、雑誌の誌面はどんどん細分化されています。最近、老舗女性誌の「主婦の友」が廃刊決定になった、というニュースも象徴的です。もはや「主婦」という分類だけでは、読者の細かいニーズに応えらないのでしょう。
その一方、新しい雑誌は日々生まれています。今回ご紹介する雑誌「soinソワン」も、2月26日に創刊されたばかりの女性誌です。
ターゲットは40代女性、ということで冒頭には、生き方モデルになるような40代女優のインタビューが掲載されています。
もちろん女優に自分を重ねることも良いと思いますが、「ノルウェー人女性」の生き方も覗いてみよう、という試みが本誌ではなされています。

創刊号の特集の一つに「ノルウェーに見るゆとりある暮らし」があります。この記事には、ノルウェー夢ネット(つまり私たち)が編集協力をいたしました。担当の編集の方と長時間お話し合いをしました。その際、これは避けたいですね、と言っていたのが、「ノルウェー女性の生き方は確かにすばらしい、でも私には無理」と読者に諦めさせてしまう内容でした。
憧れは大事です。でもそれがあまりに自分の生活とかけ離れてると、「絵空事」に終わってしまいます。
社会のシステムが大きく異なるノルウェーと日本。いきなり「ノルウェー人のようなライフスタイルを目指す」といっても、残業は減らないし、通勤時間は長いし・・・と壁が立ちはだかるでしょう。
ということで、今回の特集記事には最低限の統計資料と、ノルウェー人の「住環境」およびライフスタイルの一端を、私と管理人のコメントおよび本文記事に紹介しています。
何かできることから、ちょっとした心の持ち方で、生活を見直すきっかけにつながれば、取材協力をした私たちも嬉しいです。

さらに本文には、私と管理人が撮影したノルウェーの風景・人々の写真が掲載されています。
こちらもご覧になり、撮影場所を想像していただくのも、一興かと存じます。

もっとたくさんのメディアで、ノルウェーについて取上げてもらえるよう、できるだけ協力したい気持ちになりました☆

(2008年2月28日更新)
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日本語 ノルウェーのデザイン 美しい風土と優れた家具・インテリア・グラフィックデザイン
  (島崎信著、誠文堂新光社、2007年)


ノルウェーのデザイン


●従来の「北欧デザイン本」とは一線を画す充実の1冊

丁寧に作られた本は、読んでいて幸福感をもたらしてくれます。
そして本書は、幸いにもそうした本の1冊です。

「北欧デザイン・インテリア」関連の本は、ここ数年のうち、雨後のタケノコのように発売されてきました。IKEAの日本出店も、そうしたブームに一役買っているのでしょう。ただ残念ながら、この手の本ではノルウェーについて取上げてもらえる機会が少なかったことも事実です。
では、ノルウェーにはMade in Norwayのデザインやインテリアは存在しないのでしょうか?・・・という疑問に答えてくれるのに十分なのが本書です。

ノルウェーへの現地取材を通じて、現在活躍しているデザイン集団やデザイナーの紹介は、非常に充実しています。特に若手デザイナーの紹介は数多く、「こんなにいたのね!」と驚くほどです。彼ら・彼女らはノルウェーの美大出身生が多いのですが、教育の変革にも興味深い記述がありました。大学の先生でさえ契約制になり、厳しい評価制のもと、「先生になれば安泰」という訳ではなくなったそうです。

またところどころ、ノルウェー人らしさに触れる記述が散見され、面白かったです。
例えば、「バーレ ムーブレル」というデザイナーユニットを紹介した箇所にこんな一文がありました。「日本からの問い合わせに関しても迅速かつ積極的で、今までのノルウェー人にはないものを感じました。」(P.27)
他のデザイナーたちは、やっぱりレスポンスが遅くて消極的だったのでしょうか・・・。編集の方のご苦労が垣間見られた一瞬でした。

