社内研修でノルウェーの講演をしました!

日頃、ノルウェーや北欧に関心がある人に囲まれていますが、全く別分野で仕事をされている人たち向けに講演をしました。
いや~、新鮮でした!
きっかけは4月に放送されたテレビ番組「報道ライブInsideOut」。ノルウェーが幸福度世界一に選ばれたことで、番組に出演することができました(過去ブログはこちらから)。
その番組をご覧になっていた方から「うちの会社の社内研修で講演をしませんか?」とお問合せをいただきました。え??びっくりです~。
しかも、北欧業界とは無縁の調剤薬局事業を行っているフォーラル社さんです。

番組中の発言「すみませんよりありがとうを使うノルウェー人」のくだりに興味を持って下さったとのこと。
薬剤師や介護士さんなど医療従事者は、真面目で高い理想を持って働き始めますが、日々の業務で疲弊し、幸福感が感じられないようになってしまう・・・とお聞きしました。
社内研修での講演依頼は初めてです~。

そして講演当日の7月8日。タイトルは「幸福度世界一~ノルウェーに学ぶ幸せの循環とは?~」です。
社内研修に集まったのは40人ほどの薬剤師の方々。冒頭「ノルウェーや北欧に行ったことがある人はいらっしゃいますか?」の問いに、スウェーデンに行ったことがある人が一人(後ろで手を挙げた人がいたのですが見落としてました・・・・しかもノルウェーに行かれた貴重なお一人でした~。)。
ノルウェー?いきなり言われても、ピンとこないですよね。それを意識しながら講演を始めます。

講演中です

ノルウェーの基本データ、様々なランキングが示すノルウェー(世界一暮らしやすい国、お母さん・子どもに優しい国、男女平等、報道の自由度、そして幸福度世界一)、主な福祉施策(大学まで学費無料、医療制度、年金や育休など)。
ぷちとりっぷ気分を味わえるように、写真を多く見せしながら、話を進めます。
また本職がノルウェー語講師なので「ノルウェー語から読み解く国民性」コーナーを設けました。
ノルウェー人を理解するキーワードの最初は・・・

Takk!

ノルウェー人がこよなく愛する「ありがとう」という単語です。私が発音した後、皆さんが復唱します。
「すみません」より「ありがとう」が好まれる背景を軽く解説しました。

Takkを使った会話例(
テキストより)

トータルで9つの単語(+ことわざ)を選んだのですが、初めてとは思えないほど上手に発音されて感激です!

これらの単語をイメージできる写真をお見せしながら、さらに解説を加えます。ノルウェー人の「Takk愛」「残業しない精神」「オンオフの切り替え」「自立へのこだわり」が印象に残ったようで、納得でした~。

友だちが働く会社。金曜午後のコーヒータイム。

私自身のお話もしました。
オーロラツアーがきっかけでノルウェーが好きになり、会社勤めをしながらノルウェー語の勉強を開始。憧れが募り、会社を辞めてノルウェー留学。
4回の長期短期留学を経て、2000年に「ノルウェー夢ネット」をYoko管理人と立ち上げ・・・・はご存知の方もいらっしゃると思います。そこから現在のフリーランスでノルウェー語の仕事に携わるようになった紆余曲折の道を振り返ります。思えばノルウェー色に染まったほぼ半生!我ながらびっくりです~。

最後に、少しでも「幸せなノルウェー人に近づくには?」と実行できそうな大小の行動を提案しました。
ノルウェーや北欧の福祉とか視察した人たちは「ノルウェーや北欧は素晴らしい。でも日本では無理」と諦めてしまうことが多いのが、残念!と思っていました。「では明日からノルウェー方式で16時には、速やかに帰宅しましょう」は無理ですよね。でも、何かできることから始めていただきたいなぁっと。

薬剤師の皆さんは、真剣に耳を傾けて下さり嬉しかったです。
講演後はグループごとにディスカッションをされ、講演のコメントと私との質疑応答がありました~。まさに社内研修です!

