オスロ図書館の新プロジェクト、求職者が殺到!

「5人のポストをめぐって、約700人の応募」というセンセーショナルな新聞の見出しを見つけました。ノルウェーの人口は510万人です!
どこの大企業かな?と思って読んでみると・・・え?図書館に応募ですか?
・・・ということで、全く個人的な興味でこちらのニュースをピックアップします!(Aftenposten紙、2015年11月29日)

オスロの図書館は、Deichmannske Bibliotek(ダイクマンスケ・ビブリオテーク)が名称です。
「Deichmann」=「ダイクマン」という愛称で親しまれ、官庁街にある中央図書館やオスロ各地に図書館があります。

中央図書館

中央図書館

ムンク美術館があるTøyen(トイエン)に図書館を建設することとなり、ユニークなプロジェクトに挑戦することになったとか。それは・・・

「大人立入禁止ゾーン」

はい、10歳~15歳の子ども・ヤングアダルト(YA)に特化したセクションが作られることになり、このセクションスタッフとして「5人」のポストが公募され、約700人の応募があったのです。
具体的にどんなセクションを意図しているのでしょうか?トイエン図書館館長のコメントから引用してみましょう。
「30人の若者を集めたワークショップを開催し、図書館に何を求めているかを尋ねました。答えは、食べ物・ゲーム・作家のワークショップや登壇などが挙がりました。また、静かな空間も欲しいという意見があり、これらは全て取り入れられます。来年の2月には、屋根にスキーのリフト(???)、壁にはグラフィティで彩られたスペースが完成します。」

このセクションスタッフの条件として、司書であることは求められませんでした。代わりに、創造力、IT知識、ハンドクラフト能力、さらに文学イベントや子どもやYAに関わる活動をした経験が要求されたのです。この時点でハードル高し!

さてトイエン図書館の方は、まさかこんなに応募が来るとは予想しておらず、「選考過程は非常に大変だった」とのこと。
書類審査を経て、1次面接にこぎつけたのは43人!でも面接時間は、たったの10分!そこで志望動機を語ってもらい、同時に一人一人を写真撮影したそうです。
選考会議室のボードに貼られた写真を見ながら、各人の印象などを思い出し、誰がポストに適しているかを話し合うのに役立ちました。

その中から何人が最終面接に選ばれたのは記事には載っていませんが、1次面接より時間をかけ、事前に通知した課題とプロジェクトに関するプレゼンテーションを行ってもらう内容だったそうです。その結果、館長は「贅沢な悩み」に陥ります。

「問題は、みんながとても優秀だったことです。もっと多くの応募者を採用できたら・・・と思いました。残念ながら選ばれなかった人たちへ手紙を書き、みんなの資質を誉めました。手紙を受け取った人から”今までもらった不採用通知の手紙で一番、素晴らしいものでした”という返事をもらったんです。」

では、この超高倍率のポストを手に入れた人はどんな人なのでしょうか?
記事では、2人が紹介されています。1人は俳優、1人はグラフィックデザイナーで、子どもやYAに関わる仕事をした経験がありました。求人広告を見て、「これは!」と思い応募したそうですが、応募者総数を聞いた途端・・・

「このポストに選ばれるのは、演劇カレッジ入学か外務省のインターンに選ばれるより難しいと感じました。」

ほ~、外務省のインターンも大変なんですね。調べたところ、2015年は448人(女性243人、男性205人)応募があり、選ばれたのは15人。ちなみに期間は3年です。

ここまで人気があった新プロジェクトですが、こんな希望が込められているそうです。
「子どもやYAたちの図書館離れを防ぐのが目標です。この年齢層に、成長や新しい発想をしてもらいたいのです。」
いいな~、オスロの子どもたち!

9月にオスロへ旅行した時、ダイクマン中央図書館の児童書部門長とお話しする機会がありました。

中央図書館の児童書コーナー

中央図書館の児童書コーナー

また別の機会に、その時のことを書く予定ですが、図書館が「子どもの読書離れ」を食い止めるために様々な工夫をし、成功していることが分かりました。
そのためには、もちろん「お金」が必要です。トイエン図書館は「5人を雇用する予算がもらえて良かった」とコメントしています。

中央図書館まったりスペース

中央図書館まったりスペース

実は今、ダイクマンは移転問題で揺れています。オペラ座がある地区に移転し、立派な図書館建設計画がありました。が、予算オーバーでとん挫する可能性があります。そうした最中、このニュースは久々に明るい話題でした。
次回、来ノルした際には、何とか子どもの扮装をしてでも「大人立入禁止ゾーン」に入りたいと思います!(ピッピのコスプレとか逆効果でしょうか??)