さて第2章では、「デザインの背景にあるモノ」と題し、一見デザインとは無関係のような、でも実はデザインとつながっているテーマが多数取上げられています。例えば、歴史やEU非加盟の事情、エネルギー政策、男女平等などなど。勉強になります!
その中で特に興味深かったのは、「薪ストーブ」について取上げた箇所です。確かにノルウェーのお宅には、暖炉や薪ストーブの普及率が日本よりはるかに高い、という印象はありましたが、ノルウェー政府が積極的に薪ストーブの利用を推進し、かつ補助金まで捻出しているという事実は、本書で初めて知りました。その理由は、ぜひ本書を読んで「あ、そういうことね」と納得して下さい。

さらに同章では、「ノルウェーは世界一インテリアにお金を使う国民」(P.72)というキャッチーな一文を発見!水戸黄門の印籠のように、これから使っていきたいと思います。

充実した文章もさることながら、たくさんの写真が彩りを添えています。
北欧・ノルウェーのデザインに興味がある方はもちろん、ノルウェーという国に興味がある方も、ぜひ本書を手にとって中身を共有できれば・・・と願うばかりです。

(2007.11.28更新)
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日本語 ノルゲ Norge
  (佐伯一麦著、講談社、2007年)


ノルゲ Norge


●6年もの連載を経て、単行本化へ

本欄でも何度か取上げている佐伯一麦さんの著書「ノルゲ Norge」が遂に刊行されました。
文芸誌に6年間も連載・・・。本編中に、「うん、この土地の人(=ノルウェー人)の辛抱強さは、つくづく桁外れっていう感じ」というセリフがありますが、そのままそっくり、佐伯さんにお返ししたいと思います。

90年代末、染色作家の妻がノルウェーへ留学をすることをきっかけに、自身も1年間のノルウェー生活を体験する私小説作家。
英語もノルウェー語も得意でない彼は、人々とのコミュニケーションや持病に悩みながら、「鳥」(Fuglane)というノルウェーの小説と出会います。作中、「鳥」の英語版からの翻訳が挿入されていますが、現在の主人公の心情と「鳥」の主人公マティスに似たものを感じ、どんどん物語に引き込まれていきます。

佐伯さんは、私がこのサイトで「鳥」について取上げた講演録を「ノルゲ」で参考にして下さったようです。
改めてその講演録を読み直し、自分自身もノルウェー留学当初、マティスと同じように「大きな子ども」のような、よるべのない気持ちになっていた感情を思い出してきました。

ノルウェー滞在当初の様々な悪戦苦闘も詳細に描かれています。
原稿を日本へ送らなくてはいけな主人公にとって、通信は生命線ですが、なかなか原稿が送れない経緯の描写が、ノルウェー暮らしを経験された人ならば、臨場感を持って「わかる!」とうなずけるシーンとなっています。

それぞれ生活した人の数だけ、ノルウェーの物語が描けます。
私は留学生という立場で滞在したので、残念ながら勉強ばかりでしたので、学校に縛られていない本編の主人公がちょっと羨ましかったりして。

素晴らしい作品がそうであるように、様々な読み方・自由な空間が広がる作品となっています。

(2007.7.23更新)
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ノルウェー語

「ブタに真珠 Perler for svin
  (テキスト:ヘレーネ・ウーリ Helene Uri、イラスト:ラグナル・オールブーRagnar Aalbu、Mangschou、2006年)



Perler for svin


●言葉にあふれるイメージを忠実にイラストにしてみると・・・

「”絵”は壁にかかっているだけではありません。言葉にも"絵”があふれています」と宣言された本書の試みは、表紙とタイトルを見れば一目瞭然。
ブタの足元に点々と白い玉が・・・。そう、「ブタ」と「真珠」が、「ブタに真珠」ということわざ通り忠実に描かれています。
普段、何気なく使っている表現やことわざって、そのまま絵にしてみると、あら、不思議!時に「不条理」で「あり得ない」絵が続々、登場していきます。

例えば、「フットボール」という単語のイラストを見ると、足がいっぱい張り付いたボールです。その通りなんですけど、単語の意味とは違っていますよね。「バラのような頬」には、女の子のほっぺたにバラの花が描かれています。かわいい、けどちょっと怖い・・・。
なお本書は「子ども向け」の本です。楽しいイラストを見ながら、言葉のもつ不思議さ、面白さに触れて、言葉の世界に親しめる内容になっています。

