ドイツ人をうらやむ日本人 in ノルウェー

連休後半からイタリアとフランスへ旅行しました~。

ベニス!

イタリア語もフランス語もできないので、必然的に英語でのやり取りになったのですが、イタリア人とフランス人の英語が思いっきり「イタリア語・フランス語なまり」で面白かったです。って私も「日本語なまりの英語」なのでお互い様なのですが・・・。

ヴィトンが街を支配しつつあるパリ・・・

改めて「母国語と外国語の相関関係」について思いを巡らせました~。

ノルウェーの大学に長期短期4回留学しています。
いつも「クラスで一人だけのアジア人」という立場でした。
特に2回目以降の留学では、自分以外はみんな「欧米圏」からの留学生という環境。
どんなに鈍感でも感じます。「日本人、ノルウェー語マスターに不利じゃない?」と。

特にドイツ人留学生たちは「ノルウェー語の文法は簡単だし、似ている単語も多いよね」と余裕の表情でした。
オスロ大学のサマースクールで、ドイツ人留学生が「このテキストは簡単すぎるから変えて欲しい」と先生に訴えていたことを今でも覚えています。
え~~、こっちは必死で講義についていっているのに~~~。

ドイツ語もノルウェー語も大きな「ゲルマン語族」という言語グループに属しています。
さらに、ノルウェーでは大きな町であるベルゲンは、ドイツの「ハンザ商人」が長い間、独占的な立場にいました。
支配的なドイツ人との交流により、言葉にも変化が生まれます。ノルウェー語以外のスカンジナビアの言葉も、ドイツ語の影響をどんどん受けていきました。

ベルゲンのブリッゲン地区

例えば、kjælighet「愛」のように-hetで終わるノルウェー語の単語は多いのですが、これはドイツ語の接尾辞です。
(余談:ノルウェーのもう一つの公用語nynorskはドイツ語の影響を排除した言葉なので、-hetではなくkjærligleikを使います。スウェーデン語に見えますね~)
これ以外にもドイツ語の影響は多々ありますので、「ドイツ人、ノルウェー語が上手になるのが早っ!ずるい!」と、クラスの片隅でじーっと日本人(←ワタシ)はうらやむ結果となりました。

さて。日本語を勉強しているノルウェー人は、こう言います。「中国人や韓国人は日本語が上達するのが早い。自分は落ちこぼれだ」と。
そういう時には「わが同志、Min kamerat!」と互いに握手したい気持ちになりますよね~。
そして「あなたのノルウェー語は上手!」「あなたの日本語こそ上手!」と褒め合います。ああ~、日ノル友好♪

私も年を重ね、ドイツ人を羨ましいという気持ちはほぼなくなりました。それ以上に「母国語が学習言語に及ぼす影響」に興味がありますね~。
rの音がキツイよアメリカ人。
イントネーションが平坦になっているチェコ人。
フランス語っぽいよねフランス人。
sの音がドイツ語なまりになってるドイツ人。そして、
unnskyld「すみません」を多用する日本人・・・。

・・・とたまにはノルウェーや北欧以外の旅をすることによって、「ことば」について考えるのは楽しいです。

トロールとバブル期の思い出

実家に帰る度に、ごそごそと「ノルウェーの変なものないかな~」とあさる癖がついてしまいました・・・。
先月の帰宅時に発掘したのは、こちらです!

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いつもながら保存状態がひどく写真の撮り方もお粗末なのでスミマセン・・・。
このビニール袋を見て「あ、これは!」と思いついた人はなかなか。
ベルゲンのブリッゲン地区にあるセーターショップの袋ですね~。

ヤケクソ気味(?)にでかく描いたトロール。
背景には世界遺産のブリッゲン。
観光客を表しているののでしょうか、いくつかの国旗・・・。
右下の方に日の丸が描かれているのがわかります?

このセーターショップでノルウェーセーターを買ったのは1994年くらいでしょうかね。
まだバブル期の余韻で景気が今よりも良かった時代です。
日本人観光客対策に、日本語ができる定員をおいているお土産さんがありましたね~(遠い目)。
1着3万円くらいのセーターを、10枚くらい買っちゃう「太い日本人客」がいると聞いたことがあります。

今だったら中国国旗に代わっているでしょうか?