質疑応答!

質疑応答!!

熱心な質問ばかりだったので、1を聞かれて100でお答えした気がします・・・(話が止まらない・・・)。
研修は終わり、レストランで催された懇親会にも参加しました。

講演会だけだと一方的な発信で終わりますが、たくさんの方と言葉を交わすことができて、本当に有意義でしたね~。
調剤薬局で働く薬剤師というと「優雅」なイメージなのですが、それは素人想像にすぎなかったようで、私の方からもいろいろ質問しました。

懇親会のビュッフェ

同社の調剤薬局では、地域向けの健康セミナーなども積極的に行っているとお聞きし、ひたすら感心です。

皆さんの言葉で、印象深かったものは・・・
日本語の”ありがとう”や”ありがとうございます”より”Takk!”は簡単かつ気軽に言える
鋭い指摘です!シャイで人情に薄いノルウェー人。Takk!という簡単な言葉だからこそ、感謝を頻繁に伝えることができると思いますね。
他にも
ダラダラと残業ありきで仕事をする癖がついてしまったから、もっと時間を意識して仕事をしたい
オンオフの切り替えで、もっと自分の時間を楽しみたい
ノルウェーに行きたくなりました!
ノルウェー好きなのがよく伝わってきた
会社辞めてノルウェー留学なんて大胆!青木さんの性格に興味がある」などなど・・・。
締めの挨拶でも「今までノルウェーについて考えたことがなかったですけど、今日はいいきっかけになりました」というお言葉。もう納得すぎて納得です!

お気に入りの1枚

幸福度世界一に選ばれたことをきっかけに薄日が当たった(かもしれない)ノルウェー。
でも世間的には、まだまだ知られていない国です。
でもでも、ノルウェーの紹介や発信を続けていけば、日本人の生き方・働き方に何らかのヒントをくれるのでは?と願いつつ、皆さんとお別れしました。
貴重な機会を下さったフォーラル社さんにTakk!です♪

7/30「ノルウェーについて学ぶサロン」Vol.77開催します!

今年初の「ノルウェーについて学ぶサロン」を開催しま~す!
タイトルは「ノルウェー人のライフデザイン~幸福度ランキング世界一の実感~」です。
講師は、青木順子が務めます!

ノルウェー好きの皆さんはご存知でしょうね。ノルウェーは最新の統計で「幸福度ランキング1位」に輝きました!
それ以外の様々な統計(世界一住みやすい国、お母さんに優しい国などなど)世界一または上位の常連になっています。過去ブログで統計をまとめましたのでご参照あれ。

この結果が日本でも報道され、私もテレビに出演したり、知り合いのノルウェー人にテレビに出演してもらいました。「なぜノルウェー人は幸福度が高いのか?」ということをお話するためです。
その際、関係者の方々から「ノルウェーは情報が少ないですね」と毎回、言われました。ネットがこれだけ普及しても、まだまだノルウェーは「遠い国」なのかな~と感じちゃいましたね。
私にできることはあるのでしょうか?

毎年1回はノルウェーに渡航します。昨年は9月に行ってきました。ブログでも少しご紹介しましたね~(尻切れトンボですみません!)。
昨年も短いながら濃密な日々でした。自分が興味のある場所に訪問したり、または偶然のような出来事もあったり・・・。
今回のサロンの簡単な紹介をしましょう。

高齢者介護施設の見学体験
「介護問題」は周りで聞く機会が増え、自分の家族を含めていろいろと考えてしまいます。「ノルウェーの高齢者介護施設を見学したい!」と考えました。ノルウェーの介護施策は基本的に「在宅介護サービスを手厚くして、最後まで自宅で過ごせるようにする」だと思います。

見学を受け入れて下さったスタッフ

そうした中、高齢者介護施設は日本のように「待機者がたくさん過ぎて入れない」とか「介護スタッフ不足」は存在するのか?また施設内の様子はどんな様子なのか・・・。
私は日本の高齢者介護事情に詳しくありません。ただ、自分が思う「ノルウェーらしさ」を本施設を見学時に、感じました。専門家ではない私を快く受け入れ、見学させてくれたスタッフに感謝しつつご紹介をしたいと思います。

