ノルウェーの「バイブル・ベルト」

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ノルウェーの国教はキリスト教プロテスタントです。
「Den norske kirke」(ノルウェー教会)が、ノルウェーの最大宗教団体であり、人口の約75%が会員になっています。

「ノルウェー人って信心深いですか?」と聞かれると、「う~ん」と一言で答えるのは難しいです。
というのも、地域によって「信心度」具合が違うから。

英語にも同様の表現がありますが、ノルウェー語では、Bibelbeltet=バイブル・ベルト=聖書地域と呼ばれる場所があります。意味は分かりますか?
はい、熱心なクリスチャンが多く住むエリアです。
どこが当てはまるか、というと南ノルウェーと西ノルウェーです(特に南)。

教会

私が最初に留学した西ノルウェーの田舎町Voldaは、まさにBibelbeltetなところでした。
熱心なキリスト教の人たちは、飲酒はしません。avholdsfolk=禁酒主義者と呼ばれ、ノルウェー人が大好きなアルコールを口にしないのです!
・・・というか、私はノルウェーでお酒飲まない人に会ったのは、「宗教上の理由」からのケースだけですね~(お酒に弱い人に会ってみたい!)
今はあるみたいですが、留学当時はビール以上のアルコール度数のお酒を売る「Vinmonopolet」(酒の専売公社)はありませんでした。
なのでパーティ大好きな「信心深くない」学生たちは、車を1時間も運転してVinmonopoletへ買い出しに行っていたほどです。

学生寮で同じキッチンを利用していた南ノルウェー出身のおじさん学生は、どんぴしゃりの「信心深い」人でした。
お酒は飲まず、食事前にお祈りをし、日曜には教会に行っていました(←これは今のノルウェーでは稀なことなんです!)。

留学先のカレッジには、やはりキリスト教サークルがあり、のちの留学先オスロ大学と比べると「信心深い」学生が多かった印象です。
図書館の司書のバイトをしていたノルウェー人学生は、西ノルウェーのVoldaよりもっと田舎出身でした。彼との会話を引用してみましょう。

-「兄弟はいるの?」
-「うん、10人いるよ」

10人ってさすがに「多い!」ですよね。おそらく「宗教上の理由」から産児制限はしなかったのかなぁ~と想像。

-「ノルウェーは結婚しないで一緒に暮らす事実婚=samboが多いよね?」
-「でもやっぱり人は結婚しないと。samboだと無責任な感じがする。」

ということで、南・西ノルウェーは出生率・婚姻率ともに高いのです。

Voldaに留学中、近くの村を訪れた時、異様な一団に会いました。雨の降る中、男性がギターを弾いて、子どもたちが歌いながら行進しているのです。

キリスト教

みんなはイエスキリストを讃える歌を歌っていましたが、違和感というかモヤモヤした感情になったことを覚えています。

Aftenpostenにこの「バイブル・ベルト」の本拠地である「南ノルウェー」を特集した記事があったので、ご紹介しましょう(2014年5月24日)。
ジェンダー研究者たちが、南ノルウェーの「性別役割分業」について調査したところ、こんな結論が出ました。
「就業している女性の割合が低い。」
ノルウェーといえば、男女差がなにごとも少ない国、というイメージですが、どうも伝統的な家族観を持つ南ノルウェーでは違うようです。
例えば、育児。
子どもは保育園に預けずに、お母さんが家で育てる割合が高く、それに比例して南ノルウェーの保育園数は他地域に比べ低いとか。
これも納得の結果かもしれませんが、他地域に比べ女性の収入が低いです。パートタイム労働に従事している割合の高さが原因です。

特集記事では、子どもたちが手をあげて「イエスはスーパーヒーロー、イエスはオンリーワン!」と歌っている写真が載っています。
いろいろな意味で、他のノルウェーとは異なる「Bibelbelet」のエリア。
もちろん、南や西ノルウェーに住む人みんながみんな、「熱心なクリスチャン」というわけではありません。
ですが、どんどん信仰心が薄まっている現代ノルウェーにおいて、特殊なエリアと言えることは間違いないでしょうね。