オスロ中央図書館~オスロ絵本を訪ねる旅 6~

この「絵本を訪ねる旅」では「図書館」にぜひ行きたいと思いました。
ノルウェーの図書館は、どのように子どもに接しているかに興味がったからです。

オスロの図書館はDeichmanske Bibliotek(ダイクマンスケ・ビブリオテーク)と言います。みんなは「Deichman」=「ダイクマン」と省略した形で呼びますね、若干の親しみをこめて。

Deichman 中央図書館

Deichmanske Bibliotek 中央図書館

以前から「どうしてダイクマンというのかな?」と思っていたのですが、Carl Deichman(カール・ダイクマン)という人の7000冊の蔵書がもとにできたからなんですね。
すでに1785年に創設。1905年の独立より125年前に図書館はできていたことになります。

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オスロにはHoved(中央)を含め、19か所の図書館があります。
私は行政府近くの中央図書館Hovedbiblioteketの児童書部門責任者のAnnike(アニッケ)さんにお会いすることになりましたが・・・。アニッケさんはアポ取りの段階で、一番そっけなかった人だったので緊張していたのですが、とても気持ちよく迎えてくれました~!

Annikeさん

Annikeさん

やり取りを抜粋しますね。

-子どもの本離れを感じますか?
「いいえ。図書館の貸出点数はここ数年増えていて、子どもの本離れは感じませんね。」(この発言だけで驚きでした!)

-何か働きかけはしていますか?
「いろいろしています。まずは、学校との連携です。オスロの学校は読書にとても力を入れていて、全ての学校は地区の公立図書館を訪問します。そこで図書館内を案内してもらい、読み聞かせを体験するなど”図書館を身近な存在”と感じてもらうよう努力しています。もちろん学校にも図書館はありますが、それとは別に地区の図書館に足を運んでもらうことは大事ですね。」

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-オスロの図書館ならではの特色はありますか?
「オスロは移民や難民の子どもたちがたくさん住んでいます。なので、子どもたちのリクエストに対応できるよういろいろな言語の本を集めています。この分野ではNORLA(ノルウェー文学普及協会)と連携しています。NORLAが翻訳助成を行った外国語の本を図書館に寄贈してくれるのです。」

台湾版ピッピ!

台湾版ピッピ!

・・・棚を見ていると確かに多様な言語で書かれた本が並んでいますが・・・まさか!ここでこの本と出会えるとは!!

じゃーん!

じゃーん!

日本語版の『パパと怒り鬼~話してごらん、だれかに~』が書棚にあってじーんっとしちゃいました~。

-図書館ではイベントも催していますか?
「毎週土曜日の午後、映画上映会を開いています。通常の映画館では観られない、でもクオリティーの高い映画を選んでいます。あとは年に4回、”子ども劇場”を開催したり、またいろいろな職業の人を呼ぶイベントも人気がありますね。以前、消防士さんをお招きしたのですが子どもたちはとても喜んでいました。」

-「本の買い取り制度」は図書館にとってどんな意味がありますか?
「図書館や学校にとっても、とても大切な制度です。図書館には人気のある本を並べることと同時に、(買い取り制度によって送られたきた)商業的ではない質の高い本を並べることも大事ですね。図書館はとても助かってます!」

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アニッケさんはかなりたくさんお話しをしてくれたり、お気に入りの絵本を並べて下さったりサービス精神旺盛でした。
さらにさらに、いろいろと案内してくれます。
児童書部門の気になるスペースはここです! 日当たりのいいスペースに、本をおしゃれにディスプレイしたくつろぎの空間でしょうか?

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本を読むだけが図書館ではありません。ゲームコーナーや・・・

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工作ができる3Dプリンターのコーナーも。こんなに揃っていて恵まれてますね!
本は読まない子どもでも、図書館への親しみは沸くのでは?と想像します。

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アニッケさんはガイドしながら「図書館は公立であるべき、また利用は無料であるべき」とも強調。何でも図書館の利用が有料の国もあるそうです。知りませんでした!

図書館と学校の連携、さらにNORLAとも連携がうまく作用しているようで、「風通しの良さ」を実感しましたね。
オペラ座があるエリアに移設計画があるようですが、いつまでも「距離の近い」図書館であって欲しいです。アニッケさん、ありがとうございました!!