ノルウェーほのぼのニュース

今日、ご紹介するニュースは、サロンでおなじみのアネッテさんから「このニュース面白いからブログで取り上げたら?」と教えてもらったものです。
一読・・・「ほのぼのニュースだわ~」と感心。元ネタは南ノルウェーの地方紙で、それを全国紙のAftenposten紙が「こんなことがありました!」みたいにリライトしたものです(2015年11月12日)。

舞台は南ノルウェーのLyngdal(リングダール)近く。
ヘラ鹿狩りをしていたJostein(ヨステン)さんは、自分の庭にふらふらと入っていくヘラ鹿を目撃します。
でもヨステンさんはそのヘラ鹿は撃ちませんでした。というのも自分の狩猟できる割り当て量にもう達していたからです。
ヘラ鹿はそのまま地面に伏せてしまい、ヨステンさんは「このヘラ鹿は病気だ」と思ったそうですが・・・。

ノルウェーによくあるお土産

ノルウェーによくあるお土産

そしてヨステンさんはヘラ鹿に近寄り、首を触ってみましたが動きません・・・。はて、これは??

・・・もうニュースのオチが分かった人はいます? 
結論から言えば、ヘラ鹿は酔っぱらっていたのです。お酒を飲んだ?ノンノン・・・じゃなかったナイナイ!!
庭に落ちている発酵したリンゴを食べ過ぎて、酔っ払い状態になってしまったのです!

自治体の担当者によると、「秋にはよく起きる現象」とのこと。

さて酔っぱらったヘラ鹿はどうすればいいのでしょう?
親切なヨステンさん父親と一緒に、起き上がったヘラ鹿が道路で轢かれないように、森まで付き添ってあげたそうです。

すみません、ヤギです

すみません、ヤギです

「発酵したリンゴ」で検索すると、結構、この手の海外ニュースにヒットしました。日本ではあまり聞かない気がしますが・・・。
人も動物も酔っぱらう国ノルウェー(なんていうコピー!)。何事も「適量が大事」ですね~。

ブルックリンでノルウェーのパンを♪

クリスマスにちょっと食傷気味・・・という方のために、クリスマスネタ以外で書きま~す。
ノルウェー人は基本、「ニューヨーク、ロンドン」そして「トーキョー」といった大都会に憧れを持っていますが、そのニューヨークで頑張るノルウェー人女性が記事になっていたので、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2015年12月20日)。

ニューヨーク在住のNina ニーナさん(44歳)。彼女はブルックリンで「Bakeri」(バーケリー)=ベーカーというパン屋さんを営んでいます。
ここBakeriでは、ノルウェー人が大好きなSkolebrød(スコーレブロー)、直訳すると「学校のパン」を買うことができます。
こちらがスコーレブローの写真です。
スコーレブロー

白いトッピングは、ココナッツフレークです。甘くて、これだけでお腹いっぱいになれますよ~。

さてニーナさんが、このスコーレブローをメニューに加えた事情は、ちょっとユニークです。
「私の兄弟がお店に遊びに来て、スコーレブローを焼いてくれないかと尋ねてきたんです。たくさん焼いて余った分は、試しに販売用に回してみたら・・・。とても人気のあるパンだと分かって、メニュー入りしたのよ。」

ニーナさんの人生は偶然の連続でした。お店の名前も、「ま、こんな感じ?」と決められ、メニューは彼女やスタッフが持っているレシピから、段々に広がりを見せます。
「お店を始めたころは、ともかく無我夢中。パン作りを学ぶため、夜の11時まで働いて、朝は4時からスタートした時もありました。でも今は、順調になっています。」

「Bakeri」は朝早く、お店にその日のパンを買うためにお客さんたちの行列ができる人気店に。ブルックリンに2号店もできました。
「内装にはこだわりがあって、中古店で見つけたものでインテリアは作りました。」
う~ん、素敵ですね。

・・・と書くとニーナさんの人生は順風満帆だったように聞こえますが、決して道のりは平坦ではありませんでした。
日本でも有名なノルウェーの高級ミネラルウォーターVossのマーケティングシェフの仕事を辞め、アルゼンチン人の夫とブルックリンでレストランを開業することを決意します。
その数年後、彼女は自身の店”Bakeri”をスタートしようとし、2009年についに夢がかないました。
しかし、半年前に夫は病気で亡くなり、彼女はレストランとBakeriの50人の従業員の責任が、ニーナさん一人の肩にのしかかります。
「とてもハードな時期でした。でも仕事、特に朝4時にパンを作ることは一種の癒しになってくれました。」