施設の食堂

デイサービスの人が食べていたワッフル

ノルウェーの高校で講演
オスロ郊外の高校の社会科の授業で「日本の若者とは?」というお題で講演しました~。そこの先生が友だちなので、気軽にお願いされた次第です。

けなげに作ったパワポ

ただ「日本の若者」をよく分かっていない私は、まずそのリサーチから始まり、さらに「ノルウェー語で講演」のハードルが立ちはだかります・・・。実はノルウェーでノルウェー語の講演自体は2回目なのですが。

始まる前はドキドキ

そこでいろいろな発見がありました。答えに窮するような質問や、日本の若者のここがフシギなのね、とか。
日本の雑誌Seventeenを見せた時の反応は、笑っちゃいました。「ノルウェーの若者とは」と一概には言えませんが、講演を通じて体験したことをお話します!

育休中の女性医師宅訪問
旅番組の演出みたいに、偶然にオスロのとあるお宅訪問することができました。
小さなお子さんが3人いて、育児休暇中の女性医師のお宅です。可愛い猫ちゃんもいました!

触り過ぎて嫌われました・・・

ノルウェーの育児サポート制度は「お母さんに優しい国世界一」ですから手厚いです。それでも感じたのは「子育て支援に十分すぎることはない」ということ。小さな子どもを持つ家族の奮闘ぶりをつかの間、体験できましたので、ご紹介いたしますね。

遊び道具がたくさんの庭

渡航前に計画していたわけではないのですが、様々な世代のノルウェー人と接することができました。
毎回「なんて健康な国なんだろう~」と感じます。それが幸福度につながっているのかもしれませんね。
ノルウェーと日本の価値観や暮らしぶりを比較しつつ、その上で、少しでも「幸せとは何?」を考えるヒントを見つけてくだされば嬉しいです♪

サロン詳細・お申し込みはこちらから↓ 7/30にお目にかかりましょう♪

http://norwayyumenet.noor.jp/hp/info/kouzaannai.htm

報道ライブINsideOUTに出演しました

*本ブログはOAを見直さずに書いていることをご了承ください。

4/27にBS11の「報道ライブINsideOUT」に出演しました。
「幸せって何?」というタイトルで、幸福度ランキング世界1位に選ばれたノルウェーにスポットが当たりました!

テレビの生放送に出演など今後ないでしょうから、「思い出」を綴ってみましょう。

不安なまま当日を迎え、一緒に出演するノルウェー人のスティーグさんとテレビ局に入る前に、レストランで打ち合わせをしました。
スティーグさんはビールをオーダー。「ええ~~~!!」と思いましたが、ま、ノルウェー人にとってビールは水みたいなものなんだな、と納得します。
放送は20:59からですが、19時半頃に御茶ノ水にあるBS11へ。
「こちらへどうぞ」
まさか個人の楽屋があるなんて・・・呆然としました。事の重大さに。「こんな楽屋じゃいや!」なんていう芸能人や文化人がこの世に存在するなんて、アンビリーバブルです。

人生初の楽屋!

さらにメイク室へ案内されました。
「どの程度、メイクしますか?」との問いに、迷った挙句「テカらないようにお願いします」と答えました。ああ~~~、アホ丸出し。

本番の15分前に、プロデューサー、「幸福学」が専門の慶応大学の前野先生、スティーグさんと台本を見ながら、確認作業。
私が「ノルウェーは高福祉だけど高負担。でも高負担に不満に思っている人は少ない」と言ったら、前野先生が「高負担の国ほど幸福度が高い」と教えて下さり、ほーっと早くも勉強に。

一人には勿体ない楽屋

かなり本番ギリギリでスタジオへ移動します。毎朝、ラジオを聞いている別所哲也さんが近くにいるのは、不思議な感覚でしたね。

本番前!