外国語を学ぶ大人も、「子ども目線」の持ち主と言えます。
直訳すれば、「きゅうりの時間」を意味するagurktidという単語。最初に聞いた時には、??と思いました。意味は、「夏枯れ」。つまり、夏休みでニュース不足状態を指す、というのは後で知りましたが、その由来は「ほとんど水分でできたきゅうりのように、中身がないってことね」と一人で納得していました・・・。
本書に、「きゅうりの時間」は、文字通り「きゅうり」に「時計」が描かれてました。
巻末には、それぞれの単語・イディオムの意味と簡単な由来が載っています。ドリルの答え合わせみたいで面白いのですが、それによるとagurktidの由来は「夏休みでネタの少ない新聞が、きゅうりの長さはどれくらいか(といった瑣末なこと)を書かざると得ない状態」とありました。
まさに「目からウロコ」!(これも、イラストにできますね)長年の「誤解」が氷解した感動的な一瞬でした。

自分の母国語とノルウェー語のイディオム表現の比較も楽しいです。
「ニシンのような死」død som en sild、ってミステリー小説のタイトルにもなり得ないような・・・。意味は、「完全に死んでいる状態」だそうです。これに相当する日本語って何だろう?「マグロ」じゃ違うよね〜、なんて考えながら読むのも一興です。

ノルウェーの本にしては珍しく、日本人受けするイラストだと思います。ここではご紹介できませんが、タイトル名のリンクをクリックすると、本書からのイラストが少し覗けます。Klikk!

(2007.2.27更新)
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日本語 北欧デザインのある暮らし
  (別冊 夢の丸太小屋に暮らす、地球丸刊)


北欧デザインのある暮らし


●ノルウェーが仲間外れになっていない貴重な北欧インテリア本

ここ数年、本書と同じようなコンセプトの本が増えているとお感じでしょうか?
北欧インテリア、北欧デザイン、北欧ライフスタイルなどと銘打ったおしゃれな雑誌を立ち読みすると、「ノルウェー載ってない!」と怒ってばかり。
おしゃれな都市として、ストックホルム、コペンハーゲン、ヘルシンキは紹介されますが、オスロはスルー。。。そんな体験ありませんか?

そんな被害妄想にとらわれたノルウェー好きの皆さまにも、本書はご満足いただけると思います。
各国別のインテリア紹介で珍しくノルウェーにもページが割かれ、キャサリンホルムやフィジオ、そして(トイレの便器でおなじみ)陶磁器メーカーのポッシュグルンなどが紹介されています。
ただやはり、ノルウェーのデザインを取り上げるのは難しいのでしょうか。冒頭、「他の3国の陰に隠れて、今ひとつイメージがつかみにくい国」と紹介されてました。書いた方の苦労がしのばれます....。
そのほか、子供用椅子の「トリップトラップ」の特集が組まれ、オスロの幼稚園で実際に使用されているレポートが載っています。(成長すると変わっちゃうけど)子供の姿は、とても可愛い!
またオスロ在住の日本人デザイナーによる、「スーパーマーケット探検」では「KIWI」とか「MENY」といった店舗のレアなレポートが楽しめます。Toroのスープ、Jordanのつまようじの写真が見られますよ。

そして大変ありがたいことに、拙著「わたしのノルウェー留学」を小さなスペースですが、ご紹介していただきました。おしゃれな雰囲気の本書の中で、そこだけ浮いていました....。

(2006.2.18更新)
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日本語 われら北欧人」 (W.ブラインホルスト著、矢野創&服部誠訳、東海大学出版会、1986年)
静かなるノルウェー」 (中村都史子著、三修社、1986年)


われら北欧人

静かなるノルウェー


●初恋の来た道

私がノルウェー語を始めた94年頃は、まだ今のようにインターネットが普及しておらず、ノルウェーや北欧に関してとても情報に飢えていました。
テレビや雑誌、書店で「ノルウェー」などという文字を見つけたら、反射神経で飛びついていた記憶があります(今はむかし。。。)。
今日ご紹介する二冊は、そんな「ノルウェー」というものに恋をしていた頃の、いわば「初恋本」と言えるかもしれません。