ところでニューヨークでは「北欧」のお店がどんどんオープンしているようですね。
“Tørst”(渇き)”Luksus”(ラグジュアリー)”Skål”(乾杯)”Aska”(灰?)などなど。さらにスウェーデンの”Konditori”というカフェは6店舗もあるそうです。
Konditoriは、ケーキやパンを買ったり、コーヒーや紅茶が飲めるイートイン式の昔ながらのお店の名称です。
最近では、ノルウェーが誇るトップバリスタ、Tim Windelboeのコーヒーが飲める北欧カフェ”Budin”がオープンしました。

まるで突然、北欧の食にニューヨーカーが興味を持ち始めたように感じますが、では「北欧の食とは何ですか?」という問いにニーナさんは答えます。
「シンプルで自然の食材を生かすのが、北欧の食だと思います」と。

BakeriのHPはこちらから。Our morging hoursというコーナーをクリックすると、画像が出てきますよ。
http://bakeribrooklyn.com/

ところで「Bakreri ブルックリン」で検索すると、すでにたくさんの日本語ブログや媒体で紹介されているんですね~。全く知りませんでした・・・。ノルウェー伝道師、失格!

ノルウェーのパン屋さん

オスロのパン屋さん

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2015年1月スタートのノルウェー語レッスン「初心者クラス」は以下の枠で開講決定しました~。パチパチ♪
・火曜11時~12時半(初回1/13)
・土曜14時~15時半(初回1/10)
まだ残席がありますので、迷っている方はお急ぎくださいね。Velkommen!
詳細・お申し込みは・・・こちらをどうぞ♪
http://norwayyumenet.noor.jp/hp/info/norskkurs/norskkursannai.htm

ノルウェー流新生活スタート

ノルウェーへの長期留学は2回していますが、両方とも学生寮に住みました。
遠く日本からたくさんの段ボールを船便や飛行機便で運んで、引っ越しをしてきた際に、無性にノルウェー人学生たちが羨ましかった記憶があります。
大体、家族が車で必要なものを運び、引っ越しの手伝いをしてくれていて、「ああ、ここでは私は1人からスタートするんだな」と心細さを感じました。

でも、不安を抱いているのはノルウェー人の学生も同じだということが、「新大学生たちの引っ越し」を特集した記事で分かりました。早速、記事をご紹介しましょう。(NRK、2014年8月17日)

北ノルウェーのロフォーテン。わずか300人の住民の村に住むMalinさんは、8月から看護師になる勉強をするため、はるかオスロへ引っ越します。「看護師になるために、オスロまで行かなくちゃいけないの?」とよく聞かれますが、オスロには素晴らしい学校があると分かっているので納得の上での引っ越しです。
お父さんはちょっと寂しそうですが、「Malinはタフだし、何もおそれない強い子だ」と娘を信頼するコメントを寄せています。

Malinのように、若いうちから家を離れるのはノルウェーでは決して珍しいことではありません。
中央統計局の統計によると、ノルウェーは親元を離れる年齢が、国際的にも欧州内でも早い方とか。
失業が主な原因で、親元で暮らす年齢が少しずつ高くなる傾向が、ハンガリー、スロヴェニア、また北欧のデンマークやスウェーデン、フィンランドにもみられるそうです。

以下に、男女別、「親元離れる年齢」が載っていますが、なるほどノルウェーは早いですね。

グラフ

中央統計局の研究者は、「なぜノルウェーの若者は早くに親元を離れるか?」について、大きな要因が2つあると説明します。
1つ目は、「教育を受けるため」。ノルウェーにはとんでもない田舎があるので、すでに高校から親元を離れるケースがありますし、その上の大学やカレッジ進学を期に・・・というケースも多いです。
2つ目は、「ノルウェーの支援制度の充実」。大学の学費は無料、生活費は国の学生ローンで借りれますし、また返済不要な奨学金もいろいろあります。
「他の国では、子どもの経済的支援は親の責任であり、またその親自身の経済状況も不透明なのです。」

NOVA(ノルウェー福祉・社会センター)の研究者は国際会議で「ノルウェーの若者たちの自立」を話し、ほとんどの若いノルウェー人はうまくやっているという話をしたところ、イタリアの参加者から、「でも一人暮らしなんて寂しくない?」と問われたそうです。これはやはり文化観・家族観の違いでしょうね。