私とスティーグさんは、最初のCM後からの登場だったので、外のモニターを観ながら待機します。

勉強と言えば・・・幸福度ランキングの順位付けの方法を誤解していたことを知りました。
「生活満足度を0-10で評価してください」と質問した回答の平均値をランク付けした「主観調査」だったとは!それに国連がGDPや健康などの「客観データ」をダブらせてグラフ化していたんですね~。いやいや、驚きでしたね。

さて、CMになってスタジオの中へ。「よろしくお願いしまーす!!」という声がたくさん響きます。
MCの中島さんから「ノルウェー語講師として20年のキャリアを持ち、ノルウェーに関する多数の著作を持つノルウェー夢ネット代表の青木順子さん」と紹介されました。加えて、横のテロップに「ノルウェーの素晴らしさを伝える活動をしている」と書いていただいたようで。
私自身もツッコミを入れたくなる失笑レベルの「底上げ紹介」。しかーし、そうした自虐は封印し「よろしくお願いします」と殊勝に頭を下げました。

笑え

スティーグさんは、日本語がちゃんと話せるか心配されていましたが、さすが在住38年。「人生満足尺度チェック」でも30点とハイスコア。
「ノルウェーに帰ると、自分がノルウェー人で良かったと感じる」というコメントにも説得力があります。

人生に満足なスティーグさん

おおむね台本通り進むのかと思いきや、突然、別所さんや中島さんから予想していない質問が飛ぶことがあり、ああ~~~ドキドキ。

油断タイム

ノルウェー人が前向きである証として「明日死にそうでも”元気”というのがノルウェー人」と言ってしまった記憶があります・・・。
スタッフの「CM入ります」というスケッチを見ては、机につっぷしてましたが、どうも一瞬、映ってしまったようですね~。
OA中のTwitterで「目が泳いでいる」「どこ見ているの」とコメントがありましたが、モニターと左横に出された「あと何分」スケッチを見ていました・・・。

緊張はしながらも、時間はどんどん過ぎていきます。
後半、前野先生の「しあわせはコントロールできる」の解説は横で聞きながら、興味深かったですね。

幸せの四つの因子

番組中のコメント通り、ホントに「ノルウェー人に当てはまる!」と思いました。
「ありがとう因子」は、まさにUnnskyld「すみません」よりTakk「ありがとう」を連発するノルウェー人。
「なんとかなる因子」は、締切ギリギリまでこちらをハラハラさせ、でもちゃんと本番には仕上げて、終わると「良かったね~」と笑っているノルウェー人。
スティーグさんは「日本人は働き方を変えないとダメ」と強調されてましたが、その通りです!

・・・あっという間に出演時間は終わり、スティーグさん、前野先生、私は「ありがとうございました~」とスタジオを後にします。そして無事に(?)番組は終わりました。
楽屋前で、別所さん、前野先生と混じって立ち話をちょこっと。
別所さん「僕も朝のラジオとこの番組があって、働きすぎなんですよね。」
前野先生「好きなことだとついつい働きすぎても、辛くない側面はあります。」
私はそこまでハードに働いていませんが、フリーランスゆえ「あ、今週は休みがなかった」ということもあります。

スティーグさんのように私も毎年、ノルウェーへ訪れます。感じることは「なんて健康的な暮らし!」これに尽きますかね。
16時には仕事を切り上げ、”Ut på tur, aldri sur“「散歩をすれば、気分も上々」と雨が降っても散歩をしているノルウェー人。

お散歩大好き

日本のように娯楽はないけれども、経済的余裕によってもたらされる「ゆとり」をあちこちで感じます。

自分には勿体なすぎる帰宅用タクシーに乗りながら「これでまた冥土の土産ができたな~」としみじみ。
放送日から2週間限定で、以下のURLから見逃し配信がご覧になれます(←小心者なので観てません・・・)。

https://www.youtube.com/watch?v=urlJNp2n9SQ&t=8s

そうそう。番組終了後、前野先生が「ノルウェーへ行ってみたいですね」とおっしゃって下さり嬉しかったですね。
まだまだ普通の日本人にとっては、遠い国ノルウェー。
番組をきっかけに、興味を持って下さる方が増えて欲しいなぁ~と思います。

ノルウェー絵本トークショー@谷中ひるねこBOOKS

3/9(木)の夜。『うちってやっぱりなんかへん?』(トーリル・コーヴェ著、青木順子訳、偕成社)刊行記念トークショーを、谷中ひるねこBOOKSで行いました。

うちへんパネル!

