詩とテレビの相性は?~オスロ旅行記4 2016~

帰国前夜の日曜日。たまたまつけたNRK2のテレビ番組に「ん??」と目が釘付けに状態に。
男性が、詩を朗読しています。まさかポエトリー・リーディングをテレビでやってる?

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さすが国営放送。日曜のゴールデンタイムに、こういう番組をやっているのね、とおかしくなりました。パッキングしながら、テレビをつけっぱなしにしていましたが、次から次へと詩が朗読されたり、現代や昔の詩人の紹介をしたりと番組は終わる気配はありません。
気になってテレビ欄で確認します。「ひ~~!!」目を疑いました。この番組、18時~23時まで放送・・・5時間も詩の番組をやるんですか??

はい、やってました。”Dikt og Forbannet løgn” (「詩とひどい嘘」イプセンのペール・ギュントにある有名なフレーズ)という番組です。
最初は「ぷぷ、公開ポエトリー・リーディングか~」と笑ってましたが、留学時代に勉強した詩や詩人が紹介されていくにつれ、どんどん番組に惹きこまれています。

5時間も詩の番組ということで、合間合間に工夫が見られました。例えば、ヒップホップグループや男声合唱団に詩を歌わせたり・・・

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あと男性2人の司会者が「あなたの詩を番組にメールで送って下さい」と呼びかけたり・・・・いやいや、ノルウェー人は詩を書けるからすごい数が来るよ!と焦ります。
まぁ考えてみれば、日本でもEテレで短歌や俳句番組を放送しますよね。ただ違いは「放送時間帯」と番組の「予算」でしょうか。
ここで見覚えのあるお顔が画面に登場します。メッテ・マーリット(Mette-Marit)ですね。ノルウェーの皇太子妃です。

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国民的詩人André Bjerke(アンドレ・ビャルケ)の詩を、南ノルウェーの方言で朗読。薄々は勘づいてましたが、この番組の並々ならぬ「気合」が伝わってきます。
他の企画として、オスロやベルゲン、スタヴァンゲルなどの町で、人々に「どんな言葉の詩を書いてほしいか」かのインタビュー映像が流れました。
tro(信じる)、fred(平和)、rettferdighet(公平)、mørkt(暗闇)などバラバラの単語を、街行く人は挙げていきます。
スタジオにいる若手の詩人たちが、30分くらいの時間内に、それらの言葉を使って詩を創作するという試みでした。
笑点より難しい!生放送だし放送作家いないです。
若手詩人の顔が、栗原類に似ていると思って写真を撮ったのですが・・・

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帰国後「髪型しか似ていません」と切って捨てられました・・・。いや、角度によっては似てたんですよ。
正直、完成した詩によって感心したり「もっといい詩ができないのかな?」と生意気にも思っちゃいましたが、詩のライブ感は十分に伝わりました。
外出していたアウドさんも帰宅し、一緒になって視聴。画面には再び、見知った顔が映ります。絵本作家・詩人のグロー・ダーレ(Gro Dahle)さんです!

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トレードマークのツインテールに、全くの普段着。さて、彼女に与えられたミッションは「詩の創作教室」でした~。
MCたちが生徒役になり、まずグローさんが「お互いの舌を手で触ってみて」と言います。当惑する生徒たちですが、素直に触りあってました。
「その匂いは?感覚は?何を思い出す?」とグローさんは尋ねて、2人はいろいろな言葉を発していきます。
それを「いいわね!とってもいいわよ!」と彼女は紙に書き取って、どんどん言葉をつなげていきました。

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誉め上手、励まし上手のグローさんのリードにより、最後には即興詩が完成~!!MCたちも「まさか詩がこんな風にできるとは」と感動してました。
「詩は自由。詩は自分のもの。ただ書けばいいのよ」とグロー・ダーレさん。
パパと怒り鬼~話してごらん、だれかに~』で仕事をご一緒したので、作品はもちろん彼女からもらったメールまでもが「すごい、詩になっている」と感心したことは何度もありました。