いろいろな在日ノルウェー人~Stigさんの場合~

たまーに、「日本に住んでいるノルウェー人はどんな仕事をしているんですか?」と聞かれることがあります。
「ノルウェー系など外資系や日本企業に勤めている人、いろいろですよ~」と答えていましたが、Stig(スティーグ)さんの場合は、一貫して「独立独歩」を歩んできた点が特徴でしょうか。

Stigさんと知り合ったきっかけは彼のお嬢さんが、ノルウェー語レッスンに通ってくださったからです。
「なぜノルウェー人と日本人ご夫婦の女の子が、ノルウェー語を習いに来るの?」と不思議だったのですが、聞けば家では全然、ノルウェー語を使っていないとのこと。そして生まれてから20年ぶりくらいにお父さん=Stigさんの故郷を訪れ、ノルウェーに興味を持つようになり、うちへ来て下さるようになった次第です。

夏の暑い日、「父がノルウェー語レッスンに興味があるので連れてきていいですか?」と聞かれ「もちろんですよ!」と答え、それでStigさんと初めてお会いすることになりました。やや恰幅がよくてとても明るいStigさんは、流ちょうな日本語を話し、またおしゃべり上手なことにびっくりしました!
1979年に来日し、在日生活は37年。Stigさんが強調されていたのは、「自分の日本での仕事は他のノルウェー人とはかなり違う」という点でした。
「在日ノルウェー人は大使館や外資系、日本の会社で働くケースがほとんどだけど、自分はそういう道を選ばなかった」と。
そして現在は、高音質オーディオ部品=カートリッジの製造・輸出入・販売業の会社代表だと教えてくれました。

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ノルウェーではベルゲンの名門ノルウェー経済大学(NHH)出身とお聞きし、「え?経済畑の人がなぜ高級オーディオの世界に?」とまたもや頭が??状態に。
今でこそ、世界を相手にしたビジネスを展開されてますが、実は翻訳会社やテレビのお仕事に関わったりと紆余曲折の連続だったそうです。

「知り合いのノルウェー人が日本で働きたいと言っているのですが・・・」と私に相談を持ちかけてくる方がいますが、いつも答えに窮します。ノルウェー系企業のポストは少ないですし、日本の会社でツラい思いをされて帰国された例も知ってますので。
その点、Stigさんの働き方は「会社や組織に属さない生き方の可能性」を示してくれると思いました。

プライベートでは日本人女性と結婚され、2人のお子さんの父親でもあるStigさんは、日本でビジネスを経験しながらも「あ~、ノルウェーのお父さんだな」と感じました。子どもの自主性を重んじ、愛情を持って応援している姿はまさしくノルウェー人。

・・・ということで、3/26(土)の「ノルウェーについて学ぶサロン」(なんと74回目!)にStigさんが登壇されます!
たくさんの写真をいただきました~。ホント、たくさんでーす!
Stigさんの業務分野である高級オーディオの写真はもちろん、出身地のベルゲンの美しい写真の数々。
西ノルウェーのHaugesund(ハウゲスン)で育ったそうですが、そこの写真もたくさんいただきました。実は今、Haugesundに2年間暮らしていた生徒さんがいるので、「おお、偶然!」と驚いています。

Haugesund

Haugesund

さらに当日はサロン史上、最も無謀な試みに挑戦します!
Stigさんご自慢のステレオ機器を搬入し、ノルウェーのアナログレコードでグリーグ、ジャズ、民族音楽や美しいボーカリストの曲を流す予定です。
最近「アナログレコードの人気が復活」とよく聞きますが、デジタルとは違ったアナログレコードの音質に触れてみませんか?

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そうそう、Stigさんのお嬢さんが「よく家で父がレコードをかけて、これは素晴らしいだろう?と聞いてくるんです」とおっしゃってました。贅沢な環境ですね!

サロンの詳細とお申し込みはこちらになります♪
http://norwayyumenet.noor.jp/hp/info/kouzaannai2016/kouzaannai2016.htm

3/26はもう来週ですよ~。お申し込みをお待ちしています!

P.S. 現在、ノルウェー出張中のStigさんから「もっとたくさん、ノルウェーのレコードを買ったからサロンに持っていくよ」と嬉しいメッセージが届きました!

