北欧映画の1週間「トーキョーノーザンライツフェスティバル」

もうすっかり冬の風物詩となった「トーキョーノーザンライツフェスティバル」(TNLF)。

映画製作会社のワークショップで知り合った有志たちが、ほかに本業を持ちながら、ボランティアで映画祭を実施するというスタイルは、最初に聞いたときは「え?」と驚きました。
いくら昨今、北欧がブームといっても映画は、まだまだ日本で上映される機会は少ないです。
映画祭は2月ですが、夏頃からスタッフがたくさんの北欧映画を観て上映作品を絞り込んでいく、という作業も「それは好きじゃないとできない!」と感じました。そう、好きじゃないとできないです!
そうした熱いスタッフの思い入れがつまったTNLFのスタッフからパンフレットが送られてくると、「今度はどんなラインアップだろう?」と眺めるのが楽しみです。ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、そしてアイスランドの映画は、ほとんどが日本では未公開のものばかりで、時間が許せば、「全部、観たい!」という気分に駆られます。

昨年のTNLFはノルウェー特集ということで、「チャイルド・コール 呼声」の監督、ポール・シュレットアウネさんが来日され、取材の通訳や映画祭のトークショーで通訳を務めるという貴重な体験をさせていただきました。その時のエピソードは、こちらからお読みできます。

・・・ということで一方的に親近感を抱いているTNLFですが、今年のパンフレットを頂き、上映スケジュールと自分のスケジュールを照らし合わせると、なんとノルウェー映画が1本も見られない・・・「ハムスン」はすでに観ているので「ま、いいか」という感じでしたが、実際の強盗事件をドキュメンタリータッチで描いた「NOKAS」が観られなかったのは返す返すも残念・・・。うう。

それでスケジュールが合い、かつ興味がある映画ということで選んだのが、アイスランド映画の「馬々と人間たち」。
東京国際映画祭で「最優秀監督賞」を受賞し、かつ観た人みんなが「面白い!」と言っていたので、「これは行かねば!」と渋谷ユーロスペースに馳せ参じました。

TNLFは「整理番号順」の入場なので、上映の1時間半近く前にはチケットを買いました。平日にも関わらず「44」だったので、映画の人気のほどが分かります。
TNLFの楽しみは映画はもちろん、「北欧の食」も楽しめること。
ユーロスペース1階の「CAFE THEO」では、「特別北欧メニュー」が用意されているので、「ミートボールと付け合せ」を頼みました。ミートボールにはもちろん、ジャムとポテトが添えられ、「う~ん、北欧」気分にテンションUPします。ミートボール

上映15分くらい前に上に上がると、人がたくさん!
本映画の人気ぶりが分かります。スタッフの人たちも、忙しそうに働いています。
そして「馬々と人間たち」が始まりました。
1996年にアイスランドへ旅行した私は、前知識として、「アイスランドには人口より馬が多い」という真偽が分からない言葉を聞きました。旅行中、長距離バスの窓から、大平原を疾走する馬をたくさん見た記憶が残っています。
アイスランド人に言わせると、「馬は持っていて当たり前」。それくらいアイスランド人と馬は密な関係なのです。
映画では徹頭徹尾、馬と人間が対等に描かれています。

馬の瞳のズーム。そのつぶらさに驚きます。
馬の疾走シーン。その躍動感と美しさに感動します。

物語は、セリフは最小限、ユーモラスな音楽と、くすっと笑えるシーンの積み重ねです。
アイスランドの村落。村人たちは互いの行動を「双眼鏡」で観察するのが好き映画
白い雌馬を溺愛し、その馬に颯爽と乗って好意のある女性の家へコーヒーを飲みに行く男性。なんと彼の愛馬は、彼女の黒い牡馬にいきなり襲われるように交尾されてしまいます。
あたかも彼自身が、襲われたような何とも形容しがたい表情を浮かべ、近所の村人たちは持っていた双眼鏡を一斉に落としてしまいます。

後に馬に囲まれた屋外で、人間の「交尾」も描かれるのですが、その姿も「双眼鏡」でのぞかれます。
まさに人間と馬は、同じなんだなぁ~とクスっと笑ってしまいました。

不思議なのは北欧映画の特徴なのでしょうか?
男性は「ダメ男」が多く、女性は「男前で凛とした女」が多かったです。

ロシア船が海を航行しているのを見つけて、無謀にも馬で海を渡り、船にたどり着いて「ウォッカを売ってくれ!」と叫ぶ小汚いおっさん。スタッフ
私有地に張られた鉄条網に馬に乗りながら激突し、顔面血だらけになって、若い女性に助けられるやっぱり小汚いおっさん。
そしてそのおっさんをトラクターで追いかけあっさり谷から落ちて、死んでしまう哀れなおっさん。

そんな人間の「悲喜劇」を見つめる馬。言葉には出さないけど、馬は何を考えているのでしょうか?

本映画は日本公開が決まっていないそうですが、ぜひこぎつけて欲しい作品でした~。
貴重な映画を上映してくれたスタッフの皆さんに感謝しつつ・・・。来年も、NTLFを楽しみにしています♪