全く予備知識がないまま見始めた番組ですが、まるでベストテンのような趣向が最後に待ってました。
ノルウェーで最高の詩」を選ぶという無謀な(!)企画です。
あらかじめ6つの詩が、審査員により絞り込まれていたようです。詩人と詩を紹介する映像が流れます。
ちなみに6つの詩は以下の通りです。

  • Halldis Moren Vesaas(ハルディス・モーレン・ヴェーソス)作 ”Ord over grind“(1955年)
    女性詩人として唯一のノミネート。夫とともに創作活動に励む。「ノルウェーで最も美しい愛と孤独の詩」と評される。
  • Tarjei Vesaas(タルエイ・ヴェーソス)作 ”Innbying“(1953年)
    Halldisの夫。小説も数多く出版し、北欧文学賞受賞。この詩は美しい愛の詩として知られる。
  • Arnulf Øverland(アルヌルフ・オーヴェルラン)作 ”Du må ikke sove” (1937年)
    早い時期から反ナチス活動を行い、この作品もナチズムの台頭を警告する詩として、広く知られている。
  • Olav H.Hauge(オーラヴ・H・ハウゲ)作 ”Kvardag” (1966年)
    ハルダンゲル地方でリンゴ農家をしながら詩作を行った詩人。幼少から年を重ねる過程の日常についてを、短い言葉で表現。
  • 同上の”Det er den draumen“(1966年)もノミネート。タイトルの”draum”=夢についての短い詩。葬式、結婚式、堅信礼でよく暗唱される。
  • Sigbjørn Obstfelder(シグビョルン・オブストフェルデル)”Jeg ser“(1893年)
    ノルウェー最初のモダニズム詩人と呼ばれる。詩では、孤独、不安、そして”異邦人”のような感覚が表現された。

これらの詩をいろいろな俳優がイメージ映像とともに朗読するのですが、感動的でした!
留学時代の古ーい記憶が甦ってきますが、アウドさんは「全部の詩が暗誦できる」と余裕の表情。やっぱり詩が大事な国なんだな~と納得です。
興味深いのはノミネート作品のうち、ニーノシュクで書かれた詩が4つを占めたんです(ノルウェー語にはブークモールとニーノシュクという公用語があり、ニーノシュクはマイナーな方)。よくニーノシュク擁護派は「ニーノシュクこそ詩的で美しい」と言っていたな~とぼんやり思い出します。

視聴者からの投票を呼び掛けますが、きっと多くのノルウェー人が投票したことでしょう。
いよいよ発表の瞬間・・・緊張が走ります!

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「ノルウェー最高の詩」は、”Det er den draumen“が受賞しました~。Olav.H.Haugeの未亡人Bodil Cappelen(ボーディル・カッペレン)が舞台に上がります。

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彼女について私は何も知りませんでしたが、アウドさんが説明してくれます。
何でも、Bodilさんは画家であり、結婚はしていたけれどもOlav H.Haugeの詩に文字通り「恋をして」、詩人と文通を開始。2人が実際に会うことができたのは、文通をしてから4年もかかったそう。「あの当時はね、そういう時代だったのよ」と感慨深そうにアウドさんは言ってました。夢が叶って、OlavとBodilは一緒に暮らし始めたのです。

Olav H.Haugeは、日本人とも縁があります。彼は漢詩に影響を受けたことが有名ですが、俳句にも興味があったということを後に知りました。
オスロ大学の図書館で、彼のことを調べている時に「昔、オスロ大学に留学した日本人がOlav H. Haugeに俳句を教えた」という文献を見つけたんですよね。いくらノルウェーは小さな国とはいえ、すごいなぁ、同じ留学生でも私とはすごい違いだなぁ、と感嘆した記憶があります。