出版を支えるノルウェーの制度~オスロ絵本を訪ねる旅 5~

2月末からストップしていた「オスロ絵本を訪ねる旅」の連載再開です~。もう来月にはノルウェーには行くという現実を目の当たりにし、慌てています!
ほとんどの方は、連載自体を覚えていないと思うので、過去ブログは以下をご参照ください♪

1.そもそものきっかけ
2.ユニークな書店
3.出版社訪問
4.絵本作家アトリエ訪問

以前のブログで何度か触れている「本の買い取り制度」(innkjøpsordning for litteratur)の説明がまだでした。
管轄している文化評議会(Kulturrådet)のサイトと、『文化を育むノルウェーの図書館』(吉田右子、和気尚美、マグヌスセン矢部直美著、新評論)を参考に、紹介します。

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ノルウェーのような小国で出版事業と文化を守るために「国が本を一定数買い取る」制度です。1965年から開始したので、41年もの歴史がありますね。
出版社は、買い取って欲しい本を文化評議会に申請します。「商業的すぎない」「クオリティーが高い」が審査基準のようですが、審査に合格すれば以下のジャンル別に買い取ってもらうことができます。

大人向け一般文学:773部(内訳:紙書籍703、電子書籍70)タイトル数は年によって異なる。2012年は200タイトルが買い取り
子ども・YA一般文学:1550部(内訳:紙書籍1480、電子書籍70)2012年は100タイトルが買い取り
翻訳文学:タイトル数130、542部 (内訳:紙書籍502、電子書籍40)
フィクション:773部(内訳:紙書籍703、電子書籍70)2012年は60タイトルが買い取り
子ども向けフィクション:タイトル数25、1480部
漫画:タイトル数15まで、1480部または703部

こうして買い取られた本は、公共・学校図書館に配布されていきます。

ノルウェーの人口520万人。
例えば、絵本で「買い取り制度」にパスしたら、1550部が保証されます。人口が30倍の日本の出版界でも、初版部数はどんどん落ち込み、2000部、3000部なども珍しくありません。そう考えれば、いかに「大きい数字」か想像できますか?

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改めて、「買い取り制度」の恩恵について考えてみましょう。当事者の言葉から引用します。

「私の描く絵本のテーマは難しいので、買い取り制度のおかげで本が出版できています。」(絵本作家グロー・ダーレさん)
「買い取り制度がなければ、出版社を始めようとは思わなかった。」(Magikon社長のスヴァインさん
「買い取り制度のおかげで、フリーランスでも安心して仕事ができる。」(絵本作家マーリ・カンスタ・ヨンセンさん

確かにグロー・ダーレさんの絵本は、DV、離婚で傷つく子ども、ネグレクトなど「社会的」な問題を取り上げたものが多く、決して「クリスマスのプレゼント向き」ではありません。しかしその「クオリティーの高さ」から、買い取り制度での部数が約束されているので、出版社も本を出すことに前向きです。

グロー・ダーレさんの講演から

グロー・ダーレさんの講演から

Magikon社のスヴァインさんも、「ひとり出版社」であれだけ活躍できるのは「クオリティー」で妥協しないせいでしょう。

仕事中のSveinさん

仕事中のスヴァインさん

マーリさんの言葉も同じフリーランス業として「フリーランスにとってはありがたい制度ですね!」と羨ましい限りです~。

仕事をするフリをしてくれているマーリさん

仕事をするフリをしてくれているマーリさん

もちろん「クオリティーの高さ」が大前提ですが、「売れる本」だけではない多様な本の出版を後押ししてくれる制度と言えるのかな~と考えました。

実は昨年のオスロでは「買い取り制度」の恩恵を強調された人が他にもいました。
いつになるか分かりませんが、次回はそちらに触れるつもりでーす!

つづく(粘着!)

『ノルウェー絵本を訪ねる旅』をサロンでお話しします♪

悪い癖はたくさんありますが・・・書きかけの連載が幾つかありますね。
ノルウェー旅行記まだ終わってないし(スウェーデンに行ったことを書きたーい!)、そして「ノルウェー絵本を訪ねる旅」も途中です(え?もしかして連載の存在自体、忘れてました??)