2/16の発売から、2/19開催のイベント「北欧からの贈り物~絵本とわたし」、2/24からひるねこBOOKSでのパネル展がスタート!
パネル展の最終日前日のトークショーでは、『うちってやっぱりなんかへん?』の作者トーリル・コーヴェさんの絵本を4冊紹介しました。

ひるねこさんのこじんまりとした空間に、10人のお客さんが集まって下さいました~。
思えばパワポを使わないプレゼンは久しぶりでしたね。

簡単にトーリルさんのプロフィールを紹介してから、勝手に名づけた「トーリルさん3部作」の1冊目”Min bestemor strøk kongens skjorter「王様のシャツにアイロンをかけた私のおばあちゃん」(2000年)から紹介します。同作の短編アニメーションは1999年にアカデミー短編アニメーション部門にノミネートされています。

1905年ノルウェーは独立しました。国民投票で「王室を持つこと」を選択しますが、誰を王様に迎えるか?
デンマークのカール王子とマウド王妃が、ノルウェーのホーコン7世として迎えられるエピソードが虚実まじりながら描かれます。
「召使など存在しない」当時のノルウェー。王室一家の悩みは「自分たちでアイロンをかけられないこと」。そのせいで国民の前でとんでもない恥をかく羽目に。。。。

そこへ「アイロンをかける名手」のおばあちゃんが、王様のシャツにアイロンをかけることになりました。
シャツのアイロンがけでつながったおばあちゃんと王様。
しかし、第二次世界大戦でドイツがノルウェーを占領します。イギリスへ逃亡した国王一家はラジオでノルウェー国民に「ドイツへの抵抗」を呼びかけ、王様を愛するおばあちゃんは、まさに「アイロン」でドイツに抵抗します。おばあちゃんの意地悪な顔がたまらないですね~。
他にもごく普通の人々が占領に抵抗し、ドイツ兵は撤退。王様一家はノルウェーへ戻ってきます。

持参したスケッチブックに、実際のホーコン7世一家の写真をプリントアウトしたものを貼りました。イラストと実物のギャップは?? はい、ありましたね。
実際にご興味がある方はこちらから

「戦争もの」「占領もの」にカテゴリーされる本作は、史実とフィクションのさじ加減が巧みです。
トーリルさんが注ぐ初々しい王様とノルウェーへ深い愛情を感じつつ、普通の人々が行った抵抗運動がユーモラスに描かれている面白い絵本です!

2作目は”Den danske dikteren「デンマークの詩人」(2007年)は、アカデミー短編アニメーション賞を見事、受賞しました。
この作品は、あまりにも壮大な物語で、紹介するのは難しいと思いましたね。

ノルウェーの評論でも同じことが指摘されてますが「映像をここまで絵本化できるのか!」という驚きの作品です。
トークショーでは、ページごとに紹介しました。

20世紀初頭のコペンハーゲン。スランプに悩む若いデンマークの詩人、カスパー。
彼は敬愛するノルウェー人作家シグリ・ウンセット(Sigrid Undset)が、実はデンマーク人と知り、一気に親近感が増します。
ウンセットが住むノルウェーのリレハンメルへ訪れようとしますが、途中で長雨にあい、農家に泊めてもらいますが、長雨が続き、農家の娘インゲボルグに恋をします。
しかしインゲボルグには隣の農家の婚約者がいました。
インゲボルグは、ウンセットのノーベル文学賞受賞作”Kristin Lavrandsdatter”「クリスティン・ラヴランの娘」と重ね、婚約者を裏切り、恋の赴くままに進めば、悲惨な晩年が待っていると判断し、カスパーの求婚を断り、婚約者と結婚します。