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5時間に亘る詩の番組は、改めて「詩の持つ力とテレビの可能性」を感じましたね。思いもかけない帰国前の思い出になりました~。
帰国後、ノルウェー人の知人と「詩をテーマに、あんなに大作番組を流しちゃうのはすごい!」と盛り上がりました。
以前のブログでも、ノルウェー人と詩の関係を書いていますので、ぜひご参照ください♪
(「詩が身近にある暮らし」、「子どもからのプレゼント♪」

詩心がない私でも、夢中になって最後まで観ちゃいました「詩の大作テレビ番組」。
ますますノルウェー人と詩の距離が縮まりそうです♪

出版を支えるノルウェーの制度~オスロ絵本を訪ねる旅 5~

2月末からストップしていた「オスロ絵本を訪ねる旅」の連載再開です~。もう来月にはノルウェーには行くという現実を目の当たりにし、慌てています!
ほとんどの方は、連載自体を覚えていないと思うので、過去ブログは以下をご参照ください♪

1.そもそものきっかけ
2.ユニークな書店
3.出版社訪問
4.絵本作家アトリエ訪問

以前のブログで何度か触れている「本の買い取り制度」(innkjøpsordning for litteratur)の説明がまだでした。
管轄している文化評議会(Kulturrådet)のサイトと、『文化を育むノルウェーの図書館』(吉田右子、和気尚美、マグヌスセン矢部直美著、新評論)を参考に、紹介します。

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ノルウェーのような小国で出版事業と文化を守るために「国が本を一定数買い取る」制度です。1965年から開始したので、41年もの歴史がありますね。
出版社は、買い取って欲しい本を文化評議会に申請します。「商業的すぎない」「クオリティーが高い」が審査基準のようですが、審査に合格すれば以下のジャンル別に買い取ってもらうことができます。

大人向け一般文学:773部(内訳:紙書籍703、電子書籍70)タイトル数は年によって異なる。2012年は200タイトルが買い取り
子ども・YA一般文学:1550部(内訳:紙書籍1480、電子書籍70)2012年は100タイトルが買い取り
翻訳文学:タイトル数130、542部 (内訳:紙書籍502、電子書籍40)
フィクション:773部(内訳:紙書籍703、電子書籍70)2012年は60タイトルが買い取り
子ども向けフィクション:タイトル数25、1480部
漫画:タイトル数15まで、1480部または703部

こうして買い取られた本は、公共・学校図書館に配布されていきます。

ノルウェーの人口520万人。
例えば、絵本で「買い取り制度」にパスしたら、1550部が保証されます。人口が30倍の日本の出版界でも、初版部数はどんどん落ち込み、2000部、3000部なども珍しくありません。そう考えれば、いかに「大きい数字」か想像できますか?

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改めて、「買い取り制度」の恩恵について考えてみましょう。当事者の言葉から引用します。

「私の描く絵本のテーマは難しいので、買い取り制度のおかげで本が出版できています。」(絵本作家グロー・ダーレさん)
「買い取り制度がなければ、出版社を始めようとは思わなかった。」(Magikon社長のスヴァインさん
「買い取り制度のおかげで、フリーランスでも安心して仕事ができる。」(絵本作家マーリ・カンスタ・ヨンセンさん

確かにグロー・ダーレさんの絵本は、DV、離婚で傷つく子ども、ネグレクトなど「社会的」な問題を取り上げたものが多く、決して「クリスマスのプレゼント向き」ではありません。しかしその「クオリティーの高さ」から、買い取り制度での部数が約束されているので、出版社も本を出すことに前向きです。

グロー・ダーレさんの講演から

グロー・ダーレさんの講演から

Magikon社のスヴァインさんも、「ひとり出版社」であれだけ活躍できるのは「クオリティー」で妥協しないせいでしょう。

仕事中のSveinさん

仕事中のスヴァインさん

マーリさんの言葉も同じフリーランス業として「フリーランスにとってはありがたい制度ですね!」と羨ましい限りです~。

仕事をするフリをしてくれているマーリさん

仕事をするフリをしてくれているマーリさん

もちろん「クオリティーの高さ」が大前提ですが、「売れる本」だけではない多様な本の出版を後押ししてくれる制度と言えるのかな~と考えました。

実は昨年のオスロでは「買い取り制度」の恩恵を強調された人が他にもいました。
いつになるか分かりませんが、次回はそちらに触れるつもりでーす!