絵本作家アトリエ訪問! ~ノルウェーの絵本を訪ねる旅 4~

オスロの絵本を取り巻く環境の旅・・・外せないのは「絵本作家のアトリエ訪問」! パチパチ~。
訪ねてみたい人はたーくさんいます。でも日程的にオスロ在住の作家で絞りました。
ということで、「1」で挙げたHullet“『の作者Øyvind Torseter(オイヴィン・トールセーテル)さん。

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さらに昨年夏、東京都美術館の企画展「キュッパのびじゅつかん」で来日した作者のオーシル・カンスタ・ヨンセンさんの妹さんのMari Kanstad Johnsen(マーリ・カンスタ・ヨンセン)さんが浮かびました。2人とも訪問したいメールを送ると、ご快諾の返事。。ノルウェー人、優しいわ~とアトリエ訪問は決まりました。

まずはオイヴィン・トールセーテルさんのアトリエから。オスロ郊外の集合住宅を、アーティストたちで共同で借りているそうです。
かなり図々しい私ですが、訪問前は緊張しました。というのもオイヴィンさんは人気、輝かしい受賞歴、多くの作品が翻訳とまさに現代ノルウェーを代表する絵本作家兼イラストレーターです。そんな人をド素人が訪問していいのか・・・と。しかーし、オイヴィンさんは場所が分かりにくいから、とわざわざ建物の入り口で待って下さっていて感動~。中は無味乾燥な建物ですが、アーティスト集団が借りているフロアでオイヴィンさんのアトリエに入ると・・・。広い、日当たりいい、雑然としてません。

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イラスト同様、きっちりした人柄がしのばれました。
オイヴィンさんとのやりとりを抜粋します。

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-まず絵本作家・イラストレーターになるまでのバックグラウンドを教えてください。

「小さい頃からマンガが大好きでした。最初はみんなと同じ”ドナルド・ダック”だったけれども徐々にフランスの”タンタン”シリーズに触れて惹かれました。絵を描くのが大好きで、ともかくひたすら描きつづけてました。僕は田舎の美しい自然と農園に囲まれ育ちましたね。大きくなるにつれ、もっと広い世界に憧れ、オスロとロンドンで絵の勉強をしました。」

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-とても売れっ子ですが、どんなスケジュールでお仕事をされているのですか?

「月曜から金曜まで9時から15時まで働き、週末は休みます。」

-え?そんな会社員的なスタイルで・・・??(衝撃)

「小さい子どもが3人いますから、家族との時間は大事ですね。その決められた時間の中で、集中して仕事します。」

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グロー・ダーレさんがオイヴィンさんのことを誉めていたのですが・・・。

「ああ、彼女は本当に素晴らしい絵本作家ですね。尊敬しています。」

-そのグローさんはよく学校で読み聞かせなどを行っているそうですが、オイヴィンさんも子ども向けのワークショップはやりますか?

「やはり小学校や他の場所でワークショップや読み聞かせをやりますよ。絵をいきなり描いて、というのは難しいのでスタンプを用意してそれを押してもらってイラストに発展させたり、まずはペンのしみを作ってから絵を描いていく方法を見せると、子どもたちは夢中になりますね。」

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オイヴィンさんは私にその方法を披露してくれたのですが、瞬く前におしゃれなイラストになっていきます!
大人でも感動。子どもだったら、目の色変わってしまうでしょう。
それにしても、こんな素晴らしい絵本作家が小学校に来てくれるなんて、ノルウェーの子どもたち、恵まれ過ぎです!

ボクはカエル

ボクはカエル

他にも”Hullet”の真ん中に穴を入れたアイディアや好みのイラスト、大事にしているスタイルなど伺ったり、たくさんのスケッチブックやコラージュ集を見せてもらいました。温和なオイヴィンさんと接していると緊張が解けました。

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さて別の日。その日は雨でした。グルーネルロッカ地区に、やはりアーティスト共同のアトリエで仕事をしているマーリ・カンスタ・ヨンセンさんを訪ねます。
マーリさんがフェミニンなワンピースを着ていたことにまず驚きました。普通、ノルウェーの女性はカジュアルなパンツスタイルが多いので・・・。

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共同アトリエのキッチンに腰掛け、早速、お話しを伺います。やりとりを抜粋しますね。

-マーリさんの姉オーシルさんは「ベルゲンへの愛着」をおっしゃっていましたが、これまでのバックグラウンドを教えてください。

「私もオーシルと同じ、ベルゲンで生まれました。父がグラフィックデザイナーで幼い頃から、絵を描くのが好きでした。大きくなってまずは服飾デザインの勉強から始め、オスロの国立芸術大学でビジュアルデザイン学科へ進学します。それから2年間、ストックホルムの芸術大学の修士課程でイラストレーションの勉強を続けました。」

共同アトリエ

共同アトリエ

-オーシルさんはベルゲンで制作活動をしていますが、マーリさんはオスロで活動していますね。

「はい。ストックホルムから2011年にノルウェーへ戻り、最初はベルゲンに住んでいましたが、オスロへ引っ越してきました。でも将来的にはベルゲンで仕事をしたいです。」

-今までの作品について教えてもらえますか?