「ノルウェー絵本を訪ねる旅」の方は次回の「ノルウェーについて学ぶサロン」でお話しいたします!
タイトルは「ノルウェー絵本を訪ねる旅~みんなが幸せになれる絵本づくりのしくみ~」です。開催は5/15(日)!
こちらが告知・お申込みページですので、どうぞご覧ください!⇒http://norwayyumenet.noor.jp/hp/info/kouzaannai2016/kouzaannai2016.htm
サロンでは、今までの連載で書いたことよりもっとたくさんのことをお話しする予定です。
今までブログでつづった内容の中でも、ノルウェーの絵本作家・イラストレーターとして大活躍されているオイヴィン・トールセーテルさんに取材できたのは、素晴らしい体験でした。ブログでは書けなかったことをお話し&写真もお見せしたいです!

オイヴィンさんのアトリエ

オイヴィンさんのアトリエ

他にも、「オスロ中央図書館」の様子や「オスロ子どもの本フェスティバル」については書いてなかったので、その部分は特にお楽しみに!
ブログでもったいぶって解説していなかった「本の買い取り制度」、さらに絵本作家やイラストレーターが、学校の子どもだちと身近な存在になれる「ある制度」についても、お話ししたいと思います。

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おさらいのため、今までの連載↓からお読みになれますのでご覧くださいね♪

1. そもそものきっかけ
2. ユニークな書店
3 出版社訪問
4. 絵本作家アトリエ訪問

昨年9月に、絵本にまつわる人や場所に足を運び、お話を聞き、様々な光景を目撃して「なんでこう全てがうまく循環してるんだろう~」って感心したんですよね。
こんなこと書くのはマジメに恥ずかしいのですが、読み聞かせやイラストショーに参加しているノルウェーの子どもたちの表情を見ながら「私も子どもが欲しかった!」って思っちゃいました(あらゆる面でもうムリなんですけど~)。

子どもたちも印象的でしたが、絵本の作り手側、図書館や書店の人たちと会ってお話しを聞けた時も「う~ん、羨ましいぞ!」を何度、連発したことか。
ノルウェーの絵本は、イラストの「可愛さ」が日本人のセンスと異なるため、なかなか邦訳される機会がありません。

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でもジャンルとして元気がないワケではなく、テーマはもちろん、イラストの方も「チャレンジング!」な作品が多いので、そちらも紹介したいな~と思っています。何冊か実物を持参しますので、ぜひお手にとってご覧ください♪

・・・ということで、ブログでの「絵本を訪ねる旅」はネタばれになるので、一時休載しまーす(実は5月に別の場所でも絵本に関する講演をするので、連載再開は6月以降でしょうか??あ、でも6月も絵本のささやかなイベントをやるのだった・・・)。

他にも・・・ノルウェーは「福祉国家」として知られてますが、実は「文化政策」にも予算を使っている「文化国家」としての側面があることをアピールしたいですね。
子どもが早い段階から、本物の芸術に触れている瞬間に「民主主義」の生育と結びついている、と腑に落ちた瞬間も語りたいです~。

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あ、ブログでは書けない取材裏話&ドジ話もする予定です~(←こちらがメインになりませんように・・・)。
欲張りですけど、ノルウェー語の韻が面白い「言葉遊び」を満喫できる作品のオーディオブックも少しお聞かせする予定ですので、耳でも楽しんでくださいね!

・・・とここまで書いて、人数が集まらないと開講できないのでよろしくお願いいたします!!(最低5名??)