つづく(粘着!)

絵本作家アトリエ訪問! ~ノルウェーの絵本を訪ねる旅 4~

オスロの絵本を取り巻く環境の旅・・・外せないのは「絵本作家のアトリエ訪問」! パチパチ~。
訪ねてみたい人はたーくさんいます。でも日程的にオスロ在住の作家で絞りました。
ということで、「1」で挙げたHullet“『の作者Øyvind Torseter(オイヴィン・トールセーテル)さん。

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さらに昨年夏、東京都美術館の企画展「キュッパのびじゅつかん」で来日した作者のオーシル・カンスタ・ヨンセンさんの妹さんのMari Kanstad Johnsen(マーリ・カンスタ・ヨンセン)さんが浮かびました。2人とも訪問したいメールを送ると、ご快諾の返事。。ノルウェー人、優しいわ~とアトリエ訪問は決まりました。

まずはオイヴィン・トールセーテルさんのアトリエから。オスロ郊外の集合住宅を、アーティストたちで共同で借りているそうです。
かなり図々しい私ですが、訪問前は緊張しました。というのもオイヴィンさんは人気、輝かしい受賞歴、多くの作品が翻訳とまさに現代ノルウェーを代表する絵本作家兼イラストレーターです。そんな人をド素人が訪問していいのか・・・と。しかーし、オイヴィンさんは場所が分かりにくいから、とわざわざ建物の入り口で待って下さっていて感動~。中は無味乾燥な建物ですが、アーティスト集団が借りているフロアでオイヴィンさんのアトリエに入ると・・・。広い、日当たりいい、雑然としてません。

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イラスト同様、きっちりした人柄がしのばれました。
オイヴィンさんとのやりとりを抜粋します。

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-まず絵本作家・イラストレーターになるまでのバックグラウンドを教えてください。

「小さい頃からマンガが大好きでした。最初はみんなと同じ”ドナルド・ダック”だったけれども徐々にフランスの”タンタン”シリーズに触れて惹かれました。絵を描くのが大好きで、ともかくひたすら描きつづけてました。僕は田舎の美しい自然と農園に囲まれ育ちましたね。大きくなるにつれ、もっと広い世界に憧れ、オスロとロンドンで絵の勉強をしました。」

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-とても売れっ子ですが、どんなスケジュールでお仕事をされているのですか?

「月曜から金曜まで9時から15時まで働き、週末は休みます。」

-え?そんな会社員的なスタイルで・・・??(衝撃)

「小さい子どもが3人いますから、家族との時間は大事ですね。その決められた時間の中で、集中して仕事します。」

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グロー・ダーレさんがオイヴィンさんのことを誉めていたのですが・・・。

「ああ、彼女は本当に素晴らしい絵本作家ですね。尊敬しています。」

-そのグローさんはよく学校で読み聞かせなどを行っているそうですが、オイヴィンさんも子ども向けのワークショップはやりますか?

「やはり小学校や他の場所でワークショップや読み聞かせをやりますよ。絵をいきなり描いて、というのは難しいのでスタンプを用意してそれを押してもらってイラストに発展させたり、まずはペンのしみを作ってから絵を描いていく方法を見せると、子どもたちは夢中になりますね。」

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オイヴィンさんは私にその方法を披露してくれたのですが、瞬く前におしゃれなイラストになっていきます!
大人でも感動。子どもだったら、目の色変わってしまうでしょう。
それにしても、こんな素晴らしい絵本作家が小学校に来てくれるなんて、ノルウェーの子どもたち、恵まれ過ぎです!