「再会するまで、髪を切りません」とカスパーに告げるインゲボルグ。
傷心でウンセットを訪ねることもすっかり忘れたカスパーは、コペンハーゲンへ戻ります。インゲボルグは早くも結婚生活に後悔していましたが、夫は「運よく」死んでくれます(素晴らしいご都合主義!)。

さてカスパーとインゲボルグは、再会を果たせるのでしょうか??
偶然がもたらす奇跡・・・・自分がこの世にいることも、偶然の結果であることを思い知り、人生の深淵さに迫る作品です。

3部作のラストは『うちってやっぱりなんかへん?』”Moulton og meg”です。本作もアカデミー賞短編アニメーションにノミネートされました。


お客さんにもお話ししたのですが、関わり過ぎてしまい「客観的に読めない」事態になっていました・・・。
最初は訳文作りに苦労して、ひるねこさんに読んでもらったこと、トーリルさんから「物語の背景」を送ってもらい「そうだったのか!」と分かってから、訳文が自由に書けるようになった経緯をお話しました。

当日、ひるねこさんで本を買って下さった方が多かったのですが、ページごとに好きなイラストやテキスト、ノルウェー的な見どころを紹介しました。
主人公一家のおばあちゃんが「王様のシャツ・・・」のおばあちゃんに似ているので「よもや同一人物?」なのか「トーリルさんの描くおばあちゃんはパターン化されている」のかわかりません・・・。
すでに寄せられた感想も紹介しつつ、みなさんが自由に楽しんでくださいね~、とお願いしました。

建築家あるある?

私見では、トーリルさんの特徴は「アニメーションから絵本化」「ノルウェーへのこだわり」「ユーモアとビジュアルの美しさ」「深いテーマを軽妙に描く」かと思います。

最後にトーリルさんがイラストのみ担当している”Johannnes Jensen”「ヨハンネス・イェンセン」シリーズの1作目を紹介しました。

主人公はクロコダイルのヨハンネス・イェンセン。人と同じような家に住み、歯磨き後にフロスをしたり、税務署で働いているごく普通の暮らしを営んでいます。
でも彼は「ボクはみんなと違っている」という思いにさいなまれ、蝶ネクタイからネクタイに変えたり、しっぽが見えないように背中にグルグル巻きにして、外へ出ますが・・・。

「クロコダイルだから変わっていて当然」なのですが、本人の悩みは切実。
テーマでいえば『うちってやっぱりなんかへん?』の「わたし」と似ていますね。
ヨハンネス・イェンセンは、怪我で運ばれた緊急病院で、象のドクターと出会います。
ドクターは「自分の大きな耳はこんな風に役立っているよ」と諭し、ヨハンネス・イェンセンも「自分のしっぽも、役に立っているかも」と恥ずかしかったしっぽを前向きにとらえるようになります。

ちなみにシリーズのテキストは、ヘンリク・ホーヴラン(Henrik Hovland)というノルウェー人が書いています。
彼は木こりの教育を受けて、現在も広大な森を所有しているそうです。グアテマラの国連人権監視団や南米諸国の選挙管理人、イラクからの戦場レポーターを務めるなど異色の経歴を持っていて「こういうバッググランドの人が、こんな作品を作るんだ~」と、感慨深かったです。

トークショーの下調べでノルウェーの児童文学研究者が「ノルウェーや北欧の絵本はイギリスに比べて、テーマが先進的で読者年齢層にこだわらない」という指摘しているのを見つけて、大いに納得しました。
『うちってやっぱりなんかへん?』を始め、トーリルさんの絵本は子どもから大人まで楽しめるのでは?と想像します。

90分のトークショーは瞬く間に終わり、絵本の「スタンプ会」をやりました~♪
参加者の皆さまはもちろん、ひるねこBOOKSさんには感謝感謝です~~~。

「北欧からの贈り物~絵本とわたし~」レポートです!

