「ノルウェーの悲劇」で描かれたブレイヴィーク

昨年、「この本、すごく面白い」とノルウェー人の友達や知人、複数から勧められたのが「En norsk tragedie」(「ノルウェーの悲劇」)でした。

ジャンルはノンフィクション。テーマは、2011年7月22日の大規模テロ実行犯ブレイヴィークについてつづられた本のようです。
私自身、あの事件にもそしてブレイヴィークにも興味がありました。
インターネットで買おうかと思ったら、370ページの大作で値段は約7000円!送料も含めれば1万円超えるかも・・・。
「ノルウェーに行ったら買えばいいかな?」と思い、昨年の6月に渡ノルした際、本屋を覗いたら・・・・ありました!

ずっしり重いハードカバー。値段の399クローネはやっぱり高い。「買っちゃう?どうする?」とずっと迷っていたら・・・。おお!もっと値段の安いペーパーブック版があった!
今度は迷わず買って、居候させてもらっているアウドさんの家に戻り、「この本買ったよ~」と見せたら・・・。
アウドさんは私の誕生日プレゼントに、「En norsk tragedie」を買ってくれていたのです。が~ん!
でもアウドさんは気軽に、「Junkoが買った方は、本屋で戻してくるから大丈夫」と、呆然としている私から本を受け取りました。

私は本サイトで書いていますが、飛行機で眠れない「特異体質」です。電車や地下鉄なら1駅でも眠れるのに~。
しかも帰国便はなぜかエコノミープレミアムにアップグレードされていました~。これなら眠れるかも?と思ったのですが、でも「En norsk tragedie」が気になって、読み始めます。

・・・食事やトイレに行くのも面倒になるくらい本にのめりこみました。
難しい単語やわからないオスロの地名など出てきますが、ページをめくる指は止められません。
本書では、冒頭、行政区の爆弾テロのシーンから始まります。それからブレイヴィークの生い立ちとウトヤ島の7/22が、交互に描かれる構成です。

ブレイヴィークの事件をきっかけに、「あの平和なノルウェーでどうして?」といった疑問を持たれた方は多いでしょう。
ノルウェー人の友達や知人は、「彼は例外中の例外だ」「彼は気が狂っていただけだ」と言っていました。
ノルウェーの現代社会に不満や憎しみを抱く人は存在するでしょうが、まさか77人もの罪がない人を殺そうと考え、実行するノルウェー人はブレイヴィークだけだったでしょう。

私は飛行機到着ギリギリで読み切ったのですが、ノンフィクション+上質のミステリ小説に出会えた高揚感に包まれました。
「En norsk tragedie」を読んで、まさにこのタイトル通りだと感じます。
ブレイヴィークの犯行の背後には様々な「悲劇」が折り重なっています。
「彼は気が狂っている」だけでは事件の真相は片づけられません。
ブレイヴィークは1979年生まれですが、80年代、90年代、そして2000年代を通じて現代ノルウェーが抱えた社会問題と移民政策と、7/22のテロは関連性があります。
さらに彼の家庭環境も特殊でした。
「悲劇」の連鎖が本書によって明らかになり、私は7/22の事件について、見る目が全く変わったと感じます。

テロ後のノルウェーの政治家たちや各専門家たちが取った「事件の検証」も非常に興味深いですね。
「ああ、ノルウェー人だなぁ」と感心するとともに、最悪の事件後に希望が見えてきました。

ブレイヴィークのテロは、事件直後は日本でも大きく報道されましたが、詳しい人物像などは伝わっていない部分が多いです。
「この本は、何らかの形で日本で紹介したい!」と強く思い、4/19の「ノルウェーについて学ぶサロン」で本の紹介をすることにしました。そして今、メモを作成中で七転八倒中です・・・。
ノルウェー人は当然のことながら、今でもこの事件について、ブレイヴィークについて強い関心を寄せています。