「われら北欧人」の著者はデンマーク人で、デンマーク人お得意の「ダニッシュ・ジョーク」(ユダヤ人ジョークほど認知されていない)で、北欧人気質を語ります。ちょっと引用してみましょう。それぞれの北欧人は、何と言われたらショックを受けるかというお題目に対して

「デンマーク人は、自分たちにユーモアのセンスがまるでないと言われると、致命的な打撃をうける。」
「ノルウェー人は、国民的プライドを持ちすぎていると批判されると、致命的な打撃をうける。」
「フィンランド人は、スウェーデン人に似ていると言われると、致命的な打撃をうける。」
「スウェーデン人には、大酒飲みと口を滑らせると、怒り心頭する。」
「アイスランド人は、不毛の島国に住む無口極まりない人間であるといわれると、致命的な打撃をうける。」

と、内容は他愛もないものです。ですが、本書を初めて読んだ時に、何というかすごく嬉しかったんですよね。北欧人をネタにしてもらった、いじってもらった、という喜びでしょうか。クラスで一番目立たなかった子が、初めてからかってもらえて味わう喜び。
本書は、80年代初めに書かれたもので、内容は若干古くなったかな〜と思いますが、日本語で読める「お笑い 北欧人」ジャンルとして希少価値があります。

「静かなるノルウェー」は、82年〜83年にかけてオスロ大学に留学された著者がつづる留学記、そして異文化体験の貴重な1冊です。
オスロ到着から、寮生活、ほの暗い照明、自炊する男子学生、お行儀のいい犬たち、とまだ到着間もない著者にとって、印象的な出来事が静かに淡々と描写されています。
といっても単なる生活雑記だけでなく、女性問題、移民問題、失業問題など当時のノルウェーで問題になっていたテーマを取り上げています。また、お店で「ゲイシャ」チョコを目にし、ネーミングに憤慨した著者は、製造会社に抗議の手紙を送ったエピソードも語られています(代わりにたくさんのチョコが送られて来たそうです。。。)

なのですが、本書を通じて漂う雰囲気は、「静寂感」。著者自身、ノルウェーについて「この静けさということも、人が大勢いるのに少しも騒がしくないということも、この社会の特徴のひとつである。」と語っています。80年代オスロの貴重な証言ですね。

初恋が終わった後でも、倦怠期に入ってからでも、「ふむふむ」と楽しめる2冊です。

(2006.2.18更新)
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日本語 サーカス団長の娘
  (ヨースタイン・ゴルデル著、猪苗代英徳訳、NHK出版、2005年


サーカス団長の娘


書店や図書館で「その他の外国語」に分類されるノルウェー翻訳本。
全体の出版数は少ないですが、その中でコンスタントに翻訳本が出版されているのは、「ソフィーの世界」でおなじみのヨースタイン・ゴルデルJostein Gaarderです。
「オレンジガール」よりも前にノルウェーでは出版された「サーカス団長の娘」(Sirkusdirektørens datter)が、2005年2月に日本で発売されました。

主人公ペッテルは、幼い頃から「頭の中はぐつぐつ煮えたぎっている。ぼくは何百何千という新奇なアイデアを孕んでいる」状態が続いている不思議な少年。
小さな頃は、その類まれな創造力と頭脳を活かし、同級生たちの宿題を(お菓子や小銭と引き換えに)手伝ってあげ、成人してからは、アイデア不足やスランプに陥っている作家たちに、物語のアイデアを売るという危険な商売を始めた。
順調だったペッテルの商売が、徐々に彼を追い詰め、南イタリアへ逃亡。
実の父と娘の悲しい運命をうたった「サーカス団長の娘」という自作の物語が、皮肉にも彼の運命を予言していく。

ペッテルの想像力豊かな頭脳を反映してか、本編の語り口は「饒舌」に尽きます。次々と語られる物語、そしてペッテルの意識の流れ。
物語を生み出すのに何の苦労もないペッテルは、自分が「支援」する作家たちを皮肉ります。少し長いですが、以下引用。