「出版した絵本は10冊です。2冊はテキストとイラストの両方、2冊はテキストのないイラスト本、残りの本はテキストは別の作家でイラストのみ担当しました。もうすぐMagikonから新作”Tunellen”が出版されるので楽しみです。他には、雑誌、新聞、他の媒体でイラストを描いてきました。」

絵本の数々

絵本の数々

-オイヴィン・トールセーテルさんは、月金9-15時、週末休みというスケジュールで仕事をしているそうです。マーリさんはどうですか?

「そこまでかっちりとは決めていないですが、大体、同じ感じですね。たまに遅くまで仕事をすることはありますが、週末は休みます。」

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-今までテキストも手がけた作品は2冊ですが、もっとテキストを書きたいという希望はありますか?

「はい、ありますね。もちろん絵を描くのは大好きでいつもスケッチブックを持ち歩いていますが、テキストを書くことも同じように好きで挑戦したいです。」

-私の印象なのですが、ノルウェーの絵本作家やイラストレーターの人たちは仲がいいですよね。

「その通りです。イラストレーターの協会があり、お互いの交流が活発で仲良し。励まし合ったり、刺激しあえる仲ですね。」(注:実はマーリさんは私がオイヴィンさんを訪問したことを知ってました!)

それから今までの絵本を並べて頂いたり、スケッチを見せて頂いたり、他のアトリエ仲間を紹介していただきました。不審な侵入者を「いい意味でほっといてくれる」ので気楽です。

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他にも制作の際に大事にしていること、インスピレーションの源など興味深いお話しを伺います。そして気になる発言が・・・

ノルウェーでは”本の買い取り制度”があるからフリーランスでも安心して仕事ができる。」

Magikon社Sveinさんも口にされていた「本の買い取り制度」が、マーリさんの口からも出てきます。

鍵をかける順番が描かれたドア

鍵をかける順番が描かれたドア

ホントはこの回で解説をしたかったのですが、もう書きすぎたのでまた別の機会にしまーす。

帰国後に、マーリさんの最新作”Tunellen”(トンネル)をいただいたのですが、前作とイラストのテイストが異なっていて驚きました。
マーリさんのイラストは作品によって、かなりテイストが変わるので、それはそれで楽しいです。

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NB!マーリさんは、3月の「ノルウェー文学セミナー」の「児童文学セミナー」にスヴェインさんとともに登壇されます!もう申し込まれましたよね??詳細とお申し込みはこちらから

つづく(と願いたい)

グリーグとベルゲン

えっと、一応ワタシは「日本グリーグ協会」の会員でございます!
クラシック音楽に疎ーいワタシですが、ちゃっかり会員になっているんですけど・・・・。ただ自慢したいのは、かの作曲家エドヴァルド・グリーグと誕生日が一緒(6/15)なんです!

うっすいつながりですが、もう1つありました!
実は、グリーグの少年時代をつづった絵本を持っているんです。

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購入したのは、ノルウェー語を勉強を始めた1994年!しかもベルゲンの書店で購入しているんです。
グリーグはベルゲン出身。そして、ベルゲンにはグリーグの自邸トロルハウゲンが博物館として残っています。グリーグとベルゲンは切っても切り離せません。

この絵本は中身をお見せできないのが残念なくらい、抒情的かつ美しいタッチでベルゲンの風景と少年時代のグリーグを描いています。
ノルウェー語がわからなくても、引き込まれる1冊です。
あとタイトルが”Edvard fra Strandgaten“に注目!Strandgatenは、Strand=海岸、gaten=通りという意味です。
なので日本語にすると「海岸通り」になりますが、この通りでグリーグは生まれました。

ベルゲンの人は地元愛が強い!と常々感じていますが、ベルゲン、そしてベルゲンが生み出したグリーグへの愛情が詰まった1冊です♪