ボクはカエル

ボクはカエル

他にも”Hullet”の真ん中に穴を入れたアイディアや好みのイラスト、大事にしているスタイルなど伺ったり、たくさんのスケッチブックやコラージュ集を見せてもらいました。温和なオイヴィンさんと接していると緊張が解けました。

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さて別の日。その日は雨でした。グルーネルロッカ地区に、やはりアーティスト共同のアトリエで仕事をしているマーリ・カンスタ・ヨンセンさんを訪ねます。
マーリさんがフェミニンなワンピースを着ていたことにまず驚きました。普通、ノルウェーの女性はカジュアルなパンツスタイルが多いので・・・。

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共同アトリエのキッチンに腰掛け、早速、お話しを伺います。やりとりを抜粋しますね。

-マーリさんの姉オーシルさんは「ベルゲンへの愛着」をおっしゃっていましたが、これまでのバックグラウンドを教えてください。

「私もオーシルと同じ、ベルゲンで生まれました。父がグラフィックデザイナーで幼い頃から、絵を描くのが好きでした。大きくなってまずは服飾デザインの勉強から始め、オスロの国立芸術大学でビジュアルデザイン学科へ進学します。それから2年間、ストックホルムの芸術大学の修士課程でイラストレーションの勉強を続けました。」

共同アトリエ

共同アトリエ

-オーシルさんはベルゲンで制作活動をしていますが、マーリさんはオスロで活動していますね。

「はい。ストックホルムから2011年にノルウェーへ戻り、最初はベルゲンに住んでいましたが、オスロへ引っ越してきました。でも将来的にはベルゲンで仕事をしたいです。」

-今までの作品について教えてもらえますか?

「出版した絵本は10冊です。2冊はテキストとイラストの両方、2冊はテキストのないイラスト本、残りの本はテキストは別の作家でイラストのみ担当しました。もうすぐMagikonから新作”Tunellen”が出版されるので楽しみです。他には、雑誌、新聞、他の媒体でイラストを描いてきました。」

絵本の数々

絵本の数々

-オイヴィン・トールセーテルさんは、月金9-15時、週末休みというスケジュールで仕事をしているそうです。マーリさんはどうですか?

「そこまでかっちりとは決めていないですが、大体、同じ感じですね。たまに遅くまで仕事をすることはありますが、週末は休みます。」

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-今までテキストも手がけた作品は2冊ですが、もっとテキストを書きたいという希望はありますか?

「はい、ありますね。もちろん絵を描くのは大好きでいつもスケッチブックを持ち歩いていますが、テキストを書くことも同じように好きで挑戦したいです。」

-私の印象なのですが、ノルウェーの絵本作家やイラストレーターの人たちは仲がいいですよね。

「その通りです。イラストレーターの協会があり、お互いの交流が活発で仲良し。励まし合ったり、刺激しあえる仲ですね。」(注:実はマーリさんは私がオイヴィンさんを訪問したことを知ってました!)

それから今までの絵本を並べて頂いたり、スケッチを見せて頂いたり、他のアトリエ仲間を紹介していただきました。不審な侵入者を「いい意味でほっといてくれる」ので気楽です。

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他にも制作の際に大事にしていること、インスピレーションの源など興味深いお話しを伺います。そして気になる発言が・・・

ノルウェーでは”本の買い取り制度”があるからフリーランスでも安心して仕事ができる。」

Magikon社Sveinさんも口にされていた「本の買い取り制度」が、マーリさんの口からも出てきます。

鍵をかける順番が描かれたドア

鍵をかける順番が描かれたドア

ホントはこの回で解説をしたかったのですが、もう書きすぎたのでまた別の機会にしまーす。

帰国後に、マーリさんの最新作”Tunellen”(トンネル)をいただいたのですが、前作とイラストのテイストが異なっていて驚きました。
マーリさんのイラストは作品によって、かなりテイストが変わるので、それはそれで楽しいです。

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NB!マーリさんは、3月の「ノルウェー文学セミナー」の「児童文学セミナー」にスヴェインさんとともに登壇されます!もう申し込まれましたよね??詳細とお申し込みはこちらから