「私がいっしょに飲む相手がだれであれ、その口から、いま作品を「書いている」とか「書きたいと思っている」とかいうことばが出てきたときには、私はすかさず詰問したものだった。あなたは何について書きたいのかと。すると、ほとんどの場合、答えることができないのだった。」
「現代社会がうじゃうじゃ産み落としている、才気と意欲だけが先走りして、真に提供すべきものを何ひとつもっていない作家たち」。

ペッテルは、たくさんの語るべき物語を持ちながら、自分では作家になろうとせず、黒子役に徹します。そんな彼の存在自体が、「ただたんに作家としての生活をしたいがため」の作家志望者たちの批判そのものに映ります

本編は300ページを超えますが、全編を通して、「饒舌」ぶり、「語り好きぶり」に圧倒される読書体験でした。
ベッテルの語るたくさんの物語を堪能するもよし、時折、見られる社会批判・芸術批判に、膝を打つもよし、楽しみ方が多様な1冊です。

(2005.8.19更新)
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ノルウェー語

「言葉とは何か Hva er språk
  (ヘレーネ・ウーリ Helene Uri著、Universitetsforlaget、2004年)



Hva er spraak


「〜とは何か」シリーズの1冊。ポケットブックサイズで、約150ページ。コンパクトで持ち運びやすく、値段もノルウェーの本にしては手ごろ(149クローネ)。

著者のヘレーネ・ウーリは、「金曜日のアンナ」(福井信子訳、大修館書店)が邦訳されているオスロ大学・言語学科の先生兼作家である。
言語学者とは思えない可愛らしいルックスが、表紙写真。「天がニ物も三物も与えた例」、と言えよう。

本書は、以下の3部構成である。

  • 「昨日」….言葉の成り立ち、語系、言葉の変化について

  • 「今日」….どうやって子供は、話せるようになるか?言語間の違い、新しい言葉を学ぶ方法

  • 「明日」….外国語からノルウェー語への影響、方言・ブークモール/ニーノシュク、スカンジナビア諸国間のコミュニケーション、ノルウェー語の未来

「昨日」と「今日」については、ノルウェー語のみならず、他言語についても引用が多くなされている。

だが本書で一番面白いのは、ノルウェー語および他の北欧語についての言及が多い「明日」だろう。
ノルウェーの複雑な言語事情、公用語ブークモール(使用率90%)とニーノシュク(使用率10%)の関係性については、今まで数え切れない討論、論文、政治的議論がなされてきた。
外国人にはややこしいこと、この上ない。
ウーリの文章は明快だ。「ニーノシュクのための闘ったり、またニーノシュクに反対するため闘う人はいる。だが、ブークモール賛成・または反対の闘いは存在しない。ブークモールの地位は確固として安定している。ブークモールを守るための闘いは必要ではないのだ」

「ノルウェー人、デンマーク人、スウェーデン人の相互コミュニケーション」について著者は、やや悲観的だ。従来言われてきたような、それぞれの母国語を使った意思疎通が当然と思われていた時代から、英語を介在する傾向が強まっているという指摘である。
ウーリ一家のデンマーク旅行での体験、「Sorry, we don’t speak Swedish」とデンマーク人に何度か言われてしまったエピソードが引用されている。

漠然と「言葉」に興味のある方、ノルウェー語を学習されたばかりの方にも、お勧めの1冊です。

蛇足ですが、本書の謝辞を読んで、ヘレーネ・ウーリが新井素子または「コバルト系」に近いのかな、と感じました。
「〜に感謝しています」と感謝を捧げている人物名が、延々と続くから(最後は、自分の子供です)。

NB!
アフテンポステン紙(05.07.09)にウーリさんのインタビュー記事がありました。それによると、彼女はオスロ大学の職を辞したそうですね。明言はしていませんが、学内の争いごとに疲れたことが原因のようです。そして小説家として来年ごろ、「大学を舞台にした小説」」を執筆予定とか。今までの「かわいらしい」作風とは打って変り、学内の権力闘争、同僚たちの嫉妬心や羨望心などを描くそうです。
ノルウェー版「文学部 唯野教授」に期待しま〜す。