絵本作家アトリエ訪問! ~ノルウェーの絵本を訪ねる旅 4~

オスロの絵本を取り巻く環境の旅・・・外せないのは「絵本作家のアトリエ訪問」! パチパチ~。
訪ねてみたい人はたーくさんいます。でも日程的にオスロ在住の作家で絞りました。
ということで、「1」で挙げたHullet“『の作者Øyvind Torseter(オイヴィン・トールセーテル)さん。

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さらに昨年夏、東京都美術館の企画展「キュッパのびじゅつかん」で来日した作者のオーシル・カンスタ・ヨンセンさんの妹さんのMari Kanstad Johnsen(マーリ・カンスタ・ヨンセン)さんが浮かびました。2人とも訪問したいメールを送ると、ご快諾の返事。。ノルウェー人、優しいわ~とアトリエ訪問は決まりました。

まずはオイヴィン・トールセーテルさんのアトリエから。オスロ郊外の集合住宅を、アーティストたちで共同で借りているそうです。
かなり図々しい私ですが、訪問前は緊張しました。というのもオイヴィンさんは人気、輝かしい受賞歴、多くの作品が翻訳とまさに現代ノルウェーを代表する絵本作家兼イラストレーターです。そんな人をド素人が訪問していいのか・・・と。しかーし、オイヴィンさんは場所が分かりにくいから、とわざわざ建物の入り口で待って下さっていて感動~。中は無味乾燥な建物ですが、アーティスト集団が借りているフロアでオイヴィンさんのアトリエに入ると・・・。広い、日当たりいい、雑然としてません。

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イラスト同様、きっちりした人柄がしのばれました。
オイヴィンさんとのやりとりを抜粋します。

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-まず絵本作家・イラストレーターになるまでのバックグラウンドを教えてください。

「小さい頃からマンガが大好きでした。最初はみんなと同じ”ドナルド・ダック”だったけれども徐々にフランスの”タンタン”シリーズに触れて惹かれました。絵を描くのが大好きで、ともかくひたすら描きつづけてました。僕は田舎の美しい自然と農園に囲まれ育ちましたね。大きくなるにつれ、もっと広い世界に憧れ、オスロとロンドンで絵の勉強をしました。」

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-とても売れっ子ですが、どんなスケジュールでお仕事をされているのですか?

「月曜から金曜まで9時から15時まで働き、週末は休みます。」

-え?そんな会社員的なスタイルで・・・??(衝撃)

「小さい子どもが3人いますから、家族との時間は大事ですね。その決められた時間の中で、集中して仕事します。」

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グロー・ダーレさんがオイヴィンさんのことを誉めていたのですが・・・。

「ああ、彼女は本当に素晴らしい絵本作家ですね。尊敬しています。」

-そのグローさんはよく学校で読み聞かせなどを行っているそうですが、オイヴィンさんも子ども向けのワークショップはやりますか?

「やはり小学校や他の場所でワークショップや読み聞かせをやりますよ。絵をいきなり描いて、というのは難しいのでスタンプを用意してそれを押してもらってイラストに発展させたり、まずはペンのしみを作ってから絵を描いていく方法を見せると、子どもたちは夢中になりますね。」

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オイヴィンさんは私にその方法を披露してくれたのですが、瞬く前におしゃれなイラストになっていきます!
大人でも感動。子どもだったら、目の色変わってしまうでしょう。
それにしても、こんな素晴らしい絵本作家が小学校に来てくれるなんて、ノルウェーの子どもたち、恵まれ過ぎです!

ボクはカエル

ボクはカエル

他にも”Hullet”の真ん中に穴を入れたアイディアや好みのイラスト、大事にしているスタイルなど伺ったり、たくさんのスケッチブックやコラージュ集を見せてもらいました。温和なオイヴィンさんと接していると緊張が解けました。

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さて別の日。その日は雨でした。グルーネルロッカ地区に、やはりアーティスト共同のアトリエで仕事をしているマーリ・カンスタ・ヨンセンさんを訪ねます。
マーリさんがフェミニンなワンピースを着ていたことにまず驚きました。普通、ノルウェーの女性はカジュアルなパンツスタイルが多いので・・・。

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共同アトリエのキッチンに腰掛け、早速、お話しを伺います。やりとりを抜粋しますね。

-マーリさんの姉オーシルさんは「ベルゲンへの愛着」をおっしゃっていましたが、これまでのバックグラウンドを教えてください。

「私もオーシルと同じ、ベルゲンで生まれました。父がグラフィックデザイナーで幼い頃から、絵を描くのが好きでした。大きくなってまずは服飾デザインの勉強から始め、オスロの国立芸術大学でビジュアルデザイン学科へ進学します。それから2年間、ストックホルムの芸術大学の修士課程でイラストレーションの勉強を続けました。」

共同アトリエ

共同アトリエ

-オーシルさんはベルゲンで制作活動をしていますが、マーリさんはオスロで活動していますね。

「はい。ストックホルムから2011年にノルウェーへ戻り、最初はベルゲンに住んでいましたが、オスロへ引っ越してきました。でも将来的にはベルゲンで仕事をしたいです。」

-今までの作品について教えてもらえますか?