つづく(と願いたい)

そもそものきっかけ ~ノルウェーの絵本を訪ねる旅 1~

一番最初に、ノルウェー語の本を買ったのは絵本=bildebokです。学習を始めて半年くらいで「ノルウェー語の本を読んでみたい!」と購入しました。
絵本のテキストは予想以上に難しかったけれども、ノルウェーらしさ満載のイラストを眺めて楽しみました!(実はスウェーデン原作の絵本だったのですが・・・。顛末はこちら

それ以降もポチポチと絵本を買ったりもらったりしていました。「ノルウェーについて学ぶサロン」で「ノルウェーの絵本」について2回、お話ししていますね~。最初のレポート2回目のレポートがご覧になれます。

そんな感じでノルウェーの絵本とは、「つかず離れず」状態だったのですが、運命的!と思える出逢いがありました~。
NORLA(Norwegian Litterature Abroad)「ノルウェー海外文学普及協会」が主催した「翻訳者セミナー」が2009年に開催された時、ラッキーなことに参加できました。その時のレポートはこちらに記していますが、グロー・ダーレさんとスヴァイン・ニーフースさんの『Sinna Mann』に衝撃を受け、その後、紆余曲折を経てパパと怒り鬼』となり邦訳出版に至ることができました。

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2014年にもNORLA主催の「翻訳者セミナー」が開催されたのですが、「これいい!」と一目惚れした絵本がありました!
タイトルは『Slapsefjell』。60年代頃のノルウェーのスキー場での1日がノスタルチックかつシュールに描かれています。イラストはレトロ調で「これぞノルウェー!!」てんこ盛り絵本です。

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出版社の人に聞いたら「ノルウェー語のサンプルはこの1冊しかない」とのことでしたが、半ば強奪した次第です。こちらから中身をちょっと覗くことができますよ~。
他にも、絵本作家やイラストレーターたちのプレゼンテーションや聞くことができ、大いに刺激を受けることができました(キュッパシリーズの作者、オーシルさんもお話しされていたのですが、”Big in Japan”と紹介されていて本人も照れてましたね・・・)。
まだ邦訳はされていませんが、ノルウェーやヨーロッパで評価が高いStian Hole(スティーアン・ホーレ)さんのワークショップでは、作品の芸術性の高さに感銘しました!

Annas Himmel(アンナの空)より

Annas Himmel(アンナの空)より

帰国後、持ち帰ったり送ってもらった絵本を見ながら、2013年に来日講演してくれたグロー・ダーレさんの言葉を思い出しました。
「ノルウェーには、とても素晴らしい絵本作家やイラストレーターがいるんです。」
グロー・ダーレさんはご自身のお気に入りの絵本を持って来てくれて、その中で気になった1冊がØyvind Torseter(オイヴィン・トールシェーテル)さんの『Hullet』でした。本の真ん中に開いた穴をめぐる絵本なのですが、セリフはごくわずか。まるで上質なコメディー映画を観ているような感覚になれます。

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ノルウェー語レッスンの部屋に置いていたら、デザイナーの生徒さんが「これ、貸してください」とおっしゃったので、やはりデザイン系の人には刺さる絵本なのだな~と実感。
こちらは『穴』というタイトルで邦訳されています(ワールドライブラリー社、ひだにれいこ訳)。

個々の絵本に触れながら、「もっと絵本と取り巻く環境を知りたい!」とテンションUP!
9月のオスロ訪問に合わせて、自分が行ってみたい!と思う「絵本をめぐる場所や人」を訪ねることにしました。さらに幸運なことに・・・オスロで初めて「Barnebokfestival」(子どもの本フェスティバル)が滞在中に開催されることが分かり、テンションMAX!! 

・・・いつも前置きが長くなるのは悪い癖ですが、これから不定期にユルユルと「ノルウェーの絵本を訪ねる旅」と書いていきたいと思います~(オスロ旅行記も終わってません・・・)。

つづく(ハズ)