(2005.8.1更新)
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ノルウェー語 「11月4日の夜 Natt til fjerde november」
  (カーリン・フォッスムKarin Fossum著、Cappelen、2003年)
「いとしのプーナ Elskede Poona」 (Cappelen、2000年)


KarinFossum

KarinFossum


ノルウェーの書店に行くと、大きなスペースを占めているミステリー・コーナー。ベストセラーのリストを見ても、ミステリー小説は常連。人気のある分野といえよう。

邦訳もされているアンネ・ホルト Anne Holtや、最近、「作家協会」脱会が大きな話題になったウンニ・リンデル Unni Lindellと並び、カーリン・フォッスムは「ミステリーの女王様」のポジションを維持している。

とはいっても、カーリン・フォッスムはミステリーの枠を超え、普通の小説も手がける作家だ。
「11月4日の夜」は、17歳の女の子ヨンナが突然、失踪する話だが、作品で重きを置かれているのは、「失踪→発見」の探索過程ではなく、残された両親、とりわけ父親の苦悩だ。
失踪した娘が、今、どのような状況にあるのか、想像はしばし妄想の域に達し、次第にグロテスクな様相を増してくる。そして、娘の失踪という悲劇を分かち合い、向かい合うこともできず、会話が消えてしまった夫婦。
果たして娘は帰ってくるのか?それとも死んでしまったのか?もはや、「死体が発見される方が楽になれる」と考えるさまはリアルだ。

「いとしのプーナ」は、ジャンルとしてミステリーになるらしい。殺人と刑事が揃っているから。

ノルウェーの田舎町に住む50代のおとなしい男性が、インドから妻を迎えようとしたところから悲劇は始まる。彼は別にインドに詳しいわけではない。ただ「写真や本で見て、インドの女性が美しい」と憧れ、姉の心配をよそにインドへ旅立つ。
意外にも短期間で、「運命の女性」プーナに出逢い、すぐに結婚。先にノルウェーに戻った彼が、妻を空港に迎えにしようとしたその日、姉が交通事故で病院に搬送され、空港に行けなくなった。プーナの消息が分からぬまま焦りは募るが、やがて近所で、外国人女性の惨殺死体が発見。遺留品などから、死体はプーナと判明。インドの貧しい暮らしから抜け出して、豊かなノルウェーに希望を抱いてやってきたプーナ。
なぜ、誰によって、彼女は殺されたのか?警察の調査は、村人たちの関係に微妙な影を落としていく。

フォッスムの特徴として、「シンプルな言葉づかい」がある。淡々とした描写の積み重ねが、読者の想像力や共感を呼ぶ。
そして、ノルウェー社会とそこに生きる人々の鋭い洞察。小説の登場人物は、超人や変人ではない。ごく普通の人たち。

去年と今年、ノルウェーからの帰国便の中で、それぞれの本を読んだ。エコノミー席の窮屈さ、退屈さから救ってくれた「救いの書」である。

最後になりましたが、「いとしのプーナは面白い」と教えてくれた、在オスロのNさんへ感謝します!

(2005.8.1更新)
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日本語

「評伝 エレン・グルブランソン Boken om Ellen Gulbranson
  (ファニー・エルスタ著、田村哲雄訳、新評論社、2005年)



エレン・グルブランソン


最近の新聞記事によると、ノルウェーで毎年オペラに出かける人は、国民の5パーセントに過ぎないそうです(「アフテンポステン紙 Aftenposten、2005年6月25日」。
その割に、人々の会話で「オペラ」が話題に上る機会が多いような….。
それは現在、オスロに建設中の「新オペラ座」のせいでしょう。90年代から、この「新オペラ座」は大きな政治的問題でした。どこの場所に建設するべきか、侃々諤々。「オペラ座なんて、いらないよ」という意見もありました。場所が決まったのはいいのですが、高速道路沿いという、あまりオペラ的でない立地です。2008年オープニング予定ですが、近くのホテル・オペラはとっくに開業を始めましたとさ。