「出版した絵本は10冊です。2冊はテキストとイラストの両方、2冊はテキストのないイラスト本、残りの本はテキストは別の作家でイラストのみ担当しました。もうすぐMagikonから新作”Tunellen”が出版されるので楽しみです。他には、雑誌、新聞、他の媒体でイラストを描いてきました。」

絵本の数々

絵本の数々

-オイヴィン・トールセーテルさんは、月金9-15時、週末休みというスケジュールで仕事をしているそうです。マーリさんはどうですか?

「そこまでかっちりとは決めていないですが、大体、同じ感じですね。たまに遅くまで仕事をすることはありますが、週末は休みます。」

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-今までテキストも手がけた作品は2冊ですが、もっとテキストを書きたいという希望はありますか?

「はい、ありますね。もちろん絵を描くのは大好きでいつもスケッチブックを持ち歩いていますが、テキストを書くことも同じように好きで挑戦したいです。」

-私の印象なのですが、ノルウェーの絵本作家やイラストレーターの人たちは仲がいいですよね。

「その通りです。イラストレーターの協会があり、お互いの交流が活発で仲良し。励まし合ったり、刺激しあえる仲ですね。」(注:実はマーリさんは私がオイヴィンさんを訪問したことを知ってました!)

それから今までの絵本を並べて頂いたり、スケッチを見せて頂いたり、他のアトリエ仲間を紹介していただきました。不審な侵入者を「いい意味でほっといてくれる」ので気楽です。

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他にも制作の際に大事にしていること、インスピレーションの源など興味深いお話しを伺います。そして気になる発言が・・・

ノルウェーでは”本の買い取り制度”があるからフリーランスでも安心して仕事ができる。」

Magikon社Sveinさんも口にされていた「本の買い取り制度」が、マーリさんの口からも出てきます。

鍵をかける順番が描かれたドア

鍵をかける順番が描かれたドア

ホントはこの回で解説をしたかったのですが、もう書きすぎたのでまた別の機会にしまーす。

帰国後に、マーリさんの最新作”Tunellen”(トンネル)をいただいたのですが、前作とイラストのテイストが異なっていて驚きました。
マーリさんのイラストは作品によって、かなりテイストが変わるので、それはそれで楽しいです。

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NB!マーリさんは、3月の「ノルウェー文学セミナー」の「児童文学セミナー」にスヴェインさんとともに登壇されます!もう申し込まれましたよね??詳細とお申し込みはこちらから

つづく(と願いたい)

ひとりぼっちの出版社~ノルウェーの絵本を訪ねる旅 3~

ノルウェーの人口は520万人。当然ですが、出版社の数は少ないです。買収が進み、大手傘下になってしまった出版社が幾つかあります。
「大手が強い」ノルウェーの出版界で異色の「ひとりで切り盛りしている出版社」との出逢いは、2014年の「翻訳セミナー」(NORLA主催)のことでした。

セミナー会場はホテルでした

セミナー会場はホテルでした

その時の様子は「1」に書きましたので、ご参照ください。私が一目惚れした「レトロスキー本」の版元が、このMagikon(マギコン)という会社です。

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Magikonは、社長のSvein Størksen(スヴァイン・ストルクセン)さんが1人で切り盛りしている会社です。
ノルウェーの絵本は、通常、出版社の1つのカテゴリーとして出している場合がほとんどですが、Magikonは絵本を中心にビジュアルにこだわった本を発表しています。
実は、「翻訳セミナー」で出会うまでMagikonのことを知りませんでした。
9月の旅では、ぜひMagikonとスヴァインさんについてもっと知りたくて、会社訪問することにしました。

会社はオスロ中心地から電車で15分くらいのところ。山の上の住宅地にあります。
・・・というか、こちらはSveinさんの自宅兼オフィスなのです!