2月になればトーキョーノーザンライツフェスティバル」がすっかり定着しました。渋谷で北欧映画を堪能できる1週間。今年は、なんとイベントを一緒に開催することができ、今でも余韻に浸っています!浸りすぎてブログでのご報告が遅れました・・・・。

イベント名は「北欧からの贈り物~絵本とわたし」。
2/16に発売となったノルウェー絵本うちってやっぱりなんかへん?』 (トーリル・コーヴェ著、青木順子訳、偕成社)の表紙がチラシに大きく印刷されて、ひぁ~、すごいことになっている!と嬉しいやら恐縮するやら。光栄です!イベント当日の2/19(日)。会場は渋谷LOFT 9。いいお天気でテンションUP!

会場入り口には、すでに物販の準備を終えている谷中ひるねこBOOKSさん。

そしてステージには、今日のイベントのために偕成社さんが用意してくれた巨大パネルが鎮座しています!感動して爆笑しちゃいました。

登壇者の稲垣美晴さん森百合子さんがやってきます。そして初めてお会いするイェンス・イェンセンさん。ノルウェー語で話しかけると「スウェーデン語が話せるんだ!」って・・・デンマーク人の頭には「ノルウェー語」は存在しないことがよっくわかりました。

お客さんたちが続々と入ってきて、食べ物の差し入れもいくつかいただきました~(常に貧乏アピールが効いたようです)。
司会の雨宮真由美さんが挨拶をして、イベントはスタート。

まず私が『うちってやっぱりなんかへん?』作者トーリル・コーヴェ(Torill Kove)さんについて、また他の作品『王様のシャツにアイロンをかけた私のおばあちゃん』や『デンマークの詩人』を紹介します。この2作品は未訳で、何人かの方から「翻訳出してください」とありがたいお言葉をいただきました~。

王様のシャツにアイロンをかけた私のおばあちゃん

デンマークの詩人

それから軽く『うちってやっぱりなんかへん?』の紹介と、トーリルさんの作品の特徴をまとめて終わりです。
今日の目玉である原作短編アニメーション”Me and My moulton”(トーリル・コーヴェ監督)を上映します。
何度もくすくすと笑いが起きました。3本足の椅子から何度もひっくり返る子どもたち、人口1万5千の町で、唯一口ひげを生やしているパパ。

トーリルさんの夫が音楽を担当していますが、ユーモラスだけどメランコリックなメロディーは、ほろ苦さをあわせもった映画にぴったり。
イラストレーターのナシエさんもイベントに来て下さったのですが「ラストで泣いちゃいました」とおっしゃってました。
絵本とはまた違った映画の魅力があるのは、よーーーーく知っていたので、たとえ1回でも上映できることができ感激です!

そして、トーリル・コーヴェさんからのビデオメッセージを流します。
”Me and Moluton”と絡めて、ご自分の家族について語ってくださいました。60年代のノルウェーの小さな町で、独特な美意識を持った建築家のご両親との暮らしは「幸せだったけど、目立ちたくなかった、周囲に溶け込みたかった」という葛藤がまさに、本作の「わたし」と重なっていますね。
作品でも何度も出てくる「パパの口ひげ」についても言及されていて苦笑・・・。「些細なこと」に子どもは敏感なんだよね、と小さかったころの自分を思い出します。

それからノルウェーの愛されキャラクター「キュッパ」の短編アニメーションが上映されました。キュッパ+ガチャピンムックコラボ編と合わせて4本も上映!キュッパのお茶目なダンスシーンではやはり笑いが起きてました~。