閑話休題。

エレン・グルブランソン(1863年〜1947年)について知っている人は、ノルウェーでも少ないと思う。彼女は、ストックホルム出身のオペラ歌手であり、とりわけワーグナーの作品において評価が高い。本書は彼女の伝記であり、1950年にオスロで出版された。作者のファニー・エルスタは、ノルウェーのオペラ歌手である。

内容は、エレン・グルブランソンの子供時代から始まり、たくさんのコンサートやツアーの様子、当時の評価がわかる新聞記事の引用、また各国の王族をはじめ、グリーグ夫妻やワーグナー夫妻との華やかな交際、ノルウェー軍人の夫との結婚生活などがつづられている。
オペラ歌手として、たくさんのエピソードが紹介されているが、とりわけ興味深いのは、有名なバイロイト音楽祭に向けての厳しいトレーニングだ。歌唱力のみならず、彼女はすごくタフな人だったことがうかがえる。

オペラについて詳しくないので、本書を読んで初めて、「スカンジナビア系超ドラマティック・ソプラノ歌手」というカテゴリーがあることを知った。ワーグナー・ファンの方々は、よくご存知だと思う。
エレン・グルブランソンは、この「スカンジナビア系超ドラマティック・ソプラノ歌手たちの祖」と称されているらしい(「訳者まえがき」より)。あまりよく分からないけど、その言葉を聞くだけで、エレン・グルブランソンの歌声を聴いてみたくなる!

さて、本書はいろいろな意味で貴重だが、翻訳者の努力と熱意という点においても傑出している。

出版にこぎつけるまでのご苦労は、「訳者まえがき」に詳しい。ワーグナーのオペラファンの田村氏は、本書を読みたいがためにノルウェー語を勉強された。何年か前のノルウェー語初級クラスで、田村氏は、本書のコピーを持参し、ノルウェー語に悪戦苦闘されていた。そして全文翻訳と出版。田村氏は、エレン・グルブランソン氏と並ぶ、タフな方ですね。

内容もなることながら、本書の出版自体が感動的です。
(2005.8.1更新)
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日本語 「マクミラン版 世界女性人名大辞典」
  (編纂ジェニファー・アグロウ、日本語版監修 竹村和子、国書刊行会、2005年)

普通の歴史や辞典では、埋もれてしまう女性たち。本辞典では、古今東西約2000人の女性が収録されている。そのうち、ノルウェー人女性は11人が登場。
作家(カミッラ・コレットCamilla Collett、シグリ・ウンセットSigrid Undset、政治家(インゲル・ヴァッレ Ingel Valle、エヴァ・コルスタ Eva Kolstad、グロー・ハーレム・ブルントラン Gro Harlem Brundtland)、スポーツ選手(イングリッド・クリスチャンセン Ingrid Kristiansen、グレーテ・ワイツ Grete Waitz)、芸術家(ヒシュタイン・フラグスタ Kirstein Flagstad)などなど。
私的には、自然主義文学の小説家アマリエ・スクラム(Amalie Skram)が含まれていて、満足です(生前、不当に評価が低い人だったので)。
(2005.8.1更新)
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日本語

ミステリー専門誌「Giallo ジャーロ」
  (光文社、2004年秋号)


「ジャロって何じゃろ?」と、死に絶えた駄洒落がつい頭をよぎる雑誌名。
本号には、珍しく日本の作家による、ノルウェーを舞台にしたミステリー短編が掲載されている。
「光る棺の中の白骨」(柄刀一著)がそれだ。
カメラマンの南美希風(みなみ・みきかぜ)が、探偵役として活躍するシリーズものの第2話。
日本で息苦しさを感じた日本人カップルが、海外へ移住。なぜか、ノルウェーのリレハンメルに腰を落ち着ける。男(高部)は家具職人として生活を確立するが、静かな暮らしに耐えられない女(アヤ)は、彼の前から姿を消す。もう一度、高部の前にアヤが戻ってくるが、ささいな喧嘩から彼をナイフで刺し、再び失踪。
消えたアヤを求め、わずかな手がかりを頼りに北ノルウェーの街・アルタへ向かう高部と美希風。
そこで待っていたのは、鉄と石で固められた密室の白骨死体―。
「そんなに簡単に、ノルウェーでビザが取れるわけないだろう?」などと、現実的なツッコミはやめましょう。
それよりもむしろ、フィヨルドや白夜の神秘的な描写、ノルウェー人の登場人物(老人)を「労働者を装っている巨漢・水戸黄門のよう」と、随所に見受けられるユニークな描写に注目したい。
今まで、日本人作家によるノルウェーを舞台にしたミステリーって書かれていたのだろうか?
稀少価値のある1篇。乞 2時間ドラマ化。
(2005.8.1更新)
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日本語 かもがわブックレット150「女たちのパワーブック
  (ノルウェー労働党女性局編、三井マリ子・山中紀代子訳、かもがわ出版、2004年)