この本を通じて、皆さんに、もっともっとノルウェーのことを深く知っていただきたいという思いでお話します。少しでも興味がわきましたら、是非ぜひ聞きにいらしてくださいね!
「ノルウェー語が分からなくても、参加して大丈夫ですか?」とご質問がありましたが、講師は私で日本語で話しますので全然、大丈夫ですよ~。
内容詳細・お申し込みは以下のURLからお願いします。

http://norwayyumenet.noor.jp/hp/info/kouzaannai2014/kouzaannai2014.htm

花

追悼の花

ディズニーと北欧のコラボ~「アナと雪の女王」~

ノルウェー人や北欧人はディズニーが好きです。
クリスマスには、なぜかディズニー映画がたくさんテレビで放送され、それはもう日本人と「紅白歌合戦」と同じくらい「自然なこと」となっています。

昨年末くらいから、「ディズニーが、ノルウェーの自然からインスピレーションを受けた映画を作る」というニュースが、いろいろなノルウェーのメディアで報道され、「はしゃいでいる」様子が伝わってきました。
「ふ~ん?」ということで、ちょっと懐疑的だった私。
例えばこんな記事です。
「”Frost”(ノルウェー語タイトル)は、ノルウェーのフィヨルドや山といった自然からインスピレーションを受けた映画である。アメリカの旅行業界によれば、”Frozen”(オリジナルタイトル)の公開後、アメリカからノルウェーへ飛行機の予約が、2013年11月28日~2014年1月31日の期間、前年比より153パーセント増加していることが分かった。」(VGより)

え?このディズニー映画を見ただけでノルウェーへ行きたくなるんですか?
私はFrost=「アナと雪の女王」が日本で公開される前から、日本語公式HPなどでチェックしたのですが・・・

「ノルウェー」の「ノ」の字もHPには載っていません・・・!
またノルウェー人だけが喜んでいるの?と半ば、映画に興味を失いかけていたところ、「アナと雪の女王がすごく良かったです」と生徒さんが映画のパンフレットを持ってきてくれました。
そこにはちゃんと、ディズニーのスタッフがノルウェーのリサーチを行い、スターヴ教会の写真が載っています。教会

これは「ノルウェー伝道師として行かないと!」と思い立った翌日に、最近オープンした「TOHOシネマズ日本橋」に見に行ってきました~。

確かに!この映画は北欧、ノルウェーファンならばついつい「あ!ノルウェーっぽい」と思える要素がふんだんに盛り込まれています。
オープニングにかかる音楽はサーメ人のヨイク。その独特な節回しは、私たちを物語の世界にいざなってくれます。

まず登場人物の名前が、エルサ(Elsa)、アナ(Anna)、クリストフ(Kristoff)、ハンス(Hans)、トナカイのスヴェン(Sven)、雪だるまのオラフ(Olaf)。なんと北欧チック!
そして自然は、フィヨルドや険しい山々はもちろん、スターヴ教会が登場します。
前述のVGの記事によると、ディズニーチームはベルゲン、フロム、ガイランゲル、オスロで8日間のリサーチを行ったとか。
物語の中で、女王エルサがフィヨルドを凍らせてしまうシーンがあるのですが、「凍らないはずのフィヨルドが凍った」という衝撃は、物語の登場人物たちに強いショックを与えているのです。

他にも夜空を美しく彩るオーロラや人々の着ているブーナッド(民族衣装)も、ノルウェーファンなら「あ!」と気づくことでしょう。
小さいシーンですが、「ルーテフィスク」が出てくるシーンもあります。はい、乾燥ダラを煮込んだノルウェー独特の料理ですね。アナが雪の中をさまよい、小さなお店を訪れた時、店主が「魚の瓶もあるよ」と字幕には書いてありますが、英語では「ルーテフィスク」と言っていて、くすっと笑ってしまいました。

あと強調したいのは、「ディズニーの手にかかると、トロールが愛らしくなる!」という事実!
あれだけ、「可愛くないのに、高いだけ」とバカにされちゃうトロールが、何とも言えない愛嬌を持って、映画に北欧的要素をプラスしています。
トロールは、最初、大きな石の状態ですが、これは「トロールは日を浴びると石・岩になる」という伝承を忠実に再現しているのか、単なる偶然かはわかりません。
それにしても、あのトロールをキャラクター化できるディズニーの底力に、畏怖の念を覚えました。

こうした北欧的要素を抜きにしても、ストーリー、音楽、とても楽しめる映画でした。
ノルウェー、北欧ファンでまだ未見の方、ぜひ映画館で「ノルウェーを体感」してくださいね♪