イースターにはミステリを

ノルウェー語では、「イースター」のことを「påske」(ポースケ)と言います。
この「ポースケ」の響きが可愛くて、生徒さんと「ぽー助みたいですね~」なんて笑ってます。
今年のポースケは、今週からですね~。
ノルウェーでは、ポースケで1週間~2週間休む人が多いので、hytta(ヒュッタ=セカンドハウス)にこもって、春スキーを楽しんだり、海外旅行したり、またはいつも以上に静かな町に残ったり、といろいろな方法で人々は「春の訪れ」を感じます。

そんな「ほっこり」したポースケ。
しかし、なぜかノルウェーのポースケでは、やたらと人が死ぬのです!

・・・といってもそれは現実ではなく、「ミステリ小説」のお話。
なぜミステリ?というと、ノルウェーでは「ポースケミステリ」(påskekrim)という一大ジャンルが存在するのです。
書店に行けば、大きく「påskekrim」と書かれたコーナーが設けられ、各出版社、ポースケに向けてたくさんのミステリ小説をラインナップに並べます。

最初は「ミステリ小説」だけだったのですが、今ではラジオやテレビでも「påskekrim」と銘打って、ミステリドラマシリーズを流します。
例えばNRK(ノルウェー国営放送)の番組表に、しっかりpåskekrimと書いてありますね。

http://tv.nrk.no/serie/hinterland/koif51002113/sesong-1/episode-1

特にノルウェー人に尋ねるわけでもなく、「なぜポースケにミステリ?」とあまり深く考えてきませんでした。
おそらく、あまりやることのないhyttaで余った時間に、ミステリを読めば集中できて楽しめるから?と勝手に想像していたのです。
このブログを書くにあたり、「påskekrim」の起源を調べたところ、思ったよりも歴史がありました。
wikiによると、すでに1920年代に、出版社が仕掛けたキャンペーンがきっかけだったようです。
ポースケ(正式には”聖枝祭”)1週間前に、大手新聞のトップに「ベルゲン線が今夜、襲われた」(Bergensbanen plyndret i natt)と載りますが、実はこれ、あるミステリ作家の新作タイトルでした。
広告であることを示す表記はごく小さく、多くの人は「え?そんな事件が?」と騙されてしまいます。
この「エープリルフール」のような広告は成功し、それから他の出版社も「ポースケにはミステリ」の戦略に乗っかり、今に至る・・・が「påskekrim」のヒストリーでした。

ノルウェーで存在することは、他の北欧でも同じ、ということが多いのですが、こと「påskekrim」に限っては、「ノルウェー的現象」のようです。

ミステリ

初代ミステリ女王の本!

翻訳家のヘレンハルメ美穂さんに教えていただいたのですが、ノルウェーの「påskekrim」の成功から、スウェーデンでも同じような試みが始まったようです。フツーはスウェーデンの後を追いかけるのが、ノルウェーなのに・・・。

こうなると、北欧中に「人がたくさん死ぬイースター」が広がっていくでしょうか?

元は「復活祭」というキリスト教の行事であるポースケ。
こんなに、フィクションの世界で人を殺したり、血を流していいのか分かりませんが、それだけノルウェーが平和な証なのかもしれませんね~。