女たちのパワーブック

2年ほど前、ノルウェーの生涯学習機関AOF(労働党系)を視察で訪れた際、1冊の冊子を渡された。タイトルは、「KK」。
まるでノルウェーの女性雑誌「KK」(Kvinner og klær 女性と洋服)のようだが、こちらの意味はKvinner kan (女性はできる)だった。
この「KK」は、AOFが主催する学習コースの一つで、女性のエンパワーが大きな目的である。
本書「女たちのパワーブック」は、「KK」の英語訳「Women can do it!」からの翻訳。女性が意思決定プロセスに参加するための具体的なテクニックが、わかりやすく紹介されている。グループ・組織の作り方、対話・スピーチの方法、原稿の作り方、ディベートのテクニックなどなど。
とりわけ本書で、貴重なのは、「支配のテクニック Hersketeknikker」が紹介されている点だろう。
SV(左派社会党)の初代党首および政治学者ベリット・オース(Berit Ås)が、強者が弱者を支配する方法を明確に定義した。
  • 無視(司会者はあなたの存在を無視する、あなたの発言に誰もコメントしない、など)

  • 嘲笑(しょせん、おばさんのたわごと扱い)

  • 矮小化(「君は怒っているとき、きれいだよ」)

  • 情報から遠ざけられる(大事な情報はまわってこない、常にかやの外)

  • 罪の意識、良心の呵責をもたらされる(「夫に子供の世話を頼んでまでして、あなたは会合に行きたいか?」)

本書では、5つのテクニックにもう2つ追加され(妨害される、提案を横取りされる)、わかりやすい例が多数紹介されている。
政治的な活動をしていなくても、例えば、職場で思い当たる「支配のテクニック」がありませんか?
さまざまな、「気づき」が得られる1冊です。
(2005.8.1更新)
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日本語 旅の指さし会話帳 ノルウェー
  (若林博子著、情報センター出版局、2004年)


旅の指さし会話帳ノルウェー

軽く無視されることが多い「ノルウェー」。
だから、人気の「指さしシリーズ」にノルウェー語がなくても、ノルウェー好きの人たちは、半ば諦めたように、「所詮、そんなもんさ」と、やさぐれていたような気がする。
2004年7月、ついに他のシリーズと差別されることなく、かわいらしい(お金のかかった)イラスト満載で発売!
このカラフルなイラストのおかげで、気軽にページをパラパラとめくるが、本の作りが無理のない・自然な構成になっており、著者・若林さんの力量を感じる。
簡単に内容を紹介しよう。
  • 第一部     単語・フレーズ集(空港からの移動、あいさつ、買い物、数字・時間、ノルウェー・オスロ・フィヨルド地方についてなど)

  • 第二部     エッセイ(ノルウェー人と仲良くするための心得)&文法説明(コンパクトなもの)

  • 第三部     日本語→ノルウェー語単語集

第一部は、下に注釈が着いているので、情報量はとても多い。個人的に「恋愛・結婚」、「パーティ」のページが興味深かった(このように美しい会話を交わしている人たちが周りにいなかったので)。
ノルウェー旅行を計画中の人、ちょっとノルウェーについて興味がある人、異文化理解に興味のある人に貴重な1冊。
ノルウェーまで行かなくても、日本の通勤電車内でも十分楽しめます。
(2005.8.1更新)
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