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イラストレーター・絵本作家のKristin Roskifte(クリスティン・ローシフテ)さんがパートナーで、まだ小さなお子さんが3人。
早速、地下のオフィスにお邪魔しまーす。

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スヴァインさんとのやり取りを抜粋しますね。

-Magikon設立のバックグラウンドについて教えてください。

「僕もクリスティンもずっとフリーランスのイラストレーターでした。15年、フリーランスのイラストレーターをやってきて、大手出版社が出す絵本に満足できなかったのです。絵本はまずテキストがあって、イラストは後まわし。イラストなどビジュアルが重視されていない気がしていました。そこで2007年にMagikonを立ち上げることにしたのです。」

-1人で出版社を運営するって大変だと思うのですが・・・。

「経理以外のことはほぼ全てを担当しています(注:本の発送手続きも社長自ら)。現在まで60冊を出版しました。海外に翻訳された本も、お蔭さまでたくさんあります。最初に出版したクリスティンの本がヒットしたのはラッキーでしたね。」

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-本を出版する上で大事にしていること、やりがいは何でしょうか?

「モットーにしていることは、自分がいいと思う本しか出版しないこと。イラスト、テキストともにクオリティーが高いことは不可欠です。仕事をしていて楽しいのは、イラストレーターと作家の組み合わせを考えること。自分が編集から全て行っているので、イラストレーター、作家と密接にコンタクトできるのは、いいことだと思ってます。そこは大手と違うでしょうね。自分はずっと絵を描き続けたいし、大好きな本を出版できる喜びは言葉にできないです。」

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-「翻訳セミナー」でもエージェントカフェに参加していましたが、海外進出も積極的なのですね。すでに絵本は、欧米圏だけではなく中国や韓国でも出版されてますが。

「はい。たくさんのブックフェアに行って、人との出逢いを大事にしています。欧州以外にも、アメリカ、カナダ、中国や韓国のブックフェアーに行きました。お金を稼ぐためには、お金を使うことが大事ですよ。」(注:スヴァインさんは3月にノルウェー大使館の文学セミナーで登壇予定です。詳細はこちらから。)

・・・とお話や写真撮影をしていると、お子さんたちがクリスティンさんと一緒に帰宅して、一気ににぎやかになりました。
クリスティンさんもイラストレーターですので、離れのアトリエをプチ訪問させていただきます。スヴァインさんは「夕食の支度しなくちゃ~」とキッチンへ。

スヴァインさんのオフィスは地下ですが、クリスティンさんのアトリエは庭にある小さな小屋。中に入ると、おお~と広い仕事スペースが羨ましい!
「子どもが学校や保育園にいった後、私はこの離れのアトリエで、雑念を忘れて仕事に集中できます。」

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アトリエの中には、たくさんのスケッチブック。解説を聞きながら、見せて頂きます。

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その時に取りかかっているプロジェクトのために、スケッチブックは持ち歩たり、たくさんの試作を重ねるそうです。

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他にもいろいろなオブジェが飾られていて、じっくり見ていたら飽きません。

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日本のものをいくつか発見したのですが、「もうずっと前に、日本へ行ったことがあるのよ。日本のシンプルで可愛いなイラストが大好きです。」と教えていただき、ほ~っと驚きます。

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アトリエを後にして、再び本宅へ。3人の子どもたちは、仲良く子ども番組を観ています。

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スヴァインさんは何を作ってくれるのだろう?いい香りが漂っています。ダイニングにサーモン料理が並びましたが、おお、さすがアーティスト!野菜の切り方がおしゃれです!

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子どもたちが「わ~~~!!」と騒いでダイニングに入ってきましたが、ご夫妻が「これからは大人の時間よ!」とドアをばたーんと閉めちゃいました。

絵本やイラストレーターたち、出版社や書店事情などいろいろ興味深いお話しをうかがいました。
本の買い取り制度がなかったら、出版社を作るのは無理だっただろう」とスヴァインさんの言葉が残りました。
この「本の買い取り制度」は、最初のブログで触れたグロー・ダーレさんの講演でも、強調されていたものです。
小国ノルウェーが自国の文化を守るための同制度とは?? そのお話はまたの機会に・・・!

つづく(といいなぁ)