ではノルウェーの価値観について、NOVAの研究者に語ってもらいましょう。
「ノルウェー社会は、若者が早いうちに親元を離れること、自立することが大人になる大事な部分と考える傾向があります。例えば30歳の男性がまだ親元で暮らしていれば、あまりいい兆候とは思いません。」

とはいえ、「自立」は大変です。
中央統計局の2012年の統計によると、6割の生徒が学業の傍らにアルバイトをしていて、1/3の学生が1週間に10時間以上働いているそうです。
(田舎だとバイトもないだろうな・・・・)
こうしたアルバイトは、オスロや他の都市圏での住居費高騰と関係あるでしょう。しかし、ここ数年の高騰傾向にも関わらず、若者たちの「引っ越し」は同じ水準を保っています。

同じヨーロッパでも、北や東、また南では、「親元からの自立」というテーマをとっても、様々ですね。みなさんはどんな国のタイプが理想ですか?

今年の大学人気志願先は?

ノルウェーの新学期は8月中旬ころから始まります。
そしてこの時期、多くのノルウェー人が長~い夏休みを満喫していますが、忙しくしている人もいます。
はい、大学入学志願者を志望先に入学できるかどうかを決定する機関ですね~。

日本では個々の大学ごとに入試が行われますが、ノルウェーの大学(総合大学、カレッジともに)は主に高校卒業試験の結果を提出し、自分の行きたい大学名と専攻学科をリストに挙げていきます。

先週の金曜日(7/18)にその第1回目のいわば「どこの大学・学部の志願者が多いか」が発表されました。以下、Aftenpostenの記事から引用します(2014年7月18日)。

まず全体の志願者数は、かつてなく多く119900人。ここ4年ほど毎年、増加傾向になるそうです。
学費が無料で、かつ求人もより高学歴を求めることの結果でしょうか?

で、定員と志願者数の割合で、「一番入るのが難しい大学と学部の組み合わせ」はこのようになっていま~す。

1.オスロ大学   医学部(8月スタート期)
2.オスロ大学   医学部(2015年1月スタート期)
3.ノルウェー工科大学(NTNU) 医学部
4.ベルゲン大学  医学部
5.トロムソ大学  医学部
6.オスロ大学   心理学(8月スタート期)
7.オスロ大学   歯学部
8.トロムソ大学  歯学部
9。オスロ大学   心理学(2015年1月スタート期)
10. ベルゲン大学  歯学部

大学

オスロ大学

ということで、医学部がほぼ独占状態でしょうか??歯学部もやはり「狭き門」です。
定員数が少ないので、こういう結果になったと思いますね。
有名な話ですが、ノルウェーの大学では医学部に入れなくて、東欧(ポーランドなど)の大学の医学部に留学するノルウェー人は多いです。

全体的に志願者が増えているのは、理科系(エンジニア、情報工学)だそうです。就職で圧倒的に有利なことなどが要因でしょうか?
ノルウェーはエンジニア不足で、外国からの人材もそうした分野ならば就職しやすいと聞いています。

90年代、2000年代初め頃まで人気だった学部で今は人気をなくしてしまったのは・・・・。
「メディア」「ジャーナリスト」系でしょうか。
その当時は、こうしたリストに必ずメディア・ジャーナリズムが入っていたのを覚えています。
ですがインターネットの普及により、紙の新聞を買う人は減り、かつては100万部の売り上げを誇ったタブロイド紙なども今では「スタッフ大量解雇」とか「つぶれるのでは?」というちょっと悲しい状況です。
就職口がない→志願する学生は減る、ということで「メディア学」志願者は8パーセント減になっているそうです。

前述の「医学部人気」に際して、AftenpostenのFacebookで「成績さえ良ければ、志願先に入学できるというシステムはいかがなもの?」という問いかけを行っていました。
「ワシにも言わせろ!」「アタシの意見、聴きなさい!」とばかりにコメントがごっちゃりついてました。
いかにもノルウェー人らしいなぁと思ったコメントは・・・
「将来、医師になる学生は成績よりも”人間性”が大事」
「私がかかっているセラピストはコミュニケーション能力に欠けている。成績だけで決めるのは反対」
・・・と成績が良ければいいという訳ではない、というのが「物申す」人々の主張の大半を占めてました。

今は第1回目の結果発表ですが、そのうち「この大学のこの学部なら入れる」といった類の記事がこれからどんどん出てきます。
ノルウェー夏の風物詩の一つですね。