さてさてお待ちかねの「北欧絵本トーク」に突入!
各登壇者が「わたしのお気に入りの北欧絵本」を紹介していきました。表紙をスクリーンに映し、お話しするスタイルです。
私はクラシックから新作まで6作品を紹介。『3匹のやぎのがらがらどん』はノルウェー絵本とイラストを比較してお見せしました。トロールの描き方が違うんですよね。
虫歯トロールが悪さをする”Karius og Baktus“「カリウスとバクトゥス」を紹介したら、イェンスさんが「デンマークの話だと思ってた!」とびっくり発言。デンマーク人は「ノルウェー」という単語を知らないのでしょうか(涙)。

ノルウェー留学中にどれだけ励まされたか分からない『フィンランド語は猫の言葉』著者である稲垣美晴さん。
稲垣さんはご自身が翻訳された本22冊をご紹介されました。落ち着いた声で、順番に作品を紹介されていきますが、どんな作品だろう?と興味がそそられます。

オーロラの雪』は読んでいましたが、同じ作者の『木の音をきく』も読んでみたい!と感じます。

森百合子さんは、彼女にしか紹介できない本を紹介して下さいました!
以前も見せていただいた『ぺち』。デンマークの人気者ラスムスくんを水木しげる先生が翻訳されていたとは、知らなかった人がほとんどでは?こちらをご参照ください。

イェンス・イェンセンさんは、子どものころに好きだったデンマーク絵本を2冊持って来てくれました。
デンマークを代表する絵本作家Ib Spang Olsen(イプ・スパング・オルセン)のOnkel Karfunkelシリーズです。こちらをご参照ください。

本イベントの立役者・雨宮さんが「参加型イベントにしましょう!」ということで、事前に「あなたの好きな北欧絵本は?」をハッシュタグをつけてTweetを呼びかけました。ムーミンが圧勝かな?と思いきや、たくさんのタイトルが集まって嬉しい悲鳴です。
こちらもスライドでお見せしましたが、「こんなにあったのね~」と感心しきり。

てんこ盛りすぎるプログラムですが「北欧絵本クイズ」を各登壇者から出しました。
最後まで勝ち残った人は2人しかいなかったのですが、2冊ずつ北欧絵本をプレゼント。おめでとうございまーす♪

また、北欧絵本を持参された方へ「いさわきちひろ美術館」の入場券をプレゼントする贈呈いたしました~。皆さんには前に出て頂き、絵本のプレゼンもお願いします。「稲垣美晴さんのファンでフィンランドへ留学した」「これから留学します」という方がいて、改めて本の持つ力を実感。感動的なシーンでした。

やんややんやでイベントは終了~。
特別コラボメニューカフェ(協力:アクアビットジャパン)や物販は続き、談笑する姿があちこちに。
『うちってやっぱりなんかへん?』を買ってくださった方が、「ノルウェー夢ネット特製スタンプを押してください!」と来て下さり、わ~~~!!と感涙ものです。

ただすごく押すのが下手なので「押してもらう」方式と「下手でもいいから押してください」方式を採用・・・。「わたしってやっぱりなんはへん?」と薄々わかってきました。

巨大パネルは人気者でしたよ~。撮影する人がたくさんいました!
とっても楽しいイベントになって嬉しかったです~。

Fukuyaで買ったマリメッコの古着、隣は雨宮さん

昨秋からスタートしたイベント準備。
大変な企画を運営して下さったトーキョーノーザンライツフェスティバルの皆さま、Tusen takk!
他の関係者の皆さまに深く感謝です~。
せっかく字幕をつけてもらったので”Me and My Moulton“をもっと上映する機会があればいいなぁ~と願いつつ、お土産のデンマークヨーグルトを飲みながら会場を後にしました。
  

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『うちってやっぱりなんかへん?』刊行記念パネル展が、2/24~3/10まで谷中ひるねこBOOKSさんで開催されます!
美しいビジュアルをご堪能くださ~い。なお絵本をお買い上げの方には限定ポストカードをプレゼントします♪
私は時間があるときにスタンプ持参でお邪魔しますね~。谷中でノルウェー、北欧を感じませんか?

https://www.facebook.com/events/114818502358278/


限定ポストカード!